AIの基本
AI(Artificial Intelligence=人工知能)は、人間のように考えたり判断したりするコンピュータのプログラムである。
「Artificial=人工的」「Intelligence=知能・知性」という名前の通り、頭脳を持った機械のような存在である。
生みの親ジョン・マッカーシー教授は「AIとは知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と説明している。
対して人工知能学会では「大量の知識データを使って、高度な推論を行うことを目指したもの」と表現されている。
AIには大きく分けて強いAIと弱いAIが存在する。
強いAIと弱いAIの違い
弱いAI
特定の仕事だけ得意で柔軟な考えは苦手である。
例:
「この文章を日本語から英語に翻訳する」→そのまま翻訳するだけ
実例:Google翻訳、Siri、囲碁AI(AlphaGo)など
強いAI
人間のように考える力があり、タスクを自分で判断できる
例:
「この文章を日本語から英語に翻訳し、読者が感動するように文章を改良する」→翻訳だけでなく文脈も考え、自分で工夫して補う
イメージ:SF映画のドラえもんやC-3PO(スターウォーズ)など
2つのAIをざっくりイメージ
弱いAI
例えば、りんごだけを正確に選別するロボットは、りんご以外の果物や状況には対応できない。このように、与えられた作業を忠実にこなすことは得意だが、想定外の問題には自分で対応することはできない。
強いAI
人間のように考えながら判断できるAI。例えば、冷蔵庫の中の材料を見て、「どんな料理を作るか」を自ら考え、複数の果物や材料を組み合わせて判断し、柔軟に対応できる。このように、強いAIは単一の作業に限定されず、なぜこうするのかを考えながら行動する能力を持っている
チューリングテスト(Turing Test)
チューリングテスト強いAIの能力を測る有名な試験である。
これは、「機械は考えることができるのか?」という問題提起から発展した、質疑応答形式の思考実験であり、1950年にイギリスの数学者アラン・チューリングが提唱した。
実施方法
審査員1名を用意し、1名の人間と1つのプログラムが、ディスプレイとキーボードで会話する(人間とプログラムは審査員から人間と思われるように意識して会話する)
会話終了後、審査員が見分けられなければ、プログラムは「合格」とみなされ、合格したプログラムは「人間相当の知能を有している」と判断される。
計算機の歴史とAI
AIの進化は計算機の進化と密接に関係しており、計算機の進化により、AIはより複雑な問題に挑戦できるようになったのである。
| 時代・年 | 出来事 |
|---|---|
| 7万年前 | 人類が物を数え始める |
| 2万年前 | 掛け算も行っていたが、大きな数には対応できず、そろばんの発明につながる |
| 18世紀 | 多段歯車式の計算器が登場 |
| 20世紀 | 砲撃予測や科学計算用の電子式計算器が使われる |
| 1946年 | ENIAC:真空管18,000本で秒5,000回の計算を実現 |
| 1964年 | IBM 360:商用コンピュータとして世界的に普及 |
| 1970年代 | 電卓や小型コンピュータが普及し、机上でAI実験が可能に |
AIの歴史ざっくり
| 時代・年 | 出来事 |
|---|---|
| 1940年代〜 | AIのアイデアが誕生 |
| 1950年代後半〜1970年代 | 第一次AIブーム:計算能力や理論が不足し、現実問題への応用は限定的で終わる |
| 1980年代〜1990年代 | 第二次AIブーム:エキスパートシステム登場。知識を蓄積する方式だが自律学習ができず、費用ばかり増えて成果は限定的 |
| 2000年代〜現在 | 第三次AIブーム:ディープラーニングの登場によりAIが自ら学習可能に。ビッグデータ、GPU、スマホ普及、クラウド、オープンソース化で急速に発展 |
ディープラーニングとは
2006年にジェフリー・ヒントンらによって開発された手法。
従来のAIとは異なり、入力データから自ら特徴を学び、特定の知識やパターンを事前に与えなくても学習できる。
名前の通り、非常に深い計算(多層のニューラルネット)を行うことで、機械が自ら「どう動くべきか」を学ぶことが可能である。
例えば写真を見て猫か犬か判断する、文字を見て手書き文字を認識する、ゲームで最適戦略を自分で編み出すなどが可能である。
現代のAIの活用
現代社会では急速にデジタル化が進み、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を本格的に推進している。その中心的な存在となっているのがAIだ。AIは膨大なデータを高速に分析し、人間では見落としがちなパターンを見つけ出し、高度な意思決定や業務の自動化を支える強力なツールとして活躍している。
具体的な活用分野は以下の3つである。
-
業務効率化
AIを利用すれば、ルーティン作業の自動化や大量データの処理が可能となり、ヒューマンエラーの削減やリソース最適化に大きく貢献する。 -
顧客体験の向上
顧客の行動データや購買履歴をもとにしたパーソナライズされた提案、チャットボットによる迅速な対応など、AIはサービス品質を一段高いレベルへと押し上げている。 -
新製品やサービスの開発
市場データの分析による需要予測、新素材設計、医薬品の創薬支援など、これまで時間とコストのかかっていた領域で革新的な成果を生み出している。
このようにAIを適切に活用することで、企業は競争力を大幅に高めることが可能となる。AIはもはや一部の先進企業だけのものではなく、現代のビジネスにおける必須の基盤技術として定着しつつある。
AIが「推論機械」から「データ駆動型学習システム」へ変化した理由
従来のAIは、人間が定めたルールや推論手法をもとに動作する設計が中心だった。しかし近年は、大量のデータをもとにモデル自身がパターンを学習し、判断や予測を行う方式が主流となっている。言い換えれば、AIは考える機械からデータから学ぶ機械へと進化しているのである。ただし、データの偏りや品質、モデルの説明可能性といった課題は依然として重要であり、ルールベースの手法やハイブリッド方式が併用される場面も多い。
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