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消える職業、増える職業

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Last updated at Posted at 2026-07-30

心理学者のダニエル・カーネマン(2002年ノーベル経済学賞)は、あるインタビューで「幸福を高めるには」と問われて、時間の使い方の話をしています。

例えば、車を買うとき、人々は自分が車を運転して楽しんでいる姿を想像します。しかし、実際に車を所有して運転しているとき、ほとんどの場合、車に注意を払っていません。しかし、友人と交流しているときは、その活動に注意を払っています。

彼は後者のような活動を attention-richと呼びました1
 そして、本稿では、対になる前者を attention-poor と呼ぶことにします。

AIによって消える職業とは

私は、この概念を「AIによって消える職業」に適用するとどうなるのか興味がわきました。

ただ、職業と一口に言っても、実際にはいろいろな仕事が含まれています。
そしてAIに移るのは、その中の attention-poor「変化が決まった型に収まる仕事」です。

AIにいろいろな仕事を挙げてもらい表にしました。

左の列がAIに移る仕事、右の列が残る仕事です。

組織の中の席で

AIに移る 残る
経理 型どおりの伝票起こし 「この按分は妥当か」と疑う目
内部監査 チェックリストの照合 新しいごまかしの手口を嗅ぐこと
法務 ひな形との突き合わせ 落としどころを探る交渉
開発 仕様どおりの実装 仕様の穴に気づくこと
開発 動くコードの量産 「何を作らないか」の判断
レビュー 規約違反の指摘 「この設計、意図は?」の一言
営業 見積書づくり 「あの人に頼みたい」という信頼
サポート よくある質問への回答 怒っている人の話を最後まで聞くこと
人事 応募書類のふるい分け 辞めそうな人に気づいて声をかけること
管理職 進捗の集計 結果を引き受けて説明すること
経営 資料づくり 賭けの決断と、その説明
倉庫事務 出荷の追跡 問い合わせへの即答で積む信頼

名前のある職業で

職業 AIに移る 残る
放射線科医 影を見つけること 診断に署名する責任
会計士 帳簿との照合 新しいごまかしを疑うこと
薬剤師 棚から薬を集めること 飲み合わせを患者と話す時間
教師 丸付けと問題出し あきらめかけた生徒を引き戻すこと
翻訳者 定型文書の置き換え 読者を思い浮かべた言い換え
通訳者 言葉の変換 場の空気を読んで言い落とす判断
記者 発表資料の記事化 話したがらない人に話させる取材
デザイナー バリエーション出し 「これじゃない」の言語化
施工管理 写真整理と日報づくり 現場の「図面と違うぞ」への対処
ホールスタッフ 注文と会計 常連の顔と好みを覚えること
不動産営業 物件情報の案内 売り主の事情を聞き出すこと
警備員 モニターの見張り 声かけと巡回の抑止
運転手 決まった路線の運転 乗り降りに手を貸す送迎
窓口職員 定型申請の処理 制度の隙間に落ちた人の相談
オペレーター 一次対応 こじれた案件の収拾

右の列は、残るのではなく増える

タイトルを「残る職業」ではなく「増える職業」としたのには理由があります。
左の列が機械に移ると、人の時間が浮きます。

浮いた時間は右の列に流れ込み、右の仕事はむしろ増えます。
右の仕事の多くは、顧客の信頼を増やし、売上向上の基礎になるものです。

さらに、浮いた時間が余暇として使われた場合の受け皿を作る仕事、
 たとえば、体験の設計、コミュニティの運営、自然の案内など。
それらは、これから新しく伸びていきます。

本当のタイトル

この記事の本当のタイトルは、別にありました。

カーネマンが広めた、有名な概念があります。

  • 速く、自動で、努力なしに回る思考 = システム1
  • 遅く、注意を要する思考 = システム2

左の列に並んだ仕事は、(人間が慣れてしまえば)システム1で回せる仕事です。
つまり乱暴に言えば、AIとは、電力で動くシステム1です。

だから、システム1で回るものから機械へ移ります。
人間に残るのは、注意を払わなければ回らない仕事だけになる。

本当のタイトルは『人間は、システム1でいられない』でした。

  1. 原典: The Psychologist誌のインタビュー。カーネマンはここで「注意を払い続けられる活動に時間を投資すべきだ」と述べています。

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