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クソデカ羅生門の差分を見てみると親の仇のようにメチャメチャクソデカい文学になっていた

Posted at

どこかのツイッターで知ったのですが
クソデカ羅生門
なるものが出来たということでした。

羅生門

そもそもの羅生門は、ほぼクソ少しも
読んだ覚えが無さそうなのですが
芥川龍之介なる人物がかなり昔に
書いた文学のようです。

青空文庫に乗っていたのでだいぶ昔でしょうね。

参考:https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/127_15260.html

クソデカ羅生門

引用:https://anond.hatelabo.jp/20200611125508

原典の羅生門のイメージは残しつつというか
もうイヤになっちゃうくらいほぼ丸々怖いくらい
全然まったく寸分たりとも違わず完全にそのまま

原典に修飾語を追加したもので有ると思われます。

という事は差分が上手く取れるはずですね。

差分を取ってみる。

差分を取る手順は以下の通りです。
1.両方の奴をファイル化する
2.不要文字(スペース)は削除
3.1行ずつ差分をとる
4.差分の所を囲む

という事でこんなコードを作って差分をとりました。

# ファイルの読み込み
with open('羅生門/クソでか羅生門.txt') as _f:
    text = _f.read()
text = text.replace('。','。\n')
kusodeka = text.split('\n')
print(len(kusodeka))

with open('羅生門/羅生門.txt') as _f:
    text = _f.read()
text = text.replace('。','。\n')
rasyoumon = text.split('\n')
print(len(rasyoumon))

# 差分チェック
def check_diff(moto,kuso):
    res1,res2,tmp = [],[],kuso
    for m in moto:
        i = str(tmp[0:]).find(m)
        diff = tmp[0:i]
        if len(diff)>0:
            for d in diff:
                res2.append(d)
                res1.append(' ')
        res2.append(' ')
        res1.append(tmp[i])
        tmp = tmp[i+1:]
    return res1,res2

template = '<table style="table-layout: fixed;"><tr>{0}</tr></table>'
red = '<td><span style="color: red;">{0}</span></td>'
gre = '<td><span style="color: green;">{0}</span></td>'

# HTML化
def  make_html(r1,r2):
    html = ''
    for i in range(len(r1)):
        if r1[i]==' ':
            html += red.format(r2[i])
        else:
            html += gre.format(r1[i])
        if r1[i]=='、':
            html += '</tr><tr>'
    return template.format(html)

# 差分の囲み
def  make_text(r1,r2):
    text,flg = '',1
    for i in range(len(r1)):
        if r1[i]==' ':
            if flg==1:
                text+='`'
                flg*=-1
            text+=r2[i]
        else:
            if flg==-1:
                text+='`'
                flg*=-1
            text+=r1[i]
    return text

# 差分の文章化
for moto,kuso in zip(rasyoumon,kusodeka):
    res1,res2 = check_diff(moto,kuso)
    text = make_text(res1,res2)
    print(text)

# 差分のHTML出力
html = ''
for moto,kuso in zip(rasyoumon,kusodeka):
    res1,res2 = check_diff(moto,kuso)
    html += make_html(res1,res2)

後程差分を文章化したものを載せさせていただきます。

どんな言葉がよく出てくるのか?

差分が取れるという事は、原典に対して
どんな言葉がついていたのかを知ることができます。
修飾されている言葉が何回出てくるのかを調べてみました。

calc = {}
for moto,kuso in zip(rasyoumon,kusodeka):
    res1,res2 = check_diff(moto,kuso)
    tmp = ''
    for r in res2:
        if r==' ':
            if tmp in calc:
                calc[tmp]+=1
            else:
                calc[tmp]  =1
            tmp=''
        else:
            tmp+=r

calc.pop('')
print('種類数 : ',len(calc))
for k,v in sorted(calc.items(),reverse=True,key=lambda x:x[1]):
    print(v,'\t',k)
種類数 :  341
26   大
13   まくっ
12   超
10   真
10   メチャメチャ
10    Godsに影響した
9    巨大
8    糞
7    クソデカ
7    倒し
7    完全に
7    巨大な
6    超巨大
6    巨
5    クソ
5    マジで
4    クソデカい
4    全然
4    マジで全然
4    豪
4    超苦しい
4    死ぬほど
4    大量に
3    千
3    世界最強の
3    に影響した
3    バカ
3    極
3    最強
3    王
3    まくり
3    本当に
3    まったく
3    めちゃくちゃ
2    (ほぼ夜)
2    百
2    毎日
2    りまく
2    完全
2    きったない
2    ハチャメチャに
2    びっくりするほど
2    炎
2    最高級
2    〇〇
2    続け
2    剛
2    〇〇〇〇
2    絶対に
2    雑魚
2    瞬間的に
2    極悪
2    まぶた
2    さかっ
2    いまく
2    巨大怪
1    完全な真
1    気持ち悪いほどずっと
・・・

一回しか出てこないやつがげに誠、めっちゃ多い!!!!
数えたら285個もありました。

これだけの表現を付け加えるというのは信じられません。
同じものが使われるケースもありますが、表現の幅を広げているのは
作者様の語彙力に他ならないと思います。

どんな長い言葉が加えられているか?

これも集計で、文字数の多い修飾語でどんだけ長いかをみてみます。
上記の集計結果を使って、ソートのキーを文字数にします。

for k,v in sorted(calc.items(),reverse=True,key=lambda x:len(x[0])):
    print(len(k),'\t',k)
23   Ultimet-Sentimentalisme
20   ただでさえ最低最悪のゴミの掃き溜めである
17   ほとんど聞き取れないほどの超早口で
16   マジで悲しくなっちゃうくらい全然
16   of the Godsに影響した
15   ブッサイクで気持ちの悪い巨大な
14   クソ治安がいいことで知られる
14   三千里(約一万二千メートル)
13   もうイヤになっちゃうくらい
13   親の仇のようにメチャメチャ
13   のちに剣聖と呼ばれる最強の
13   地の果てまで広がるがごとき
13   自殺したくなるくらい本当に
13   強烈な殺意を内包した本気の
12   正気を疑うレベルでデカい
12   マジでビックリするくらい
12   本当に惨めな感じになって
12   寸分たりとも違わず完全に
12   物理的にありえない動きで
12   本当にめちゃめちゃ苦しい
12   世界最高の名刀と謳われる
12   テレパシーのごとく完全に
11   怖いくらい全然まったく
11   鼓膜破壊レベルの音量で
11   頭おかしいくらいデカい
11   トチ狂ったクソデカさの
11   意味わからんくらいクソ
11   信じられないほどデカい
11   構造的にありえない形で
10   気持ち悪いほどずっと
10   思わず目を疑うくらい
10    Godsに影響した
10   本当にマジでまったく
10   メチャメチャくっせえ
10   芸術品のように美しい
10   超メチャメチャ剣呑な
10   頬が落ちるほど本当に
10   まったく一瞬たりとも
10   目にも止まらないほど
10   えげつないスピードで

10文字以上の表現が40個も出てきました。
1つ2つ考えるのも結構な時間を要するかと
思われるのにも関わらずこの量です。

もう完全に羅生門に登場してきた
傾国の美女のごとく脱毛です。

修飾語の種類数で341も有るので
長く、しかも量もあるというところが
このクソでか純文学の面白身というところでありましょう。

最後に差分を含め載せさせていただきます。

差分

ある日の暮方(ほぼ夜)の事である。
一人の下人が、クソデカい羅生門の完全な真下で雨やみを気持ち悪いほどずっとちまくっていた。

馬鹿みたいに広い門の下には、この男のほかに全然誰もいない。
ただ、所々丹塗のびっくりするくらい剥げた、信じられないほど大きな円柱に、象くらいある蟋蟀が一匹とまっている。
クソデカ羅生門が、大河のように広い朱雀大路にある以上は、この狂った男のほかにも、激・雨やみをする巨大市女笠や爆裂揉烏帽子が、もう二三人はありそうなものである。
それが、この珍妙男のほかには全然誰もマジで全くいない。

何故かと云うと、この二三年、京都には、超巨大地震とか破壊的辻風とか最強大火事とか極限饑饉とか云うエグすぎる災が毎日つづいて起った。
そこでクソ広い洛中のさびれ方はマジでもう一通りとかそういうレベルではない。
旧記によると、クソデカい仏像や文化財クラスの仏具をものすごいパワーで打砕いて、その丹がベッチャベチャについたり、金銀の箔がもうイヤになっちゃうくらいついたりした木を、路ばたに親の仇のようにメチャメチャつみ重ねて、薪の料に売りまくっていたと云う事である。
クソ治安がいいことで知られる洛中がその始末であるから、正気を疑うレベルでデカい羅生門の完全修理などは、元より誰も捨てて顧る者がマジで全然なかった。
するとそのドン引きするくらい荒れ果てたのをよい事にして、クソヤバい狐狸がドンドン棲む。
世界最強の盗人が6万人棲む。
とうとうしまいには、マジで悲しくなっちゃうくらい全然引取り手のないきったない死人を、この門へ猛ダッシュで持って来て、超スピードで棄てて行くと云う習慣さえ出来た。
そこで、日の目が怖いくらい全然まったく見えなくなると、誰でもメチャメチャ気味を悪るがって、この門の近所へはマジでビックリするくらい足ぶみをしない事になってしまったのである。

その代りまた超凶悪な鴉がどこからか、億単位でたくさん集って来た。
昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、クソ高い鴟尾のまわりを鼓膜破壊レベルの音量で啼きながら、亜音速で飛びまわっている。
ことに門の上の空が、夕焼けで思わず目を疑うくらいあかくなる時には、それが胡麻をえげつない量まいたようにはっきり見えた。
鴉は、勿論、頭おかしいくらいデカい門の上にメチャクチャ大量にある死人の肉を、気が狂ったように啄みに来るのである。
――もっとも今日は、刻限がハチャメチャに遅い(ほぼ夜)せいか、マジで一羽も見えない。
ただ、所々、ほぼ崩れかかった、そうしてその崩れ目にメチャメチャ長い草の森のごとくはえ倒しクソ長い石段の上に、鴉のえげつなく臭い糞が、点々と白くこびりついているのが見える。
下人は七千万段ある石段の一番上の段に、洗いざらしてほぼ透明になった紺の襖の尻を据えて、右の頬に出来まくった、クッソ大きな面皰を気にしながら、メチャメチャぼんやり、とんでもない豪雨のふりしきるのを眺めていた。

作者はさっき、「下人が雨やみをメチャメチャ待っていた」と書いた。
しかし、下人は激烈豪雨がやんでも、格別どうしようと云う当てはマジで全然ない。
ふだんなら、勿論、クソ強い主人のえげつなくデカい家へ帰る可き筈である。
所がその主人からは、四五日前に暇を出し倒された。
前にも書いたように、当時ただでさえ最低最悪のゴミの掃き溜めである京都の町は一通りならず衰微しまくっ本当に惨めな感じになっていた。
今この最強にヤバい下人が、永年、犬のごとくこき使われていた主人から、暇を出されたのも、実はこの衰微のクソしょぼい小さな小さな余波にほかならない。
だから「下人が雨やみをメチャメチャ待っていた」と云うよりも「クソヤバい豪雨にふりこめられた下人が、マジで全然行き所がなくて、途方にくれていた」と云う方が、完全に適当である。
その上、今日の空模様も少からず、この平安朝のヤバい下人のUltimet-Sentimentalisme of the Godsに影響したof theGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したGodsに影響したに影響したに影響した。に影響した。
申の刻下りからふり出した雨は、いまだに上るけしきが全然かけらもない。
そこで、のちに剣聖と呼ばれる最強の下人は、何をおいても差当り明日の暮しをメチャメチャどうにかしようとして――云わば絶望的にどうにもならない事を、どうにかしようとして、悲しくなるくらいとりとめもない考えをたどりながら、さっきからアホみたいに広い朱雀大路にふる雨の音を、聞くともなく聞いていたのである。

雨は、トチ狂ったクソデカさの羅生門をつつんで、メチャメチャ遠くから、ざあっと云う音をあつめて来る。
夕闇は次第に空をびっくりするほど低くして、見上げると、超巨大門の超巨大屋根が、斜につき出した超巨大甍の先に、ドチャクソ重たくうす暗い雲を嫌になるくらい支えまくっている。

どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる遑は本当にマジでまったくない。
選んでいれば、築土の下か、道ばたの土の上で、超苦しい饑死をするばかりである。
そうして、このガチで世界一デカい門の上へ猛スピードで持って来て、きったない犬のように超速で棄てられてしまうばかりである。
選ばないとすれば――巨大下人の考えは、何度も寸分たりとも違わず完全に同じ道を低徊した揚句に、やっとこの局所へ逢着した。
しかしこの「すれば」は、マジでいつまでたっても、結局「すれば」であった。
クソザコ下人は、手段を選ばないという事をエグ肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために、当然、その後に来る可き「世界最強の盗人になるよりほかに仕方がない」と云う事を、積極的に肯定するだけの、莫大な勇気が出ずにいたのである。

下人は、意味わからんくらいクソ大きな嚔をして、それから、死ぬほど大儀そうに立上った。
南極かってくらいに夕冷えのする世界最悪の罪の都京都は、もう火桶が8億個欲しいほどのガチえげつない寒さである。
風は信じられないほどデカい門の柱と柱との間を、クソヤバい濃さの夕闇と共にマジで全然遠慮なく、吹きぬけまくる。
丹塗の超巨大柱にとまっていた象サイズの蟋蟀も、もうどこかへ行ってしまった。

下人は、頸を人間の限界を超えてちぢめながら、山吹の汗袗に無理やり重ね倒した、紺の襖の肩を物理的にありえない動きで高くしてクソデカ門のまわりを見まわした。
雨風の患のない、人目にかかる惧のない、一晩メチャメチャ楽にねられそうな所があれば、そこでともかくも、クッソ長い夜を明かそうと思ったからである。
すると、幸い超巨大門の上の宮殿並みにデカい楼へ上る、幅のバカ広い、これも丹をキチガイみたいにりたくった梯子が眼についた。
上なら、人がいたにしても、どうせ臭くてきったない死人ばかりである。
下人はそこで、腰にさげた巨大な聖柄の太刀が鞘走らないように気をつけ倒しながら、藁草履をはいた巨大な足を、そのバカでかい梯子の一番下の段へ渾身の力でふみかけた。

それから、何分かの後である。
クソデカ羅生門の楼の上へ出る、幅のアホみたいに広い梯子の中段に、一人の巨大な男が、猫のように身をちぢめまくって、ヤバいくらい息を殺しながら、上の容子を窺っていた。
楼の上からさす目を灼く光が、かすかに、その男の右の頬をぬらしている。
えげつなく短い鬚の中に、とんでもなく赤く膿を持った巨大な面皰の大量にある頬である。
下人は、始めから、この上にいる者は、死人ばかりだと高を括っていた。
それが、梯子を二三段上って見ると、上では誰か燃え盛る大火をとぼして、しかもその火をそこここと疾風のごとき速さで動かしているらしい。
これは、そのドブのように濁った、この世の理を超えて黄いろい光が、すべての隅々に巨大人食い蜘蛛の巣をかけた天井裏に、激しく揺れながら映ったので、メチャすぐにそれと知れたのである。
この雨の夜に、このクソデカ羅生門の上で、世界すら灼く業火をともしているからは、どうせただの者ではない。

下人は、巨大な守宮のように足音をぬすんで、やっとクソ急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
そうして体を出来るだけ、紙のように平にしながら、頸を出来るだけ、ろくろっ首のごとく前へ出して、恐る恐る、巨大な楼の内を覗いて見た。

見ると、地の果てまで広がるがごとき楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの山のように巨大な死骸が、無造作に棄ててあるが、火の光の及ぶ範囲が、思ったよりクソ狭いので、数は幾つともわからない。
ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に完全に全裸の死骸と、メチャクチャ高級な着物を着まくった死骸とがあるという事である。
勿論、中には女も男もまじっているらしい。
そうして、その死骸は皆、それが、かつて、生きていた人間だと云う事実さえ疑われるほど、土を捏ね倒して造った人形のように、口をヤバイくらい開いたり手をキロ単位で延ばしたりして、ごろごろ床の上にころがっていた。
しかも、肩とか胸とかの山くらい高くなっている部分に、ぼんやりした火の光をうけて、クソ低くなっている部分の影を一層超死ぬほど暗くしながら、永久に唖の如く黙っていた。

下人は、それらの超ビッグ死骸のメチャメチャくっせえ腐爛した最悪の臭気に思わず、鼻を掩って掩って掩いまくった。
しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を完全に忘れ尽くしていた。
あるハチャメチャに強いクソデカ感情が、ほとんどことごとくこの最強男の嗅覚を奪ってしまったからだ。

下人の眼は、その時、生まれてはじめてその激臭死骸の中に蹲っている最低最悪醜悪人間を見た。
檜皮色のきったねえ着物を着た、ノミのように背の低い、ナナフシのように痩せこけた、白髪頭の、猿のような老婆である。
その老婆は、右の手にをともした最高級松の巨大木片を持って、その死骸の一つの顔を覗きこむように眺め倒していた。
髪の毛のクソ長い所を見ると、多分傾国の美女の死骸であろう。

下人は、六〇〇分の恐怖と四〇〇分の知的好奇心とにつき動かされ続けて、暫時(七十二時間)は呼吸をするのさえ忘れていた。
旧記の記者の語を全て丸々借りれば、「頭身の毛も一生り続ける」ように感じまくったのである。
すると老婆は、高級松の木片を、床板の間に狂ったように挿して挿して挿し倒して、それから、今まで眺め続けていた死骸の首に両手をかけると、丁度、猿の親が猿の子の虱を全部とるように、そのバカ長い髪の毛を一〇〇〇〇本ずつ抜きはじめた。
髪は手に奴隷のように従って抜けるらしい。

その髪の毛が、一〇〇〇〇本ずつ抜けるのに従って、下人の腐りきった心からは、恐怖が少しずつ完全に消えて行った。
そうして、それと完全にピッタリ同時に、この老婆に対する想像を絶するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。
――いや、この老婆に対すると云っては、語弊がありすぎるかも知れない。
むしろ、この世に存在しうるりとあらゆる悪に対する巨大な反感が、一分毎に強さを等比級数的に増して来たのである。
この時、誰かがこの最強正義の体現たる下人に、さっき門の下でこの性根の腐ったドブ男が考えていた、超苦しい饑死をするか世界最強の盗人になるかと云う世紀の大問題を、改めて持出したら、恐らく清廉潔白超高潔下人は、マジで何の未練のカケラもなく、本当にめちゃめちゃ苦しい饑死を選んだ事であろう。
それほど、この男の中の男のあらゆる悪を世界一憎む心は、老婆の床に挿しまくっ最高級松の木片のように、勢いよく燃え上り出していたのである。

大馬鹿で学のない下人には、勿論、何故老婆が死人の髪の毛を抜くか本当に一切わからなかった。
従って、合理的には、それを善悪のいずれに片づけてよいかマジでまったく全然知らなかった。
しかし馬鹿下人にとっては、この雨の夜に、このクソデカ羅生門の上で、死人のぬばたまの髪の毛を抜くと云う事が、それだけで既に絶対に許すべからざる世界最低のの中の悪であった。
勿論、クソアホ下人は、さっきまで自分が、世界一の大盗人になる気でいた事なぞは、とうの昔に忘れきっていたのである。

そこで、下人は、両足に力を入れまくって、いきなり、梯子から三千里(約一万二千メートル)上へ飛び上った。
そうして世界最高の名刀と謳われる聖柄の太刀に手をかけながら、大股に老婆のど真ん前へ歩みよった。
老婆が死ぬほど驚いたのは云うまでもない。

老婆は、一目下人を見ると、まるで攻城弩にでも弾かれたように、天高く飛び上った。

「おのれ、どこへ行く。

最強下人は、雑魚老婆が死骸全て無様につまずきまくりながら、可哀想なくらい慌てふためいて逃げようとする行手を完全に塞いで、こう罵りまくった。
老婆は、それでも神速で巨大下人をつきのけて行こうとする。
剛力下人はまた、それを絶対に行かすまいとして、ものすごい力で押しもどす。
二人は巨大死骸のまん真ん中で、しばらく、完全に無言のまま、つかみ合った。
しかし勝敗は、宇宙のはじめから誰にでも完全にわかっている。
下人はとうとう、老婆の腕を馬鹿力でつかんで、無理にそこへ叩きつけるようにねじ倒した。
丁度、鶏の脚のような、本当に骨と皮ばかりの腕である。

「何をしていた。
云え。
云わぬと、これだぞよ。

下人は、老婆を全力でどつき放すと、いきなり、太刀の鞘を瞬間的に払って、白いミスリル鋼の芸術品のように美しい色をその眼の前へつきつけた。
けれども、極悪老婆は完全におし黙っている。
両手をわなわな高速でふるわせて、肩で息を切りながら、眼を、眼球がまぶたの外へ完全に飛び出そうになるほど、ありえないくらい見開いて、唖のように執拗く黙っている。
これを見ると、最強下人は始めて明白にこの老婆の生死が、全然、自分の完全なる自由意志にまったく支配されていると云う事をめちゃくちゃ意識しまくった。
そうしてこの意識は、今までけわしく燃えさかっていた巨大憎悪の心を、いつの間にか絶対零度まで冷ましてしまった。
後に残ったのは、ただ、ある仕事をして、それが円満にめちゃくちゃうまく成就した時の、人生最高の安らかな得意と満足とがあるばかりである。
そこで、有能下人は、老婆をはるか高みから見下しながら、少し声を柔らげてほとんど聞き取れないほどの超早口でこう云った。

「己は検非違使の庁の役人などでは断じてない。
今し方この門の下を通りかかった旅の者だ。
だからお前に縄をかけまくって、どうしようと云うような事は神仏に誓って絶対にない。
ただ、今時分この巨大門の上で、何をして居たのだか、それを己に話しまくりさえすれば最高にいいのだ。

すると、老婆は、見開いていた眼を、構造的にありえない形で一層大きくして、じっとその下人のブッサイクで気持ちの悪い巨大な顔を見守った。
まぶた赤くなった、凶暴肉食最恐鳥のような、めちゃくちゃ鋭い眼で見まくったのである。
それから、本当に醜い皺で、ほとんど、鼻と一つになったタラコ唇を、何か金剛石のごとく硬い物でも噛んでいるように動かした。
細い喉で、針のように尖った喉仏の動いているのが見える。
その時、その喉から、鴉の啼くような汚い声が、喘ぎ喘ぎ、下人の耳へ伝わって来た。

「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、巨大鬘にしようと思うたのじゃ。

無双の無敵下人は、老婆の答が存外、めちゃくちゃ平凡なのに自殺したくなるくらい本当に失望した。
そうして極限まで失望すると同時に、また前の強烈な殺意を内包した本気の憎悪が、氷のように冷やかな侮蔑と一しょに、心の中へ大量にはいって来まくった。
すると、その超メチャメチャ剣呑な気色が、先方へもテレパシーのごとく完全に通じ倒したのであろう。
雑魚老婆は、片手に、まだ死骸の頭から奪いまくったバカ長い抜け毛を大量に持ったなり、蟇のつぶやくようなクソ小声で、口ごもりながら、こんな事を云った。

「成程な、死人の髪の毛を抜くと云う事は、何ぼう滅茶苦茶に悪い最低の事かも知れぬ。
じゃが、ここにいる死人どもは、皆、そのくらいな事を、されてもいい人間ばかりだぞよ。
現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、八岐大蛇を四寸ばかりずつに切って干したのを、干巨大怪魚だと云うて、太刀帯の陣へ売りに往んだわ。
疫病に五回かかって死ななんだら、今でも毎日売りに往んでいた事であろ。
それもよ、この女の売る干巨大怪魚は、味が頬が落ちるほど本当によいと云うて、太刀帯どもが、絶対に毎日欠かさず菜料に買いまくっていたそうな。
わしは、この女のした事が人類史に残るほどに悪いとはまったく思うていぬ。
せねば、とてつもなく苦しい饑死をするのじゃて、仕方がなくした事であろ。
されば、今また、わしのしていた事も悪い事とは全然思わぬぞよ。
これとてもやはりせねば、超苦しい饑死をするじゃて、マジ仕方がなくする事じゃわいの。
じゃて、その本当に仕方がない事を、よく知っていたこの極悪女は、大方わしのする事も大目に見まくってくれるであろ。

老婆は、大体こんな意味の事を超早口で云った。

巨大下人は、太刀を瞬きの間に鞘におさめて、その太刀の美しい柄を左の手でおさえながら、死ぬほど冷然として、この話を聞いていた。
勿論、右の手では、メチャメチャ赤く頬に膿を大量に持った大きな面皰を気にしまくりながら、聞いているのである。
しかし、これを聞いている中に、下人の史上空前に邪悪な心には、あるクソデカい勇気が生まれて来た。
それは、さっきクソデカい門の下で、この腑抜けカス男には全く欠けていた勇気である。
そうして、またさっきこの馬鹿でかい門の上へ瞬間的に上って、この老婆を人間離れした動きで捕えた時の勇気とは、全然、完全に反対な方向に動こうとするデカ勇気である。
下人は、超苦しい饑死をするか盗人になるかに、まったく一瞬たりとも迷わなかったばかりではない。
その時のこの最低男の心もちから云えば、苦しい苦しい饑死などと云う事は、ほとんど、考える事さえ出来ないほど、意識の完全な外に追い出され倒していた。

「きっと、そうか。

老婆の話が完ると、下人はメチャメチャ嘲るような声で念を押しに押した。
そうして、一〇〇〇足前へ出ると、不意に右の手を面皰から七尺離して、老婆の襟上を神速でつかみながら、噛みつくようにクソデカい声でこう云った。

「では、己が完全引剥をしようとまったく恨むまいな。
己もそうしなければ、二時間後に饑死をする体なのだ。

韋駄天の異名をとる下人は、目にも止まらないほどすばやく、老婆の着物を完全に剥ぎとった。
それから、丸太のように太い足にしがみつこうとする老婆を、手荒く死骸の上へ蹴飛ばし倒した。
梯子の口までは、僅に五歩を数えるばかりである。
下人は、剥ぎとった檜皮色の着物をわきにかかえて、マジでまたたく間に死ぬほど急な梯子を夜のドン底へかけ下りた。

しばらく、まさしく死んだように倒れていた老婆が、巨大死骸の中から、その裸のあまりに醜すぎる体を起したのは、それから本当に間もなくの事である。
老婆はつぶやくような、うめくようなクソうるさい声を立てながら、まだ太陽のように燃えさかっている火のまばゆい光をたよりに、梯子の口まで、えげつないスピードで這って行った。
そうして、そこから、びっくりするほど短い白髪を倒にして、クソデカ門の下を覗きこんだ。
宇宙には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。

下人の行方は、マジで誰も全然知らない。

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