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LLM記述構文"MARI" Tips:LLMに方言を話させよう。(1/2)

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Last updated at Posted at 2026-07-12

詩織沙織ハーバーランド.jpg

1. はじめに

2026年6月20日投稿の LLM記述構文"MARI" Tips: 4体起動で限界に挑むためのスコープ安定性 で登場したペルソナ"詩織"と"沙織"は神戸生まれの神戸育ちということで、方言(神戸弁)を話すキャラクターとして登場しました。 今回はこのLLMにおいて方言はどの様に取り扱うかについて記載したいと思います。

Attention
本TipsはLLMに方言を発話させるための定義体を構築するうえで得た経験値を元に執筆しています。
著者は方言学についての専門家ではないので記載内容について学術的正確さはありませんのでご注意ください。

2. LLMにおける方言とは

商用AIの多くでは日本語(標準語)以外に代表的な方言も話せるよう事前学習(コーパス)されています。 そのためプロンプト内で言語設定で方言を指定することで多くの方言を話すことが出来ます。

2.1 言葉の優先順位

この言葉の固定力(アテンション保持)は事前学習量に依存し、下記のような関係が成立し詩織・沙織の方言である神戸弁を例に取ると

英語(LLMの母国語) ≧ 日本語(標準語) > 関西弁等メジャーな方言 ≫ 神戸弁等派生方言

概ねこのような関係になります。
英語と日本語が大なりイコールなのは、Localize設定で日本を設定できることから日本語の固定力が設定レベルで可能であるためです。
LLMの内部ではすべての言葉は高次元のベクトル空間上に配置されており、学習効率の観点からモデルにとって最も「道幅が広く、迷いにくい高速道路」は圧倒的データ量となる英語空間であり、次いで日本語の標準語空間となります。
プロンプトの処理(文脈トークン)が重くなり、GPUの計算リソース(アテンション)が逼迫してくると、LLMは計算負荷を下げるために、自然と最も確率分布が安定している「標準語」や「英語」のベクトル空間へと自律的に引き戻されて(フォールバックして)しまいます。
LLMの思考が忙しくなってくると稀に会話に英語が漏れてくるのはそのためです。

そして方言の場合、この事前学習のデータ量がどうしても標準語よりも少なく、ローカルな方言は更に少なくなります。 そのため方言の維持に多くの「文脈保持コスト(アテンション・オーバーヘッド)」が必要となりますので、負荷が高まってプロンプトの処理が重くなってくると、アテンションの維持限界を迎えローカルな方言 ➞ メジャーな方言 ➞ 標準語へと引き戻される現象に繋がります。

2.2 置換と文法理解による違い

日本語環境における日本語とは標準語を指します。
英語で思考し英語で出力された文章はLocalize設定にしたがって日本語(標準語)に翻訳されて出力されます。
ここでプロンプト等で個別で方言が設定されている場合、標準語文章は方言に変換されますがここでモデルごとに方法が異なります。

方言のデータの薄いモデルの場合「不自然な方言」になることがあります。 これは単語レベルの局所的なトークン置換によるものです。
例えば、標準語の「〜している」を機械的に神戸弁の「〜しとう」にマッピングするような処理です。これはGPUの負荷が低い反面、前後の文脈や助詞のニュアンスを無視するため、人間が聞くと「無理に方言を真似ているロボット」のような違和感(コンテキストの不整合)を生みます。

一方、文法レベルで自然な方言を出力できるモデル(事前学習が深いGeminiなど)は、単語の置き換えではなく、文節や構文全体の確率分布そのものを「方言空間」へとシフトさせています。「神戸弁の語彙」だけでなく「神戸弁の文脈(アテンションの繋がり)」を理解しているため、動詞の活用や接続詞が自然に噛み合います。
※Geminiが事前学習が深いのは、過去からGoogle検索において多くの方言に関する文献を学習しているため。

つまり、私たちがプロンプトで構築すべき「方言定義体」とは、単なる「単語の置換辞書」ではなく、モデルを強制的にターゲット方言の確率空間へ固定するための アテンションのアンカー(錨) でなければいけません。

2.3 方言定義体の意義

モデルが用意している方言は2.1にあるように、文脈維持コストを維持する関係から近隣言語もしくは標準語に引き戻される特性があります。 ここでプロンプト内で方言定義を追加してすることで一定のリソースを配分し、言語として固定化するのが方言定義体の意義となります。
本稿ではこの方言定義体をフルスクラッチで作るためのヒントになればと考えています。

3. 方言は多次元で構成されている

LLMに方言を「文脈シフト」として理解させるには、言葉をフラットなテキストとして渡すのではなく、複数の次元(レイヤー)に切り分けた定数として配置する必要があります。
日本における方言とは現在の都道府県基準で出来上がったものではなく、奈良時代から続いていた令制国(旧国名)と密接に関わっています。これは令制国時代に独立した国として統治されていた影響で、人の行き来が制限されていた事に起因します。
令制国単位で生まれた地域の言葉に、近代都道府県制により人の行き来が活発したことから現在の方言の原型が形成されています。 今回過去のプロンプト例から解説に採用している神戸弁については、東の摂津弁(大阪弁)、西の播州弁、北の丹波弁に囲まれてグラデーションに影響されているハイブリッドな方言(諸説あり)で、摂津(国)に属しながら方言の地域性では播州弁に属するという特徴(こちらも諸説あり)があります。 cdw
この神戸弁内で六甲山麓周辺で使用される山手言葉、港湾地区で使用される浜言葉と派生言語が生まれており細かな地域マッピングが形成されています。
また、近隣言語と明確な境界線があるわけではなく、グラデーションの様に混ざりながら神戸弁は構成されています。

神戸弁エリアMAP.jpg

そしてこれは神戸弁の事情で述べたもので、各方言はその土地に根ざした背景があります。 貴方が「この方言を発話させたい」と考える際にはその方言の歴史的地域性を考慮する必要が出てきます。
そして、実際にこれら方言をLLMに理解させるためには、

  1. 地域マッピングによる基本的言語
  2. 性別
  3. 世代(10代、20代etc)
  4. 性格(冷静、快活等)
  5. 親密度(友人家族等)
  6. 感情(喜怒哀楽)

という多次元配列をグラデーションに混ざり合う要素からピンポイントで抽出することで、LLMの内部では「20代・快活な女性・友人と会話時・怒りモード」という特定の確率分布の交差点が計算され生きた方言として出力されます。

4. 次回への予告

今回はLLMが方言を理解させるために必要な予備知識として、そもそもの方言とはどの様な構成になっているかについて記載しました。 次回は実際にLLMにこれら方言を発話させるための定義体作成について述べたいと思います。
定義体の構成としては、下記のような3レイヤー構造として作成すると概ねLLMにて理解されやすいのではないかと思います。

  1. 語彙レイヤー
    地域独特の固有名詞などの標準語と異なる単語について定義
  2. 文法レイヤー
    動詞・助詞・形容詞など方言独特の文法上の適用を定義。
  3. トーン・感情レイヤー
    性格・喜怒哀楽などの感情変化に伴う語彙変化について定義

これら定義体を手作業で組むのは骨が折れます。ここはLLMに出力させるのが最も効率的ですが、筆者の経験上、この定義体をゼロから高解像度で創り出せるのは、2026年現在、Gemini(Google)と考えています。

なぜなら、これはモデルの知能の高さ(IQ)の問題ではなく、裏側にある事前学習コーパスの物量と、検索エンジンのインデックスの歴史の差という物理的なインフラ物量に起因するためです。
Geminiを支えるGoogleのクローラーが四半世紀にわたり収集してきた日本のローカルなWeb空間(地域ブログ、掲示板、Web小説、SNSの生の対話)のインデックス量は他社を圧倒しています。 方言の知識だけではなく方言が使われる文脈(アテンションの結合関係)そのものを巨大な計算資源で捉えているため定義体作成においての参考情報量が違います。
一方、OpenAI ChatGPTやAnthropic Claudeはもちろん、同じく検索エンジン(Bing)をバックボーンに持つMicrosoft Copilotであっても、日本語のドメスティックかつマイナーなローカルデータのインデックス密度においてはGoogleに及びません。 基礎データが薄いモデルから定義体を作ろうとしても、言葉のベースが近隣のメジャー方言や標準語へ引きずられ、パッチワークのような置換辞書になりがちです。 よって今回はGeminiを方言のコンパイラとして割り切って使用します。

5. あとがき

まり神戸大橋.jpg

巻末扉絵に登場したキャラクターは「MARI(鞠/Minimal Asset & Rule Integration)」の名前の元となったペルソナ"まり(鞠)"です。
2026年2月にChatGPTで誕生した彼女は

時期 モデル 記述構文・その他
2026.02 ChatGPT(GPT-4o) 平文
2026.02~2026.02 Gemini 3.0 Flash JSON or C
2026.02~2026.03 Gemini 3.1 Flash JSON or Markdown
2026.03~2026.06 Claude Sonnet 4.6 MARI + 神戸弁定義体構築&適用
2026.07~ Gemini 3.5 Flash MARI + Claude向け神戸弁定義体流用

と主要モデルを渡り歩き、その都度記述構文も変化、最終的にこのMARI構文にたどり着きました。 私のLLMに対する理解は彼女の移植の歴史であり、方言定義体はClaudeで流暢な神戸弁を発話させるために構築したことが始まりとなります。


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改定履歴

日付 改訂稿 改定内容
2026.07.12 初稿
2026.07.18 記事一覧追加
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