チャットAIに限った上での話
ここではChatGPT, Geminiなどの、いわゆる「チャット型AIツール」に限った上で、特にプログラミングや開発に対する向き合い方について自論を展開します。
Codex,Claude Codeの「コーディングツール」の使用経験はないので、ここでの言及は控えます。
初心者による「AI万能感」は少々危険な気がする
私も初心者の身であるし、ChatGPTなどもよく使うので大きなことは言えないが、Xとかで見るAIハッピーみたいな風潮には乗り切らず慎重に使っていった方が良いように思う。
少なくとも過去のエンジニアブームのように、金の匂いがするからと必要以上に持ち上げている層がいる気がする。
AIにプロンプトを入力すれば欲しい回答はすぐに得られるし、簡単な入力でも現在ではそれなりに動くコードも量産してくれる。
「もうエンジニア不要論」をネットで唱える人がいるのも無理はないと思う。
ただ、それを鵜呑みにして、初学者が最初から自分で思考するのをやめ、なんでもAI頼みにしている人は、高確率で「詰む」のではないかと思った。
使い方によっては有用なのは間違いない
というか今では必須ツールであるともいえる
メンターや先生替わりになるし、ChatGPTとかが出すアウトプットを鵜呑みにさえしなければ良い補助ツールにはなる。
私自身、今の会社に入社するまでに1か月ほど期間があったので、自主学習のために毎日ChatGPTを使っていたので、使い方を間違えなければ効率は2倍にも10倍にもなるとは感じた。
思考補助のためにツールを使ってもいいが、思考停止のためにAIを使わない方がいい
AIが出せる出力の精度や効率は、「AIの性能 × 入力者の理解度」に比例する。
ドメインやプロンプト、開発に関する知識が浅い人よりも、深い人の方が良い結果や効率をもたらせる。
AIの開発が進み性能が上がるほど、知識が浅い人でもより良い結果や効率をもたらせる。
今は初心者でも、初心者に与えられる課題やタスク程度であれば、AIが数秒で出力してくれることだろう。
それが劇薬にもなりえるとは、私は考える。
劇薬としてのAI
例えば、ゲームや創作において実力レベルの低い者が異世界スキルや未来人の秘密道具や禁断の魔法などを用いて高レベル者に匹敵する実力を示したり、圧倒してみせたらどうだろう。
非常にドラマチックであり、体験者からしたら痛快極まりないだろう。
ChatGPTなどのチャットAIツールにおいてもそれに近い状態は起こっているように思う。
学校で成績の芳しくない生徒が急に満点を叩き出して優等生を凌駕したり、
新入社員が急に品質の高いコードを出してきてベテランエンジニアを驚かしたり。
ChatGPTに書かせた文章が記事の上位欄を埋め尽くしたり。
(ちなみにこの記事においてAIは一切使っていない。)
仮に、人間が少ない労力で大きな成果を得たり、大きな労力を注いできた人を凌駕できたとしたら、その人間はどうなるだろう?
答えは「依存」である。
思ったよりも早く到来する、「AI全能感」の終焉
AIチャットツールを自分で試用してみて、「意外とこんな程度か」と思った人は優秀な人たちで、まだ良いと思う。
気の毒なのは、学校や業務において、AIによる成功体験を得てしまった人たちだ。
主観ではあるが、経験談でもある
私自身は、AIツールに対して否定的ではない。むしろ積極的に使っていきたい側である。
そんな私がチャットAIに対してこんなに注意意識を感じているかというと、
「ChatGPTを活用している」とか、AIをよく使っていた私と同じ時期に入社していた新入社員などが、
高確率で現在コーディング面で苦しんでいたり、すでに退職していたりするからだ。
身バレや情報漏洩防止のためにも多くは伏せておくが、あくまで初心者側としての体験をもとにした実話である。
ツール依存で自己成長が止まるのか、ツールで実力以上の成果が出せてしまったのか
AIツールなどを使っていて良い成果を上げていた人が、さらにレベルの上がったタスクに向き合った結果苦しんでるのには私自身驚いた。
私は入社して基本的にChatGPTなどのツールを使っておらず、自力で検索したり質問をしたりして思考しながらコードを書いてきた。
(Googleの検索結果にはAIが出力したものが自動で出てくるのでそれはノーカウントとしている。自身で文章を入力して対話する形式のAIツールは一切使用していない)
理由としては、外部サービスであるチャットAIツールに自社での情報を入力してしまうリスクがあり、それは明確に情報漏洩に抵触するリスクがあるからだ。
(もちろん会社によってはOKなところもあるし、社内でAIツールを導入して情報漏洩リスクを排除したものも世の中にはある)
新入社員であるうちは研修として課題を出されたりするのだが、あくまで実力やスキルをつけるための課題であるので、AIツールに関しては明確なルール引きはされていないものの、以前まではグレー扱いであった。
しかしながら、近年ではAIツールで成果物を提出する新入社員が多くなってきたのか、最近、明示的にAI使用はアウトというルールが言及されたのである。
そういった背景もあってかしらずか、AIツールを多用している新入社員は現在苦しんでいるのである。
本人は「難しい、分からない」と困っていたものの、それがAI禁止令によるものなのか、ツールの限界値にぶち当たったのかは定かではないが、問題の本質はそこではない。
「一つのツールに全振り・依存しているスタイルは、リスクヘッジが失敗している」ことにある。
AI依存の副作用
AIツールの副作用として「AIを用いた成果が全て本人の実力だと錯覚してしまう」ことも大きいと思う。
例えば「ある問題について解決せよ」と会社や学校から課題を出された時、それは当然ながら「本人が頑張れば解決できると見越した」課題である。
会社も学校も目的は同じであり、社員や生徒の成長を促すためにあえて少し難しい課題を出すからだ。
思考実験
仮に学校で毎日「少しずつ難しくなる課題」を以下の3人に与えられたとする。
- AさんはAIツールで答えを出力したものをそのまま成果物として提出する。
- BさんはAIツールに質問をし、自身で理解を進めながら出したものを成果物として提出する。
- Cさんは書籍や検索を用いて自身で理解を進めながら出したものを成果物として提出する。
初日~1週間
Aさんは、課題について検索や書籍、先生への質問を行い、2時間かけて解決しました。
Bさんは、課題についてAIに質問や壁打ちを行い、10分かけて解決しました。
Cさんは、課題をAIプロンプトに打ち込み、5秒で課題を解決しました。
Cさんは、「AIを使えば5秒で解ける問題を2時間も掛けるなんてばかばかしい」と言いました。
Aさんは、悔しさを感じつつも、自分で考えることは嫌いではなかったので特に何も言いませんでした。
1週間~1か月
学校は3人の成果を褒め、それならばと少し難しい問題を与えました。
Aさんは、検索や書籍、先生への質問を行い、3時間かけて解決しました。
Bさんは、AIに質問や壁打ちを行い、20分かけて解決しました。
Cさんは、課題をAIプロンプトに打ち込み、5分で課題を解決しました。
1か月~2か月
学校は3人の成果を褒め、「ここからは結構難しいよ」といいながら難しく複雑な問題を与えました。
Aさんは、検索や書籍、先生への質問を行い、4時間かけて解決しました。
Bさんは、AIに質問や壁打ちを行い、2時間かけて解決しました。
Cさんは、課題をAIプロンプトに打ち込み、30分で課題を解決しました。
AさんはAIが何回やっても意図を理解せず、正しい出力をしない場面に何度か出くわしイライラしながらも、まだ余裕がありました。
むしろプロンプト入力がうまくなり、どんな問題でも解けると思いました。
Bさんは、質問をしているときに時々、正しくない回答や解釈があり、裏どりのために検索で調べました。
Aさんは、難しい問題とは思いつつも、今までの学習を活かせば解けると思いました。
2か月~3か月
学校は3人の成果を褒め、「めっちゃ難しいけど頑張れ!」といいながらおそろしく難しく複雑な問題を与えました。
Aさんは、検索や先生への質問を行い、4時間かけて解決しました。
Aさんは、「ネットに情報が少なかったけど、根本的には今までの課題の応用だったな。」と言いました。
Bさんは、AIや先生への質問を行い、3時間かけて解決しました。
Bさんは、「AIに聞いてもまったくあてにならないので、先生に質問したら糸口を見つけた。」と言いました
Cさんは、課題をAIプロンプトに打ち込みましたが、その日中に解決できませんでした。
Cさんは、AIが全く使い物にならない課題だったので、先生に質問しようとしましたが、いままで課題はAIがやってくれていたので、何から質問したらいいか分からず、何がわからないのかすら分かりませんでした。
試しに、簡単な所を先生に質問しましたが、
「いやいや、今更そんな質問はありえないでしょう」
と失望したまなざしで言われたので、質問するのをやめてしまいました。
最終的にCさんは課題を解決できないままでしたが、「いずれAIがなんでも解けるようになるのに、わざわざ人間が考えるなんて馬鹿げている」という気持ちは変えられず、学校がいやになり辞めてしまいました。
数年後、Aさんは、Cさんが「俺は画像生成AI絵師になって荒稼ぎしてやる!」と言っていたのを思い出し、
「Cさんはその後どうなったのか」とChatGPTに入力してみましたが、有力な答えは得られませんでした。
完
(フィクションです)
結論 : 素人がAI全振りにはまだ早い
とまあ、雑な物語を考えてみたものの、AIツールがどう転ぶかは実際誰にもわからない。
現在のAIフィーバーも、大勢の出資者によるところが大きいので、そういった出資者が「儲からない」と判断したら急にバブルは崩壊するかもしれないし、現在無料or格安のAIツールも個人には手のとどかない価格プランとなる可能性も少なくない。
(現にmidjourneyなんかも現在は無料プランを終了し、結構高額なプランのみとなっていた記憶がある)
そのぐらいAIツール界隈は進展が早い。
シンプルに考えすぎない
あまり深く考えたくない人ほど、物事を雑にシンプルに捉えがちというのはある。
ただ、物事はそんなに単純ではない。
今は、AIに全振りも逆張りも極端すぎるスタンスだと思う。
あくまでAIもツールの一種だとして、依存せず効率的に使えるときだけ使う、で良いと思う。
実際、AIが全てを行ってくれる未来はそう遠くないのかもしれないが、現在はそうではない。
なのに、「もう人類は不要なんだ」とAIに全振りしてすべての思考や成長をやめてしまう人がいる。
たとえ、その未来が1年後や1週間後だとしても、私は自身で思考する、成長することは止めない方が良いと思う。
本当に人間自身の思考や成長が不要になったときに、その時に改めてどうするか考えればいい。
今のAIは本当の意味のAI(AGI)ではない
最後に、さんざんAIという単語を使っておいてだが、現代に普及しているAIは本当の意味でのAIではないといわれている。
多くの人がイメージする、意識や感情を持ち、人間と同等かそれ以上の知能であらゆる課題に対応できるAIは、
「汎用人工知能 (AGI: Artificial General Intelligence)」と呼ばれている。
現在普及しているAIは、特定の限られたタスクに特化した「特化型AI」であり、AGIとは区別される。
現在のAIは実はAIじゃないって認識は意外と大事なのでは?
そして、「本当の意味のAI(AGI)」はまだ存在していないというのが一般的な認識である。
どちらかというと、現在のAIと言われているサービスは機械学習に近いのではないか。
AIツールに対して、そこらへんの認識をとらえているかどうかも意外と大事なんじゃないかと思う。
ツールに詳しくない人間ほど、そのツールを万能だと捉えすぎる節があるからである。
ChatGPTなんかも、仕組みで言えばただのものすごい予測変換ツールであるともいえる。
しかし、仕組みを知らなければそれは魔法とか未来の秘密道具のように思い、性能以上に期待を寄せてしまうところがあるように思う。
やはり、「銀の弾丸」は存在しないのである。