はじめに
以前の記事では、OODAループの概要と現場への適用についてQiitaで紹介しました!
今回はその 発展型として「AutoGPT × OODA」 をテーマに、「思考」と「実行」を自動で回す AIエージェントシステムを考えてみます。
(ただ、AutoGPTには一定のニーズがあります。とはいえ、まだ「万能解」というわけではないという他方見解もあり、適用範囲・前提条件を整理したうえでの利用検討が必要です。)
AutoGPTとは?
AutoGPT は、OpenAI の GPT をエージェントとして自律動作させる Python フレームワークです。
- 目標(ゴール)を与えるだけで、AIが複数ステップのタスクを自己判断・実行
- 「観察→解釈→行動→結果分析→次の行動決定」といったOODAループ的構造
- Web検索、API呼び出し、コード生成などのアクションを柔軟に組み合わせ可能
主要な特徴
- 複数タスクの自動分解と連携
- LLM(GPT-4)を使った推論と判断
- 外部ツール(CLI, DB, APIなど)との統合
- 永続的なメモリ管理機能(ReAct or RAG)
なぜOODAループにマッチするか?
AutoGPTは「考える→実行→観察→再判断」のループを自律的に行う構造を持っており、
OODAの各フェーズと非常に自然に対応させることができます。
OODAループとは(簡易おさらい)
OODAループは、意思決定の高速化・柔軟化を目指すプロセスモデルです。
- Observe(観察):状況・データを収集
- Orient(状況判断):意味づけ・仮説化
- Decide(意思決定):行動選択
- Act(実行):実際に動く
AutoGPTはOODAを“自動で回す”のに向いている?
AutoGPTは「目的→観察→判断→実行→再評価」のサイクルをAIが自律的に回す仕組み。
つまり **OODAループの“自動実行マシン”**として非常に相性が良いです。
✅ AutoGPTによるOODAループ構成イメージ
実践構成例(AutoGPT + Slack + Notion)
ユースケース:業務プロセスの異常検知&対応指示の自動化
ステップ | 使用技術 | 処理内容 |
---|---|---|
Observe | Slack API | チャンネルから発言・ログ取得 |
Orient | OpenAI GPT | 異常かどうかを自然言語で解釈 |
Decide | GPT + ルール | 優先度付きのToDo生成 |
Act | Notion API | タスクとして記録しSlackへ通知 |
サンプルスクリプト(簡易構成)
from autogpt_agent import Agent
from slack_sdk import WebClient
from notion_client import Client
agent = Agent("OODA AutoGPT Agent")
slack = WebClient(token="your-token")
notion = Client(auth="notion-token")
while True:
observation = agent.observe(source="slack")
context = agent.orient(observation)
decision = agent.decide(context)
action = agent.act(decision)
agent.log_to_notion(notion, decision)
slack.chat_postMessage(channel="#ooda", text=f"次アクション: {decision['summary']}")
検証事例
事例1:Slack発言から業務ミスを検知
- 背景:チームSlackで「今日リリース反映されてない?」という投稿あり
-
AutoGPT処理:
-
Observe
: Slackで「リリース」「バグ」「不具合」等の発言を検知 -
Orient
: GPTがログを読み込み「仕様ミスの可能性大」と解釈 -
Decide
: 「○○機能のバージョン差異をチェック」とタスク生成 -
Act
: Notionの「本日対応タスク」に自動登録&Slack通知
-
事例2:Notion議事録から次回対応タスク抽出
- 背景:会議内容はNotion議事録に格納されている
-
AutoGPT処理:
-
Observe
: Notion APIで直近1日の議事録を取得 -
Orient
: LLMが「ToDoらしき記述」を抽出・要約 -
Decide
: 優先順位づけとカテゴリ分類 -
Act
: タスクDBに登録 → Slack通知
-
事例3:営業週報から提案機会を抽出
- 背景:営業チームの週報に埋もれた「提案可能な課題」を拾いたい
-
AutoGPT処理:
-
Observe
: Notion上の週報から自然文を収集 -
Orient
: 「課題」「未解決」「顧客要望」として抽出 -
Decide
: 提案要否を判断し、提案タスク生成 -
Act
: 営業DB・日報DBに追記
-
課題・Tips
課題 | 対策例 |
---|---|
GPTの“勘違い”が多い | プロンプトで明確に期待役割を指定 |
無限ループ化の恐れ | step回数制限や終了条件を導入 |
コスト・Token消費重 | summarize関数の導入、Context長制御 |
発展構想:AgentOpsとKPIループの融合による自律型業務システム
AgentOpsとは?
AgentOps(Agent Operations) は、複数のAIエージェントの挙動やステータスを可視化・統制・最適化するための「エージェント運用基盤」です。
DevOpsがアプリ開発・運用を支えるように、AgentOpsは AIワークフローの継続運用を支える基盤思想 として注目されています。
要素 | 説明 |
---|---|
モニタリング | 各エージェントの状態、タスク成功率、対話履歴を監視 |
パフォーマンス管理 | 実行時間、Token使用量、成功率などのメトリクス集計 |
KPI連携 | 業務目標に対するアクション結果の定量評価 |
トレーサビリティ | 意思決定〜アクションの根拠を記録・再現可能に |
構成イメージ:AutoGPT × AgentOps連携
この構成では、各エージェントがOODAループを自律実行しながら、AgentOps基盤が以下を実現:
- 実行状況を一元モニタリング
- 業務KPIに照らした改善指示のトリガー化
- 失敗・成功事例の横展開学習
KPIとの連携:自己学習型業務へ
AgentOpsによって蓄積されたデータは以下のようなKPIと結びつけられます。
KPI例 | 対象業務 | 例 |
---|---|---|
レビュー消化率 | 開発 | 対応完了数/レビュー依頼数 |
インシデント反応時間 | 運用 | 通知〜アクション開始までの平均時間 |
会議ToDo実行率 | チーム運営 | タスク完了/抽出されたToDo数 |
→ この数値を元に、エージェントの振る舞い自体を継続的に調整可能に。
エージェントの“フィードバックループ”自動化へ
最終的には、以下のような メタOODAループ(OODA for OODA) を構築可能:
これにより、エージェントが自身の判断や行動を振り返って改善していくサイクルを自動化できます。
✅ KPIへの連携:改善ループを数値で可視化する
AutoGPTによる観察・判断・行動のログをKPIツールに可視化・分析連携することで、
- どのタイプの判断が業務改善に寄与したか?
- 検知~アクションまでの所要時間はどうか?
- チームごとの応答性に差はあるか?
といった 実践KPIとOODAの改善ループ を数字ベースで回せるようになります。
✅ AgentOps導入の構想
AutoGPT単体でなく、複数エージェントを役割分担・連携させて運用する「AgentOps」導入も視野に入ります。
- OODAをObserve専門AgentとDecide/Act専門Agentに分離
- チーム内Slackでエージェント間チャットで連携
- エスカレーション基準やSlack反応から人間へ引き継ぎ
📚 参考リンク
✅ おわりに
本記事では、以前の「OODAループ実践」から一歩進み、AutoGPTを使った OODAループの自動化/可視化/拡張 を検証しました。
現場に落とし込むには工夫が必要ですが、アイデア次第で多くの業務プロセスを“エージェント化”できます。
今後はAgentOpsによる連携強化や、KPIによる行動評価ループの実現を目指すことで、OODA×AIの可能性はさらに広がります。