Claude Codeの開発者である Boris Cherny氏 (@bcherny) が公開した「2026年の開発セットアップ」が、Claude Codeを使う全人類が読むべき内容でした
彼が実践しているのは、単なるツールの使いこなしではありません。 人間自身のCPUをマルチスレッド化するという、エンジニアリングの極致です。
そこで、この記事では彼が明かした驚異のワークフローを解剖し、我々が今すぐ取り入れるべき次世代の開発思想を深掘りします。
1. ターミナルとWebで「多重影分身」
まず度肝を抜かれるのが、同時に稼働させているClaudeの数です。 「AIの回答待ちにスマホを見る」。そんな無駄な時間は、彼の辞書にはありません。
彼は、常時10〜15体ものClaudeインスタンスを並列で従えています。 ここまでくると「一人の開発者」ではありません。AIエージェントたちを統率する、AI部隊の「司令官」です。
では、その「15人の部下」たちはどこにいるのか? 彼は戦力を「ローカル」と「Web」に分散配備しています。
🖥️ Terminal (Local)
まず精鋭の5部隊をローカルに配置しています
ターミナルのタブを 1 〜 5 番に固定し、常に5セッションを常駐し、 それぞれのタブに明確な役割(人格)を与えます。
例えば、以下のようにです
- Tab 1: 新機能の実装(Thinking中...)
- Tab 2: バグの原因調査(ログ解析中...)
- Tab 3: コードのリファクタリング(修正案作成中...)
☁️ Web (Cloud)
そして、ローカルだけでは手が足りない時は、ブラウザ(claude.ai/code)を開放しら、さらに5〜10セッションを立ち上げ、負荷をオフロードしながら思考の幅を広げます。
なぜ脳がパンクしないのか?(iTerm2のハック)
「15個も画面を見ていたら、切り替えだけで日が暮れるのでは?」 そう思いますよね。
そこで彼が使っているのがOSレベルの割り込み処理(Interrupt)です。
彼は Terminalのシステム通知 をハックし、以下のループを回しています。
- Claudeに重いタスクを投げる(Thinking開始)。
- 人間は即座に別のタブへ移動し、別の仕事をする。
- Claudeの思考が完了し、入力を求めてくると...
- OSから通知が飛ぶ。
- 通知を見て、完了したタブにスイッチする。
- 人間自身が「非同期I/O」になる
これはまさに、OSのタスクスケジューリングを人間が実行している状態です。
AIがコードを書いている数分間、カーソルが点滅するのを眺めるのはブロッキング処理(同期処理)であり、リソースの浪費です。
彼は「待ち時間(I/O Wait)」を極限までゼロにし、CPU(自分の脳)を常にフル稼働させています。
💡 シングルタスクでAIの出力を眺めるのは2025年まで。 2026年は、通知をトリガーに「AIの群れ」を指揮する時代です。
2. 「Opus 4.5」一択の経済合理性
「コーディングには軽量で高速なモデル(HaikuやSonnet)が良い」 そんな定説を、彼は真っ向から否定しました。
彼は、あらゆるタスクにおいて最も重厚で最も賢いモデル 「Opus 4.5 with thinking」 を採用しています。
一見、生成の遅いモデルを使うのは非効率に見えるかもしれません。しかし彼はこう断言します。
「OpusはSonnetより巨大で遅い。だが、『操舵(Steering)』の手間が圧倒的に少ないんだ」
軽量モデルではコード生成自体は一瞬で終わります。
しかし、指示を微妙に誤解したり、複雑な依存関係を見落としたりしがちです。その結果、人間が「違う、そうじゃない」と何度も修正指示を出すことになり、かえって時間を浪費します。
逆に賢いモデルでは思考時間はかかります。しかし、精度が高く、複雑な要件でも一発で正解を導き出します。
つまり、開発において最も高くつくコストは、AIの待ち時間ではなく、人間による修正(手戻り)の時間です。
💡 確実に一発で仕留めてくれるモデルを使うことが、トータルで見れば最速の選択なのです。
3. チームの脳を育てる「複利エンジニアリング」
これが最も真似すべきプラクティスです。彼はチーム全員で CLAUDE.md を育てています。
CLAUDE.md とはAIのための攻略本です。 リポジトリのルートでGit管理され、コード規約や過去の失敗を記述します。
Boris氏のチームでは、PRレビュー中にGitHub Actionを使ってこれを更新します。
- AIがミスをする(例:古いライブラリを使った)。
- 人間がPRで指摘。
- Botを召喚:@claude add rule to CLAUDE.md とコメント。
- 永続化:知識が共有され、次回のセッションから全チームメンバーのAIがそのミスをしなくなる。
彼はこれを 「複利エンジニアリング(Compounding Engineering)」 と呼んでいます。
4. 「Plan Mode」で一撃必殺を狙う
彼が実際のコーディング(特にPR作成などのまとまったタスク)で最も時間を割いているのが、計画のフェーズです。
彼は多くのセッションを、まず Plan Mode(Shift+Tab 2回押し)から開始します。いきなりコードを書かせることはしません。
- 徹底的な議論(Discussion): Claudeと「どう実装すべきか」を納得いくまで話し合います。
- 合意形成(Agreement): 人間が「そのプランで完璧だ」とGoサインを出すまで、1行もコードは書かせません。
- モード切替(Switch): プランが固まった瞬間、"Auto-accept edits mode" に切り替えます。
- 一撃完遂(One-Shot): 迷いのなくなったClaudeは、驚くべきことに、そのタスクをOne-Shotで実装し切ります。
「とりあえず書いてみて」と見切り発車するのではなく、「完璧な設計図を作ってから、一気に建設する」。 これこそが、手戻りをゼロにする究極の時短術です。
5. 「スラッシュコマンド」でルーチンを自動化
彼は、1日に何度も繰り返す「インナーループ(定型作業)」を、全て スラッシュコマンド化して効率化しています。
スラッシュコマンド化するメリットは、単に人間が「長いプロンプトを打つ手間」が省けるだけではありません。
コマンド化して定義することで、Claude自身もそのワークフローをツールとして認識・実行できるようになります。
これは、いわば、自分だけでなくAIにも「業務遂行のためのショートカットキー」を配布するようなものです。
「スラッシュコマンド」を使うことで、属人化しがちな「熟練の手順」が誰もが(そしてAI自身さえも)迷わず実行できる標準機能へと昇華されるのです。
6.サブエージェントで「PRワークフロー」を自動化
彼はClaude単体で全てを完結させるのではなく、特定のタスクに特化したサブエージェントを使い分けています。
彼はサブエージェントをスラッシュコマンドの延長線上にあるものとして捉えており、スラッシュコマンドが「一連の操作のショートカット」なら、サブエージェントはPR作成における定型ワークフローそのものの自身と言っています
彼は、ほとんどのPR(プルリクエスト)で発生する「いつもの作業」を、専用のエージェントに任せています。
- code-simplifier (掃除係): Claudeが機能実装を終えた後に起動。コードを整理し、よりシンプルで読みやすい形にリファクタリングします。
- verify-app (検証係): アプリケーションのE2Eテスト(エンドツーエンドテスト)の詳細な手順を熟知しており、動作確認を専門に行います。
人間がやるべきは「創造的な実装」だけ。 「コードの清書」や「テスト手順の実行」といったルーチンワークは、それぞれの専門家に丸投げする。これが2026年流の分業スタイルです。
7.Hooksで「最後の10%」を埋める
さらに彼は、PostToolUse フック を活用し、Claudeがコードを書くたびにフォーマッターを自動実行させています。
Boris氏はこう語ります。
「Claudeは通常、そのままでも素晴らしいコードを書く。だが、このフックが最後の10%を処理することで、CIでのフォーマットエラーを回避するんだ」
AIの生成コードは「ほぼ完璧」ですが、機械的な厳密さ(Lint/Format)は専用ツールに任せるのが確実です。
このフックにより、人間が細かいインデントやスペースを直す時間をゼロにし、「CIが通らない!」という些細なストレスを未然に防いでいます。
8.権限管理:スピードと安全の両立
開発速度を優先するあまり、つい --dangerously-skip-permissions(全許可フラグ)を使いたくなりますが、彼はこれを明確に避けています。
代わりに彼は /permissions コマンド を徹底活用しています。
具体的には、ls や git status など、環境に対して無害であることが明白なコマンドだけを「事前許可リスト」に追加します。
そして、 この設定は.claude/settings.json に保存され、チーム全体で共有(Git管理)されます。
これにより、セキュリティリスクを冒すことなく、AIからの「このコマンドを実行してもいいですか?」という不要な確認プロンプトを排除しています。
「全許可」か「毎回確認」かの二択ではなく、「安全なものはスルー」という現実的な解です。
9.ツール統合 (MCP) で「エディタの外」も支配する
Claudeの仕事場は、エディタの中だけではありません。 Boris氏は、MCP やCLIツールを通じて、開発に必要なあらゆる外部ツールをClaudeに操作させています。
具体的には、以下のような操作をClaude自身が自律的に行います。
- Slack (via MCP): 過去のログを検索したり、進捗をチームチャンネルに投稿したりする。
- BigQuery (via CLI): データ分析の疑問に答えるため、bq コマンドを叩いてクエリを実行する。
- Sentry: エラーログを直接取得し、解析する。
ここでも徹底されているのが「共有」です。 Slack MCPなどの設定は .mcp.json に記述され、Gitリポジトリでチーム共有されています。
これにより、チームの誰もが(そして彼らのClaudeが)、最初から全てのツールを使いこなせる状態で開発をスタートできるのです。
10.最も重要な「検証ループ」
最後に、Boris氏が**最高の結果を得るために、恐らくこれが一番大事だ(probably the most important thing)**と力説したの「書きっぱなし」にしないことです。
「Claudeにコードを書かせて終わり」では片手落ちです。 Claude自身に、自分の仕事を検証させる手段を与えなければなりません。
彼は Claude Chrome Extension を使い、以下のループを回しています。
- Claudeがコードを書く。
- Claude自身がブラウザを開く。
- 実際にUIを操作し、表示崩れや動作を確認する。
- 「UXが良い感じ(UX feels good)」になるまで、自律的に修正を繰り返す。
- 「フィードバックループがあれば、最終的な品質は 2〜3倍 に跳ね上がる」
人間がデバッグするのではなく、「AIが自分で書いて、自分で動かして、自分で直す」環境を用意する。これこそが品質向上の鍵です。
検証方法はプロジェクトごとに違います(bashコマンド、テストコード、ブラウザ、スマホシミュレータなど)。重要なのは、その環境構築にしっかりと投資することです。
まとめ:2026年の開発者像
Boris氏のセットアップは、「コードを速く書く」ことからAI部隊を設計・運用することへと、開発者の役割が完全にシフトした未来を映し出しています。
- 並列化せよ(15並列・通知活用で待ち時間ゼロ)
- 賢さに投資せよ(Opus 4.5で手戻りゼロ)
- 知識を蓄積せよ(CLAUDE.mdで複利効果)
- 検証を自動化せよ(自律ループで品質2倍)
2026年の常識は、今日からでも少しずつ取り入れられます。 さあ、iTermのタブを増やし、CLAUDE.md を作り、あなたの専属AIチームを結成しましょう!











