はじめに
線形代数が大好きです、ストラング先生の線形代数は特に好きです
最近、$b=Ax$の等式を見ていて思ったことをエッセイ風で記事にします
さて、線型代数の書籍を読んでいると固有値分解とか特異値分解とか登場します
- $A=S\Lambda S^{-1}$
- $A=U\Sigma V^{-1}$
そして、しばしば、基底変換の話で頭を抱えます
この記事は、それらの議論を展開する準備編の話です(のつもり)
時間がなければ、最後のまとめだけでOKです
まずは標準基底!
$x = \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}$を見たとき、無意識に次のように考えます
- $x軸$方向に$x_1$
- $y軸$方向に$x_2$
- $z軸$方向に$x_3$
ぼくたちは、そのような見方を体得していて、何の違和感も感じません
多分、一番、合理的な見方であり表現方法なんだと思います
五月雨ですが、標準基底によるベクトル表現は以下の構造をしています
\begin{array}{l}
x =
\begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix} \\
= x_1 \begin{bmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix}
+ x_2 \begin{bmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}
+ x_3 \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix} \\
= x_1 \ e_1 + x_2 \ e_2 + x_3 \ e_3\ \ (線型結合)
\\
= \begin{bmatrix} e_1 & e_2 & e_3 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}
\end{array}
標準基底$(e_1,e_2,e_3)$での成分表示
成分表示
唐突ですが、$(e_1,e_2,e_3)$を基底と言い、$(x_1,x_2,x_2)$を成分と言います
標準基底はデフォルトなので$(x_1,x_2,x_3)$と成分表示を見たら無意識に$ x_1 \ e_1 + x_2 \ e_2 + x_3 \ e_3$と理解できるわけです
- 座標$x$を表現する:
- $e_1$を基底として成分が$x_1$ => 「$e_1$の方向($x$軸)」に「$e_1$の大きさ」の$x_1$倍
- $e_2$を基底として成分が$x_2$ => 「$e_2$の方向($y$軸)」に「$e_2$の大きさ」の$x_2$倍
- $e_3$を基底として成分が$x_3$ =>「$e_3$の方向($z$軸)」に「$e_3$の大きさ」の$x_3$倍
直交基底
実は標準基底$(e_1,e_2,e_3)$は直交しています
このおかげで、$e_1$と$e_2$の成分$x_1$と$x_2$は独立していて他人のように扱えます
つまり、$x_1$が増減しても$x_2$には影響しません(他人ですから)
結局、基底が直交していると、まあ、便利といういうことです!
正規基底
実は標準基底$(e_1,e_2,e_3)$のそれぞれの大きさは全て$1$です
標準基底では成分だけで、その方向と大きさを直感的に理解することができます
なにしろ、大きさが$1$ですから成分の値が、その基底方向の大きさです
結局、基底が正規だと、まあ、便利といういうことです!
まあ、便利で、うまく使えるように世の中(標準基底)は考えられているって事でしょう!?
Axは基底変換!
以下の$Ax$の式変形をみてください
\begin{array}{l}
Ax = \begin{bmatrix} | & | & | \\ a_1 & a_2 & a_3 \\ | & | & | \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}\\
= x_1 \begin{bmatrix} | \\ a_1 \\ | \end{bmatrix}
+ x_2 \begin{bmatrix} | \\ a_2 \\ | \end{bmatrix}
+ x_3 \begin{bmatrix} | \\ a_3 \\ | \end{bmatrix} \\
= x_1 \ a_1 + x_2 \ a_2 + a_3 \ e_3\ \ (線型結合)
\\
= \begin{bmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}
\end{array}
基底$(a_1,a_2,a_3)$での成分表示
この構造は、標準基底$(e_1,e_2,e_3)$が基底$(a_1,a_2,a_3)$に入れ替わっています
$Ax$は単に行列$A$とベクトル$x$との積とか、行列$A$による$x$の変換に見てしまいますがー
あれっ!
これは、基底を変換したと見ることができます
- $Ax$は:
- $a_1$を基底として成分が$x_1$ => 「$a_1$の方向」に「$a_1$の大きさ」$のx_1$倍
- $a_2$を基底として成分が$x_2$ => 「$a_2$の方向」に「$a_2$の大きさ」の$x_2$倍
- $a_3$を基底として成分が$x_3$ => 「$a_4$の方向」に$「a_3$の大きさ」の$x_3$倍
「Iの世界のx」と「Aの世界のx」
Iの世界
$x = \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}$は
実は、基底$(e_1,e_2,e_3)$を考えると、単位行列$I$を使って$Ix$と書けます
\begin{array}{l}
x
= x_1 \ e_1 + x_2 \ e_2 + x_3 \ e_3
\\
= \begin{bmatrix} e_1 & e_2 & e_3 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix} \\
=\begin{bmatrix} 1& 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix} \\
= Ix \ \ \ (Iは単位行列)
\end{array}
つまり$I$(単位行列)の世界の$x$とラベル付けすることができます
標準基底$(e_1, e_2, e_3)$の世界の$x$です
Aの世界
上記を理解した上で、以下の$Ax$の計算内容をみてください(再掲)
\begin{array}{l}
Ax = \begin{bmatrix} | & | & | \\ a_1 & a_2 & a_3 \\ | & | & | \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}\\
= x_1 \begin{bmatrix} | \\ a_1 \\ | \end{bmatrix}
+ x_2 \begin{bmatrix} | \\ a_2 \\ | \end{bmatrix}
+ x_3 \begin{bmatrix} | \\ a_3 \\ | \end{bmatrix} \\
= x_1 \ a_1 + x_2 \ a_2 + a_3 \ e_3
\\
= \begin{bmatrix} a_1 & a_2 & a_3 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{bmatrix}
\end{array}
つまり$A$の世界の$x$とラベル付けすることができます
基底$(a_1, a_2, a_3)$の世界の$x$です
まとめ
- $x$は、($Ix$) $I$の世界の$x$
- $Ax$は、$A$の世界の$x$
適切な例ではないかもしれませんが、直感的な例として、「m(メートル)の世界」とするか「cm(センチ・メートル)の世界」とするかと同じ構造だと思うのです
- 同じ成分$1$でも
- 「mの世界」だと1m
- 「cm」の世界だと1cm
\begin{aligned}
$100(cm) &= 100 & \times & 1 (m) \\
b &= A&& x
\end{aligned}
当たり前のことを言っているだけのようにも思いますが・・・
続く(多分)