0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

「振り切れを狂気に」── AIの台本が面白くならなかった理由と、一段跳ばす方法

0
Posted at

📝 この記事は forge.workstyle.tech に掲載した記事の転載です。

風刺動画のシリーズで、3話ぶんの台本をAIの制作チーム(12役の企画会議)に作らせた。できあがった動画を見た発注者は、こう書いてきた。

ザッカーバーグは迷ったら試すじゃなくて、なんでも試すんですよね?全て試す。それを強調したコピーの方が良いのでは?内容もえ?それを試すの?みたいな。

ビルゲイツの「精読が振り切れる」は動画内のどこにあるの?この人も精読しすぎると言うことが面白いわけで、え?そこも読んで気にするの?と言う内容とコピーが妥当かと。

振り切れを狂気に。

AIの台本は、どこへ着地していたか

ザッカーバーグ回の変遷はこうだ。

最初の原案(私)

サム      どっちがいい?
ザック    両方。
サム      決めたいんだけど。
ザック    もう出した。
サム      じゃあB?
ザック    誤差だ。もう100万人。

制作チームの確定稿

サム      どっちがいい?
ザック    両方、試そう。
サム      もう試したよ。
ザック    次は決め方。
サム      決め方?
ザック    それも、試そう。

チームは「100万人」を削った。無断で大規模なユーザー実験をしたと読めるからだ。残ったのは「決め方も試す」という、筋の通った、会議室の中で完結する話だった。

賢い人が少し変わったことを言うだけで、狂気がない。

人が一段跳ばした

発注者が出してきた案はこうだった。

「え?熱いの? じゃあ試そう」と言いながら、沸騰したやかんを触る。でもそれが普通なので表情を変えない。

さらに、こう足してきた。

最後、火傷して手が顔ぐらい大きくなるのはどうでしょう?

最終稿の台詞はこうなった。

サム      ロゴ、どっち?
ザック    両方出した。
サム      やかん、熱いですよ。
ザック    熱い?
ザック    試そう。
          (画面が一瞬だけ「検証後」になる)
ザック    熱かった。        ← 腫れた手の絵が出る
サム      だから言ったでしょ。
ザック    聞くのと、試すのは違う。

ロゴの比較から、湯気の立つやかんへ。検証の対象が、仕事から自分の体へ跳ぶ。 本人は表情ひとつ変えない。最後の一言で、それが本人の中では筋が通っていると分かる。

ほかの回も、一段跳ばした

ゲイツ回。 最初の版は、資料のページ番号が128→3→1と戻るだけだった。精読の狂気が画に出ていない。発注者の指示はこうだった。

42ページの4文字目まで詰めましょう。

サム      資料、どうでした?
ゲイツ    17ページの脚注。
サム      本文は?
ゲイツ    出典が2019年。
サム      ……本文は?
ゲイツ    42ページの4文字目、書体が違う。

本文にはまだ一度も触れていない。見ているのはページですらなく、文字だ。

ナデラ回。 最初は「競合ともつなごう」という、良い話で終わっていた。

敵であっても協業したい。オチとして「あ、蚊です!」「蚊? つなごう」。

サム      競合が同じ機能を。
ナデラ    つなごう。
サム      潰しに来てます。
ナデラ    なおさら、つなごう。
サム      ……あ、蚊。
ナデラ    蚊?
ナデラ    つなごう。

連携図の右側が「競合」から「蚊」に変わる。

動画の3場面。湯気の立つやかんの横に立つ人物、腫れた赤い手で「熱かった。」と言う場面、蚊が飛んできて「……あ、蚊。」の場面

なぜAIは跳ばなかったか

チームの会議ログを読むと、理由が分かる。

  • 校閲が「実在人物の行為と誤認されない」ことを最優先にする
  • 脚本は台詞の整合性を詰める
  • 演出は「説明を足さない」「決め台詞にしない」を守る

どれも正しい。ただ、全員が正しいことを言うと、話は「誰も傷つけず、矛盾もない」ところに収束する。狂気は、その整合性を一度壊すところにしか生まれない。

分担

うまくいった形はこうだった。

  • 人: 一段跳ばす。やかん、4文字目、蚊。理屈では出てこない飛躍
  • AIのチーム: 跳ばしたものを成立させる。尺に収める、画面で見せる順番を決める、事実と食い違わないようにする、本人の行為として誤認されない線を引く

やかんの回で、チームは触る場面を見せずに「検証後」の一瞬で時間を飛ばす方法を出してきた。腫れた手の絵は、画像生成で描けなかったので、別のAIにSVGで描かせた。飛躍を形にする部分は、AIがよく働いた。

まとめ

  • 正しいことを言う役が集まると、話は整合性へ収束する
  • 狂気は、対象を一段跳ばすことで生まれる(仕事→自分の体、ページ→文字、競合→虫)
  • 人が跳ばし、AIがそれを成立させる。逆はうまくいかなかった
  • 安全の線は「本人の行動に置き、他人を巻き込まない」で引ける

元記事: https://forge.workstyle.tech/blog/push-the-comedy-to-madness/?utm_source=qiita&utm_medium=crosspost&utm_campaign=push-the-comedy-to-madness

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?