概要
オープンCAEシンポジウム2021のオープンCAEコンテスト2021に応募したミルククラウン解析の解析結果をコンテストが終了したので、順次公開します。
妥当性確認
(その2)で書きそびれましたが、解析モデルは以下の論文の条件に近くなるように設定されています。
解析結果の妥当性確認も以下の論文に記載されている方法で行いました。
M. Rieber and A. Frohn, Int. J. Heat Fluid Flow, 20 (1999) 455-461.
ミルククラウン半径の評価
(その1)で紹介したアニメーションの断面図を以下に示します。
ミルククラウン半径の理論的漸近解は次式で表されます。
$$ \frac{r_{l,b}}{D}=kT^{1/2} $$
$$ k=[\frac{2A}{UD}]^{1/2} $$
$$ T=t\frac{U}{D} $$
$$ A=\int_{0}^{L_x}\bar{u}(x)dx $$
$$ \bar{u}(x)=\frac{\int_{0}^{h}\alpha(x,y=0,z)u(x,y=0,z)dz}{\int_{0}^{h}\alpha(x,y=0,z)dz} $$
ここで、
変数 | 単位 | 説明 |
---|---|---|
$D$ | $m$ | 液滴直径 |
$U$ | $m/s$ | 液滴初速 |
$r_{l,b}$ | $m$ | 初期水位でのミルククラウン半径 |
$k$ | - | 無次元定数 |
$t$ | $sec$ | 解析時間 |
$T$ | - | 無次元時間(液滴が床に衝突する時刻で0と定義) |
$L_x$ | $m$ | 解析モデルのx方向長さ |
$h$ | $m$ | 床面の初期水位 |
無次元定数$k$を次式に変更すると、改善した近似解となります。
$$ k=[\frac{6h}{D}]^{-1/4} $$
ミルククラウン断面図から読み取ったデータを分析すると、理論的漸近解、改善した近似解および単回帰曲線の無次元定数$k$および無次元時間$T$の乗数$n$は次のようになります。
解 | $k$ | $n$ |
---|---|---|
理論的漸近解 | 1.047 | 1/2 |
改善した近似解 | 1.095 | 1/2 |
単回帰曲線 | 0.9656 | 0.4887 |
単回帰曲線が理論的漸近解・改善した近似解と同様に、時間の平方根に依存することが確認できました。
プロット図は次のようになります。
リム上の突起の数の推定
リム上の突起の数は次式で表されます。
$$ n=\frac{2\pi r_{l,r}}{\lambda_{max}}=\frac{2\pi}{9.0147}\frac{r_{l,r}}{r_{rim}} $$
Reileigh不安定生は次式で表されます。
$$ \lambda_{max}=9.0147r_{rim} $$
ミルククラウン断面積は次式で表されます。
$$ S(z)=\int\alpha(x,y,z)dxdy=\pi\frac{r_{l,r}}{D}\frac{r_{rim}}{D} $$
ここで、
変数 | 単位 | 説明 |
---|---|---|
$r_{l,r}$ | $m$ | ミルククラウン半径(断面図から読み取り) |
$r_{rim}$ | $m$ | リム半径($S(z)$より算出) |
T=1.72(t=00085(s))での例
論文では、どの高さでのミルククラウン半径を用いるのか明記されていませんでした。
統一した基準で計測する必要があると考え、高さはミルククラウン外周で最もくびれているところと定義しました。
$r_{l,r}$の単回帰曲線は次のようになりました。
$$ \frac{r_{l,r}}{D}=1.0514T^{0.4759} $$
プロット図は次の通りです。
$r_{rim}$の単回帰曲線は次のようになりました。
$$ \frac{r_{rim}}{D}=0.0296T^{0.3792} $$
以上より、リム上の突起の数$n$は次式で表されます。
$$ n=24.75T^{0.0967} $$
この計算式の$n$の値と、アニメーションデータでカウントした突起の数の比較表は次の通りです。
$T$ | 0.915 | 1.72 | 2.52 | 3.54 |
---|---|---|---|---|
計算式の$n$ | 24 | 26 | 27 | 28 |
アニメーションデータでカウントした数 | 16 | 20 | 28 | 28 |
リム上の突起の数がT=3.54に28個で一致しました。
まとめ
全体的に論文に近い結果が得られたと思います。