gRPC入門
1. はじめに
「マイクロサービス」「クラウドネイティブ」といった言葉をよく聞くようになった昨今、サービス間の高速な通信を実現する技術としてgRPCが注目を集めています。
「名前は聞いたことあるけど、REST APIと何が違うの?」
「導入すると何が嬉しいの?」
「実際の開発ではどうやって使うの?」
この記事では、そんな疑問に答えるべく、制作しました。
2. gRPCとは?
gRPC(gRPC Remote Procedure Calls)とは、Googleが開発したオープンソースのRPC(Remote Procedure Callフレームワークです。
RPCを直訳すると「遠隔手続き呼び出し」。簡単に言えばネットワーク越しに、別のサーバーにある関数を、まるで手元にあるかのように呼び出すための仕組みです。
gRPCは、このRPCを以下の技術で実現しています。
- 通信プロトコル: HTTP/2 を採用し、高速で効率的な通信を実現
- データ形式: Protocol Buffers というバイナリ形式を使い、データを小さく圧縮
3. gRPCの最大の特徴:スキーマ駆動開発
gRPC開発の核となるのが、スキーマ駆動開発というスタイルです。
- protoファイルでスキーマ(APIの仕様)を定義する
protoという専用のファイルに、APIの仕様書となる「どのようなデータを送受信するか」「どのような関数を呼び出せるか」を定義します。この定義ファイルが、サーバーとクライアント間の唯一の「契約書」となります。 - コードを自動生成する
作成した.protoファイルから、専用のコンパイラ(protoc)を使って、Go, Java, Pythonなど様々な言語のサーバー/クライアントのひな形コードを自動で生成します。 - ビジネスロジックを実装する
自動生成されたコードのインターフェースに沿って、具体的な処理内容を実装していきます。
この開発スタイルにより、「言った・言わない」といったサーバーとクライアント間の仕様の認識ズレがなくなり、開発をスムーズに進めることができます。
4. gRPC と REST API それぞれの特徴
gRPCの利点を理解するために、Web APIの主流であるRESTと比較してみます。
特徴 | gRPC | REST API |
---|---|---|
プロトコル | HTTP/2 | HTTP/1.1 (HTTP/2も可) |
データ形式 | Protocol Buffers (バイナリ) | JSON (テキスト) |
パフォーマンス | 高速。データが軽量で、通信も効率的。 | 比較的低速。データが冗長で、パースにも時間がかかる。 |
API定義 | 厳密 (.protoファイルが必須) | 任意 (OpenAPI等に依存) |
ストリーミング | 標準サポート | 別途実装が必要 (WebSocketなど) |
コード生成 | 標準機能 | ツールに依存 |
ブラウザ対応 | 限定的 (gRPC-Webが必要) | 完全対応 |
- gRPC: パフォーマンスが最優先されるサーバー間通信や、モバイルアプリとの通信。リアルタイムな双方向通信が必要な場合。
- REST API: ブラウザから直接アクセスされるような公開API。シンプルさが求められる場面。
5. gRPCの導入事例とまとめ
gRPCは、Netflix, Square, Dropbox といった多くの企業で利用されています。
- パフォーマンスが命のサーバー間通信に強い
- 厳密なスキーマ定義で、大規模開発でも安定
- ストリーミングでリアルタイム通信も得意
REST APIがなくなるわけではありませんが、適材適所でgRPCを選択することで、より堅牢で高性能なシステムを構築できます。
ぜひ、次のプロジェクトでgRPCの導入を検討してみてはいかがでしょうか。