検証日:2026年7月14日
環境:Windows 11/複数のWSL2ディストリビューション/ChatGPT Pro X20/Codex CLI/GitHub CLI
ChatGPTやCodexの機能は段階的に展開される場合があります。画面や利用可能な機能が本記事と異なる場合は、最新の公式ドキュメントも確認してください。本記事では、非既定の独自WSL2環境を確実に利用するため、コードベースの確認・変更・GitHub操作は、その環境内のCodex CLIとGitHub CLIを中心に行います。Windows版ChatGPTのCodexモードは、実行環境を確認できた範囲で利用します。
はじめに
前回は、安定稼働している独自WSL2環境とCodex CLIを置き換えず、Windows版ChatGPTをChat、Work、タスク管理、レビューの上位レイヤーとして追加する構成を整理しました。
- ChatGPT Pro X20を使い切る:Chat・Work・Codexの構成と実践的な使い分け
- WSL2+Codex CLIを捨てずにWindows版ChatGPTを追加する構成【Pro X20実践①】
今回は、その構成で最初に問題になる作業の引き継ぎを扱います。
筆者はこれまで、Web版ChatGPTで計画や設計を検討し、内容が固まった段階でGitHub Issueへ登録し、WSL2上のCodex CLIで実装してきました。しかし、この方法には次の手作業が残ります。
- Chatで決めた内容をCodex CLIへ説明し直す
- 長い会話のどこが最終決定だったかを探す
- 設計内容をGitHub Issueへ転記する
- Issue分割が現在のコード構造と一致しているか確認する
- 実装後の変更を技術文書やリリースノートへ戻す
- Chat、Work、Codexの各履歴で前提が少しずつずれる
本記事では、この受け渡しを次の流れへ整理します。
Chat
↓ 問題定義・選択肢・設計判断
Work
↓ 要求仕様・ADR・実装計画・Issue草案
Gitリポジトリ
↓ 確定情報をMarkdownとして保存
独自WSL2環境のCodex CLI
↓ 現在のコードとの照合・修正・検証
GitHub
↓ Issues・Pull Requests・Actions
結論から言えば、Chat、Work、Codex CLIを長期的につなぐ正本は、会話履歴ではなくGit管理されたMarkdownにします。
結論
推奨する役割分担は次のとおりです。
| 場所 | 主な役割 | 正本として残すもの |
|---|---|---|
| Chat | 問題整理、比較、設計相談 | まだ確定情報にしない |
| Work | 要求、ADR、計画、Issue草案の成果物化 | Markdownのドラフト |
| Gitリポジトリ | 確定した設計と引き継ぎ | 要求、ADR、計画、草案、handoff |
| Codex CLI | 実装との照合、コード変更、テスト | コード、テスト、実装結果 |
| GitHub Issues | タスクの状態、担当、議論 | Issue番号、状態、コメント |
| Pull Request | 実装差分とレビュー | コード変更、検証結果 |
重要なのは、GitHub Issueの本文だけを設計の正本にしないことです。
- 何を満たすかは要求仕様
- なぜその設計を選んだかはADR
- どの順序で進めるかは実装計画
- 誰が何を進めているかはGitHub Issue
- 実際に何を変更したかはPull Request
- 次の文書作業へ何を渡すかはhandoff
という形で分けます。
短期的な引き継ぎには、デスクトップアプリのAdd to taskが使えます。長期的な引き継ぎにはGit管理ファイルを使います。
Add to task
→ 今回のタスクへ短期的に渡す
Git管理ファイル
→ 将来のWork、Codex、CLI、人間へ残す
最初に区別する3種類の「プロジェクト」
現在のChatGPT/Codexでは、「プロジェクト」という言葉が複数の意味で使われます。ここを混同すると、Chatで作った内容がCodex CLIへ自動的に伝わるように見えてしまいます。
1. ChatGPT Project
ChatGPT Projectは、関連するChatやWorkの会話、アップロードファイル、接続済みソース、プロジェクト指示をまとめる作業単位です。
同じChatGPT Projectでは、ChatとWorkが共通のファイル、Sources、プロジェクト指示を利用できます。ただし、ChatGPT ProjectがPC上のフォルダーへ直接アクセスするわけではありません。ローカルファイルを使うには、アップロード、接続済みソース、またはデスクトップ版のローカルProjectを使います。公式資料
ChatGPT Project
├─ Chats
│ ├─ Chatでの設計相談
│ └─ Workでの仕様書作成
├─ Sources
│ ├─ 公式資料
│ └─ 接続済みGitHub
└─ Project instructions
2. ローカルProject
Windows版ChatGPTのローカルProjectは、PC上の1個以上のフォルダーをWorkやCodexへ公開する作業単位です。
コードベースの場合、プロジェクトフォルダーはCodexタスクの作業ディレクトリになります。Workは、許可されたローカルファイルを読み、成果物をローカルへ保存できます。公式資料 WorkとCodexのFAQ
ただし、複数WSL2ディストリビューション環境では、\\wsl$\DistroName\...で選んだ保存先とCodex Agentの実行先が一致するとは限りません。非既定の独自WSL環境に依存する確認・変更は、その環境内のCodex CLIへ残します。
3. Codex CLIのプロジェクト
Codex CLIでは、codexを起動したディレクトリがタスクのプロジェクトです。別のディレクトリを明示する場合は--cdまたは-Cを使えます。Codex CLIはChatGPT Projects画面を公開しません。公式資料
cd ~/projects/product-api
codex
または、
codex -C ~/projects/product-api
Codexのタスクは会話履歴と作業ディレクトリを保持しますが、別タスクへ残す情報はAGENTS.mdやチェックインされた文書へ保存する必要があります。各タスクは同じファイルを扱えても、トランスクリプトは独立しています。公式資料
三者を永続的につなぐ共通部分が、Gitリポジトリ内のファイルです。
何が自動で共有され、何が共有されないか
| 組み合わせ | 自動で共有されるもの | 自動では共有されないもの |
|---|---|---|
| 同じChatGPT Project内のChatとWork | アップロードファイル、Sources、プロジェクト指示 | 別チャットの全会話履歴 |
| Web/デスクトップの通常Chat | 通常のChat会話 | デスクトップCodexのタスク |
| Web/モバイルのWork | 対応するクラウド面でのWork会話 | デスクトップWorkのローカルスレッド |
| 同じローカルProjectのWork/Codex | 許可された同じファイル | 各タスクのトランスクリプト |
| Codex CLIの別タスク | 同じ作業ツリーのファイル | 別タスクの会話履歴 |
| ChatGPT ProjectとCodex CLI | なし | Projects画面、Sources、会話履歴 |
通常のChat会話はWebとデスクトップ間で同期しますが、クラウドWorkとデスクトップWork、デスクトップCodex、Codex CLIでは同期範囲が異なります。WorkとCodexのFAQ
したがって、長期的な連携を会話履歴だけに依存させません。
Add to taskは短期的な受け渡し
デスクトップアプリのQuick Chatで始めた会話が大きな作業へ発展した場合、Add to taskで現在のWorkまたはCodexタスクへ持ち込めます。公式資料
Web/Desktop Chatで設計相談
↓
デスクトップでRecent chatsを開く
↓
Add to task
↓
現在のWorkまたはCodexタスクへ追加
Webで始めた通常Chatもデスクトップへ同期するため、Recent chatsから開ける範囲ではこの流れを使えます。
短い会話の受け渡しには便利です。
一方、次の情報はファイルへ保存します。
- 数週間以上参照する設計判断
- 複数Issueに影響する方針
- 人間の開発者と共有する受け入れ条件
- 将来のCodex CLIタスクでも必要な制約
- PRレビューで根拠として示す文書
- Workへ戻す実装結果
推奨する全体構成
この構成では、ChatとWorkの会話をCodex CLIへ丸ごと渡しません。
代わりに、Workが会話をレビュー可能な文書へ圧縮し、Codex CLIがその文書と実装を照合します。
リポジトリの構成
最低限、次のディレクトリを用意します。
repository/
├─ AGENTS.md
├─ docs/
│ ├─ requirements/
│ │ └─ authentication-renewal.md
│ ├─ adr/
│ │ └─ 0012-token-storage.md
│ ├─ plans/
│ │ └─ authentication-migration.md
│ ├─ issues/
│ │ ├─ index.md
│ │ ├─ 001-token-storage.md
│ │ ├─ 002-api-migration.md
│ │ └─ 003-client-migration.md
│ └─ handoffs/
│ └─ issue-123-result.md
└─ src/
各ファイルの役割は次のとおりです。
| ファイル | 内容 |
|---|---|
requirements/ |
利用者に必要な結果と受け入れ条件 |
adr/ |
採用した設計と、採用しなかった選択肢 |
plans/ |
変更順序、移行、ロールバック、検証方法 |
issues/ |
GitHubへ登録する前のIssue本文 |
handoffs/ |
実装結果をWorkや次のCodexタスクへ戻す要約 |
AGENTS.md |
リポジトリ共通の短い作業規則 |
AGENTS.mdへ個別機能の仕様をすべて詰め込みません。
AGENTS.md
→ 全タスクに適用する短いルール
docs/requirements/
docs/adr/
docs/plans/
→ 機能固有の詳細
Codexの利用量を抑える観点でも、AGENTS.mdは短く保ち、必要な詳細だけを個別文書へ分ける方が扱いやすくなります。Pricing
実践フロー:認証トークン保存方式を変更する
ここからは、既存システムの認証トークン保存方式を変更する例で説明します。
フェーズ0:独自WSL2環境とGitHub CLIを確認する
対象のWSL2ディストリビューションを明示して開きます。
wsl -d Ubuntu-Development
WSL2側で、対象リポジトリとGitHub CLIの状態を確認します。
printf 'WSL_DISTRO_NAME=%s\n' "$WSL_DISTRO_NAME"
git status --short --branch
gh auth status
gh repo view
この段階で、作業ディストリビューション、リポジトリ、GitHubアカウントを確認します。
OpenAIのGitHub接続に関する公式ヘルプでは、リポジトリのコード、README、文書を取得して検索・分析・引用する用途が案内されています。Issue作成の書き込み経路としては説明されていないため、本記事では外部書き込みが明確で監査しやすいGitHub CLIを使います。公式FAQ
フェーズ1:Chatで論点を整理する
Chatでは、最初からIssue本文を作らせません。
まず、問題、選択肢、制約、未決事項を整理します。
現在の認証トークン保存方式を変更したいです。
目的:
- クライアント側で長期トークンを保持しない
- 既存APIとの互換性を可能な範囲で維持する
検討したいこと:
- 現行方式の問題
- 代替方式
- 移行時のリスク
- ロールバック方法
- 必要な監視
この段階では実装案を一つに決めず、
選択肢と判断材料を整理してください。
方針が固まったら、会話全体を引き継ぎ用に圧縮します。
ここまでの検討を、WorkとCodex CLIへ渡すための
引き継ぎ情報にまとめてください。
含める内容:
- 背景
- 解決したい問題
- 採用方針
- 採用しなかった方針と理由
- 制約
- 対象外
- 受け入れ条件
- 未解決事項
会話の経緯ではなく、
確定事項と未確定事項だけを記載してください。
ここでは「考えた過程」ではなく、「次の作業に必要な状態」へ圧縮します。
フェーズ2:Workで正式な成果物へ変換する
ChatGPT Project内でChatとWorkを使うと、共通のSources、アップロードファイル、プロジェクト指示を利用できます。公式資料
デスクトップWorkでローカルProjectを開いた場合は、許可したフォルダー内のファイルを利用できます。WorkとCodexのFAQ
Workには、会話の要約と必要な資料を渡し、次の成果物を作らせます。
## Goal
認証トークン保存方式の変更について、
実装前に人間がレビューできる文書一式を作成する。
## Success criteria
- 要求、設計判断、移行順序、Issue分割が別文書になっている
- 各Issueに対象範囲、対象外、受け入れ条件、検証項目がある
- 実装確認が必要な事実は推測せず、確認事項として残している
- GitHubやコードベースへの書き込みは行っていない
## Deliverables
次のファイルを作成する。
- `docs/requirements/authentication-renewal.md`
- `docs/adr/0012-token-storage.md`
- `docs/plans/authentication-migration.md`
- `docs/issues/001-token-storage.md`
- `docs/issues/002-api-migration.md`
- `docs/issues/003-client-migration.md`
## Requirements for each Issue draft
- 背景
- 目的
- 対象範囲
- 対象外
- 受け入れ条件
- 検証項目
- 依存するIssue
- 完了後に更新する文書
## Constraints
- この段階ではコードを変更しない
- GitHub Issueを作成しない
- 不明な実装事実を推測しない
- 現在のコード確認が必要な点は
「Codex確認事項」として明示する
## Output
指定パスへMarkdownとして保存する。
ローカル保存が利用できない場合は、
各ファイルを独立したMarkdownコードブロックとして出力する。
最終報告は、作成したファイル一覧と未確認事項だけにする。
GPT-5.6向けの公式ガイドでは、細かい実行手順を増やすより、成果、成功条件、制約、検証、停止条件を明示する構成が推奨されています。本記事のプロンプトも、実行経路ではなく完成状態を中心に定義しています。公式ガイド
Workが対象WSL2環境へ直接保存できない場合
ローカルProjectへの書き込みが利用できない、または非既定WSLディストリビューションへの保存を確実に制御できない場合は、WorkにMarkdown本文だけを作らせます。
その後、人間またはCodex CLIが対象WSL2環境で保存します。
Work
↓ Markdown本文を生成
人間またはCodex CLI
↓ 対象WSL2リポジトリへ保存
実行環境が不明なまま、Desktop側から独自WSL環境へ書き込ませません。
フェーズ3:Codex CLIで実装との整合性を確認する
次に、対象の独自WSL2環境でCodex CLIを起動します。
cd ~/projects/product-api
codex
この段階では、まだコードを変更しません。
Full accessで起動していても、今回のタスク境界を明示します。
## Goal
次の計画文書とIssue草案を、
現在のコードベースと照合する。
## Success criteria
- 現行実装と計画の矛盾が特定されている
- 影響範囲と不足する受け入れ条件が明示されている
- Issueの依存関係と分割案が修正されている
- ファイル変更とGitHub書き込みは行われていない
## Evidence
- `docs/requirements/authentication-renewal.md`
- `docs/adr/0012-token-storage.md`
- `docs/plans/authentication-migration.md`
- `docs/issues/`
## Scope
優先して確認する範囲:
- `src/auth/`
- `src/api/`
- `tests/auth/`
- `docs/architecture/`
- 関連するGit履歴
## Constraints
- この段階ではファイルを変更しない
- GitHubへ書き込まない
- 事実確認に不要なテストやビルドを実行しない
- 要求と実装が矛盾する場合は変更前に停止する
## Output
次だけを報告する。
1. 現行実装と矛盾する点
2. 見落としている影響範囲
3. 不足している受け入れ条件
4. Issueの分割・依存関係の修正案
5. 文書へ反映すべき変更
Workが作った文書は、ここで初めて実装と照合されます。
この順序にすることで、Workへリポジトリ全体を無条件に調査させる必要がなくなり、Codex CLI側も対象文書と対象ディレクトリへ範囲を絞れます。
フェーズ4:計画文書を確定してコミットする
Codex CLIの確認結果を反映し、人間が内容をレビューします。
内容が固まったら、Issue登録前の計画パッケージをコミットします。
git add \
docs/requirements/authentication-renewal.md \
docs/adr/0012-token-storage.md \
docs/plans/authentication-migration.md \
docs/issues/
git commit -m "docs: add authentication migration plan"
Issue登録前にコミットする理由は、GitHubへ登録した内容の根拠を後から追跡できるようにするためです。
フェーズ5:既存Issueとの重複を確認する
GitHubへ書き込む前に、既存Issueを検索します。
gh issue list \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--state all \
--search '"authentication token" in:title,body' \
--limit 50
gh issue listは--searchによる高度なIssue検索をサポートしています。GitHub CLI manual
Codex CLIへ任せる場合も、検索と書き込みを分けます。
`docs/issues/`の草案について、
既存のOpen/Closed Issueとの重複を確認してください。
この段階ではIssueを作成しないでください。
報告内容:
- 重複候補のIssue番号とURL
- 統合すべき草案
- 新規登録してよい草案
- title、labels、type、parent、
blocked-by/blockingの提案
フェーズ6:登録予定を人間が確認する
Full access環境であっても、GitHub Issueの作成は外部への書き込みです。
Codex CLIには、最初に次の一覧だけを出させます。
1. 登録予定タイトル
2. 本文ファイル
3. labels
4. issue type
5. 親Issue
6. blocked-by/blocking
7. GitHub Project
8. 実行予定コマンド
この一覧を確認した後に、Issue作成を承認します。
フェーズ7:GitHub CLIでIssueを作成する
GitHub CLIのgh issue createは、本文ファイル、label、milestone、Project、Issue type、親Issue、依存関係を指定できます。GitHub CLI manual
利用できるオプションはGitHub CLIのバージョンやGitHub環境によって異なる可能性があるため、最初に現在の環境で確認します。
gh --version
gh issue create --help
最小構成
gh issue create \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--title "認証トークンの保存方式を変更する" \
--body-file docs/issues/001-token-storage.md \
--label "authentication,security"
Issue typeを指定する
gh issue create \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--title "認証トークンの保存方式を変更する" \
--body-file docs/issues/001-token-storage.md \
--label "authentication,security" \
--type "Feature"
FeatureやTaskなどの名称は、対象組織・リポジトリで利用できるIssue typeへ置き換えます。
親Issueの配下へ作る
gh issue create \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--title "APIの認証トークン処理を移行する" \
--body-file docs/issues/002-api-migration.md \
--label "authentication,api" \
--type "Task" \
--parent 120
依存関係を指定する
gh issue create \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--title "クライアントのトークン更新処理を移行する" \
--body-file docs/issues/003-client-migration.md \
--label "authentication,client" \
--type "Task" \
--parent 120 \
--blocked-by 121,122
GitHub Projectsへ追加する
gh auth refresh -s project
gh issue create \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--title "認証トークンの保存方式を変更する" \
--body-file docs/issues/001-token-storage.md \
--project "Security Roadmap"
Projectへの追加にはprojectスコープが必要です。GitHub CLI manual
親Issueや依存関係を後から調整する場合は、gh issue editも利用できます。GitHub CLI manual
gh issue edit 121 \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--parent 120 \
--add-blocked-by 119
親Issue側からSub-issueを追加する例です。
gh issue edit 120 \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--add-sub-issue 121,122
フェーズ8:草案とGitHub Issueの対応を記録する
Issue作成後は、docs/issues/index.mdへ対応関係を記録します。
# GitHub Issue mapping
| Draft | GitHub Issue | Status |
|---|---|---|
| `001-token-storage.md` | #120 | Open |
| `002-api-migration.md` | #121 | Open |
| `003-client-migration.md` | #122 | Open |
ここで重要なのは、登録後もIssue本文とMarkdown草案を完全に双方向同期しようとしないことです。
登録後の役割を次のように分けます。
| 情報 | 正本 |
|---|---|
| 要求と受け入れ条件 | docs/requirements/ |
| 設計判断 | docs/adr/ |
| 全体の移行順序 | docs/plans/ |
| 日々の進捗、担当、議論 | GitHub Issue |
| 実装差分と検証 | Pull Request |
| 登録時のIssue本文 | docs/issues/ |
docs/issues/は登録時点のスナップショットと監査用の入力です。運用中の状態管理はGitHub Issueへ移します。
フェーズ9:Codex CLIで実装する
Issue登録後は、Codex CLIへIssue番号と設計文書を渡します。
## Goal
GitHub Issue #121を実装する。
## Success criteria
- Issueの受け入れ条件を満たしている
- 関連テストが追加または更新されている
- 指定した検証が成功している
- 無関係な変更が含まれていない
- pushとPull Request作成はまだ行っていない
## Evidence
- GitHub Issue #121
- `docs/requirements/authentication-renewal.md`
- `docs/adr/0012-token-storage.md`
- `docs/plans/authentication-migration.md`
## Scope
- `src/auth/`
- `src/api/`
- `tests/auth/`
- 関連する技術文書
## Constraints
- 公開APIの互換性を維持する
- DBスキーマを変更しない
- 無関係なリファクタリングを混在させない
- pushとPull Request作成は承認まで行わない
## Validation
- 対象テスト
- lint
- 型チェック
- 影響パッケージのビルド
## Output
- 原因または設計上の判断
- 変更ファイル
- 検証結果
- 残るリスク
- 文書更新が必要な箇所
GitHub CLIが認証済みであれば、Codex CLIはIssue本文やコメントを取得しながら作業できます。
gh issue view 121 \
--repo OWNER/REPOSITORY \
--comments
gh issue view --commentsは、Issue本文だけでなくコメントも表示します。GitHub CLI manual
フェーズ10:実装結果をWorkへ戻す
実装後、Codex CLIに短いhandoffファイルを作らせます。
docs/handoffs/issue-121-result.md
内容は次の程度で十分です。
# Issue #121 implementation result
## 変更内容
## 変更ファイル
## 仕様との差異
## テスト結果
## 運用上の注意
## 文書更新が必要な箇所
## 残課題
Workは、このhandoffと確定した設計文書を読み、次の成果物を更新します。
- 利用者向け手順
- 開発者向け解説
- 移行ガイド
- リリースノート
- サポート向けFAQ
これで、Chatから始まった設計が実装を経て、再び人間向け成果物へ戻ります。
トークン消費を抑えるための設計
WorkはCodexと同じ利用構造を採用しています。Chatの長い会話をWorkへ渡し、さらに同じ内容をCodex CLIへ丸ごと渡すと、重複したコンテキストが増えます。WorkとCodexのFAQ Pricing
本記事では次の運用にします。
- Chatでは、まだ曖昧な論点を検討する
- 方針が固まった時点で短い引き継ぎへ圧縮する
- Workは完成させる文書を明示する
- Codex CLIは対象ディレクトリと対象文書を限定する
- 計画、実装、レビューを別タスクにする
- 永続情報はGitへ置き、長い会話を次のタスクへ持ち込まない
-
AGENTS.mdは短く保ち、詳細は個別文書へ分ける - 不要なPluginやMCPを有効にしない
- 報告は変更点、検証結果、残課題へ限定する
- GitHub検索とGitHub書き込みを同じ段階で行わない
特に重要なのは、WorkとCodexを「同じ情報を二度考えさせる場所」にしないことです。
Work
→ 人間がレビューできる計画へ変換する
Codex CLI
→ その計画を実装事実と照合し、実行する
Full access運用で外部書き込みを分ける
Codex CLIをFull accessで運用していても、ローカル作業と外部作用を同じ扱いにはしません。
確認なしで進める範囲
- 関連ファイルの調査
- Git履歴の確認
- 指定範囲の編集
- 非破壊的なテスト
- lint、型チェック、ビルド
- Issue登録前の重複検索
事前確認する範囲
- GitHub Issue、PR、コメントの作成
- push、merge、release、deploy
- 履歴を書き換えるGit操作
- 大量のファイルやデータの削除
- secretや個人情報の外部送信
- 有料サービスや大量リソースの使用
- 依頼範囲を大きく超える変更
この承認境界は、次回の記事でAGENTS.mdへ落とし込みます。
この方法で避けられる問題
Chatの会話履歴だけが設計の根拠になる
確定内容をADR、要求仕様、計画へ保存するため、後から判断理由を追跡できます。
WorkとCodexで前提がずれる
両者が同じGit管理ファイルを参照するため、会話ごとの説明差を減らせます。
Issueが実装構造と一致しない
Issue登録前に、独自WSL2環境のCodex CLIが現在のコードと照合します。
GitHubへ誤って書き込む
草案作成、重複確認、登録予定のレビュー、作成を別段階にします。
長い会話を何度も読み直す
主要な節目でMarkdownへ圧縮し、新しいタスクは必要なファイルから開始します。
DesktopのWSL実行先が期待と異なる
非既定の独自WSL環境に依存する処理をCodex CLIへ固定するため、DesktopのAgent選択に依存しません。
注意点
ChatGPTのGitHub接続をIssue作成手段と決めつけない
公式ヘルプで案内されている用途は、リポジトリのコードや文書を取得し、検索・分析・引用することです。本記事では、Issue作成などの書き込みはGitHub CLIへ分けます。公式FAQ
Add to taskを永続的な共有メモリと考えない
現在のタスクへ短期的にコンテキストを持ち込む機能として使い、将来の別タスクにも必要な情報はGitへ保存します。
Web WorkとデスクトップWorkは同一履歴ではない
Web/モバイルのクラウドWorkと、デスクトップのローカルWorkは同期範囲が異なります。ローカルファイルへ直接成果物を残したい場合は、デスクトップのローカルProjectを使います。WorkとCodexのFAQ
Issue登録後の運用状態はGitHubを正本にする
Markdown草案とGitHub Issueを手作業で双方向同期すると、どちらが最新か分からなくなります。登録前の設計資料と、登録後のタスク状態を分けます。
GitHub CLIのオプションは実環境で確認する
--type、--parent、--blocked-byなどを使う前に、対象環境のgh issue create --helpを確認します。GitHub Enterprise Serverや組織設定によって利用できる機能が異なる場合があります。
まとめ
Chat、Work、Codex CLIは連携できます。しかし、三者がすべての会話履歴を自動的に共有するわけではありません。
今回の推奨構成は次のとおりです。
Chat
└─ 問題整理、比較、設計判断
Work
└─ 要求、ADR、計画、Issue草案
Gitリポジトリ
└─ 三者が参照する確定情報
独自WSL2環境のCodex CLI
└─ 現在のコードとの照合、実装、検証
GitHub
└─ Issue、Pull Request、Actions、日々の進捗
短期的な受け渡しにはAdd to taskを使えます。
長期的な受け渡しには、次をGitへ残します。
AGENTS.md
docs/requirements/
docs/adr/
docs/plans/
docs/issues/
docs/handoffs/
最も重要な原則は次のとおりです。
会話は考えるために使う。
Workは考えをレビュー可能な成果物へ変える。
Codex CLIは成果物を現在の実装へ照合して実行する。
GitとGitHubは確定した情報と作業状態を残す。
次回は、WSL2上で安定稼働しているCodex CLIのFull accessを維持しながら、安全なローカル操作は止めず、GitHubへの書き込み、破壊的操作、スコープ拡大だけを承認境界にするAGENTS.md設計を扱います。