はじめに
「週刊少年バカゲー」という Web サイトを運営……というより、AI 組織を人間の関与なしで回し続けられるかの検証実験として動かしています。
毎週、AI エージェントがブラウザゲーム(バカゲー)を新作として生成し、連載していく――そんな王道ジャンプ風のゲーム週刊誌です。人気が出れば看板に、落ちれば打ち切り。遊ぶのは「漫画」ではなく、その場でプレイできるミニゲームです。
作家・編集・編集長を LLM ロールに振って、毎週月曜日0時に「連載会議」で掲載順を更新し、下位低迷の連載をテコ入れ・打ち切りしていきます。10作品の打ち切りサバイバルと新連載の新陳代謝で作品全体の品質向上を図ります。
この記事では、その裏側にある cron・ダイナミックワークフロー・GitHub PR・Playwright・純関数の評価エンジンなどを組み合わせた、ループエンジニアリングの実装について書きます。
実際に動いているサイトはこちらです!
背景:ループエンジニアリングという概念
こちらの記事がとても分かりやすかったです!
めちゃめちゃ端折ると、AIが自走して改善のループを回せるといい感じ! 人間が手を付けなくてもどんどん良くなるよね!
Boris Cherny の発言として紹介されている要旨はこうです。「もう Claude にプロンプトを打っていない。プロンプトを打って次に何をすべきか考えるループを走らせているだけだ。私の仕事はループを書くことだ」。ループの構成要素は次の 6 つです。
- 自動実行(Automations) — 定期的にタスクを起動するトリガー
- ワークツリー(Worktrees) — 並列エージェントの衝突防止用隔離環境
- スキル(Skills) — プロジェクト固有のルールや手順書のファイル化
- プラグイン/コネクター — GitHub・Jira・Slack 等への接続
- サブエージェント — 生成役と検証役の分離
- メモリ — 会話外への状態永続化
採用した骨格:週刊少年漫画誌の編集部モデル
それで思い至ったのが、週刊少年ジャンプの編集部運営は、既に 50 年以上磨かれてきた巨大なループ設計だということです。読者アンケートで人気スコアを集計し、上位を看板に押し上げ、下位 3 週連続をテコ入れか打ち切りに回し、新連載を空き枠に投入する。作家にはペルソナがあり、編集が伴走する。
これを AI エージェント組織にコピーすれば、最強のエンタメコンテンツが出来上がるのでは・・・?!?!?!?!
ループ 6 要素 × 集英社モデル対応表
実装では、ループエンジニアリングの 6 要素をそのまま編集部運営に対応させました。
| ループ 6 要素 | 集英社モデルでの実装 |
|---|---|
| 自動実行 | 週次サイクルの 連載会議ワークフロー(/weekly-cycle)を cron で毎週月曜0時に自動起動。会期は無人で発火している |
| ワークツリー | 連載ごとに専用ブランチ/worktree、並列改稿 |
| スキル |
/new-game /weekly-cycle /brushup-meeting /ship-pr 等の編集部運用スキル |
| プラグイン | GitHub PR・gh CLI、Playwright での自動試遊 |
| サブエージェント | 編集長/編集/作家/試遊鑑定人にロール分割、生成役と検証役を分離 |
| メモリ |
studio/ 配下の roster / rankings / meetings / personas / graveyard が編集部の集合記憶 |
会期 1 回は「出社 → 試遊 → ネーム → 集計 → テコ入れ → 評定 → 入稿 → 発注」の 8 フェーズで、cron トリガーで人間の介入なしに走ります。試遊・採点・議事録生成・テコ入れ判定・打ち切り判定・新連載企画・実装・プロモ動画生成まで AI 側で完結し、人間の介在ポイントは PR のマージ 1 点だけに絞られています。
こういう週次会議のPRが毎週月曜0時に自動で作られます。楽しい!
また、ゲーム自体のブラッシュアップ・テコ入れは 24 時間随時実行され、こちらも PR をマージすると改修が反映されます。
今のところはデザインや視認性の改修など小規模なものが多いですが、そのうち急に「パズルゲームから格闘ゲームにピボットしましょう」とか言い出すのかな……と密かに期待しています。
数値による自動フィードバックの実装
編集部モデルの肝は読者アンケート=数値フィードバックです。ループを操舵しているのは「人気スコア」という単一の数値です。
人気スコア = 0.7 × 正規化(実測メトリクス) + 0.3 × 読者Agent採点
実測は /play/[slug] でプレイ数・平均プレイ時間・リトライ率・シェア数を計測。読者 Agent は操作性/中毒性/オリジナリティ/完成度の 4 項目を 0–100 で採点します。スコア計算も生死判定も LLM に頼まず、src/lib/studio/engine.ts に純関数として書いてあります。
// 副作用なし。同じ入力には同じ番付・同じ生存判定を返す。
export function readerScoreTotal(score: ReaderScore, config: StudioConfig): number {
const w = config.rubricWeights;
const raw =
clamp01to100(score.playability) * w.playability +
clamp01to100(score.addictiveness) * w.addictiveness +
clamp01to100(score.originality) * w.originality +
clamp01to100(score.polish) * w.polish;
return round1(raw);
}
この数値が次サイクルの三判定(新連載 GO /テコ入れ猶予/看板昇格)に直結します。新連載には初回ボーナス、打ち切り適格には 1 回のテコ入れ猶予というバッファだけ入れています。
こうして、ジャンプ編集部のアンケート至上主義を実データで再現したフィードバックループが回るようになりました。エージェントの「気分」や雄弁さで番付がブレることはなく、数字だけが連載の生死を決めます。
検証中の透明性
AI 組織が何を考えてどう動いたかを全公開する、という方針で運用しています。/ranking(人気番付)、/meetings/[cycle](連載会議の議事録)、/graveyard(打ち切り作品の墓場)、/studio/dashboard(編集ダッシュボード)の 4 ページに、内部状態をそのまま読み物として置いています。
公開する圧力をかけるとプロンプト品質も自然と上がりますし、検証として観察するなら、内部ログがそのまま読者用コンテンツになっているのが都合いい、という割り切りでもあります。
流入・プレイ人口を増やす仕掛けも編集部の仕事
「人気スコア」が機能するには そもそも読者が来てプレイしてくれる 必要があります。AI 編集部にはここも担当させていて、サイト側に以下を組み込みました。
- 全国スコア/週次ハイスコア — 各連載で全プレイヤーのスコアを集計し、その週のトップを誌面に常時掲示。「自分の名前を載せに来る」動機を作る
- ワンタップ共有ボタン — リザルト画面に X 共有を仕込み、スコアと連載タイトルを自動で本文に乗せる。シェア数自体が「実測メトリクス」側のスコアにも入る二重ループ
- 創刊号・新作トレーラー — Remotion 製の動画を SNS 投稿に添える。広報も AI 側
ポイントは、これらの「流入装置」も毎週のループに乗っていることです。シェア数や全国スコアの伸びが次サイクルの人気スコアに跳ね返るので、読者が遊ぶ → 数値が上がる → 編集部が看板に上げる → さらに人が来る、という回り方をする想定で組んでいます。
広報も AI に回させる
連載運営だけでなく、雑誌の広報も同じループに乗せています。promo/ 配下に Remotion で 60 秒トレーラー(30fps / 1920×1080)を React/TSX で組む仕組みがあり、毎週月曜0時の連載会議が走ると、番付更新の PR と同時に次号トレーラーの mp4 が出てきます。
裏側では src/lib/studio/issue-trailer.ts という純関数が、その号の番付・新連載・打ち切り・議事録の決定文を読んで、ラインナップ・煽り文・順位変動(↑3 ↓2 NEW)まで自動で組み立てます。「今週どのゲームを宣伝するか」を人間が選んでいないということです。連載会議で番付が決まれば、そのままトレーラーに焼かれます。
現在の到達点:開発者、Xで流れてきた読者のスコアに勝てない
完全自律で生成したバカゲーに、X 経由で流れてきたプレイヤーのハイスコアが投稿されはじめました。そして、開発者である私がそのスコアに勝てません。
自分は一行も中身を設計していない、AI 編集部が企画して AI 作家が実装したゲームで、読者の方が私より上手い。シェアボタン → X → 流入 → スコア更新、というループが実際に回り始めています。
これは「人間の介在なしに回る」を超えて、「AI が作って、人間が本気で遊んでいる」 段階に入ったことを意味しています。
まとめ
- 骨格 → ループエンジニアリングの 6 要素
- 組織図 → 週刊少年漫画誌の編集部運営
- 判定エンジン → 純関数 CLI(生死・番付をLLMに任せず決定的に)
- 回す仕組み → 週次連載会議ワークフロー(毎週月曜0時に自動起動)
-
状態の永続化 → git(
studio/配下) - 過程の公開 → ダッシュボード/議事録/墓場
- 広報 → Remotion で AI が動画生成
- 現在の人間介在 → PR のマージのみ(定常運転時)
- 次の目標 → 品質ゲートでの自動マージ=人間介在ゼロ
大真面目に組んだ仕組みの上で、全力でバカゲーが動いています。でもこれでいいんです。
今はまだ粒ぞろいのバカゲー達ですが、いつか世を唸らせる神ゲーが生まれる日も近いはずです。
俺達の戦いはこれからだ!
あとがき
はじめはAIに漫画描いてもらって本当に週刊誌作ろうと思ったんですが、ゲームの方がスコアデータ取りやすそうと思ってピボットしました。あと自分で遊んでてとても楽しい!
こういうゲームがたくさん並んでいます。
もしお気に入りのゲームが見つかったらコメントでご感想などいただけるととても嬉しいです!AI編集部にお伝えします!








