はじめに
この記事を読むにあたって
私は言語学の専門家でも研究者でもありません!
ただの素人が「“ちょうどいいコミュニケーション”を取りたい!でもできない!」と悩みながら、まとめている記事です。
なので学術的に厳密な解説というよりは、日常での会話やコミュニケーションをちょっと良くするヒントとして読んでいただけると嬉しいです🙏
1. 私のコミュニケーションのクセ
まず私は、人との会話においてよくやってしまうクセがあります。
➀「伝わらないかも」と不安になって、つい補足しながら長く説明してしまう
➁「自分の頭では整理できてるから、相手もわかるはず」と思って、説明を省いてしまう
…はい、真逆です(笑)
ですが、みなさんもこういった両極端な会話に心当たりがありませんか?
これらは真逆ではありますが、どちらも結果的には「伝わらない」ことが多いんですよね。
そして、この状況を説明してくれるのが、言語学でいう “会話の公理” なんです。
会話の失敗は、大抵「伝わらない」ことが原因です。
伝わらない理由は様々ですが、今回ご紹介する "会話の公理"を意識すると、かなり改善すると思います。
この記事は「考え方+すぐ使える技」を中心にまとめました。
難しくならないように書きましたので、ぜひ自分のコミュニケーションの取り方を振り返るきっかけにしてもらえると嬉しいです!
2. 会話の公理って何?
会話の公理とは、コミュニケーションを成立させるための基本的な原則のことで、ポール・グライスという哲学者が提唱したものが代表的です。
もっと簡単に言うと、これに従うだけである程度コミュニケーションが円滑になるというルールです。
グライスの会話の格率(=ルール) とも呼ばれ、大まかに4つのルールがあります。
- 質の公理:正確・正直であること。ウソや根拠のないことを言わない。
- 量の公理:会話において、必要な情報を適切な量与える。
- 関連性の公理:関係のないことは言わない。
- 様式の公理:曖昧に言わず、明確に簡潔に分かりやすく言う。
4つは独立ではなく相互作用します。
例:量を削りすぎると、質(正確さ)や様式(明確さ)も損なわれます。
3. 公理の深掘り
以下、各公理ごとに「典型的な違反パターン」「原因」「直し方」「いい会話の例」を整理していきます。
3-1 質の公理(正しいことを言う)
要するに 「ウソは言わない」「何となくで返事しない」というシンプルなルールです。
違反パターン
推測を断定にしてしまう、根拠なしの断言やその場しのぎの返事。
(例)
Aさん「明日の会議って、13時からですよね?」
Bさん「うーん、そうだったと思います!」(あまり覚えていないが、なんとなく答えている)
原因
- 急かされているかも、というプレッシャーからの早口や説明不足。
- 確認を面倒に思っている。
- 知らないことや失敗を認めたくない気持ちからの、その場しのぎの説明。
直し方
- 「確認してから返す」 フレーズを常備する。
- 不確実な情報は 推測として明示する。
「確認してまた連絡します。」「正確には分からないので、折り返し連絡します。」など
いい例
Aさん「明日の会議って、13時からですよね?」
Bさん「正確には今わからないので、確認して連絡します!」
ワンポイント
知らないことや不確かなことは、正直に「わからない」と伝えても良い!
不確定なことを言うより、素直に言った方が信頼は上がると考えましょう◎
3-2 量の公理(相手にとって、必要な情報量を与える)
必要な情報は漏らさず伝える、不要な情報は与えないというルールです。
私の場合は、この 量の公理違反 が多いのでよく会話が失敗している気がします。
違反パターン
➀説明が長すぎて結論が見えなくなる(情報過多)。
➁簡潔に説明しすぎて必要な情報が足りない(情報不足)。
(例➀)情報過多
Aさん「明日って何時に集合だっけ?10時?11時?」
Bさん「えっと、昨日グループLINEで話してたときにさ、まずCが『午前中ならいける』って言って、そのあとDが『14時から予定できた』って返して…。で、結局みんなの予定を合わせたら~…」
Aさん(…で、結局何時?)
(例➁)情報不足
Aさん「明日って何時に集合だっけ?10時?11時?」
Bさん「大丈夫!」
Aさん(大丈夫って何が?10時ってこと?それとも11時??)
原因
- 相手に誤解させたくないという不安からの情報過多。
- 自分の前提を共有済みと過信した情報不足。
直し方
-
段階開示(結論を先出しに)
結論→理由→必要なら詳細という順で出す。 -
必要最小テンプレを作る。
相手に伝えるための最小限なテンプレートをつくっておく。
予定調整なら【可否/日時/場所】、依頼なら【ゴール/期限/成果物の形式】など。
いい例
Aさん「明日って何時に集合だっけ?10時?11時?」
Bさん「10時に駅前だよ。」
ワンポイント
相手が“ほしい情報量”は場面で変わります。
迷ったら「ざっくりでいいですか?」「詳細に説明したほうが良いですか?」と事前に聞くと良いです!
3-3 関連性の公理(関係のないことは言わない)
こちらもシンプルです。 会話の流れに関係のあることだけ答える 、というものです。
つまり、質問に答えていない返事は 関連性の公理違反 です。
違反パターン
質問の趣旨に答えず脇道へ行く、話題を勝手に拡大して本題を置き去りにしてしまう。
Aさん「この資料ってもうできてる?」
Bさん「いやー、昨日夜更かししちゃって、眠くてさぁ……」
Aさん(それはわかったけど、資料は?)
原因
- 話題を避けたい、ごまかしたい心理。
- 会話の本筋より先に思いついた話題を出してしまう。
- 自分の経験や話を優先して伝えたい。
- 相手の意図を誤解している。
直し方
-
まず質問に答える
必要ならその後で補足。短く答えてから背景を入れる。 - yes/noで答えられる質問は、先にyes/noを出す。
いい例
Aさん「この資料ってもうできてる?」
Bさん「5割くらいはできてて、明日午前中に完成予定!」
ワンポイント
まず質問や話題に関係する部分を答えてから、補足や雑談を加えると混乱防止になります。
話し出す前に一呼吸おいて、「本筋に関係あるかな?」と意識してみましょう。
3-4 様式の公理(明確に、簡潔に)
最後は 明確に、簡潔に というルール。
回りくどくせず、誤解されないように言おう ということです。
違反パターン
回りくどい言い方、曖昧な言葉の多用、専門用語で説明して相手が理解できていない。
Aさん「今週の営業報告、提出できそうですか?」
Bさん「ええとですね、多分大丈夫だとは思うのですが、恐らく一部のデータについてはまだ精査が必要で、先方からのフィードバックも加味しつつ、KPIとの整合性を確認する必要がありますので、最終的な提出タイミングは微妙に前後する可能性がございます。」
Aさん(結局、いつ出せるの?)
原因
- わざと曖昧にしてごまかしたい(衝突回避)、触れてほしくない話題がある。
- 表現力や言語能力の問題。正しい順序で、簡潔にまとめるのが苦手。
- 状況的要因:急いで話していて話をまとめることが出来ない。
- 文化的要因:あえて遠回しに伝えることが、礼儀だとされている場面。
直し方
- 結論を先出しに
- 曖昧な表現を避けて、補助説明として使うなど。
- 専門的な言葉は、相手に合わせた言葉に言い換える。
いい例
Aさん「今週の営業報告、提出できそうですか?」
Bさん「はい、金曜午前中には提出ができる見込みです。一部データは精査中ですが、もし影響がありそうでしたら事前に報告します。」
ワンポイント
回りくどくせず、短く簡潔に伝えることを意識しましょう。
専門用語や略語は使わない、または必要に応じて補足すると親切です!
4.非同期コミュニケーションにおける会話の失敗
Slackやメールなどの「非同期コミュニケーション」には、対面のように表情や声色が伴わず、さらに相手と読むタイミングがずれるという特徴があります。
便利ではありますが、会話の公理を外すと小さな齟齬が大きな摩擦に発展しやすいです。
4-1. 件名や冒頭に結論を書く
対面なら「今これを頼みたいんですけど」と切り出せますが、非同期では本文が長くなると結論が埋もれがちです。
件名や冒頭で「何をしてほしいのか」を先に提示して読み手の負担を減らしましょう。
4-2. 誰のアクションかを明示する
チャットでは「誰が対応するの?」が不明確なまま流れていくことがあります。
「確認お願いします」だけではなく、アクションの主体を名前で指定するか、役割で明示しましょう。
4-3. 期限・責任を明記する
「いつまでに」「誰が」やるのかを書かないと、非同期ではタスクが宙に浮きます。
曖昧な表現を避け、現実的な期日と責任範囲を示す ことが重要です。
4-4. 1スレッド=1トピックの法則
チャットの流れでついつい、別の話題を同じスレッド内に流してしまうことはありませんか?
複数の話題が一つのスレッドに混在すると、検索性も可読性も落ちます。
後から読む人にも配慮して、話題ごとに分割 しましょう。
これらを守るだけで、会話の公理に沿った「明確で、必要十分で、誤解のない」非同期コミュニケーションになります。
5.これから意識していきたい3つの習慣
-
毎日1回は会話の公理を意識して話す
まず1行の結末を書いてから説明を入れる、など小さなことから。 -
質問には短く答えてから補足するクセをつける
「yes」「no」を先に言う。感情や背景は後から。 -
定期的に自分の会話を振り返る
slackやメールなどを見返して、自身のコミュニケーションの傾向を知る。
小さな習慣の積み重ねで、コミュニケーションは改善すると思います。
私も少しずつ、これらの習慣を身に付けていきたいです!
6. まとめ
グライスが提唱した会話の公理は、どれもシンプルですが驚くほど実用的だなと感じます。
まだ私は完全に習慣化できているわけではありません。
でも少し意識を持つだけでも、 「伝わらない!」「何を言ってるか分からない!」 といった会話のストレスは減っていくのではないかなと思います。
ぜひ、みなさんもこれらを意識して “ちょうどいいコミュニケーション” を目指してみてください!
小さな工夫の積み重ねが、聞き手にも自分にも気持ちよく伝わる会話に繋がると思います。