来年から就職を控えている私が、先日(2022/11/20(日))、人生で初めて技術書同人誌1イベントにサークル側で参加したので、体験できたこと、うまく行かなかったこと、全体を通して感じた魅力について記事にしたいと思います。
3行にまとめると
- 主催者の方に誘われて第7回技術書同人誌博覧会にビビりながら参加したが、技術に関する知的生産を生業をしている方や、いろんな分野で技術職に従事している方と広く交流できた。
- 自分が普段行ってきたところをいざいきなり全て完璧にまとめようとしても、うまく行かない。夏休みの日記を最後の日に全て書くように、体験した際の新鮮な感覚の記述が危うい。日頃のこまめで継続的なアウトプットが必要。
- それでもアウトプットすると、自信がつく。活力が出る。その後の開発に対して前向きに向き合える。
参加したイベントと参加した経緯
参加したイベント
2022/11/20(日)に開催された第7回技術書同人誌博覧会に参加しました。今回は70サークルが出展するくらいの規模で、初めての技術書同人誌の出展には非常に適したイベントでした。開場後もゆったりとした雰囲気で、時間を選べばサークル主でも軽く全てのサークルを回ったり、ゆっくりと他のサークル主の方とお話しする余裕がありました。
参加した経緯
主催者の方とひょんなことから知り合い 、「技術書を商業誌を出しているエンジニアに非常に魅力を感じるのですが、どうやったら本って出せますか?」 と相談し、「それならうちのイベントで同人誌作ってみたら?」 と言われたのがきっかけでした。
私の周りの優秀なエンジニアの方は何かしらの方法で外部にアウトプットをしており、私には潜在的に技術に関するアウトプットに憧れがありました。しかし、 「大した技術を持たない自分がアウトプットすることは無意味、下手したら迷惑なのではないか?」 と思い、アウトプットに対して、ハードルを感じていました。
そのことを主催者に話すと、
「『優秀なエンジニア=技術書としてのアウトプットの質が高い』訳ではない。誠実に文章を書けば、人に読んでもらえる。」
「そんなに不安なら、一年前の自分に向けて、今現在の自分になるためにより効果的な方法、最短距離を辿れる方法をまとめるといいよ」
と背中を押され、技術書同人誌の作成を決意しました。
サークル参加することで体験できたこと
デスマーチ
本を書くときに、2徹くらいしました。ちなみに、上記のお話を主催者にいただいたのが6月中旬、参加申し込み締め切りが8月下旬、イベントが11/20なのに、書き始めたのは10月の終わりでした。
全然書き始められませんでした。その要因はおそらく次の二つです。
1.商業誌は1冊に対して10万字書く必要があり、タスクが大きすぎて、手をつけたくなくなる。
2.せっかくまとめるなら少しでも情報量が多い方がいいからと、開発を優先して、文章を書くのをひたすら後回しにする。
実際に書くときになると、上記2つの見積もりは捨てました。
1.については、もう時間がないので、そんな分量かけません。それより、何かを完成させてちゃんと新刊を落とさないことが重要です。締め切りが近づくとなりふり構わず書き、蓋を開けてみると分量は1.5万文字程度になりました。
2.まとめるにしても、普段から文章でアウトプットする癖がなかったので、結局文章書くときに、参考資料を探してそれらを参考に整理する ことになりました。また、開発体験のこともぼんやりと覚えているものを書くことになりました。
アウトプットしないと感じることができない不安と高揚
どの同人誌イベントやその他ものづくりに共通するかと思うのですが、自分が作ったものを一般に公開することには、時として強い不安と羞恥を伴います。それを乗り越えられるのは、「本を一部でも持って帰ってもらう」 しかないと個人的には思っています。売れなくても、他の仲良くなったサークル主と交換、もしくはあげるとそれだけでも自信になります。
私はイラストの同人誌を数年前大量に作っていたのですが、頒布できた時の高揚感は同人誌イベントにサークル参加する以外で手に入らない高揚感 だと思います。この記事を読んでいる方はぜひサークル参加して感じてほしいです。
500円の本が一冊売れることは、Twitterで何百何千といったいいねをもらうのとはまた違う、得難い経験です。めちゃくちゃ嬉しいです。
懇親会が一番楽しい
多くのエンジニア系のイベントに共通しているのですが、懇親会が一番楽しいです。私が学生で九州から参加していたので、その属性を振り翳して、話に混ぜてもらいました。私の普段いるコミュニティとはキャリアの築き方や普段の知的生産のやり方が全く別物な方も多く、非常に勉強になりました。
うまく行かなかったことと、その改善方法
テーマが決まらない
一冊書き切るモチベーションが出るテーマかつ、多くの人に興味を持ってもらえるテーマかつ、自分の体験に強く紐づいているテーマを選ぶ必要がありました。このテーマが決まらず、書き始めるタイミングがどんどん後ろになりました。
私の場合、いくつか案を出して仲の良い友人や後輩に話してみて、みんなの反応が良いものをテーマにしました。私はサービスの企画、デザインに興味があり、フロントエンジニアよりのスキルセットを持っているので、「デザイナーがいなくても、かっこいいUIのサービスを作れるようになる」ことをコンセプトに書き始めました。
本を直前まで書かない
先ほども触れましたが、ギリギリまで書かないことは、多くの不利益を私にもたらしました。
どうしても記述量、文字数は減ってしまうので、それだけ記述内容に具体性が欠ける部分ができてしまいます。
また、スケジュールの遅れは、装丁のクオリティの低下、校正の荒さ、ページレイアウトのクオリティの低下、新刊の認知を広げるためにやるべきことができなくなるなどの不利益に直結します。
解決するには、普段から文章でのアウトプットを習慣づけることが有効かと思います。最悪、書きだめていたものを一部使って本を使えばいいですし、何より自分の記憶が新鮮なうちに文章にまとめておくと、詳細に思考の過程と、試してみたことの手順を思い出しながらまとめることができます。
会場で手に取ってもらえない
新刊の認知を広げるためにやるべきことができていないと、会場で表紙だけで人を集めないといけません。会場に来る前に知っていた本だけ買っていく参加者も少なくないはずです。私も同人誌即売会に行くときは漏れがないように、事前に買いたい本をチェックして行きます。
これを回避するには、事前にTwitterでしっかり告知などのマーケティング施策を行う必要があります。
また、装丁に力を入れ、思わず触りたくなる本にしてみることや、本を書く前に多くの人が興味を持ってくれるような題材を選定することも重要かと思います。
会場で手に取ってもらえたときに、うまく本を訴求できない
どこの同人誌即売会もそうですが、手に取ってみて中身をパラパラみて購入まで踏み切らない参加者の方は多いです。イラストの同人誌なら、表紙や中身をパラパラみるだけで購入する価値があるか分かり易いですが、文章だけのものだと、数秒中身を見るだけではなかなか購入の判断は難しいはずです。そのため購入に踏み切る自信が数秒で形成できず、購入につながらないのかなと思います。
この解決策として、ブースに来ていただいた方に見本誌をお渡しする際に立ち上がることを意識しました。これは大手のブースの方がやっていたので真似をしたのですが、立ち上がった方が、座って話すより会話が盛り上がり、購入につながるケースが増えました。さらに、興味を持っていただけた方のバックグラウンドや、なぜ購入を検討してくれているかについて伺うことができ、ユーザリサーチもできました。
過剰なクロージング2は必要ないと思うのですが、口頭での本の中身の補足は、購入を決定する材料が増え、購入検討者にとって有益なのではないかと思います。その口頭の補足は、自分が立ち上がることで、非常にスムーズに行えるようになりました。
思ったより予算をかけてしまった
九州から東京の会場に行き、1日のイベントに対して2泊したので旅費が結構嵩みました。また、印刷費や参加費、懇親会参加費、東京での移動費がかかりました(switch2台分くらい。もうちょい節約できたなと思う)。
私の場合は、このコストがかかることが前からわかっていなので、締め切りに間に合わせるモチベーションが湧いたのですが、後から見ると意外とお金かかっていたので、ちょっとビビりました。
本がもっと売れるようにならないとお金の部分はどうしてもペイできないですね、、、。同人の定めですが、笑。
それでもこれからたくさん技術書同人誌を作りたい
ここまで大変なことも含めお話ししましたが、来年の技術書展や、次の技書博に参加したくてうずうずしています。作りたい本のアイデアが溢れています。
一度やってしまえば、2回目は簡単にできる気になってきます。
「自分は本が書けるのかな?」「ちゃんと参加してやり切れるのかな?」という不安がなくなった分、作りたい本のアイデアや、制作に集中できます。
まずリスクを背負っても手をあげてしまえばあとはどうにかなる(正確には明日以降の自分がどうにかする)と思って、飛び込むことで、自分の表現の幅が広がるところは同人誌即売会の魅力だと思います。
後日談
後日、思いもよらないところで本を作った事による良いことが起こったので紹介します。
- 一緒に個人開発している友人らが欲しがってくれた。
- Boothに出品したらTwitterで告知していないのに数部捌けた。
- カジュアル面談でこのネタで盛り上がった。(売れ残った分は名刺代わりに使える)
このようなイベントの余波によって、後からモチベーションが湧くことがありました。
まとめ
この記事では、私が初めて技術書同人誌を作りイベントにサークル参加した経験から感じた、技術同人誌を作る魅力について紹介しました。
はじめての技術書同人は、文章を書くハードル、金銭面のハードルはありますが、それを容認できれば、自身の活動に大きなアドバンテージを産みます。モチベーションの向上や、作った本が成果として認められることが期待されます。
この記事を読んだ方はぜひ軽率に技術書同人イベントにサークル登録してください。
この記事で触れなかったのですが、技術のアウトプットにはレピュテーションリスクや炎上のリスクを孕む場合があります。
その点だけ十分注意して、楽しい技術書同人ライフを。