いまのAIは、多くの人が使っている以上のことができます。足りないのは新しい技術ではなく、使い方です。この記事は、今のAIからもっと多くを引き出すコツを紹介します。中学生でも今日から試せる話です。
取り上げるのは、AI研究者エタン・モリックさんの解説記事「The overhang」です。
目次
- 使われていないAIの力
- 何が新しいのか(前の使い方との違い)
- 人が差をつける「選んで直す」手順
- ただし、うのみは禁物
使われていないAIの力
モリックさんは、AIの本当の力と、実際の使われ方に大きな差があると言います。この差を「オーバーハング」と呼びます。ひとことで言えば「宝の持ち腐れ」です。
これは数字にも出ています。コンサル会社マッキンゼーの2025年の調査では、企業の88%がAIを使っていました。でも、はっきり大きな成果が出たのは6%ほどでした(出典は記事の下)。道具はあるのに、活かせていないということです。
何が新しいのか(前の使い方との違い)
多くの人はAIを、検索や短い文章書きに使います。質問して、答えを1つもらう。ここまでです。
新しいのは、もっと大きな作業をまるごと任せる使い方です。モリックさん自身の例を見ます。1977年の文字だけのゲームを、遊べる3Dゲームに作り替えたそうです。本の予告動画も、AIに映像や声を作らせて仕上げています。
前とどう違うか、図にします。
【前の使い方】
あなた → AIに質問 → 答えが1つ
【新しい使い方】
あなた → AIに「案を10個」と頼む
↓
[案][案][案]… たくさん
↓
あなたが選ぶ・直す
↓
仕上がり
図の見方です。前は答えを1つもらって終わりでした。新しい使い方は、AIにたくさん作らせ、その中から人が選んで直します。作る仕事はAI、選ぶ仕事は人、という分担です。
人が差をつける「選んで直す」手順
では、選んで直す作業は具体的にどうやるのか。モリックさんの考えをもとに手順にすると、次のようになります。
- 1案ではなく、5〜10案を出させる
- 自分の知識で、明らかにダメな案を外す
- 残りから、いちばん良い案を選ぶ
- 気になる所を具体的に指示して直させる
- 事実の部分は、自分で確かめる
ここで人の強みが効きます。ある分野の深い知識があれば、答えの良し悪しがすぐ分かります。広く浅い知識があれば、何を頼めばよいか見えます。良いものを選ぶセンスと、自分から試す姿勢も要ります。AIに丸投げすると、平凡で似た結果になりがちです。人の知識やセンスが加わって、はじめて新しいものになります。
ただし、うのみは禁物
AIはまだ、うそを本当のように答えることがあります。これを「ハルシネーション」(幻覚)と呼びます。スタンフォード大学の2026年の報告を見ます。主要なAIで、この誤りの割合は22%〜94%と幅がありました。AIがらみのトラブル報告も、2024年の233件から2025年は362件に増えています(出典は記事の下)。
だからこそ、手順の5番「自分で確かめる」が大事です。任せる範囲は広げつつ、事実は人がチェックする。これが安全に力を引き出すコツです。
次の新しいAIを待つ必要はありません。今の道具に自分の強みを足すだけで、できることは大きく広がります。
出典:
- エタン・モリック(Ethan Mollick)「The overhang」ニュースレター『One Useful Thing』 https://www.oneusefulthing.org/p/the-overhang
- マッキンゼー「The state of AI」2025年 https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai
- スタンフォード大学 HAI「2026 AI Index」責任あるAIの章 https://hai.stanford.edu/ai-index/2026-ai-index-report/responsible-ai
今日覚えること
- AIは今の性能でも、多くの人が使う以上のことができる
- 新しいのは「質問して答え1つ」から「たくさん作らせて選んで直す」への変化
- 深い知識・広い知識・センス・自分から動く力を足すと差が出る
- ただし事実は自分で確かめる。AIはまだ間違えることがある