何かを良くしたいとき、人はつい機能や手順を足して直そうとします。でも本当は、減らすほうが速くて安いことが多いです。この記事のうれしい点はこうです。ソフト作りや日々の仕事で「増やしすぎ」を止めるコツがわかります。きっかけは2021年、科学誌『Nature』の実験研究です。その後の追試もあわせて紹介します。 🧱
目次
- レゴの橋でわかったこと
- ここが新しい(昔の常識との違い)
- 図で見る2つの向き合い方
- ソフトや仕事にどう関係するか
- その後わかったこと(2024〜2025年)
- 今日覚えること
レゴの橋でわかったこと
研究のきっかけは親子のレゴ遊びでした。高さの違う2つの塔に、橋をかけたい。父親は低い側にブロックを足そうとしました。でも子どもは、高い側から1個外してそろえたのです。
研究チームはこれを8つの実験で確かめました。多くの人は「減らす」案に気づきません。嫌ったのではなく、思いつかないのです。「減らしてもいい」と一言添えると、答えははっきり良くなりました。
ここが新しい(昔の常識との違い)
これまでは、こう考えられていました。人は足す案も減らす案も思いつく。その上で足すほうを選ぶ、という考えです。
新しい発見はここです。多くの人は、減らす案を最初から思いつきません。つまり「好み」ではなく「見落とし」でした。だから、少し促すだけで結果が変わります。
図で見る2つの向き合い方
[問題が起きた]
├─ 足す → いまの形 + 新しい仕組み → ふくらむ
└─ 減らす → いらない部分を外す → すっきり
この図は、同じ問題への2つの向き合い方です。上が「足す」、下が「減らす」です。ふだんは上ばかり選びがち、と研究は指摘します。
ソフトや仕事にどう関係するか
これはソフト作りにもよく当てはまります。機能や設定は、足すほど増えます。あとで重くて複雑になりがちです。ここは筆者の見方です。AIの支援ツールも「もっと足す」方向に働きやすいです。
対策はかんたんです。会議や設計の最初に「やめる候補」を1つ出す。何かを始めるなら、代わりに1つやめる。減らせた人をきちんと褒める。大事な判断は、落ち着いたときに行う。 ✂️
その後わかったこと(2024〜2025年)
この研究には続きがあります。2024年の追試でわかったことがあります。減らす見落としは、いつでも同じではありません。国や年齢、課題の種類で変わります。スウェーデンの大人は、米国の大人より減らす案を選びやすかったそうです。
2025年には、心の健康の悩みでも同じ傾向が報告されました。人は「減らす」解決策を見落としやすい、という話です。
出典(一次ソース):
- Adams GS, Converse BA, Hales AH, Klotz LE.「People systematically overlook subtractive changes」Nature 592, 258-261 (2021). https://www.nature.com/articles/s41586-021-03380-y (DOI: 10.1038/s41586-021-03380-y)
- Juvrud J, Myers L, Nyström P.「People overlook subtractive changes differently depending on age, culture, and task」Scientific Reports 14, 1086 (2024). https://www.nature.com/articles/s41598-024-51549-y
- 「People overlook subtractive solutions to mental health problems」Communications Psychology (2025). https://www.nature.com/articles/s44271-025-00312-8
- 話のきっかけ(紹介記事): Mike Fisher『Leadership in Tech』 https://mikefisher.substack.com/p/the-subtraction-instinct
今日覚えること
- 問題は「足す」より先に「減らす」も考える。
- 減らす案は、嫌われるより先に「思いつかない」。
- 何かを始めるなら、代わりに1つやめる。