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「スタッフエンジニア」という活躍の仕方

Last updated at Posted at 2023-05-31

本記事の目的

スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ

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著者はエンジニアリングリーダーの経験をもつ著述家である「ウィルラーソン」氏。

こちらを読んで学んだことと感想を忘れないように整理して残しておきます。

読もうと思ったきかっけ

リモートワークとプロダクトが充実してきて、管理する仕事だけで食べていけるポジションが減ると思っております。管理職にならずに活躍しつづける の帯の言葉に惹かれました。

書籍の構成

第一部

第1章 全体像
日本ではまだ馴染みのない「スタッフエンジニア」とはどういったポジションなのか、エンジニアやマネジャーの立場と何が違うのかで教えてくれています。
第2章 スタッフとしての役割
「スタッフエンジニア」が担うと良いとされる役割りについて説明しています。
第3章 スタッフプラスの肩書を得る
「スタッフエンジニア」のポジションを獲得する方法について説明しています。
第4章 転職を決断する
米国でも「スタッフエンジニア」のポジションがある企業は狭き門であったり、そもそも存在しない企業もあるそうです。どうしても肩書きを得たい場合は、転職するのも一つの手だとやさしく教えてくれています。

第二部

スタッフたちの実像
「スタッフエンジニア」の実像を、実際にその立場で活躍されている方々へのインタビューを通して詳らかにしてくれています。

感想

  • 日本企業ではこの肩書での求人は見たことはありません。(2023/5/30時点)
  • それでも技術とビジネスの2つの視点でエンジニアリングすることの大切さを教わりました。
  • 「スタッフエンジニア」も他の肩書きと同様に、事業やフェーズ、チーム関係、その人の強みによって活躍の仕方は様々なようです。

補章

さらに学び続けたい人向けに有益な情報が列挙されています。

学びと感想の記録

第一部 スタッフとして活躍するために

第1章 全体像

「スタッフエンジニア」の定義
シニア(上級) スタッフ(重要) プリンシパル(主要) ディスティングイシュット(際立って優れた)をスタッフエンジニア職として示しています。本書ではスタッフ以上の3レベルを「スタッフプラス」と呼んでいます。
これらはエンジニアリングマネジメントとのキャリアパス上に用意される肩書であるマネジャー シニアマネジャー ディレクター バイスプレジデントと対をなす、テクニカルリーダーのキャリアパスとされています。

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(本書の15ページより引用させていただきました)

タイプ
インタビューを通して把握した実態から、不明瞭なテクニカルリーダーを大きく4つのタイプに分類されています。

タイプ こんな立ち回りをする人 必要スキル
テックリード 与えられたチームを技術的に引っ張りゴールへ導く役回り。テックリードマネジャーとは別物。複数人のマネジャーの下に就くこともある。 タスクを見通す力、メンバーや部門間の関係維持力
アーキテクト 重要分野における方向性や質、アプローチに責任を負う。技術的制約とユーザのニーズ、組織の力学を組み合わせる任を負う。 技術分野の制約を理解した上でビジネスニーズへの効果的なアプローチ法を特定する力
ソルバー 複雑な問題を深く掘り下げ前進する道を切り開く役目。 重要問題への明確な解決策を見出す力
右腕 補佐役として会社幹部の関心を代表し、幹部の能力と権限を借りて大規模で複雑な組織の運営の補佐を行う。 リーダーの影響力を拡大させる力

実際の仕事内容

  • 技術的な方向性を設定する
    組織の現実的なニーズを満たす動きができるように、チームに対して示すビジョンとして技術的な方向性を設定する。

  • メンターやスポンサーになる
    シニアエンジニアとしてうまくこなしてきた仕事の大部分を継続しつつ、技術的な方向性を設定及び修正し、スポンサー(支援)やメンター(助言)を行いメンバーを支え、組織の意思決定をサポートする目的で状況を伝え、探求しつなぐ役割である。

学び

  • 特にメンターあるいはスポンサーになって周りのエンジニアを育む行動が、スタッフプラスにとって最も価値のある行動の1つだということです。
  • エンジニアリングの展望を伝える
    組織の意思決定をスムーズに行うために、エンジニアリング全体の利害を代表しているという点を意識して展望を経営層に伝える。

なる意味はあるのか?

  • 多くの時間とエネルギーをかけてでも肩書を得る価値はある。
    • 年功序列という非公式な制度から逃れられる。自分の力を毎回証明せずに済む。
    • 「部屋」へのアクセスが用意になる。重要な意思決定を行う場に呼ばれるので、自分の意見が通りやすくなる。
    • 報酬が増える。(これだけを目的にして得られる肩書ではないとは思いますが。)

第2章 スタッフとしての役割

シニアエンジニアの上位に位置するが役割は全く異なる。マインドセットを変えて、やったことがない仕事に多くの時間を割くことを求められる。求められる仕事を列挙しておきます。

  • 重要なことに力を注ぐ。
    • 小さい労力でインパクトが大きい仕事が尽きた後に、難しいがインパクトが大きい仕事簡単だがインパクトが小さい仕事のどちらを選ぶべきか。後者を選ぶ行為は「スナッキング」と呼ばれ学べることがないので避けるべきであると言っています。
    • これがさらに目立つ仕事である場合は「プリーニング」と呼ばれ、組織を停滞させるのでさらに注意すべきである。
    • 前職の状況をひきずって課題の根本を見誤る「ゴーストチェイシング」も注意とされています。
  • エンジニアリング戦略を立てる。
    • 特定のプロジェクトにおいて行った決断やトレードオフをデザイン文書として残す。5つできれば共通する欠点が見つけられる。だから記録に残すことは大切だと言っています。

印象に残ったフレーズ
優れた戦略はトレードオフを促しその理由を合理的に説明する。不出来な戦略は説明せずに、文脈から切り離されたポリシーだけを表明する。

  • 戦略文書を作る際のアドバイス

    • 今いる場所をスタート地点として、今ある情報で書き始める。
    • 具体的に書く。
    • 断定できであること。
    • 考察を示す。
  • 戦略文書が5つできたら、以下を意識して1つの有益なビジョンを導き出す。

    • 2年先を見越して書く。
    • ビジネスとユーザーを中心に。
    • 無謀ではなく楽観的に。
    • 現実的かつ具体的に。
    • 1ページ程度で収まる長さで書く。
  • 技術品質を管理する。

    • 根本原因(ホットスポット)を修正することに注力する。
    • ベストプラクティスを用いて対応スピードを上げる。
    • レベレッジポイントに取り組み、長期的に将来の品質維持を行う。
    • 技術的ベクトルを束ねて組織の力が分散するのを防ぐ。
    • 技術品質を測定する。
  • 権威と歩調を合わせる。

    • スタッフエンジニアになれば声は通りやすくなるが無敵ではない。
    • 上司を決して驚かせてはいけないし、上司に驚いてもいけない
    • 摩擦なく影響力を発揮できるように、リーダーたちと密接な関係を保つ。
  • リードするには従うことも必要。

    • リーダーとして長期的に成功するためには、フォローする(従う)方法を学ばなければならない。
    • 強力な世界観をもつことはリーダーになるために必要条件ではあるが、成長を続けるためには、自分の世界観をまわりと融合させる方法を学ばなければならない。
  • 絶対に間違えない方法を学ぶ。

    • アクティブリスニングを行う。(しつこいと思われない程度に)目的を明確にする。
    • 意見の食い違いが大きいときは、コアメンバーを絞って深掘りする。
  • 他人のスペース(余地)を設ける。

    • スタッフプラスエンジニアとして長く活躍するためには、活躍しつつも会社があなたに依存しない状況を作ることだ。つまり、まわりの人々に議論や決断に参加させ、あなたと同じ成功を掴み取れるようにサポートすることだ。
  • ネットワークを築く。

    • 同じ仕事に携わる仲間を作る。
  • 経営幹部の前で

    • 幹部とコミュニケーションを図る理由は考えを変えるよう説得するものではない
    • 企画立案、進捗報告、軌道修正のどらか1つが目的になる。
    • おすすめの文章構成はSCQAフォーマットである。
      • シチュエーション(S) 問題となっている状況は?
      • コンプリケーション(C) 現状がなぜ問題なのか?
      • クエスチョン(Q) 対処すべき中心問題は?
      • アンサー(A) クエスチョンに対する最善の答えは?
    • 避けるべきミス
      • フィードバックに反論しない。
      • 責任や問題を避けない。
      • 答えを用意せずに質問しない。
      • 学術的なプレゼンテーションをしない。
      • 自分が希望する結果に固執しない。

第3章 スタッフプラスの肩書を得る

個人見解
肩書きを得るためには戦略的に動かないと教えてくれています。
実力が伴わず出世欲を満たすためだけであれば害ですが、組織やチームのために強くなりたくて、ハングリーになることは良いことだと思います。

スタッフエンジニアへ続く道はそれまでの昇進制度や評価基準が用いられず、閉ざされた門の前で立ち往生している気分に陥りやすい。今までのキャリアへのアプローチを一度リセットしたほうがよいと言っています。

  • 自分の軌跡を探す
    プロモーションパケット(昇進申請に必要な文書)を作りアピールする。

  • スポンサーを見つける
    昇進はチームゲームなので一人でやっては勝ち目はない。

  • スタッフプロジェクトをこなす
    複雑で曖昧、利害関係者の対立、誰もが知る氏っぱの許されない仕事などの特徴をもつプロジェクトを成し遂げる。

  • 重要な会議やコミュニティに呼ばれるようになる。
    カンファレンスで講演して外部の知名度を上げる。困難なプロジェクトを達成して内部の評判を上げるなど。

  • 認知度をあげる
    長期間利用される文書を作成する、社内フォーラムを率いる、会社のブログに投稿する。

第4章 転職を決断する

「スタッフプラス」の肩書きを得るためには、慎重にリスクを考慮した上で、以下のポイントで適した会社を見つけると良いと言っています。

  • あたなをはるかに高く買う会社を見つける
  • 実力主義と手続き主義のどちらを重んじているか。役職を得るのにどちらが簡単ということはない。自分の世界観と一致しているかが大切である。
  • アーキタイプの種類
  • 企業の成長速度
  • スポンサー候補 自分を推薦してくれる上級リーダーが必要である
  • 持続性の確認
  • ペースの維持

第二部 スタッフたちの実像

「スタッフプラス」の肩書きで実際に活躍されている18人(うち、日本人は4人)の実像をインタビューを通して詳らかにしています。肩書きを得るまでの経歴、得てからの葛藤、重んじていることなどから、「スタッフプラス」に概ね共通するイメージを教えてくれています。
ここでは特に印象に残ったフレーズを、イメージの側面の分類ごとに箇条書きにしてみます。

  • 仕事内容の変化(肩書きを得る前と変わったこと)

    • 特定のテクノロジーを自ら提唱することよりも、ほかの人たちを支援することに多くの時間を費やすようになった。
    • 部門全体の技術力と社会的スキルを伸ばすために協力するようになった。
    • 誰かを解雇したり、昇進願いを却下したり、業績評価を書いたりする必要がなくなった。
    • 会社の将来に好影響を与えられたかで、自分の仕事の満足度を図るようになった。
    • 最も難し部分をチームメンバーにやらせて成長させることを考えるようになった。
    • 孤独になった。
    • 何らかの意見をもっているものと周りから期待されるようになった。
    • 信用を得るためにエネルギーを費やす必要がなくなった。
    • インポスター症候群に立ち向かえるようになった。
    • エース級の人材の采配を決めることができるようになった。
  • 重んじていること

    • 「インパクトが強い」は企業目線すぎるので、「エネルギーに満ちた」と言い換えている。
    • 意思決定の経緯と透明性を確保するようにした。
    • 上司には考えさせるよりも、提案して却下させる方向で話かけて、あまり面倒をかけないように心がける。
  • 充実感を得る瞬間

    • エンジニアリングチームのモデルを形作ったり改善するサポートができたとき。
    • 仲間の障害を取り除き、チームの勢いを保つことができたと感じるとき。
    • 新しい問題に先例のないアイデアを思いつき、仲間と実現させてなにかを生み出したとき。
    • 経験や下地が欠けた実行計画の改善に貢献できたとき。
  • 得るまでの道のり

    • 周りのサポートをし、ユーザーのことを深く考え続けた結果であり、意識してそうなったのではない。
    • CTOからさらなるやりがいを求めたのがきっかけ。
  • 得るために大切なこと

    • 推薦してくれる上司を見つけること。上司と重要な部分では考えを一致させること。プロモーションパケットを作ること。
    • 他人の声に耳を傾け、どんな問題にも自分が関係あると思って真剣に取り組むこと。
    • カンファレンスなどに参加し外部からの知名度を上げること。
  • 役に立つアドバイス

    • 会社のニーズが変化しても、それを受け入れてさらに成長する力を身に着けるべき。
    • 自分と会社の関心の重要部分については一致させておくこと。
    • 批判よりも称賛の方が多くなるから自分の業績評価は三人称で書くと良い。
    • 実力だけでなく、評判を良くしなさい。
    • たとえマネジャーの経験でもいずれ役に立つことがある。試してみるのも良い。
    • 準備と機会が出会うとき、そこに幸運が訪れる。
    • コミュニケーションは自分が理解するだけでは不十分で、理解しやすい形で表現できることが大切。
  • 学習について

    • 書籍よりも仲間からの都度得られるフィードバックから学んでいる。
    • 様々なリテラシーのオーディエンスに合わせてテクノロジーの話ができるように毎日鍛錬している。

まとめ

  • スペシャリストやマネジャーというキャリアパス以外にも、テクノロジーとビジネスの橋渡し役で活躍する選択肢の存在が語られることは、将来に悩む人へのヒントになり良いことだと思います。日本ではわざわざ肩書きを用意するメリットは思いつきません。ですが、ロールモデルが見つかることで、既に近しい立場で活躍されている方がキャリアを再考するのに役立つ書籍と思いました。
  • テクノロジーの力でインパクトのあることを仲間と一緒に実現したり、このこと通して人が成長するのを助けるのが好きな人に向いているポジションと言えそうです。
  • 組織がフラットになり権威に人が従う必要性が薄れてきた。それでも、この人について行きたい、この人のためなら頑張りたいと思わせる、人としての魅力が問われるポジションだと思いました。
  • ここでは紹介しているのは本書で書かれている内容のごく一部です。興味を持たれた方は是非お手にとって読むことをおすすめします。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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