何が書いてあるか
読んだ本の要約化で理解と記憶の定着化を目指します。
読んだ本
Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール
ニール・イヤール、ライアン・フーバー著
2014年に出版された本です。
出会ったきっかけ
超相対性理論 というPodCastで紹介されていました。
要約(本編)
イントロダクション
ハマることの力強さ、現代人はセックスよりもスマホを優先する。
心の問題を素早く解決してくれるプロダクトが勝つ。
- トリガー
- アクション
- リワード
- インベストメント
の思考フレームワークでハマらせる仕組みを考える。
1章「ハビット・ゾーン」
・良い行為を習慣化させることは顧客生涯価値を上昇させる。ここで言う価値とはサービス提供側の視点からの、ユーザーから得られる利潤のこと。単純な金銭以外のプロダクトの認知度向上や安定した運営基盤なども含む。
・一度習慣化されたら人はなかなか変えられない。例えばほとんどの人はQWERTY配列のキーボードから異なる配列には変えたいと思わない。なので競合が少し良くしたサービスを展開しても、この面倒くさい壁を乗り越えてでも、と思わせるほどのものがないと、そのサービスが流行ることはない。
・行動を何度も誘発させ脳に深く刻み込まれた無意識の習慣を変えなくてはならない。
・習慣化=頻度×使いやすさ
・喜びを求め不快感を回避する本能に沿ったメカニズムを用いる。
2章「トリガー」
・習慣は積み重ねで生み出される。
・外部トリガーと内部トリガーの2種類がある。自走しコストがかからない内部トリガーを生み出すことが最終目的で、外部トリガーはその前段の手立て。
・外部トリガーは行為の誘発。例えば目立つボタンがついたマーケティングメールにより望む行動を促す。
外部トリガーの種類
- 有償トリガー
- 名声トリガー
- 口コミトリガー
- 自己トリガー
・内部トリガーは連想の誘発。例えば他人のSNS投稿を見て、取り残され感から自身も投稿する。
・内部トリガーは心の動きなので概念としては捉えづらい。退屈、孤独、失望、不安などがきっかけとしてある。もちろん意識されずに行われることもある。
・内部トリガーは自身が外部トリガー化したものとも言える。
・トリガー設計は特定の不満や不安を明らかにすることから取り組む。このためにユーザー・ナラティブを書くことは有用だ。
・殆どの人は新しいことをやるよりも、ルーティン的に行為して心の不安を解消したいだけである。
・5回なぜと問うことで大抵の問題の本質が明確になる。
3章「アクション」
・思考するより行動が容易になるようにデザインする。
・以下の3つの要因が行動ラインを越えさせる。
- 十分なモチベーション
- 行動できる能力
- トリガーがある
・例えると、バッグの中で携帯が鳴っていても音が小さくて気づかないのはトリガー欠如、迷惑電話だと思うのがモチベーション欠如、奥に埋もれていて取り出せないのが能力欠如。
・モチベーションは快楽追求、不安回避、社会的容認追求にブレイクダウンできる。
・行為の容易さに影響を及ぼす6つの要因。
- 時間
- お金
- 身体的な努力
- ブレインサイクル
- 社会的な逸脱
- 非日常性
・費用対効果が高い投資先はモチベーションより能力である。例えばマニュアルを読んでもらう仕組みを考えるより、マニュアルがなくても操作ができるようにするほうが楽ということ。
・希少効果、フレーミング効果、アンカー効果、エンダウド・プログレス効果(ゴールに近づくほど頑張るモチベーションが高くなる)を考慮する。
4章「リワード」
・リワードとは行動モチベーションを強化するもの。
・人が最も快楽を得るのは、報酬を得たときではなく、報酬を欲する欲求から解放された時。
・プロダクトが理解され無意識下にしまいこまれると人は興奮を感じないようになる。変わったものに目が引かれるようになる。
・予測不能な報酬は3つ。
- 集団への受容感であるトライブ
- 獲物(食料から今は情報に変わったが)を追いかける本能であるハント
- 困難を乗り越えて自己肯定感を高めたいと感じるセルフ。
・マイクロマネージなどの自主性を奪う心理的リアクタンスは嫌がられることを考慮すべき。何かをお願いする場合は、選択の自由があることを示すことが大切。
・社会的なつながりを得られるようにデザインすること。
・ユーザーにさせたいことではなく、ユーザーがしたいと思うことは何かの視点が大切。
・有限の予測不能性といって、目新しかったものも慣れるに従いだんだんと魅力を感じなくなる。
5章「インベストメント」
・プロダクトの利用を継続させるために必要で、役に立つと思われ頻繁に繰り返されなくてはならない。
・人は自分の言動に一貫性を持たせたいバイアスが働く。無関係な過去の行動に縛られてしまう。
・認知的不協和
・タイミングが大切で、報酬を得た後に行わせることが大切。
・返報性を利用し、投資がプロダクトを向上させ自分にも見返りを生む、このフィードバックループを仕込むことが大切。
・インベストメントが次のトリガーとなるフックサイクルがうまれる。
6章「フックモデルをどのように活かせばよいか」
・外部トリガーで依存させ、感情で深くつながる内部トリガーに移行させるのが効果的。
・5つのポイント
- ユーザーの本当の望みをつかんでおり、それが解決されるものになっているか?
- ユーザーがプロダクトを使ってくれるだろうと思える根拠があるか?
- 報酬を期待したユーザーが取る行動がシンプルなものになっているか?
- 報酬にユーザーは満足してくるか?
- ユーザーにやってもらうちょっとした作業を想定できているか?それは次のトリガーにつながるループを生み出しているか?
・人を口説くメカニズムであるが、他にもそういった産業はある。”自分でも使うか”と、”生活を著しく改善するものか”の2軸の2x2マトリックスで意思決定する。
タイプ | 軸判定 | 解説 |
---|---|---|
ファシリテーター | 自己利用性○ 改善性○ | 健全なプロダクト。1%の不健全な依存に陥ったユーザーを掬い上げる仕組みがある限りやましさを感じる必要はない。 |
ペトラー | 自己利用性✕ 改善性○ | 改善するかも思い込みの可能性がある。 |
エンターテイナー | 自己利用性○ 改善性✕ | 刹那的で次の刺激的なプロダクトが出るか、なれて興味が失われたら使われなくなる。プロダクトを絶え間なく市場に送り出せる流通システム、新鮮なコンテンツを生み出し続けることが必要になる。 |
ディーラー | 自己利用性✕ 改善性✕ | 金儲けがしたいだけに違いない |
・昔はタバコだった中毒がスマホに取って代わった。ただし良い面での依存もあることが救いである。
7章「ケーススタディ 聖書アプリ」
・成功要因
- デスクトップサイトは成功しなかった、身近にあるもの、つまりアクションの能力を高めることで成功した。
- 小分けにして毎日触れさせるように設計したこと。
- 興味をもつセクションを前に配置し、退屈なセクションを後ろに配置することをデータから分析した。
8章「習慣性のテストと習慣化をうながす機会を探る」
・チェックポイント
- 内部トリガーは頻繁に行動を促すものになっているか?
- 外部トリガーは行動しやすいタイミングで働きかけるようになっているか?
- ユーザーが満足しリピートするようになっているか?
- 報酬を得られ、さらに得ようとリピートする仕組みになっているか?
・既存プロダクトの可能性を探ったり、習慣性を作り上げられるアイデアを発見するのに有用だ。ただし、最終的にはプロダクトを作って使ってもらうい、習慣化できそうかを検証するしかない。
・ステップ
- 頻繁に使ってくれそうなユーザー像を考える。条件に合うユーザーの母数を年齢層などから算出する。
- 母数の5%が習慣的に利用してくれると仮説立てする。5%を越えることができたら、利用者の行動の体系化を行う。習慣化の過程として共通項を多頻度のユーザーデータから探る。見つけられたら強化施策を考える。
- 新規ユーザーを習慣化の過程へと導く方法を見つけ改善する。
・初期行動を探ることは新しいビジネスの機会を発見する可能性につながる。
感想
使ってもらえる良いプロダクトを考える際のフレームワークとして参考になる。
「気合を入れて作ったのに使ってもらえなかった、ユーザーに聞いても考えても改善点がわからない。」
「ある程度ユーザーを獲得できたので、もっと大きくしたいがどこを強化していったら良いかわからない。」
といった時に役立つと思った。
システムデザインやビジネスアイデアの本を読む度に、人間心理学・社会行動学との境界線が曖昧になってきていると感じ、こちらにも手を出したくなる。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ご意見や感想がありましたらよろしくお願いします。