Intel Arria10 SoC : 初期性能評価(環境構築編1)- ツールチェーンと版数選定
はじめに
本記事は、Arria10 SoC 評価を始める前提として、
どの開発ツールが必要で、どの版数を選ぶべきかを整理したものです。
もともとは数年前に実際に行った技術検証ですが、
Qiita でニッチ技術の記事特集があると知り、今あらためて整理して記事化をすることとしました。
- 対象は Intel Arria 10 SoC 評価キットです。
- ここではツールチェーンの全体像と版数選定を扱います。
- Ubuntu 上の依存関係や USB-Blaster の詰まりどころは、環境構築編2へ分けます。
- 最終的には、HPS 側 2 コアの役割分担構成を試せる土台を整えるところまでを見据えています。
先に結論
今回の評価で必要だった主要ツールは次の3つです。
- Quartus Prime Pro
- SoC EDS
- ModelSim
そして、評価時点では Quartus Prime Pro 18.1 / SoC EDS 18.1 を採用しました。
理由は単純で、今回の評価環境では、当時の新しめの版である19.1よりも Linux 上での動作安定性が高かったためです。
なぜ Arria10 SoC で複数ツールが必要なのか
Arria10 SoC は、単なる FPGA ではなく、FPGA と ARM 系プロセッサを同居させた SoC です。
そのため、評価時には少なくとも次の観点が必要になります。
- FPGA 側の設計・コンパイル
- ARM 側のソフトウェア開発
- 必要に応じたシミュレーション
この役割分担に対応するため、ツールが分かれます。
各ツールの役割
Quartus Prime Pro
Quartus Prime Pro は、FPGA 側の開発環境です。
- FPGA ロジックの合成
- 配置配線
- ビットストリーム生成
- 既存プロジェクトの IP 更新
今回の評価対象とした Arria10 SoC の開発フローでは、無償版より Pro 系を前提に考える方が進めやすいです。
SoC EDS
SoC EDS は、ARM 側の開発環境です。
- ベアメタル開発
- SoC 向けビルド
- 一部デバッグ関連の作業
SoC 側を触るなら、Quartus だけでは足りません。
ARM 側のソフトウェアを評価するために SoC EDS が必要です。
ModelSim
ModelSim は、必要に応じて使うシミュレーション系のツールです。
- HDL の動作確認
- 一部の検証系フロー
今回の評価テーマは演算性能寄りですが、周辺の動作確認まで含めると無関係ではありません。
版数選定の考え方
基本方針としては、可能な限り新しい版を使うのが素直です。
理由は次のとおりです。
- バグフィックスが入っている
- コンパイル速度や安定性が改善している場合がある
- 公式サポート情報が新しい版へ寄りやすい
ただし、実務では「新しい版なら必ず良い」で終わりません。
今回 18.1 を選んだ理由
評価当時は19.1も候補でしたが、最終的には18.1を採用しました。
判断理由は、今回の評価環境で Linux 側の USB-Blaster II 認識問題が発生したためです。
- 今回の評価環境では、Windows 側は 18.1 / 19.1 ともに大きな問題なし
- 今回の評価環境では、Linux 側は 19.1 で USB-Blaster II の認識が不安定
- 今回の評価環境では、18.1 でその問題を回避できた
つまり今回の版数選定は、
機能差よりも、評価環境として安定して動くかを優先した
という判断です。
これは評価用途ではかなり重要です。
性能を測る前に環境が不安定だと、結果の意味まで曖昧になるからです。
サンプルプロジェクトとの相性
もう一つの注意点は、サンプルや既存プロジェクトが特定版数前提で作られていることです。
- Intel 公式サンプル
- RocketBoards 系のサンプル
- 評価キット付属プロジェクト
こうしたコミュニティで共有されているサンプル(RocketBoards など)を使うときは、まず公開当時の版数に合わせて動かすことが重要です。
版数が変わると挙動差で意図した結果にならないことがあるため、最初は再現性を優先した方が切り分けしやすくなります。
ただし実際には、Quartus 側で IP のアップグレードやダウングレードを促されることが多く、
多少の版数差であれば吸収できる場合もあります。
そのため、まず公開時の版数で再現し、再現できた後に必要な範囲だけ版数を更新していく進め方が安全です。
したがって、版数選定では次の2点を天秤にかけることになります。
- 新しい版のメリット
- 手元の既存プロジェクトが安定して動くか
ライセンスの考え方
Arria10 SoC では、ライセンス周りも早めに把握しておいた方がよいです。
ここは、まず次の理解で十分です。
- Arria10 クラスの評価では、有償ライセンスが必要になる場合があります。
- 評価キット購入時に、1年ライセンスが付いてくる構成もあります。
まずは「手元の構成で追加ライセンスが必要か」を最初に確認する、という進め方で問題ありません。
最終的な条件は版数や契約形態でも変わるため、Intel の最新情報を確認していただけると安心です。
ライセンスで迷いやすい点
ライセンス周りで迷いやすいのは、次の2点です。
- ツールをインストールできても、実際のコンパイルで制限に当たることがある
- 評価キット付属ライセンスでどこまで進められるかが構成ごとに違う
このあたりは性能評価以前の前提条件なので、最初に切り分けておくと進めやすいです。
今回の環境で押さえた構成
最終確認ベースでは、次の組み合わせで評価を進めています。
- OS: Windows 10 / Ubuntu 18.04
- Quartus Prime Pro: 18.1
- SoC EDS: 18.1
- USB-Blaster II を使用
この組み合わせにしたことで、少なくとも「評価を進められる状態」までは到達できました。
後続で CPU0 側のベアメタル演算と CPU1 側 Linux 運用を試すうえでも、まずこの土台が必要になります。
評価キットの関連ドキュメントを確認できる参考資料
評価キットの関連ドキュメントを確認したい場合、以下の資料を参照してみてください。
-
Intel 公式検索結果: Arria 10 SoC Development Kit のクイックスタートガイドや設計資料の詳細リンクとPDFファイルなどがあります。
-
RocketBoards のボード紹介ページ: 評価キット写真とブロック図がまとまっています。
-
Intel 公式検索ページ: Intel Search - Arria 10 SoC development kit
-
RocketBoards ボード紹介: Altera Arria 10 SoC Board
-
RocketBoards 掲載画像: arria10_soc_kit.png
評価キット外観
評価キットのブロック図
ボード写真(作業資料より)
環境構築編2で扱うこと
版数を決めても、Linux 側ではまだ実務上の詰まりどころが残ります。
次の記事では、次を扱います。
- Ubuntu 18.04 上の依存関係解決
- USB-Blaster II 認識問題
- Quartus 起動時の不足ライブラリ
- ModelSim 周りの追加対応
まとめ
- Arria10 SoC 評価では、Quartus Prime Pro / SoC EDS / ModelSim の役割分担を先に理解した方がよいです。
- 版数は「新しいほどよい」で終わらず、評価環境として安定するかで決めるべきです。
- まず公開当時の版数で再現し、再現後に必要な範囲で更新する進め方が安全です。
- 今回は Linux 上の安定性を優先して 18.1 を採用しました。
- ライセンスは後回しにせず、Arria10 クラスで必要な条件を最初に確認しておくのが安全です。
同じ環境をこれから組む方の判断材料として、少しでも役立てていただければ幸いです。


