はじめに
米国時間10月18~20日、「Oracle CloudWorld 2022」が開催されました。コロナ禍で2020年以降はオンライン開催でしたが、今回は3年ぶりにリアルでの実施となりました。keynoteはYoutubeで無料公開されていますのでこちらからご覧ください。また、多数のOracle Cloudにおけるアップデートの発表がありましたのでピックアップしたものを紹介したいと思います。
注目アップデート一覧
1.PostgreSQL Aries
2.Java 19とJava SE Subscription Enterprise Performance Pack
3.MySQL HeatWave LakehouseとMySQL HeatWave on Azure
4.Oracle Alloy
5.シングルラックでOracle Cloudと同等の機能を備えたハードウェア
6.Oracle Database 23c Beta
7.OCI Full Stack Disaster Recovery
8.Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service
9.Oracle GoldenGate 23c
10.OCI Workflow
11.Oracle Cloud Infrastructure Queue
1.PostgreSQLのマネージドサービス「PostgreSQL Aries」をOracle Cloudで提供予定だと発表
PostgreSQL Ariesは、ライフサイクル全体を通した運用、バックアップやリストア、パッチの適用、スケールアップやスケールダウンなどPostgreSQLのマネージドサービスで期待される機能はすべて用意されるとしたうえで、オラクルが開発中のデータベースに最適化したストレージ「Aries」を用いると説明されました。
「PostgreSQL Aries」はこの最適化ストレージを用いることで、通常のPostgreSQLよりも高い性能や信頼性が得られるとのことです。
「私たちはPostgresにも非常に大きな投資をしており、Postgresのマネージドサービスを提供しようとしている。PostgresとAriesを組み合わせることで、Postgres単体よりも高い信頼性、高いパフォーマンス、高い効率性を実現する」(オラクル クラウドインフラストラクチャ担当エグゼクティブバイスプレジデント Clay Magouyrk)
2.Java 19とJava SE Subscription Enterprise Performance Pack
Oracleは、プラットフォームの機能強化により、世界No.1のプログラミング言語と開発プラットフォームの最新バージョンである「Java 19」の提供と主要機能を発表しました。この更新は、開発者が生産性を向上させ、特にクラウドでビジネス全体のイノベーションを推進するのに役立ちます。
これをIDCのソフトウェア開発担当リサーチ・バイスプレジデントのArnal Dayaratna氏は次のように述べます。[Java開発者は、クラウドやオンプレミス、ハイブリッド環境にデプロイするための高機能アプリケーションを効率的に構築するためのツールを一層、求めています。Java 19の機能強化は、これらの要求に応えるものであり、Javaエコシステムが、開発者と企業の現在および将来のニーズを満たす上で、いかに有利な立場にあるかを示しています。](IDCソフトウェア開発担当リサーチ・バイスプレジデントArnal Dayaratna)
また、Java 8のままでJava 17並の性能を得られるパフォーマンスパック「Java SE Subscription Enterprise Performance Pack」を発表しました。Java 9への以降には大きなハードルがあり、それゆえにJava 8のまま稼働し続けているシステムは少なくありません。今回発表された「Enterprise Performance Pack」は、こうしたJava 8を使い続けている顧客向けのものです。
3.MySQL HeatWave LakehouseとMySQL HeatWave on Azure
オラクル、400TBのワークロードにおいてSnowflakeの17倍、Redshiftの6倍高速なクエリ性能を提供する「MySQL HeatWave Lakehouse」を発表。お客様は、CSVやParquet、AuroraおよびRedshiftのバックアップなど、各種ファイル形式でオブジェクト・ストアに保存されている数百テラバイトのデータに対して処理およびクエリ実行ができるようになります。「MySQL HeatWave Lakehouse」は、単一のMySQLデータベース内にトランザクション処理、アナリティクス、機械学習、機械学習をベースとした自動化を組み合わせた唯一のクラウドサービスである「MySQL HeatWave」ポートフォリオに追加される最新の製品です。
オラクル、Azureからも分散インメモリDBのMySQL HeatWaveを利用可能に。「MySQL HeatWave on Azure」発表。
オラクルとマイクロソフトのクラウド分野における戦略的提携によってMicrosoft AzureとOracle Cloud Infrastructureを接続する高速回線が用いられます。高速回線のスペックは、40Gbps、2ミリ秒以下のレイテンシとされており、2020年5月にはMicrosoft Azure東日本リージョンとOracle Cloud東京リージョンの相互接続も実現しています。
この高速回線を通じてMicrosoft AzureからOracle Cloud Infrastructure上のMySQL HeatWaveを容易に使えるようにしたわけです。
また、2022年9月にAWS上で稼働する「MySQL HeatWave on AWS」の提供を発表しました。今回の発表と合わせてユーザーAWS、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructureと3つのクラウドからの利用が可能になります。
4.Oracle Alloy
「Oracle Alloy」は、パートナがクラウド・プロバイダになりクラウド・サービスを提供できるクラウド・インフラストラクチャ・プラットフォームです。SIerやサービスプロバイダ自身がクラウドサービスを組み立てるためのハードウェア、ソフトウェア、Oracle Cloudで提供されているサービスを実現するためのソフトウェア、ソフトウェアアップデート、トレーニング、サポートなどの一式をオラクルが提供し、SIerやサービスプロバイダはそれを基に自社でカスタマイズしたクラウドを構築し、自社ブランドのクラウドとして運用、サービス提供できるというものです。
このサービスの登場により地域や業界によって異なる独自の規制や商習慣などのそれぞれに密接に対応したさまざまなサービスや運用形態を備えたクラウドサービスを、SIerやサービスプロバイダが新たなビジネスチャンスとして提供できるようになるとオラクルは説明しています。
5.シングルラックでOracle Cloudと同等の機能を備えたハードウェア
オラクルOracle Cloudと同等の機能を備えたハードウェアをシングルラックのサイズで実現できるよう開発を進めていることを明らかにしました。
「私たちのビジョン、そしてゴールは、パブリッククラウドの全ての機能をシングルラックで可能にすることだ」(オラクル クラウドインフラストラクチャ担当エグゼクティブバイスプレジデント Clay Magouyrk)
シングルラックで小さなクラウドのリージョンを実現するサービスは、AWSがAWS Outpost、マイクロソフトやGoogleもパートナー企業とともにAzure HCI StackやGoogle Distributed Cloud Edgeなどで提供しています。オラクルはこの分野でも、先行する3社に追いつくための製品開発を進めています。
6.Oracle Database 23c Beta
Oracle Databaseの新しいバージョンである「Oracle Database 23c」の Beta版を発表しました。「Oracle Database 23c」(App Simple)は、JSON、グラフで記述されるアプリケーションや、マイクロサービスにおいて開発者の生産性を飛躍的に向上させる先進の新機能を提供し、加えてSQLの強化による使いやすさのさらなる向上や、JavaScriptのストアド・プロシージャ言語としての追加などの機能が強化されています。例として、「Oracle Database 23c」は、JSON Relational Duality(JSONとリレーショナルの二面性)という画期的な新アプローチを採用し、アプリケーションによるデータの表現方法とリレーショナル・データベースによるデータの格納方法の間のミスマッチに対応します。JSON Relational Dualityは、データをアプリケーションに適したJSONドキュメントとして、およびデータベースに適したリレーショナル表として同時に使用できるようにすることで、アプリケーション開発を簡素化します。
7.OCI Full Stack Disaster Recovery
「Oracle Cloud Infrastructure Full Stack Disaster Recovery」の一般提供を発表しました。1回のクリックでアプリケーション・スタック全体の包括的なディザスタ・リカバリ管理を提供する、OCIの最初の真のディザスタ・リカバリ(DRaaS)ソリューションです。
OCI Full Stack Disaster Recoveryサービスは、OCIリージョン間のインフラストラクチャ、プラットフォームおよびアプリケーションの移行を世界中のどこからでも1回のクリックで管理します。お客様は、専用の管理サーバーや変換サーバーを必要とせずに、既存のインフラストラクチャ、データベースまたはアプリケーションを再設計または再デプロイすることなく、ディザスタ・リカバリ環境をデプロイできます。
8.Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service
「Zero Data Loss Autonomous Recovery Service」は、OCI上で独自のOracle Database保護機能を提供し、他のクラウド・サービス・プロバイダでは使用できません。Exadata Database Service、Enterprise Database ServiceまたはStandard Database Serviceを利用するお客様は、リアルタイム保護を有効にしてRecovery Serviceを使用するように自動バックアップを構成できます。これらのデータベース・サービスは、クラウド管理のシンプルさにより、ランサムウェアのリスクを軽減し、業務効率を向上させるメリットを得られるようになります。
また、オラクルはゼロトラスト、階層型防御をはじめとしたセキュリティモデルに対応するために下記のサービスをお客様に提供しており、今回の発表で提供できるセキュリティがさらに強固なものへと進化します。
9.Oracle GoldenGate 23c
Oracleは「GoledenGateについて6点」のアップデート発表がありました。1つ1つも重要ですが、世界で最も広く使われているデータファブリックソリューションの1つにとって、大規模なアップデートとなります。
アップデートは下記となり今後さらに多くのデータの移行に対応可能となります。
-OCI GoldenGateで30以上の新しい異種データプラットフォームをサポートすることを発表
-OCI GoldenGate Stream Analytics の発表
-Oracle GoldenGate における Online MongoDB Migrations のCertification
-GoldenGate for Big Data Targets の発表
-Oracle GoldenGate Free の発表
-GoldenGate 23c の発表とベータ版プログラムへの招待
10.OCI Workflow
「OCI Workflowサービス」のβ版を発表されました。これは開発者とアーキテクトが、アプリケーションとビジネス ロジックの作成と処理、自動化された IT タスク、データ ジョブ、およびクラウドサービスのオーケストレーションを加速できるようにする、グラフィカルなフロー・デザイナーを備えたサーバーレス・ワークフローエンジンです。OCI Functions、Object Storage、API Gateway、Computeなど。 OCI Workflow を使用すると、composable application(目的に応じて構成可能なアプリケーション)を簡単に作成できます。
例えば、下記のような課題に対して実行可能です。
・サービスのオーケストレーション
-一連のタスクを実行し、インフラストラクチャのプロビジョニング、移行、およびパッチを自動化
-順番に処理する必要がある複数のサーバーレスfunction
-機械学習モデルをトレーニングするための一連のタスク。各ステップで次のステップから値を取得し、モデルステップの出力に基づいて次に実行するステップを決定
-多くの小さなコンポーネントをオーケストレーションして、モノリシックサービスをアプリケーションに公開。さまざまなマイクロサービス、またはサーバーレス機能によって実装可能
・タスクの自動化
-検出されたセキュリティ違反やその他のインシデントへの対応などの SecOps タスク
-不正検出、またはリスク評価
-機械学習モデルのトレーニングに関連するプロセスの自動化
11.OCI Queue
新しいサーバーレス・メッセージング サービスである 「Oracle Cloud Infrastructure (OCI) Queue」 の今後のリリースを発表されました。 Queue は現在Limited Availability提供されており、まもなく一般提供されます。 サービスが開始されたときに通知を受け取るには、サインアップの手続きを行う必要があります。
OCI Queue は、ワークロードの需要に合わせて自動的にスケーリングするフルマネージドのサーバーレス・メッセージ配信サービスです。OCI Queue はアプリケーションを分離し、非同期イベント駆動型アーキテクチャを構築するのに役立ちます。