はじめに
ケーブルハーネスやコネクタ周辺のCADモデルを作るとき、熱収縮チューブもモデリングしたくなる時がありますよね? でも、単純な円筒を置くだけでは「収縮してフィットした」感じが出ず、ロフトやスイープで断面を定義しようとしても、3本の被覆線が束ねられたあたりのくびれた感じは表現しにくいと思います。
そこで本記事では、Fusion 360のForm(T-Spline)ワークスペースにあるプル機能を使い、既存のケーブル形状にチューブを吸着させる方法を紹介します。
この方法、ダメ元で試したのですが、結構上手く行きました!
完成イメージ
こちら↓がモデリング前(素の円筒状)で、
そしてこちら↓が完成後(信号線の凹凸に沿って収縮したチューブ)です。
…どうでしょうか? 結構いい感じじゃないですかね?
この記事で使う手法
手順は次の4段階です。
- Formワークスペースで仮の円筒を作る
- メッシュの分割数を増やして形状を細かくする
- プルでシースと各信号線の被覆にフィットさせる
- 厚みを付けてソリッド化し、外観を設定する
FormワークスペースはT-Splineメッシュを編集するモードですが、今回使うのは円柱・プル・厚みの3ツールだけです。ソリッドモデリングができていれば、Form未経験でも追える内容になっています。
前提・準備
次のパーツがあらかじめモデリングされていることを想定しています。
- コネクタ
- 各信号線の被覆(本記事の例では3本、ロフトで作成)
- シース(外装ケーブルのこと、押し出しで作成)
チューブをかぶせる位置で、被覆とシースが連続している必要があります。プル操作のターゲットとしてこれらの面を指定するためです。(ボディとして結合されている必要はありません)
作業を始めるときは、画面上部のワークスペース切り替えからフォームを選び、フォームを作成に入ります。
Step 1 — Formワークスペースで円筒を作成する
熱収縮チューブの素形として、Formの円柱ツールで仮の円筒を置きます。
フォームを作成を選択
メニューからフォームを作成を選び、Form編集モードに入ります。
円柱を選択
作成メニューから円柱を選びます。
基準面を選択
円柱の軸に沿う基準面をクリックします。ケーブルの軸方向に垂直な面を選ぶと配置しやすいです。シースの端面を選択するのが良いと思います。
中心点を指定
底面の円の中心となる点をクリックします。チューブがかぶさる位置の中心に合わせてください。シースの端面の円の中心を指定するのが良いと思います。
直径を指定
円筒の直径を指定します。シース部分よりやや大きめに設定してください。収縮前のチューブは被覆物より余裕のあるサイズである必要があります。
円筒の確認
円筒が出現し、サイズ設定画面に切り替わります。
Step 2 — メッシュの分割数を増やす
プルで滑らかに収縮させるには、メッシュの分割数が重要です。分割が少ないと角ばった形状になったり、うまく被覆やシースに沿った形状にならなかったりします。また、多すぎると今度はFusion360の操作が重くなったり、過剰に被覆やシースに沿った形状となってしまったりします。
軸方向の分割数を指定
軸方向の双方向矢印をクリックし、高さの面の分割数を指定します。あわせて方向を対称に変更してください。中心を基準にメッシュが両端へ伸びるため、信号線の被覆とシースの間にまたがるような配置にしやすいです。
目安として、高さの面(=ケーブルの長さ方向)の分割数は10程度に設定しています。
円周方向の分割数を指定
円周方向の双方向矢印をクリックし、直径の面(=円筒の円周方向)の分割数を指定します。目安として20程度に設定しています。
作る円筒の高さは、シース端からコネクタ側の被覆束までをカバーする長さに適宜調整してください。
設定が終わったらOKを押して円柱(というより円筒)の作成を確定します。
Step 3 — プルで被覆にフィットさせる
ここが本記事の核心です。Formのプル機能を使い、円筒の頂点を既存のケーブル形状に吸着させます。
プルを選択
修正メニューからプルを選びます。
頂点選択モードに切り替わる
プルの設定画面が開き、頂点を選択するモードに変わります。
すべての頂点を指定
矩形範囲選択を使い、円筒上のすべての頂点を指定します。チューブ全体を一括で収縮させるため、頂点は漏れなく選んでください。
もし矩形範囲選択で裏面側の頂点が選択されない場合は、メニューの「選択」→「選択フィルタ」から「裏側も選択」にチェックが入っていない可能性があるので、確認してみてください。
プルタイプを設定
ターゲットを選択に切り替え、プルタイプを制御点に設定します。制御点モードでは、Tスプラインの制御点がターゲット面に向かって移動し、それっぽい滑らかなフィット形状が得られます。
ターゲットを指定
ターゲットとして、チューブがかぶさる範囲のジオメトリを指定します。本記事の例では次の4つを選択しています。
- シース(外装ケーブル)部分
- 各信号線の被覆部分(3本)
フィット結果の確認
指定が完了すると、円筒がシースと信号線の被覆に沿った形状に変化します。3本の被覆線の凹凸がチューブ表面に現れ、熱収縮したような見た目になります。
プルを確定
問題なければOKを押してプル機能を閉じます。
うまくいかないときのTips
- 形状が角ばる、段差が目立つ → Step 2に戻り、分割数を増やす
- 一部だけフィットしない → ターゲットの取りこぼしがないか確認する(被覆の端まで選択されているか)
- 全体が収縮しきれない → 円筒の初期直径が小さすぎる可能性がある。プル前に直径をやや大きくし直す
ここまでで多少形状がイマイチだったとしても、次に行う厚みをつける工程で何とかなります。
Step 4 — 厚みを付けてソリッド化する
プル後のTスプラインは面(シェル状)のため、そのままでは実体のチューブとして扱えません。厚みを付けてソリッド化します。
厚みを選択
修正メニューから厚みを選びます。
厚さのタイプをソフトに変更
厚さのタイプをソフトに変更します。ソフトは曲面の滑らかさを保ちやすく、熱収縮チューブのなめらかな肉厚に向いています。標準タイプと比べて、曲面の維持に優れた結果が得られます。つまりはよりそれっぽいということです。
プル形状を選択
先ほどプルで作った形状をクリックして選択します。厚みに関しては、熱収縮チューブ自体の仕様に合わせるのがベストだとは思いますが、あまり薄いとソリッドにした際に破綻するので、ここでは0.5mmとしました。
厚みを確定
OKを押して厚み機能を閉じます。
Step 5 — フォームモードを終了し仕上げる
フォームを作成モードから戻る
画面右上の完了ボタン(☑)を押し、フォームを作成モードを終了してソリッドモデリング環境に戻ります。
形状の確認
Form完了後、通常のソリッドボディとしてアセンブリに組み込める状態になっています。
熱収縮チューブの形に近い、いい感じの形状が得られましたね!
外観を指定
任意ですが、外観(Appearance)を設定するとよりリアルに見えます。本記事の例では灰色のプラスチックを指定しています。黒〜グレーのマットな質感が熱収縮チューブらしさを出しやすいです。
完成!
はじめに示したAfterイメージと同じ形状が得られます。
まとめ
熱収縮チューブのモデリングは、次の流れで行います。
- Formでシースよりやや大きめの円筒を作る
- メッシュ分割数を調整する(目安: 直径20面・高さ10面)
- プル(制御点)でシースと被覆にフィットさせる
- 厚み(ソフト)でソリッド化する
この手法が向いているのは、不規則な断面への収縮や、複数ケーブルへのフィット表現です。一方、厳密な肉厚管理が必要な場合は、ソリッドモデリングとサーフェスモデリングを併用する方法も検討してください。
今回の手法はあくまで、それっぽい形状を簡単に得るための方法としてお考えください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
本記事の手順はFusion 360のFormワークスペースを前提としています。バージョンやUIの更新でメニュー名や配置が変わる場合があると思いますが、円柱 → プル → 厚みという流れは共通です。
同様のモデリングをしたい方の参考になっていればとても嬉しいです。
























