令和時代のアウトソーシングビジネスのあるべき姿は?パイオニア企業の取り組む組織改革が素晴らしい
パソナテックの歴史は、四半世紀前にまでさかのぼる。インターネットが本格的に普及し始めるよりも早く、IT人材の育成と供給というビジネスに可能性を見出し、エンジニアキャリア創造のパイオニアとして国内でもいち早くIT専門の人材ソリューションの提供を始めたことが、パソナテックの原点だという。
今なおIT・エンジニアリング分野に強みを発揮している同社は、RPAやAI、IoTなどを組み合わせたデジタルトランスフォーメーション(以下DX)領域に積極的に注力し、自社独自のプロダクトを企画、展開するなど、従来型の人材サービス企業とは一線を画す存在となっている。
しかし、パソナテックが持つ特異性はそれだけにとどまらない。「仕事を楽しんでいることが評価される」「同じ現場に配属されていても、他社より残業時間が少ないことも珍しくない」「現在、社員登用やリファラル採用を強化している」など、聞けば聞くほど、一般的なイメージとは異なる話題に事欠かないのだ。
外から見ているだけでは、なかなか知る機会の少ないパソナテックのリアルとはどんなものなのか。今回は、パソナテックのDX施策を推進する旗振り役と、約1年前にパソナテックへ転職し、多方面で活躍を続ける現場のキーパーソンの2名に、同社の魅力を存分に語っていただいた。
目次
・ITクライアントワークのパイオニア
・「やりたいことを見つけやすい」受託開発のススメ
・仕事を楽しむことが評価項目の1つに
プロフィール
担当領域を増やしたい一心で独学でプログラミングを学び、プログラミングスクールでカリキュラム開発に従事。その後、ヨガ/ピラティススタジオを運営する企業にて情シスを担当。2018年、AIの可能性に魅力を感じ、現在のパソナテックにAIエンジニアとして転職。現在は、AI/RPA/IoT等のデジタルテクノロジーを活用したお客様の課題解決ソリューションの提案からPoC、開発、運用などを行う。
インタビュアー
ITクライアントワークのパイオニア
高橋宏明(以下、高橋):本日はよろしくおねがいします。まずは、読者の皆さんにパソナテックのことを知ってもらうために、簡単にどのような会社なのか、教えていただけますでしょうか。
石川大祐さん(以下、石川):当社はパソナグループの一事業部から法人化して誕生したITサービス企業です。今から約25年ほど前、オフィスにPCが普及する以前から、IT人材の育成と供給にビジネスとして大きな可能性を感じ、エンジニアのキャリア形成に挑む形で始まりました。
高橋:PCが本格的に普及する前、ということは、当然インターネットも普及していない時期ということになりますか?
石川:はい、おっしゃるとおりです。とはいえ、技術の進化には当時も目覚ましいものがあったと聞いています。当時からパソナテックはエンジニアや企業のハブとなってネットワークをつくりたいという想いがあり、エンジニアが輝ける機会の提供に取り組んできました。
今現在も、国内海外を問わず、IT人材がより充実して働ける価値と環境を創出することを目指しています。在宅勤務やワークライフバランスの充実といった働き方はもちろん、RPAやAI、IoTといった今後さらなる成長が見込める分野に従事するデジタル人材の育成などにも力を注いでいます。
高橋:パソナテックがRPAやAIなど、DX領域に本格的に力を入れていくことになったのには、どういった流れがあったのでしょうか。
石川:当社が得意としている領域の一つに運用フェーズがあります。日々のオペレーション業務の効率化、運用コスト適正化はパソナテックの強みだからです。
各現場ではオペレーション業務の最適化に向けて取り組んでいるわけですが、その中でRPAやAIはやはり見逃せないキーワードです。そうした土壌があって、RPAやAIをやろうという機運が自然と盛り上がってきたと言えます。
高橋:そうなると、ただ単にDXに注力するというだけでなく、実際にどういう風に運用されているのか、というところまで追いかけていくケースが多そうですね。
石川:私たちにとってはサービスは作ってからがスタートで、そこからどうお客様と伴走していくかを重視しています。どうしてもエンジニアの世界では「新規開発」が花形のように見られがちですが、実際は「作って終わりではなく、そこからどうビジネスに繋げるか」が重要ですよね。
パソナテックはこの運用フェーズで成果を出せる方をきちんと評価します。当然「上流フェーズに進むことがキャリアアップ」という画一的な評価のやり方もしていません。心の底からお客様と一緒に運用部分に携わることが好きで、高いパフォーマンスを発揮している方には、その能力にふさわしい評価をする。それがパソナテックのスタイルです。
また、「若い間は残業してでもスキルを伸ばしたい」という声もありますが、当社の場合はそうした声に対して労働時間を増やすのではなく、より責任あるポジションを任せることを徹底しています。時間単位の仕事の密度を増やす、という方針ですね。現場のエンジニアのテンションを下げないようにしつつ、彼らの成長のために何ができるのかという視点は常に大事にしています。
「やりたいことを見つけやすい」受託開発のススメ
高橋:主観的かもしれませんが、いわゆるIT人材サービスを提供している企業は、会社主導でプロジェクトに人を当てていくというイメージがありました。しかし、パソナテックは少し毛色が違うように聞こえます。
石川:実際に稼働し始めたプロジェクトの仕様を変えることは難しいですが、なるべく仕様が固まる段階から、そのプロジェクトに配置する予定のエンジニアにもミーティングに参加してもらうようにしています。その中で「できることは何か」「調整できる点はどこか」を一緒に考えてもらうようにしています。
高橋:なるほど。一方で、先程パソナテックは運用フェーズに強みを持つという話もありましたが、運用フェーズほど人材の代えがきかず、同じ人材を同じ現場に拘束し続けざるを得ないという状況も生まれやすいと思います。この点はどう対処しているのでしょう。
石川:運用フェーズからのキャリアチェンジを考えているエンジニアに対しては、「自分が現場に入らなくても良い状態を作るには何をするか」という目標を立ててもらうなどしています。自分が手を動かし、現場に介入し続けなくてはいけない状況そのものから脱却させるような目標を設けることで、人に依存したプロジェクトを減らしています。ここには新人育成などの要素も含まれるので、マネジメントスキルの向上にも繋がります。
その他にも、社内公募制度も整えています。会社として特に注力すべき技術領域に関するポジションが半年ごとに公開され、興味があれば上司の承認もなく自由にエントリーできます。
高橋:その社内公募で選考を通過した場合、上司の方はいつその情報を知るのでしょう?
石川:上司は本人への内示のタイミングで知ることになりますね(笑)。まだ初めて数年の制度ですが、一定の成果も出ていますし、今後はますます広がっていくのではないかと考えています。
高橋:いい制度ですね。ただ、それほどまでにエンジニア一人ひとりの要望に応えていくとなると、管理者側のコストが非常に高いと思います。それでもなお、やり続ける理由とは何なのでしょうか。
石川:最終的にはエンジニアが満足して働ける環境を整えることが、会社の成長にもつながると考えているからです。エンジニアが何百人、何千人と参加している開発プロジェクトであっても、細かく見ていけば数名単位のチームがそれぞれに高いパフォーマンスを上げなければ、プロジェクト全体の成功はありえません。
そうなると、各チームに中核となる人材が必要になってきます。パソナテックではこの中核人材の確保と育成が急務だと考えています。中核を担う彼らが楽しそうに働いてくれれば、その好影響はチーム内にも広がり、結果、プロジェクト全体にもいい結果をもたらしてくれるはずです。
高橋:なるほど。ではそのチームの中核を担う、パソナテックの考える人材はどういう志向を持っている方だと思いますか?
石川:自分からお客様の要望を聞いて改善するように動いてみたり、新しい提案を持ち込むような、自発的に動くエンジニアの方であれば良いなと思います。
プライムベンダーとして様々なプロジェクトに参画している当社だからこそ、より希望に沿った働き方は実現できると思います。
高橋:パソナテックはどうしても大手企業のようなイメージがあるので、小回りがきくような組織だというのは正直意外でした。
石川:やりたい事をメンバーから吸い上げて形にしていくというスピード感でいうと、ベンチャー企業と何ら変わらないと思っています。むしろ、これだけIT技術が驚異的なスピードで進化している中で、組織のあり方が変わらないほうが不自然です。
せっかく働くなら楽しいほうが良いですし、自分の部屋のように快適な環境を自分で作ってしまってほしいとも考えています(笑)。
高橋:一方で、これまでの実績や規模感を武器とした、働き方やプロジェクトの柔軟性を持たせるための提案はできる、と。
石川:そうですね。多種多様なプロジェクトの中から、自分のやりたい事、希望に近い働き方を選ぶことができるのも、パソナテックの強みだと思います。もし明確にやりたい事、突き詰めたい技術がまだ見つかっていない方であれば当社はぴたりとハマると思います。
パソナテックは人材サービス会社であることに加えて、自前で新たなサービスの企画・開発に取り組む事業会社としての顔も持ち合わせています。さらには、他の企業と協業して、よりよりサービスを日本国内に展開させていくといった構想も水面下で動いています。
様々な技術、働き方、そして「誰のために働くのか」というキャリアプランを吟味しながら、自分に一番しっくり来る生き方を追求できる。そういう幅の広さは、他社にはないものだと思います。
仕事を楽しむことが評価項目の1つに
高橋:ありがとうございます。ここからは約1年前に転職し、現在AIエンジニアとして活躍されているという金子さんにもぜひお話を聞きたいと思います。まず、金子さんがパソナテックに転職を決めた理由を教えていただけますか。
金子拓哉さん(以下、金子):石川の話にも出てきた通り、「誰と一緒に働くか」「誰のために働くか」という考えが転職活動の軸としてありました。Qiita Zineで話す事ではないかもしれませんが、いわゆる求人広告の情報はあまり鵜呑みにしないように心がけていて、色んな会社の面接に伺っていました。
最終的に複数の会社から内定をいただいていましたが、選考面で一番人柄に誠実さを感じたパソナテックに入社を決めました。
高橋:その選考時に感じた誠実さとは、具体的にはどういうことだったのでしょうか。
金子:通常の選考プロセスとは違い、カジュアル面談という形で一緒に働くことになる社員と腹を割って話す機会を設けてくれました。その方の人間的な魅力に引かれて入社しましたが、あの時の判断は間違っていなかったと思いますね。
石川:会社としても、現場ではたらく人のありのままを見てもらうことは大切にしています。カジュアル面談はあくまでもオフィシャルな選考の場ではないですが、現場の社員も積極的に協力してくれています。一緒に働く仲間探しのために時間を費やしてくれる風土が根付いているのも、パソナテックの良いところかもしれません。
高橋:では質問を変えてお伺いします。金子さんは現在AIエンジニアとしてご活躍中とのことですが、入社前はそうした経験がなかったともお伺いしています。転職後はどういった業務に関わっているのでしょうか。
金子:仰る通り、入社前まではAIに関する実務経験はほぼありませんでした。むしろ、現在データ加工などで多用するPythonなども、業務上扱ったことはなく、独学で学んでいた程度でしかありませんでしたから。
そうした面も考慮してくれ、入社直後はデータクレンジングなどを中心に手がけ、業務理解を深める事に集中し、その後Web開発経験も生かせるAIプラットフォームの構築案件を担当することに。コーディングもやりつつ、お客様から「AIの機能を検証したい」という要望をもとにしたプロジェクトのリーダーも今は任せていただいています。
高橋:1年前までAI分野は未経験だったにもかかわらず、この短期間で一気に仕事の幅が広がっていますね。
金子:自分にできることであれば手を挙げてきた結果が、今につながっていると感じます。AI領域は単純に手を動かすだけでなく、常に新しいインプットも必要になりますし、お客様の100%固まりきれていない要求を整理し、適切な解を一緒に模索するという思考能力も問われます。
高橋:単なるオペレーターではなく、真の意味でお客様のパートナーとしての役割と成果が期待されているわけですね。
金子:はい。そしてその仕事の過程を「楽しむこと」をパソナテックが推奨している点も、自分にはすごくマッチしていると感じます。実はパソナテックには評価項目の1つに「Have Fun」というものがあって、これは言葉通り「仕事を楽しめているかどうか」という要素を管理者が評価するというものです。
私自身、休憩時間を調整して、日中に会社内に設置されているジムに足を運ぶこともあります。前職はかなり残業も多い職場にいたのですが、こういう会社からのサポートがあるのは嬉しいですね。
石川:正直、管理職の立場からすると「Have Fun」の項目は一番評価しづらいのですが(笑)、どれだけ会社の中でいい影響を周囲に与えているか、という相対評価で見ています。マネージャーやリーダーであれば、自分が見ている部門やチームのメンバーに対して、どれだけ働きやすく生き生きとした仕事をさせてあげられているか、という考え方ですね。
エンジニアをはじめとする人材がビジネスの根底にあるからこそ、彼らの人生がより充実したものになるようプロデュースするという発想が、パソナテックには根付いているのかなあ、と。
高橋:ありがとうございます。では最後に、金子さんの考える今後のキャリアイメージについてお教えいただけますか?
金子:これから来るDX時代において、自分も単なるエンジニアリングに終止するのではなく、お客様の課題や要望をより正確にデザインするという点を鍛えていきたいと思っています。
パソナテックという会社も、単なるトランスフォーメーションで満足するのではなく、お客様にドラマティックな体験を提供することを目指すと謳っていて、その内容に私も大きく感銘を受けています。せっかく良いものを作るのなら、お客様を感動させるものにしたい。どれだけ良いものを作っても、使われなくては意味がないという苦い経験を過去に味わっているからこそ、その点は強く感じています。
AIやRPAと言われても、その適切な使い方を完璧に理解しているお客様はほぼいません。そうしたお客様のもやもやとした課題をうまく抽出し、表面化していなかった要望まで汲み取った提案ができる、そんなエンジニアになりたいと思っています。
高橋:ありがとうございます。パソナテックという会社、そしてそこで働くエンジニアの話を聞き、これまでのイメージとは異なる点がいくつも見えてきましたと感じます。改めてお時間をいただき、ありがとうございました!
編集後記
IT業界に身を置く人間にとって、パソナテックという会社名はほぼ間違いなく聞いたことのある名前だと思う。しかし、一方で今回のインタビューで聞いたような、キャリア形成や働き方に真剣に取り組んでいる企業だと知っている人は、果たしてどれだけいるだろうか。
これまで多くのIT企業からお話を聞いてきたインタビューチームにとっても「仕事を楽しむことそのものを評価する」という会社は、ほぼ記憶にない。加えて、一人ひとりが仕事を楽しめるよう、会社全体に個々人のキャリアプランややりたい事に、ここまでサポーティブな会社も珍しいと言えるだろう。
エンジニアにとって居心地のいい会社であり、これまでのパソナテックのイメージが大きく変わる取材であったことは間違いない。エンジニアの成長に大きな影響を与える「環境」にこだわりたい方は、まず一度、同社のエンジニアに話を聞いてみてはどうだろうか。
取材/文:川野優希
撮影:竹井俊晴