「最高の開発者体験」を実現したい。急成長する「NewsPicks」ブランドの開発思想を探る

「経済を、もっとおもしろく。」をコンセプトに、圧倒的なスピードでビジネスパーソンや就活生に浸透していったソーシャル経済メディア「NewsPicks(ニューズピックス)」。同アプリ含めた各メディア媒体が配信する記事をベースに、専門家や著名人の解説コメントが理解を補強するという、圧倒的なUGC力でユーザーのニュース解像度を上げている点が、特にユニークなバリュープロポジションだと言えるでしょう。

今回は、そんなNewsPicksや法人向けNewsPicks Enterpriseを提供している、株式会社ニューズピックス(以下、ニューズピックス)のエンジニアメンバーにお話を伺いました。急成長するメディアプラットフォームは、どのような組織と哲学で構築が進んでいるのか。各々の実体験を元に紐解いていきます。

プロフィール

高山 温(たかやま あつし)
株式会社ニューズピックス
執行役員 CTO
イギリス・カナダで物理を学んだ後、2012年ピクシブ株式会社に入社。同社ではソフトウェアエンジニア、リードエンジニア、CTOを歴任。2020年2月、ニューズピックスに執行役員CTOとして入社。事業の長期的な競争力につながる重点技術分野を受け持つ。

 

ガニエ 拓也(がにえ たくや)
株式会社ニューズピックス
Product Division エンジニア
大学・大学院では生物学を学び、主にコンピューターシミュレーションを用いた進化生態学の研究をした。小学生時代から親しんでいたプログラミングのスキルを活用しようと思いソフトウェアエンジニアを志し、2019年4月にニューズピックスに新卒入社。法人向けサービスであるNewsPicks Enterpriseの開発に携わっている。

 

関根 知宏(せきね ともひろ)
株式会社ニューズピックス
Product Division エンジニア
大学では物理学を専攻し、大学院では情報工学に専攻を変え検索アルゴリズムに関する研究を行った。ニューズピックスのオリジナルコンテンツとインフォグラフィクスに惹かれ、2020年4月にニューズピックスに新卒で入社。アプリのフィードのレコメンドアルゴリズムやそのインフラの開発に携わっている。

 

純粋にミッションやバリューがかっこいいなと思った

――まずはおふたりの現在のお仕事内容を教えてください。

ガニエ : NewsPicks Enterpriseという、法人向けのプロダクト開発を担当しています。NewsPicksの中に、その法人だけの閉じたコミュニティを提供して、社内のコミュニケーションプラットフォームとして使っていただくものです。新卒で入社して、サービスの立ち上げ期から携わっています。

関根:今は皆さまが使っているNewsPicksアプリのフィードに表示されるコンテンツのレコメンドアルゴリズムや、インフラの開発を担当しています。私も新卒で入社しました。

――おふたりとも、新卒入社なんですね。どんなきっかけで、ニューズピックスに入社することになったのですか?

ガニエ : 大学では生き物の進化の有様を学びたくて、コンピューターシミュレーションを使った進化生態学の研究をしていました。ただ、卒業が近づくにつれて、仕事としては生き物よりもプログラミングに集中したいと思っていました。

そんな中、はじめはニューズピックスではなく、グループ会社のユーザベースから知りました。コーポレートサイトを見て、純粋にミッションやバリューがかっこいいなと思って。ちゃんとこれらが守られている会社で働きたいなと思ったのがきっかけでした。

その後、求人サイトでニューズピックスから選考の連絡が来て、そのときに初めてアプリのことを知り、こういうビジネスに関われたら世の中に大きな影響を与えられるようなコードを書けると思って、入社しました。

関根:私の場合は、大学院のカリキュラムの一環でニューズピックスのインターンを受けることになりまして、そこでアプリに寄せられる不適切なコメントの検知モデルを作って本番適用する、ということをやりました。

そのときに、NewsPicksのオリジナルコンテンツやインフォグラフィックのセンスが良くてかっこいいなと思いました。もともと大学院では検索アルゴリズムに関する研究をやっていたこともあって、引き続きアルゴリズム開発をやりたかったので、自分が好きになれる仕事だと思って入社しました。

――入社してから実際に働くことになって、何かギャップはありましたか?

関根:ここまで最初からガッツリとメインで開発に携われるとは思っていなかったので、やりがいがありますね。

ガニエ : 先ほどお話ししたミッションやバリューについては、実際にちゃんと文化として守られているので、いいなと思っています。

ギャップという観点だと、入社前まではニューズピックスは完全にB2Cの会社だと思っていたのですが、入社後に現在の法人向け事業の立ち上げで声をかけられて、結果としてB2B事業に携わることになりました。扱う領域という意味で、ギャップはありましたね。

新卒1年目から大きなプロジェクトに携われた

――次に、これまでで「やりがい」を感じた実体験について教えてください。まずはガニエさん、いかがでしょう?

ガニエ : やりがいとしては、複雑なコードを読み解けたときですね。初期のスキルだと、例えばサーバーサイドが不慣れだったので深く読めなかったことがあったのですが、今見てみるとそんなに複雑なものではないなと。

あと、注力して作った大きめの機能が、総合テストでちゃんと動いたときも、嬉しい瞬間ですね。

――最近だと、どんな機能がありましたか?

ガニエ : 直近だと、NewsPicks Enterpriseをご利用いただいている法人内のクローズドな空間で、動画配信ができるようにするプロジェクトがありました。私はそれのサーバーサイドを担当しました。チームとして全力を注いで取り組んでいたので、先日結合テストでちゃんと動いたときは嬉しかったですね。

――なるほど。逆に、失敗談のようなものはありますか?

ガニエ : チーム内でのサポートが手厚いので、あまりド派手な失敗というものがないのですが、開発工数の見積もりを劇的に見誤ったことがあります。

数千人レベルのユーザー数となる法人顧客対応をするときに、あるタスクを一括処理するAPIを急ぎで作ることになったのですが、実際に呼び出すとタイムアウトになってしまうことが締め切り直前に発覚しました。

結果として、非同期にしなければならなくなって、当初の見積もり工数と全然違うことになってしまったことがあります。

――急ぎの案件だと、この辺りの事前調査が難しいですよね。

ガニエ : あと、失敗ではなく難易度が高かったという観点だと、NewsPicks Enterpriseのセキュリティ部分ですね。

そもそもNewsPicks Enterpriseって、それ単体で完全に独立したものではなくて、例えばサーバーなんかはC向けのNewsPicksアプリのものを拡張して構築しています。なので、権限管理についてのテストやパターン設定が大変でした。

――同じ質問として、関根さんがこれまでで「やりがい」を感じた実体験はいかがでしょうか?

関根:新卒1年目からアプリのリニューアルに関わることになって、最初から大きなプロジェクトに携われたのはとても有り難かったです。

――それはやりがいがありますね!入社して間もないので、それこそチームプレイが大切だと思うのですが、そこはどう工夫されたのでしょうか?

関根:例えば重いタスクがあってなかなか終わらない状況だったときに、1on1や朝会でチームや上司に相談をしたら、細かくチェックポイントを設けようとなりました。

昼とかにチームで集まって、進捗報告やエラーやデバッグの話し合いなどをして、上司やチームメンバーから都度アドバイスをもらえるようになったので、タスクもスムーズに進められるようになりました。

――いいですね。コロナ禍でその辺りの動き方に変化はありましたか?

関根:やりとり自体はコロナ前からSlackベースなのですが、自宅だと放っておくと1人で考え込んでしまうところがあるので、自分からしっかりと発信していかないとと意識するようになりましたね。

今週よりも来週の方が、よりメンバーが開発しやすい環境を作る

――ここまでおふたりの話を聞かれて、高山さんのご感想はいかがでしょうか?

高山 : 弊社はエンジニアの新卒採用を始めて2〜3年目くらいなのですが、良くも悪くも育て方のテンプレがない会社でして、とりあえずやってもらって、その上でできるかできないかを考えています。ある意味で、それが力になっているところがあるなと感じました。

――高山さんが考える、人の育て方とはどのようなものなのでしょう?

高山 : 意識しているのは、「自発的な成長」を促すことです。

今の時代、会社の仕事だけでは成長としては不十分だと思っていて、例えば外部のコミュニティに参加するなど、多様なフィールドへの参加も大切だと考えています。そのことをちゃんと促せるような気づきや失敗を作っていくことを、日々意識しているんです。

――つまり、メンバーの失敗は想定内だと。

高山 : そうですね。仕事で失敗してもらって、1on1ミーティングなどで話をして、そこで業務に役立つような本を勧めたり、外部のオープンソースのプロジェクトを紹介したり。一人ひとりの成長に合った提案をするようにしています。

――まさに状況対応型リーダーシップを実践されているということですね。別のインタビューで、会社の成長としての課題が「スピード感」だとおっしゃっていましたが、これについてはどのようにお考えでしょうか?

多様な異能を活かし、テクノロジーで事業をさらに成長させる組織をつくる。NewsPicksプロダクト開発チームの今

高山 : スピード感についてはずっと意識していることですね。その中で大切にしていることは、先週よりも今週、今週よりも来週の方が、よりメンバーが開発しやすい環境を作る、ということです。

――どういうことですか?

高山 : 例えば、今週のタスクで何か困ったという話があれば、そこを即良くすることで、その人だけではなくチーム全員も楽になるはずですよね。このように、常に改善する時間をタスクとして入れるようにしています。

どんどん良くなることを全員でやる。これは僕がCTOになった2020年2月からずっと言い続けていることで、ある程度浸透してきているなと感じています。

日々、権限移譲ですよ

――これからチームとして実現していきたいことを、それぞれ教えてください。

関根:今のアプリは改善できる部分がまだまだ沢山あると思っていて、その案もいくつも出ている状態です。早く正しく試していって、ユーザー体験をより良くしていきたいなと思っています。

ガニエ : 直近としては、NewsPicks Enterpriseでは運用部分でまだ煩雑な作業が残っているので、それらを可能な限り自動化して、業務効率化していきたいです。あと、サービスとして新機能の実装も引き続きやっていって、顧客に価値を届けたいと思います。

――具体的に、今進めているものはどんな機能がありますか?

ガニエ : 計画されているものとしては、記事のアーカイブ機能ですね。現状だと、会社独自の記事を作ってコミュニティで公開できるようになっていますが、いろんな人が様々な記事をPickしていくので、せっかく作った大切な記事もフィードで流れていくことが課題としてあります。大切な記事は後から見やすいようにまとめておくのが、アーカイブ機能の役割になります。

――なるほど。高山さんはいかがですか?

高山 : これも私が入社してから一貫して言っていることですが、プロダクト開発全体で「最高の開発者体験」を実現することです。このチームに入ったら、物凄い価値発揮できる。そういうところまで持っていきたいと考えています。

――いいですね!ちなみに、会社としてではなく、一個人として目指していることや実現したいことについては、いかがでしょうか?

高山 : いまお話したような開発環境づくりをしていった先に、さらなる「異能は才能」を体現できるような、色々なスキルやバックグラウンドをもっている人が、専門性を持ち寄って輝けるような組織になっていくだろうと思っています。
僕自身がエンジニアとして働きたいようなチームを作り上げるのが、僕の野望の1つでもありますね。

――高山さん個人の目標が、チーム全体としての目標と深くリンクしているということですね。おふたりはいかがでしょう?

関根:そもそも、私自身のスキルがまだまだ足りていない部分があるので、幅広い技術を勉強しつつ、専門領域も伸ばしていって、最終的にはレコメンドシステムみたいなものを1人で作れるようになりたいなと思っています。

ガニエ : 個人的には、1つの人物像として、何かしらのCTOになりたいと思っています。

――高山さんの背中を見ている、ということですね。以前、B2B SaaS Product Teamの皆さまにお話を伺った際に、CTOの林さんが「CTO業務の権限移譲」を積極的にされているとのお話があったのですが、ニューズピックスチームではいかがでしょうか?

高山 : 日々、権限移譲ですよ。これはもう所与の条件です。常に人の数の2〜3倍はやりたいことがあるので、移譲しないとスピード感に追いつけませんから。

ユーザー目線でプロダクトを開発していける人にジョインしてほしい

――やはり人が大事ですよね。皆さまとしては、どんな人とこれから一緒に働きたいですか?

ガニエ : 好奇心旺盛で色々と調べて、積極的に分からないことを聞いて、しっかりとチームで仕事ができる人ですね。
あとは自戒を込めて、ユーザー目線でプロダクトを開発していける人であることも、大事なポイントだと思います。

――自戒とはどういうことですか?

ガニエ : エンジニアとして、技術的にこういうことができるとか、この対応は技術的に面倒だからやりたくないとか考えることが多いのですが、そうではなく、本来的には「ユーザーが欲しているか」の目線で考えるべきだということです。

私自身、技術ファーストで考えてユーザーのインサイトを見落とすことがあるので、そういう意味で自戒も込めました。

関根:私としては、ユーザベースが掲げる「The 7 Values」に共感してくれる人であることが大事かなと思います。あとは、プロダクトに熱量をもって取り組む気合のある人だといいなと思います。

――熱量、大事ですよね。逆に向いていないな、と思う方はどんな人でしょうか?

関根:受け身の人ですかね。ニューズピックスのメンバーって、どんどんと突き進んでいく人が多いので、待ちの姿勢の人はなかなか馴染めないと思います。

――高山さんはいかがでしょう?

高山 : そうですね。今ふたりが話した通り、成長意欲がある人にはそれなりのフィールドが用意されていると思います。ニューズピックスを利用してどんどん成長してやろう、という気概のある人がいいかなと思います。

――先ほども高山さん自身、「多様性」が大事だとおっしゃっていましたが、そこを担保するためにはどんなアクションをされていますか?

高山 : 頭ごなしに、あれはいいとかダメとかは言わずに、どんな立場でも対話を重視して、「コミュニケーションによって解決できないことはない」をモットーに日々過ごしています。

あと、多様性を尊重することに付随して、責任はきっちりともたせるようにしています。先ほど「異能は才能」というThe 7 Valuesの中の1つをお伝えしましたが、これは単に多様性(異能)がいいということではなく、その上でお互いの異なる部分をコミュニケーションで埋めていこうということなんです。

弊社では会社の方針や進捗に関する情報をメンバーにオープンにしているので、ある意味でそこは任せてもらうという、心理的な安全性を担保したいなと考えています。

――ありがとうございます!それでは最後に一言、読者の皆さまにメッセージをお願いします。

ガニエ : ニューズピックスって、メンバーみんながとても寛容で良い人ばかりなんです。基本的に僕はずっと、のびのびと仕事をやらせてもらっている感じです。もっと沢山いい人に来ていただきたいと思っています。

関根:先ほどお伝えした通り、1年目から色々な経験をさせてもらっていて、私自身1年ですごく成長できたので、成長意欲の高い人にとってはすごくマッチする環境だと思います。

高山 : チーム全体でニューズピックスブランドを圧倒的に良いものにしていこうとしているので、その一員としてぜひお越しください!

編集後記

創業されてまだ6年とは思えないほどに、私たちビジネスパーソンへの浸透が広がっているNewsPicks。その舞台裏では、どのような思想・哲学で開発が進んでいるのかがよく分かるインタビューでした。多様な開発メンバーの個性を大切にしつつ、しっかりと責任をもたせて、新入社員であっても大きなプロジェクトを任せる。世の中への貢献度合いが事業成長とともにわかるからこそ、成長意欲の高い技術者であればあるほど、魅力的な環境なんだと感じました。

取材/文:長岡 武司
撮影:平舘 平


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