ゆめみ「アウトプット」習慣の真髄。 ~ 自律的な学びの循環が、個人と社会を成長させる ~
引き続き、ゆめみ取締役の工藤氏に、「自律型」のアウトプット習慣の実現に向けた取り組みとその背景にある思想についてお話を伺っていきます。
※この記事には前編があります。
▼前編はこちら
Qiita広告活用事例 | Qiita Advent Calendarを活用したエンジニアコミュニティ貢献とブランディング(株式会社ゆめみ様)
・学びから始まる“成長の循環モデル”
・GROW with YUMEMI:ゆめみをうまく使って成長しましょう
・「個の社会」だからこそ、会社ができること
学びから始まる“成長の循環モデル”
──アウトプットが大事だという文化は他社にもたくさんありますが、ゆめみさんほど徹底的に制度として落とし込んで運用されているケースは、まだまだ珍しいと感じます。改めて、そこにかける“思い”を教えてください。
工藤:僕個人の考えも交えながらお伝えしますね。
我々は「メンバーが成長できる会社No.1」を目指しているのですが、これは「個人の成長があらゆる成長の源になる」と考えているからです。つまり、人が成長するからチームが成長し、お客様のビジネスが成長し、社会や経済に貢献していくという循環が生まれるわけです。
会社という場は従業員にとっての“環境”でもあるわけで、周囲がインプット&アウトプットを続けていると、その人自身も刺激されて共鳴し、同じくインプット&アウトプットをするようになります。つまり自分自身も、他の従業員にとっての“環境”となりうる。この関係性によって、先ほどもお伝えした通り、自分にとっての最高の学びの循環が生まれます。
さらにそれがうごめいていくと、外からの共鳴も生まれ、もともとアウトプットしていた人が場に集まり始め、ゆめみという学び続ける集合体が、どんどんと大きくなっていきます。そうなると、結果的にお客様に提供できるバリューも増えていく。
そんな“循環モデル”が成立するので、これをスケーリングしていくための原動力として、個々が学び続ける環境を最優先で考えています。
──面白い。すごくビジョナリーですね!
工藤:ただし、エンジニア含め実際に学んでいる人が、今みたいな壮大ビジョンに共感する必要があるかというと、必ずしもそうではないと思っています。
ここ、すごく重要です。
自分が学んで軽い気持ちでQiitaに投稿したら、実はそれが循環の一部だった。これで良いんです。
「自分はこの国の経済を背負っているから書かねばならない」と思っている必要は全くなく、「学びたい」「お金が欲しい」「お客さんに満足してもらったことを誰かに共有したい」「失敗したことを他の誰かに失敗させたくない」といった身近なモチベーションを意識して書く。実はそれだけで、アクティビティとして価値があるんです。
──意識の中に自然と組み込まれているのが、最高の制度ということですね。
工藤:習慣化は、まさに無意識の状態じゃないですか。例えば、自転車もいちいち考えて乗っていないですよね。それと一緒で、アウトプットも知らず知らずのうちにやっている。それがすごく良い状態だし、他の人にとってプラスになるのであれば、なお良しですよね。
代表の言葉を借りると「ゲームマスター」。要するにゲームを作ってるような感覚が大事なんです。例えば、Qiitaという場所だけがあって、それをうまくハックして面白く続くような仕掛けを作るのは自分たち自身。そんな意識が、メンバーの中に浸透して、良い感じにドライブし始めていると感じます。
GROW with YUMEMI:ゆめみをうまく使って成長しましょう
──ゆめみさんでは、報酬額も自分で決めているんですよね。アウトプットと「給与自己決定制度」、何か関わりを持たせているのですか?
工藤:基本的にアウトプットを見て何かを決める、ということはないです。ただし、アウトプットの量や質、習慣化などは、自分にフィードバックが返ってくるので、それによって自分の市場価値を知る目安になるとは思います。
例えば、社内外からの評価が高い記事を書ける人は、おそらく業界に必要とされている技術を習得していて、かつアウトプットできるという証拠です。そういう人は市場価値が高いですよね。
それを認知して自分の報酬の目安にする、というような役には立っているかもしれませんね。
──なるほど。自己フィードバック用の評価シートみたいなものですね。
工藤:そもそも今の時代、SNS自体が履歴書になっていますよね。逆に言うと、履歴書や職務経歴書にはもうほとんど価値がない。特に、副業などのメインでないワークが増えたり、新しい領域にチャレンジする時などは「どの会社に所属しているか」よりも、「どんなアウトプットを出せるか」を重視して未来志向で評価するので、従来の書類ベースの履歴書や職務経歴書はあまり意味を持たなくなってきていると思います。
具体的なアウトプットで評価ができると、その人のキャリア力のパラメーターみたいなものが見える化される。だからこそ、最近はゆめみという会社の成果物としてアウトプットするよりも、個人のものとして出すように推奨しています。そうすれば、別の会社行く時にそのまま活かせますし、社内でも報酬決定の材料になりますから。
──目線としてはあくまで、会社ではなく「個」ということなんですね。
工藤:僕たちのバリューに「GROW with YUMEMI」というキーワードがあります。これは「ゆめみをうまく使って成長しましょう」というメッセージを込めたもので、具体的に図説してみたものがこちらです。
工藤:ここで言う3Wayとは、「CUSTOMER(顧客企業)」「RECRUIT・EMPLOYEE(人材・組織)」そして「OTHERS(家族・社会)」。個人の成長が、結果的に三方向に成長を促すことになるので、個の成長を意識していけば、きっと役に立つという考えです。
個人がゆめみの環境や制度をうまく活用して成長していくことで、組織や他の従業員、お客様、世界経済、家族などに成長を促していきます。
ちなみに、これ自体がフラクタルだとも思っていて、外から見ると、この中心にあるのが「個の集合体=ゆめみ」として見えるでしょう。
「個の社会」だからこそ、会社ができること
──最後に、「個人」にフォーカスされる時代に突入するからこそ、会社としてのゆめみという場をどのようにされていきたいとお考えですか?
工藤:おっしゃる通り、今後フリーランスなどの「個の社会」になると、企業の存在価値がどんどん薄れていきます。その中で「ゆめみメンバー」として何かしら関わってもらえるか否か。これはとても大切な視点です。
個人の世界なんだけど、ゆめみに属しているという関係性を持つことでメリットを享受できる。その仕掛けこそが「成長」だと捉えています。ゆめみにいる間は、時間やお金の心配で脳のメモリを消費することがないよう、勉強代全額支給や有給取り放題といった制度を設けています。「お金のことは気にせずに、結婚、育児、介護などのライフイベントにしっかりと向き合ってまた戻って来れば良いよ」というメッセージを込めています。
また、他社に行くか否かを考える際も、お金の部分も影響があると思うんですよね。だからこそ、ゆめみに再就職する感覚で給与額を自分で再設定するようにしています。そうすれば、最終的に納得感もあると思うので。
「メンバーが成長できる会社No.1」を目指して、引き続き邁進してまいりたいと思います!
編集後記
習慣化には「自己認知」「ピアサポート」「ゲーミフィケーション」の3要素が必要、というお話を聞いたことがあります。つまり、アクションによって自分が変わってきているという認知をし、仲間同士による相互フォローがあって、それをまるでゲームのように進めていくということです。
今回ゆめみさんから伺ったお話は、まさに「アウトプットの習慣化」のために緻密に設計された文化基盤だと感じました。そしてこの3要素は、Qiitaも得意とするところ。取材でも言及されたOGPによる自己認知の仕掛けがあり、「いいね」を通じたピアサポートがあり、Advent Calendarなどのイベントを通じたゲーミフィケーションのためのトリガーが、Qiitaにはあります。
ゆめみさんもQiitaも互いに思想レベルが近く、設計に“余白”があるからこそ、連携することが良い循環を創出する。そんなことを感じさせてくれるお話でした。
取材/文:長岡 武司
撮影:野村 原