2025年8月2日(土)・3日(日)の2日間にわたり、Qiita株式会社とファストドクター株式会社が共催で、ファストドクター本社(東京都渋谷区恵比寿)にて、「【全国学生対抗】Qiita × FastDOCTOR Health Tech Hackathon」を開催しました。本記事では、イベント会場での様子をお届けします。
目次
ファストドクター株式会社について
ファストドクター株式会社は「生活者の不安と、医療者の負担をなくす」をミッションに掲げ、日本最大級の医療支援プラットフォーム「ファストドクター」を運営するヘルステック企業です。約5,000名の医師をはじめとする豊富な医療リソースを活用し、救急往診やオンライン診療を通じた医療体制を構築しています。地域の医療課題や社会的ニーズに応える多様なサービスを展開し、医療機関や自治体と連携して地域医療を補完しつつ、生活者や企業には新たな医療アクセスを提供するという両輪で、持続可能な地域医療の実現に貢献しています。
2023年7月には1度目となる「第1回 Qiita × Fast DOCTOR Health Tech Hackathon」を実施。「ChatGPTを活かした新しいウェブサービス、モバイルアプリの開発」というテーマのもと、個性あふれるプロダクトが続々と発表されました。今回は2度目の開催となります。
全国の学生を対象としたハッカソン、開幕!
本ハッカソンは、全国の学生を対象に、リアル会場とリモート会場のハイブリッド開催で実施しました。「ハッカソンや開発が好き・興味がある学生」「アイデアを形にしたりチームでの開発にチャレンジしたい学生」「医療や社会課題に関心があり、就活や将来に生かせる経験を積みたい学生」におすすめの内容となっています。
チームでの応募のほか、個人で応募された方たちでの編成チームも含め、リアル会場で13チーム、オンライン会場で3チームの、合わせて16チームに参加していただきました。
1日目の幕開けは開会式です。諸注意の説明とタイムテーブルの紹介、発表方法や提出物についてのご案内をしました。また、本ハッカソンで審査員を務めていただいた4名のご紹介も行いました。以下の通りです。
プロフィール

吉村 総一郎(よしむら そういちろう)

水野 敬志(みずの たかし)

木村英晴(きむら ひではる)
金沢大学附属病院をはじめ、国立がんセンター中央病院、近畿大学医学部などで、呼吸器内科の専門医として、長引く咳や気管支喘息などの専門性を要する診療に従事。認定資格
日本内科学会 総合内科専門医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

清野 隼史(きよの としふみ)
入社後はQiita、Qiita Jobsのプロダクト開発や機能改善等を担当。
2020年1月からQiitaのプロダクトマネジメントとメンバーのマネジメントを行う。
2025年4月よりプロダクト開発部 部長として開発組織の統括を行う。
また、開会式のインプットセミナーや、2日目の閉会式での総評は、ファストドクター株式会社 FastDOCTOR Technologies Engineering Managerである宮田さんに行っていただきました。

Engineering Manager宮田 芳郎 (みやた よしろう)
オンライン診療×AIで、未来の医療を共創しよう!
今回のイベントテーマは「オンライン診療×AIで、未来の医療を共創しよう!」です。医療現場においても生成AIの活用は注目されていることから、本イベントでは「生成AI」を医療の現場でも活かせるウェブサービス、モバイルアプリのプロトタイプの企画・開発を行なっていただきます。
審査基準には「技術力、医療現場への有用性、独創性・拡張性、プレゼンテーション」の4つの項目を設けました。2日目の成果発表後には、これらの項目に基づいて審査が行われます。
続いては、ファストドクター株式会社の宮田さんによるインプットセミナーです。ファストドクター株式会社の事業内容や、オンライン診療事業の仕組みが紹介されました。また、近い将来発生するであろう、医療に関する課題とその背景の説明もあり、参加者には、これから開発するにあたって必要な情報をインプットしていただきました。また、既成概念にとらわれない若さや、最新技術を使いこなせる技術力、世界を変えたいという情熱が学生のみなさんにはあることを伝え、全力を尽くしてほしいとエールが送られました。
「アナログ文化が色濃く残る医療現場」
「未来のオンライン診療 オンライン診療の果たす役割」
【1日目】全16チーム、開発スタート!
開会式終了後、ハッカソンスタートです! 会場を歩き回って様子を見ていると、活発に意見交換を行っているチームや、ドキュメントに一人ひとりがアイデアを出しあっているチーム、モニターに画面を映し出して議論を行っているチームなど、進め方は様々でした。
ファストドクター株式会社からはオンライン事業本部に所属する看護師や開発職の社員など、複数名のメンターも参加していただきました。それぞれ、参加者からの質問に答えたり、議論や開発の後押しをしたりするために、メンターが話に積極的に入る場面もありました。
ハッカソンを開始して3時間ほどすると、それまでは付箋などでバラバラに散らばっていたアイデアが、文章や図などにまとまってくる様子が見て取れました。1日目午後には中間発表が控えています。どのようなアイデアが出てくるのでしょうか。
【中間発表】各チームから生まれたアイデアと、開発の途中経過報告
16:15からは中間発表を行いました。各チームそれぞれが着目した医療現場の課題に対して、AIを用いた効率化や患者満足度の向上、医師の負担軽減などの解決策が提示されました。挙げられた解決策は、AIによる問診支援や診断サポート、電子カルテ作成の効率化、視覚障害者向けの音声認識予約システムなどです。中間発表終了後も、18:00までハッカソン続行です。
【2日目】ハッカソン再開!午後は成果発表
2日目は成果発表の順番決めの抽選を含めたオープニングも早々に、ハッカソン再開です。成果物提出まで、およそ4時間、ラストスパートです。
会場を回っていると、発表用と見られるスライドの準備をしている様子や、プロトタイプが形になっていく様子が見られました。成果物提出と発表に向けての準備が、着々と進んでいます。
成果発表リハーサルで最終準備
成果発表と同じ順番で、投影や接続をチェックするためのリハーサルを行いました。スライドで説明をしながらデモや動画でプロトタイプの紹介をするチームもいるため、問題なく投影できるかどうか、動かせられるかどうかなどをチェックしました。
【成果発表】各チームから生まれたアイデアは、どのような形になった?
成果物を提出し、30分程度の休憩を挟んで、いよいよ成果発表にうつります。成果発表の順番は、2日目のオープニングで決めた通り。リアル会場・オンライン会場あわせて16チームが、この2日間でのアイデア出しから開発までの成果を発表しました。各チームの持ち時間は5分間。
発表されたのは、「カウンセリングにおける心理的障壁をAIによる診断と適切なカウンセラーの提案で克服するシステム」や、医療現場の時間的負担軽減に焦点を当てて「AIアバターによる問診と患者のグループ化によって効率的なオンライン診療を実現するサービス」など。
他にも、「画像認識技術を用いて患者の問診やカルテをデータ化し、AIが解析して分かりやすいアドバイスやグラフを生成することで情報共有を円滑にするシステム」など、様々なアイデアとプロトタイプの発表がありました。2日間という短い期間での成果を、精一杯伝えていただきました。
結果発表。受賞チームは…?
成果発表を終え、審査員たちによる審査時間を経て、いよいよ結果発表です。今回は最優秀賞と優秀賞の2つをご用意しました。
まずは優秀賞の発表です。受賞したチームは…….?
「unpretrained」チームです!おめでとうございます!
「unpretrained」チームは、日本の医療における労働生産性の伸び率が1%未満と低いことや、高齢者の増加による医療需要の増加と医師不足の深刻化という課題に着目。そこで、AIを活用したカルテ作成支援システム「KalteBoost」を提案しました。
「KalteBoost」は、オンライン診療の会話を基にAIがカルテの骨子を自動生成し、過去の良質なカルテを参考に提示することで、医師が効率的かつ質の高いカルテを作成できるよう支援をします。作業時間の短縮、カルテ品質の標準化、そして診療報酬請求における手戻りの削減といった価値を提供し、医療現場の負担軽減を狙いました。
審査員の吉村さんからのコメントでは、トランスフォーマーのようなAIモデルが持つ再現性の低さ、具体的にはハルシネーションという課題がある中で、医療カルテのサンプルを用いたAI開発において医師による最終確認やデータ検証の仕組みを導入したことで、ランダム性に対処している点を評価いただきました。
続いては、最優秀賞を受賞したチームの発表です。映えある最優秀賞に輝いたのは……?
「24組」チームです!おめでとうございます!
「24組」チームは、スマートフォンに搭載されたLiDARセンサーとAI技術を活用し、オンライン診察の質を向上させようと試みました。特に、オンラインでは困難だった患者の身体的診察を、3Dモデル化することで可能にする解決案を提示。具体的には、スマートフォンのLiDAR(Light Detection And Ranging)で頭部の3Dモデルを作成し、それを医師が遠隔で確認・解析することで、赤ちゃんの頭の形を診察する事例を紹介しました。
さらにAIエージェントが患者の計測をサポートし、計測データの信頼性を確保する仕組みも組み込まれていました。最終的には、この技術を他のスマートフォンのセンサーと組み合わせることで、触診や聴診など、より広範なオンライン診察への応用を目指して対面診察に近い医療提供を実現しようと試みました。
審査員の木村先生からは、「普段から、オンライン診療も積極的に行っている立場として、『あったら良いな』と思っているものをたくさん出してもらいました。オンライン診療で足りないところとしては、視診、聴診、触診があり、それらの可能性を広げるような視点から始まった点が、非常に面白かったです。医療におけるAIは、どんどんと広がっていくんだと感じました。」とコメントをいただきました。
閉会の挨拶
最後に、ファストドクター代表の水野さんより、閉会の挨拶をいただきました。
「みなさん、お疲れ様でした。今回、学生の方に参加いただいた理由は、若いうちから医療に関心を持ってもらいたいという想いが非常に強かったからです。現在、医療費は年間で50兆円かかっています。若い世代であるみなさんが実際に医療に関心を持つのは、多くの場合30代半ばや40代くらいかなと思います。おそらくご自身は健康な方が多いでしょうし、お子さんをお持ちの方も少ない。ご両親もまだまだ元気で頑張られている方が多いのが、一般的な20代の姿です。ですが、実はもっと手前から医療に関わることになります。健康保険料ですね。学校を卒業し、社会に出ると収めるようになり、みなさんにとって重要な問題になってきます。ですので、早いうちから自分の課題として、そして国の喫緊の課題として医療に取り組むことは、若い世代にとって価値の高いことだと考えています。普段から関心を持って、『医療ってこうあるべきなのでは』と意見の発信もしてほしいなと思っています。
生成AIに関して言うと、本日みなさんに作っていただいた医療従事者をサポートするような問診の支援やカルテの文字起こしなどから普及していくと思います。今回作っていただいたアイデアを今後も実装していってもらえたら嬉しいなと思いますし、ファストドクターもそのようなチャレンジをし続ける場でありつづけます。」
リアル会場のみなさんで記念撮影
閉会式を終え、記念撮影を行いました。2日間、非常に集中して、疲れも溜まっていると思います。みなさん、お疲れさまでした!
懇親会でチームの垣根を超えて交流
本ハッカソンの締めは、ジュースや軽食を囲んでの懇親会です。チームの垣根を超えて交流しました。会場を周りながら参加者の方たちのお話を聞くと「楽しかった」という声を多く聞くことができました。中には、ハッカソンに初めて参加した人や、ほぼ徹夜をしたという人たちも。
改めて、参加いただいたみなさま、2日間お疲れさまでした!そして、ご参加ありがとうございました。本ハッカソンへの参加が、みなさんにとって良い経験になっていれば、運営一同とても嬉しく思います。
ファストドクター株式会社では、学生インターン(エンジニア)を募集しています。医療テクノロジーに挑戦したい、興味のある学生の方はぜひご応募お待ちしております。
「第1回 Qiita × Fast DOCTOR Health Tech Hackathon」イベントレポート
編集後記
ハッカソン当日はリアル会場で運営スタッフとして参加し、全国各地から沢山の方に参加いただいた学生のみなさんの活躍を見ていました。学生たちには、持てる限りの技術力やアイデアを存分に発揮していただいたように思います。成果発表では、思わず「すごいアイデア・技術だ」「がんばれ…!」と言いたくなる場面も多々ありました。懇親会では和気藹々とした雰囲気で、2日間の疲れを飛ばすように交流されていた様子が印象に残っています。Qiitaによる全体企画進行と、ファストドクターから参加いただいた役員や医師、メンターのみなさんのコンビネーションで、完遂できたのではと思います。改めてご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
編集/文/撮影:Qiita Zine編集部