プロダクト開発現場で「うまく越境し合う」ためには 〜Qiita × Bitkey Engineer Meetup

2021年10月8日、自社の認証認可技術・ハードウェアデバイス・モバイルアプリおよびWebサービスを用いて事業を展開する株式会社ビットキーが、Qiitaと共同で、オンラインテックトークイベント「Qiita × Bitkey Engineer Meetup」を開催しました。

当日はキーセッションと計6つの技術セッションを通じて、ビットキーの事業内容から開発体制、技術的な取り組みまで、実際のプロジェクト事例などを交えながらの多角的な紹介がなされました。

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ビットキーの軸となる3事業領域

本記事では、そんなビットキーのWorkspace事業を中心にプロダクト責任者とUXチームのマネージャーを兼務している町田貴昭氏と、株式会社レッドジャーニー代表の市谷聡啓氏によるキーセッションの様子をレポートします。なお、ビットキーの事業内容詳細と技術的なアプローチについては、以下の記事もご参照ください。
技術の集合であるプラットフォーム、価値の集合であるプロダクト by.ビットキー 〜Qiita Engineer Summit 2021レポート②

登壇者情報

市谷 聡啓
株式会社レッドジャーニー 代表
サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経て、自らの会社を立ち上げる。それぞれの局面から得られた実践知で、ソフトウェアの共創に辿り着くべく越境し続けている。
訳書:「リーン開発の現場」
著書:「カイゼン・ジャーニー」「正しいものを正しくつくる」「チーム・ジャーニー」「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」
町田 貴昭
株式会社ビットキー VP of Product / Workspace & Experience
東京理科大学工学部出身。2012年に株式会社ワークスアプリケーションズに入社し、会計システム・EC製品の開発経験と、建設業界向けシステムの立ち上げにも携わる。
その後、2018年にビットキーへ創業期に入社。ソフトウェア領域のプロダクト開発を中心に、プロダクト全体のビジョン立案からUXを設計し、コーディングまでを推進。現在はビットキーのWorkspace事業を中心にプロダクト責任者とUXチームのマネージャーを兼務している。

0→1と1→10と10→100、それぞれのフェーズで大切なこと


最初のテーマは「プロダクト開発フェーズ」について。0→1と1→10、さらには10→100、それぞれのフェーズを考えた時に大切なことは何か、それぞれの考えが述べられました。

町田:僕はこの0→1と1→10と10→100を考えたときに、10→100ってなんだろうという考えがあります。僕は「0→1」と「1以降」という考え方をしていまして、何か一つのプロダクトを仮説から作り上げてブラッシュアップしていき、それをずっと改善していくという。そういう考えでプロダクト開発をよくやっています。

市谷:ほぼ同じ見方をしています。DXの観点からお話しすると、いろんな企業がこれを意識し始めていまして、例えば伝統的な製造業をやっている会社では、この概念がない中で今までやってたんですよね。でもデジタル化を考えると、それは合っていないので、こういう段階を置いたステップをクリアするところから学んでいかないとね、ということだと思います。
僕の場合は、この0→1と1→10に関わることが多いのですが、ゼロイチの場合はより早く検証を進めるべきだと思うので、0→1と1→10でもだいぶチームのモードや求められる人物も変わってくると思います。この辺りの進め方は、町田さんはいかがですか?

町田:よく2週間スプリントを回してベロシティを測って平準化をしていきましょうという進め方があると思いますが、僕たちの場合、ゼロイチではスプリントを綺麗に回すということを完全に度外視していて、いったん仮説を立てて一度作ってみて、ダメだったら壊して作り直すというのをひたすら続けています。どれだけ高速に60点のものを市場に出すか、というところにピンを止めていますね。逆に60点でも世の中に出れば、ユーザーからのフィードバックなどをどんどんといただけるので、その時に今度は、綺麗にスプリントを回していく流れになります。
まさに今、オフィス領域のプロダクトは「1」になって、ここから1から100に向かって大きくしていってスプリントもちゃんと回そう、という話になっています。一方でサードプレイス領域に対するプロダクトについては、まさにゼロイチのフェーズなので、作っては壊しての繰り返しをやっています。

市谷:なるほどですね。よくプロマネをやっていた人と話すと、すでに確立されたプロダクトで10→100をやってきた人と、そうではなく0→1や1→10をやってきた人とでは、やはりやることが違ってくるので、両方をやれる環境って大事だなと思っています。

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プロダクト・サービス開発現場におけるチーム論

次のテーマは「プロダクト開発でのチーム」について。プロダクトやサービスの開発現場におけるロール・役割分担の議論は沢山あるわけですが、その中でどのような考えが特に気に入っていて、またチーム活動においては何が大切になるのか。こちらについても、それぞれの考えが述べられました。

市谷:組織や事業といった背景によって変わりそうですが、段階はあるかなと思います。最初はまずは役割定義をやった方が良いかなと思いまして、スクラムの役割定義によって分担していくのが良いかなと思います。ただし個人的には、ここで終わりというのはあまり好きではなくて、役割定義をするとどうしても「自分はこれ以外はやらない」というのを無意識的に思ってしまうところがあるので、そこに終始してしまうとチームとしての動きも止まってしまいます。なので、次の段階では役割を超えて突破していくといった方向に持っていけるようにしたいものだと感じます。

町田:まさに今お話しいただいた内容は僕も大好きな考え方でして、「役割っていりますか?」という考えだったりします。当然、得意な領域と不得意な領域ってあるので、僕だとビジネス側とコミュニケーションを取って進めていくのが得意なのでそれを軸にやってはいますが、一方でコードを書くとかもやったりします。
基本的には、顧客価値を実現するために、様々な役割があると思います。エンジニアでも様々なプログラミング言語やフレームワークがあります。はじめからどれか一個に固執するのではなく、顧客価値を中心に色々な「こと」を選択できるという人が、僕は好きだなと思います。さらにその上で、「僕はこれが好きだ、俺にこれをやらせてくれ」って言ってくれるようなエンジニアはすごい好きですね。

--市谷さんの本では“越境者”という表現がなされていたと思いますが、例えば僕たちのようなスタートアップのチームが活動をしていくにあたって大切なことはなんだと思われますか?

市谷:やはり自律的に動けなきゃいけない、ということになると思うので、あまりにもそれぞれが点でバラバラにやっていると、なかなか技術的な結果が出てこないかなと。なので、自分たちが大切にするようなミッションのような共通理解が前提になってくるかなと思います。

町田:我々としても、そこが統一的に見えているかなっていうのはあったりしますね。少なくとも「workhub」を作っているエンジニアたちは、この1〜2年という短いスパンの未来に対して抽象的に目指すことをイメージしていて、みんなで考えながら日々アップデートを続けているので、上手く越境し合えているのかなというのが、肌感覚としてはあります。
ただここで人数が増えてくると、また別の難しさが出てくるのかなと思いまして、特に大きな企業であればあるほど顕著になると思っているのですが、その辺りは皆さんどうされているのでしょうか?

市谷:そうですね、色々な作戦があるとは思いますが、僕なりの回答をさせていただくと、全部みんな同じところを最優先で見ておくのって、難しいと思うんですね。それぞれの背景も違えば、解釈の仕方や価値観の違いもあるわけで、その辺の違いみたいなのがプロダクト作りの面白さである一方で、バラバラすぎると意見を合わせるのにすごく時間もかかってしまいます。
となると、ファーストとセカンドとサードくらいの優先順位で、みんなそれぞれ自分の主義みたいなものを持ってもらうと。そうなると、ファーストが一致しないとしても、セカンドやサードくらいで組織の中で一致させることができる。そんな形でマネジメントができたらいいんじゃないかなと思います。

町田:なるほど、有難うございます。今12名という少人数のチームでやっておりますので、今後増えた際に、ぜひやってみたいなと思います。

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プロダクト・サービス開発現場で大事なマインドとは


最後、3つ目のテーマは「プロダクト開発でのスキルとマインド」について。個人にフォーカスした場合、これまでの文脈も含めてお二人は何を大切にしてきて、また今後はどんな人と一緒に働きたいのか。これについて、それぞれの考えが述べられました。

町田:僕はキャリア的にはちょっと特殊かもしれないですけども、やはり同じチームで働くならば自分に似ている人がいいなと思います。人物像で言いますと、事業を推進するために、プロダクトという目線に立った時に何ができるかを常に考えられるような人と一緒に働きたいです。今この瞬間はプロダクト開発を進めた方がいいから実際にコーディングしよう、という場合もあれば、そもそもプロダクトの方向性があまり定まっていないからユーザーの価値定義からロードマップを引いて簡単な計画を引くという場合もあるでしょう。幅広く俯瞰して、事業という目線に立って、プロダクトという軸で「どうやったら進化できるか」を考えられる人材と、ぜひ一緒に働きたいなと思います。
一方、このような人ばっかじゃないと思うので、「俺はここにすごい自信がある」という感じで自分の軸がある人もすごく好きだなと思っています。ユーザーへの価値基準がある前提において、その中で僕はこれが得意だっていうエンジニアの方に来ていただけたら、その強みをもっと発揮できるような環境をご提供できる自信があります。

市谷:やっている最中はそんな意識はなかったけど、後から考えると選択肢を狭めないように選択するということは、何度もやってきましたね。つまり、あるキャリアを選んだときに、もうその次のキャリアがある程度の既定路線になっているというパスは、基本的には選んでいなかったと思います。プロダクトの一部分だけを扱うような仕事になってしまうと、その後が広がりにくいので、なるべく全体を捉えながら開発に取り組んでいました。

--何か転換期やきっかけみたいなものはあったのでしょうか?

市谷:どうなんでしょう。結果的には今もそういう選択を続けてるようなところがありまして、例えば僕は2014年に自分の会社を立ち上げたのですが、結果的にそのお陰で道が開けた感じはありますね。

町田:選択肢の幅を広げ続けるってすごいなと思うのですけど、例えば僕の場合、多くの選択肢がある中で色々と試行錯誤すると、むちゃくちゃ忙しいなと感じています。24時間の限界がある中で、市谷さんも「全然時間足りない」みたいな時期はありませんでしたか?

市谷:常にです(笑)でもやっぱり、自分でこういう選択肢を選んでやっているので、全然苦じゃないです。ただ疲れるのは間違い無いので、適切に休みながらやっていますよ。

町田:私も「辛くないの?」とよく言われるのですが、よく小さいときに夢中になってゲームをやって気付いたら24時間経っていた、という感覚をずっともって動いています。

市谷:その場合、自分がどんな人なのかを、Slackとかで意識的に伝えた方が良いですね。忙しくて返信とかがないと、なんか嫌なやつだなとかなっても良くないので。

町田:なるほどですね。ここまで色々とお話しさせていただきましたが、同じようなお考えですごいびっくりです。有難うございました!

編集後記

本記事では、2021年10月8日に開催されたオンラインテックトークイベント「Qiita × Bitkey Engineer Meetup」のキーセッションの様子をレポートしました。
“テクノロジーの力で、あらゆるものを安全で便利で気持ちよく「つなげる」“というミッションを掲げるビットキー。一人ひとりのエンジニアが、ユーザーの価値にフォーカスし、サービスやプロダクトを作っていきたいという強い想い、熱量を感じました。
フィジカルとデジタルのコネクトをさらに推し進め、ますますワクワクする展開が期待されるビットキーに要注目です。

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