メンバーの心理的安全性を保ち、成長できる環境を本気で目指す。ゆめみの組織改革
「リモートワーク」や「書籍購入制度」など、社員の成長を促したり、働きやすくなるような制度を導入する企業はめずらしくありません。
なかでも、インターネットサービスの企画・開発・運営やデジタルマーケティングの支援を行う株式会社ゆめみでは、「勉強し放題制度」「給与自己決定制度」など、社員の成長を支援するユニークな制度や環境が充実しています。
具体的にどのような制度や環境があり、実際にエンジニアはどのように活用しているのでしょうか。
代表取締役の片岡俊行さんと、同社エンジニアの永田かなでさんと木野翔平さんにおうかがいしました。
目次
・「ゆめみ」にこめられた2つの意味「夢を見る」と「夢を実現する」
・勉強し放題制度 書籍や講座は事前申請不要で全額補助。体験イベントも可
・目標管理シートは撤廃 給与は自分で決める 上長の承認は不要
・星取り表で幅広いスキルを習得できるように。時には助け合いながら
プロフィール
目次
「ゆめみ」にこめられた2つの意味「夢を見る」と「夢を実現する」
――ゆめみはエンジニアに理解がある企業だとおうかがいしています。エンジニアにいい制度を整備している目的や動機にはどのようなものがありますか?
片岡:ゆめみでは社員1人ひとりの声を聞き、受けとめて制度を考えています。エンジニアだけにフォーカスを当てることはしていません。会社は誰もが技術者としてとらえています。エンジニアは当然技術者ですし、広報も営業もそれぞれの専門領域における技術を持っているととらえています。
ゆめみでは成長を大きなテーマにしています。社員が成長できる環境を提供できるように様々な制度を設計しています。
「ゆめみ」という社名には2つの意味がこめられています。「夢を見る(夢見)」と「夢を実現する(夢実)」です。「夢を見る(夢見)」の方は、社内での心理的安全性を保つことで、安心して仕事ができる環境にして、夢を見ることができるようにする。これができると後者の「夢を実現する」ための成長に向けて進んでいくことができます。
社名に込めたこの想いを社員が実現できるように、組織や制度づくりにかなり力を入れて取り組んでいます。
――現場のエンジニアから見て、会社の環境で気に入っているものを教えていただけますでしょうか?
永田:自分が希望するスペックのマシンを手配してくれたことです。前職では与えられるマシンのスペックが決まっていて、それがWindowsの32ビットでした(笑)ゆめみではMacで、付けられるオプションはほぼ全部付けてもらえました。すごく高いスペックのマシンなので仕事がしやすいです。
木野:マシンだけではなく、キーボードやマウスといった備品も選べます。また必要であればIDEや有償ソフトウェアもほぼ自由に選べます。
勉強し放題制度 書籍や講座は事前申請不要で全額補助。体験イベントも可
――制度で何か使われているものはありますでしょうか?
永田:勉強し放題制度ですね。書籍は全額補助されます。技術書は3000円くらいと高いため、自腹だと苦しいので、助かります。また、補助してもらえると「これ学びたいな」と思った時のハードルが下がります。
現在は、Udemyのオンライン講座でAWSの基礎を網羅したものを受講しています。AWSを体系的に学ぼうと思って始めることにしました。
片岡:書籍だけではなく講座も勉強し放題制度の対象です。事前申請不要なので、後から申請できます。
木野:私はフレックス制度が導入されたことで働きやすくなりました。また制度から少しずれますが、ビデオ会議が増えてよかったです。客先訪問はPMだけで、エンジニアはZOOM(ビデオ会議)で参加したりします。移動すると時間を使いますし、開発に専念できていいです。
永田:台風で電車が動かない時とか、リモートワークができる環境もいいです。社外にいる時は、ノートPCからVPN経由で会社のデスクトップにリモートアクセスします。いざという時にセキュアでリモートワークができるようなインフラがあるのもいいです。
――エンジニアからは勉強し放題が評判がいいようですね
片岡:じつは勉強し放題制度は金額の上限がありません。つい先日、エンジニアではなくデザイナーでしたが、半年間の講習で50万円の申請がありました。エンジニアの仕事は開発だけではないので、プランニングやマーケティング、英会話のオンラインスクールも補助します。なんでもありです。VR ZONEとか、遊びに見えるものでも、将来のインターフェースで新たな発想につながるかもしれません。体験が学びとなり、どこかのアウトプットに役立つと信じています。
――勉強した後にはどのような報告をするのでしょうか。
片岡:アウトプットは必須としていますが、毎回厳密に報告を定めていませんし、強制していません。
重視しているのは報告ではなく、学習することです。社員には「アウトプットの時間をインプットの時間よりも多くかけるように。アウトプットするものを意識してインプットするように」と話しています。
報告を目的とすると、書評のような報告になってしまいがちです。得た知識を文字でまとめて可視化すると、自分の知識を整理できます。アウトプットしたものをシェアすれば他人の学びや気づきにつながり、社内の相乗効果へとつながります。こうした効果を期待しています。
具体的には学んだことはQiitaやnoteなど、最適なメディアでアウトプットすることを推奨しています。エンジニアだとQiitaが多いですね。
開発プロジェクトや取引先の情報が含まれるものだと、社外向けには汎用的に抽象化してQiitaに書きこみます。社内向けにはそれを引用し、より具体的な詳細を加えていきます。社内ではConfluenceを使っています。
目標管理シートは撤廃 給与は自分で決める 上長の承認は不要
――ほかにもエンジニアにいい影響を与えていそうな制度はありますか?
片岡:2018年10月から目標管理シートをなくしました。それまで半期毎に目標をExcelに書き込み、振り返って評価していました。しかしエンジニアが日々のやるべきことはアサインされる案件に左右されることが多く、それにより目標を立てづらかったり、振り返り評価するのもかなり大変です。そのため、目標管理シートはやめました。そのかわり、成長を促進するためのアウトプットに時間を割いてもらうことにしました。
実際、Slack、Jira、Confluenceを見れば普段どのようなことをしているのか、実績が見えますので。
――そういうもので評価しているのですね
片岡:評価の話をすると、給与を決めるための評価はなくしました。給与は自己申告制でしたが、2019年4月からは自分で給与を決めます。自己決定です。
――自分で自分の給与を決める…?次の4月から自分の給与を上長に申告し、承認を得て決定するということでしょうか?
片岡:いいえ。上長の承認は要りません。自分で決定します。毎月、随時決められます。これができるのは、全メンバーが代表取締役の権限を移譲されているからです。給与であれば、決めることができるのは本人と代表取締役です。なぜなら決めた給与にコミットするのは自分だからです。ただし給与は経営にインパクトがあるので、代表取締役は本人の決定を上書きすることができます。これはコードをコミットし、進化させていくのと同じイメージです。
給与に限らず、いろんな意思決定をあらゆるメンバーができるようにしています。意思決定を「プロリク」と呼んでいます。Gitの「プルリク」にならい、「プロポーザル レビューリクエスト」だから「プロリク」です。誰かにレビューをもらい、自分の意思は代表取締役の権限として決定します。その後に、別の人がまた意思決定できます。常に誰かのレビューをうけて、意思決定は進んで行きます。
給与は社内のキャリアコンサルタントや同僚から情報収集し、レビューしてもらい、自分で決めていきます。会社としては給与は個人情報という扱いなので、会社から公開することはありません。しかし自分で公表したり、同僚に聞くことは推奨しています。
――一方で若手の方だと、どう決めたらいいか分からない人もいるのではないでしょうか?
片岡:会社としては自己決定に加え、暫定給与の設定もしています。入社時には年収は450万円以上がスタートです。未経験または仕事内容で「この年収ではプレッシャーを感じる」のであれば、下げることもできます。
自分で決めるとしても相場が分からないと、どの程度が妥当なのか判断が難しい場合もあります。そうすると情報の非対称性における経営者の搾取、つまり経営者にしか情報がないことを利用して、妥当でない年収を押し付ける形になりかねないので、まずは暫定給与として下限値を決めています。
実際に案件をバリバリこなす人であれば、新人であろうとも、それだけの価値を持っています。それ以上も珍しくはありません。価値のある人が妥当な給与をもらえるような制度へともっていきたいです。
星取り表で幅広いスキルを習得できるように。時には助け合いながら
――「この技術をマスターしていればこの年収」というような目安はありますか?
片岡:社内のキャリアパスを全職種用意しています。職種と職位に応じて、どのような期待があり、どのような年収があるのか、目安を示しています。しかしこのキャリアパスは、どちらかと言うと営業が取引先に提示するための価格表のような意味合いがありますので、メンバーの成長という意味合いでは、以下の「星取表」を全チームで用意して、スキルの棚卸し、可視化をしています。
☆:教えられる
◯:独力でできる
△:サポートしてもらってできる
↑ :できるようになりたい・なる必要がある(キャリアプランの観点からプロジェクトで扱っていない技術・能力含む)
このように各メンバーの技術習熟度を可視化することで、メンバー同士のスキルカバレッジが共有でき、自分の学びたい領域について、誰に聞けばいいかが解決する。
(片岡さんのnoteの投稿より:https://note.mu/raykataoka/n/n50c282bcb305)
片岡:我々はメンバーの成長を、何よりも大事にしています。エンジニアに対しては、きめ細かな能力開発のステップを示すことが必要です。そこで星取表を使って、どの分野のスキルをどれだけ得ているか、たくさん星を取るように仕事を進めてほしいと考えています。
「フロントエンジニアだけどバックエンドのAWSを学びたい」、「フルスタックエンジニアになりたい」と書いて示すこともできます。そうすれば誰かが「じゃあサーバーサイドならぼくが分かるから今度一緒にやろう」と教えることもできます。成長は他人の助けも得ながら、仕事を通じて学んでいくことが必要です。
――エンジニアから見てどうでしょうか。
木野:エンジニアは職種ごとにチームが分かれていて、同じチームのメンバーでも別のプロジェクトで働いていたりします。別のプロジェクトにいるメンバーだと、お互いに実務としてヘルプや助け合うことまではなかなかうまくできません。自分が入っているプロジェクトに自分の力を向けていますから。でも、星取表のような制度を会社が取り入れてくれれば、別チームや別プロジェクトのエンジニア同士の相互補助や、「誰に聞けばいい」みたいなコミュニケーションができるのではないかと思います。
永田:最近頻繁に制度が変わっていて、正直、追い切れていません(笑)
片岡:社員は制度やルール、仕組みの全てを知っている必要はないと思っています。例えばAWSのサービスについて、すべてを知る必要はありませんよね。ゆめみでは毎週「プロリク」で制度のどこかが変わっています。AWSのアルファ版、ベータ版のように常に進化しています。必要なタイミングで制度を知り、好きなタイミングで利用すればいいのです。言葉にするならば、「Company as a Service」ですね。
「勉強し放題制度」に制限を設けないのも、目標管理を撤廃して「給与自己決定制度」を導入したのも、心理的安全性を確保した環境を作るためです。またQiitaなどを活用したアウトプットを通じて学習を最大化させ、成長を促していく仕組みです。そして「星取表」でスキルを可視化し、他のメンバーと共学していくというものです。ゆめみでは、これからもエンジニアだけでない「技術者」の成長できる環境を追求した制度改善を続けていき、冒頭で述べた「ゆめみ」の社名に込めた想い「社員が夢を見ることができるようにして、夢の実現に向けて注力できる状態にする」を実現させます。
編集部より
フレックス、リモートワークなどの制度はもちろん、「勉強し放題制度」や「給与自己決定制度」など、ほかにはないユニークな制度を導入するゆめみ。そのユニークさの理由は、社内環境を改善することで、夢を見ることができるような状態にして、夢を実現するための成長を支援するためでした。
社員の成長を促進するために、週ごとに制度をアップデートしていくなど、社員の成長を支援する本気度が伺えます。
思う存分成長したいエンジニアにとっては、良い環境となることでしょう。
ゆめみに興味をお持ちになった方は、同社の採用サイトや、エンジニアのインタビュー記事をぜひご覧ください。
ゆめみのQiita Organization
https://qiita.com/organizations/yumemi
出演していただいた永田さん、木野さんを含む、ゆめみで働くエンジニアのインタビュー
https://www.yumemi.co.jp/ja/members
制度や組織の構想などを投稿している、片岡さんのnote
https://note.mu/raykataoka/