125万人の「働き方」を思い描く会社 クラウドワークスのエンジニアの働き方と次に挑むステージ
多くの一般企業や個人がクラウドを活用する現在、WEBサービス開発のインフラもクラウド環境が当たり前の時代になっている。
本企画では「クラウド時代に求められるエンジニアリングの実態」をテーマに、エンジニアを積極採用し続けるユーザー向けサービス企業のCTOと、クラウド・エバンジェリストの林 雅之氏を交え、サービスの開発現場の実態や、そこで求められるエンジニア像について熱く語って頂く。
第二回目は『「働く」を通して人々に笑顔を』を合言葉に日本最大級のクラウドソーシングサービスを展開するクラウドワークスにて、2015年4月の入社からわずか1年余りでCTOに抜擢された、執行役員CTOの弓山 彬氏にお話を伺った。
プロフィール
日本最大級のクラウドソーシング「クラウドワークス」
株式会社クラウドワークス
『ビジネス2.0』の視点:オルタナティブ・ブログ
エバンジェリスト | NTTコミュニケーションズ 企業情報
目次
創業5周年でユーザー数100万人を突破!クラウドワークスの「働き方革命」
“「働く」を通して人々に笑顔を”。
2016年に創業5周年を迎えた株式会社クラウドワークスが展開する「クラウドワークス」は、オンライン上で 仕事を受発注できる日本最大級のクラウドソーシングサービスだ。場所や時間の垣根を越え、企業と個人、個人と個人を結び、新たな働き方を創出している。現在、ユーザー数(クラウドワーカー)は125万人を超えている。
林:プレミアムフライデーも始まり、世の中全体で働き方を変えていく動きが見られますが、御社のサービスではどんなワークスタイルをお持ちの方がいらっしゃいますか。
弓山:特にエンジニアやデザイナーが活躍しやすい土壌であり、専門スキルを持つ方に多く利用いただいていますが、最近でいうと子育て世代やシニアの方にも利用頂き、裾野が広がってきているのを感じます。海外に拠点を置くクラウドワーカーの方もいて、100カ国以上からの登録がありますね。
林:全国各地から海外在住者まで、総勢125万人とはものすごい数ですね!発注量でいうとどのくらいの契約が交わされていて、どんなお仕事が多いのでしょうか。
弓山:2016年の第1四半期には10億円近い報酬をクラウドワーカーの皆さんにお支払しています。現在約16万社の中小企業から110万人のクラウドワーカーに仕事が渡っている状態です。データ入力や文字起こしといった、専門スキルがない方にも応募しやすい案件から、システム開発、デザイン、コンサルティング、翻訳など専門的なお仕事までがプラットフォーム上で幅広く募集されています。
林:御社のエンジニアも『クラウドワークス』を時々利用されているそうですね。副業はどの程度認められているのですか。
弓山:基本的に申告なしで副業が可能です。実際に使うことで得られる気づきがあるので、社員の『クラウドワークス』の利用も推奨しています。もちろん他社さんのサービスを使っても問題ありません。
クラウドワークス社の人事制度「ハタカク!」
- リモートワーク
- フルリモートは現在業務委託のみ。リモートでもビデオ会議で朝会や夕会に参加。オフラインのコミュニケーションを大切にしている。
- 副業の自由化
- スタートアップ企業で活躍する社員も。フェーズが異なる企業に身を置いたり、異なる仕事に挑戦したりすることで、新たな経験・発想などが得られる。
- フレックス制度
- 他
エンジニア組織における取組み
- 社内勉強会
- 気になる技術の紹介や、読書会などメンバーが自主的に企画しているものが幾つかある。
- 社外のエンジニアを交えて情報交換・意見交換する機会も作っている。
- C(クラウドワークスを)S(整地しよう)P(プロジエクト)
- 普段のサービス開発の片手間ではなかなかできない改善や、新たな技術に挑戦する期間。年始の2週間を設定し、締めくくりとして1泊2日の開発合宿も実施。
スクラム開発で1日1回はチームMTG!
林:開発はどのように進めていますか。
弓山:多くのサービスをRuby on Railsで開発しています。目的ごとに数人のチームを作って、スクラムをベースとして、各チームで工夫しながら進めています。それぞれのチームでミッションを持ち、そのミッション達成するためにどのような行動が必要なのか、それぞれのチームで考えるところから行っています。その考える中で出てきたアイディアを、実際にサービスに適用してみて、ユーザさんの反応を見て、その結果を次の施策に反映する…という一連のサイクルを、それぞれのチームが進めています。バックエンド担当、フロントエンド担当、データ分析担当、といった機能ごとのチームというよりは、いろいろな得意分野のあるエンジニアが一緒になった混成チームになっていますね。
林:リモートワーク時もMTG参加を基本ルールとされているそうですね。クラウドは何を利用されていますか。
弓山:今はAWSをメインに使っています。結構オーソドックスな構成で組んでいますね。
林:トラフィックに対して短期間でリソースを変更することはありますか。
弓山:突発的なピークが発生しづらいサービスなので、特に実施していません。事業的にもユーザーが限られていますし、使う時間帯も予測がつきやすい。リソースのチューニングは比較的しやすいですね。
マッチング精度の向上が課題。インフラのコード化とハイブリットクラウドが開発の鍵に
弓山:リリース当初に比べると、1日当たりの仕事の投稿件数は桁違いに多くなっています。それだけ自分に合った仕事に出会いにくくなっているため、マッチングの精度を上げることが課題です。ワーカーとクライアント、仲介する我々にとってもHAPPYになれるものを目指したい。
林:マッチングには自動化がつきものだと思いますが、インフラ周りやアプリケーションの開発など、人間が介在しなくてもサービスを運用できる仕組みは考えていますか。
弓山:インフラのコード化は昨年のRails3からRails4へのアップグレードの一貫で注力して進めた部分です。本番環境と同じ構成のものをもう一つ作成する、というようなことも行えるところまで整備できてきました。
林:コード化の自動化ツールは何か利用されていますか。
弓山:AWSの構成管理にTerraformを、インスタンスのプロビジョニングにChefを使っています。インフラ周りを改善することで、ミドルウェアの切り替えや、その上で動くアプリケーションの大規模な変更なども、細かく検証しながら安全に進められるようになりました。直接的に利益貢献が見えづらい部分ですが、やはり、基盤がしっかりいることは大きなメリットであることを改めて実感していますね。
林:事業拡大にあたり、インフラ周りに求めるものはありますか?
弓山:他のクラウドサービスと組み合わせて、それぞれの長所を上手くつなぎ合わせられるものがほしいです。異なる価値観・設計で作られているサービス間のギャップをスムーズにつなげていけるような連携システムがあると嬉しいですね。
林:いわゆるハイブリットクラウドですね。クラウド業界では今、ハイブリットクラウドをテーマとした勉強会や交流が盛んで、できるだけ運用を自動化し、アプリケーション開発にシフトしていこうという時流があります。クラウドマネジメントプラットフォームやChefなどの運用自動化ツール、サーバでなくコンテナを利用する動きも見られますね。
マッチングの自動化。AIの導入は?
弓山:中長期的に取り組み続けていく必要を感じていますが、今すぐサービスに大々的に導入していこう、という感じではないですね。AIが価値を発揮できるようにするためには、多くのデータを適切に扱える基盤を作ったり、データの精度や質を改善する必要があります。そういった取組みは人が介在する必要がありますし、それらの取組みの過程で改善できる余地がまだまだあると考えています。例えば、ユーザーごとに検索結果の内容を変えるためには何が必要か考えていたり。
林:レコメンドエンジンのような。
弓山:はい、最初は一般的なECサイトと同じようなアルゴリズムを適用していくのだと思っていますが、私たちのサービスがECサイトと違うのは、ユーザさんのサービス外の経験やスキルをどのように捉えていくか、という点かもしれないですね。ECサイトと違って同じ商品(仕事)の在庫がたくさん有るわけでもないので、そのチューニングも必要です。
「働く」仕組みという大事な基盤づくりに率先して夢中になれる人に来てほしい!
林:どんなエンジニアに来てほしいですか。
弓山:サービスや事業に共感してくれる人です。「働く」仕組みというとても大事な基盤。世の中へのインパクトはまだまだ小さいので、一緒に世に広めようとしてくれる人ですね。開発している自分たちもいつかこのサービスを使うかもしれない。言われたことだけやるのではなく、率先して一緒に夢中になれる人と働きたいですね。
林:スキル面はいかがでしょう。
弓山:もちろんスペシャリスト級の力はとても助けになりますが、必ずしも特別なスキルがなくてもOKです。基礎知識を備えた人であれば事業やサービスへの共感度の面を重視します。弊社ではエンジニアのキャリアパスとして、マネージャーだけでなく、スペシャリストとしての道も整備していこうと考えています。クラウドソーシングはまだまだ小さい市場。それを一緒に広めるために技術的にも事業的にもチャレンジしたい方を求めています!
AIと人との関わり方。クラウドワークスが目指す次のフェーズ
林:最近、総務省のAIネットワーク社会推進会議のメンバーとして、AIが普及した時の経済や雇用への影響について意見を求められる場面が増えてきました。エンジニア不足の中、どれだけチームの中にAIを取り込むかは大きなテーマですね。タスクを分担する際にAIと人のどちらが前に出るか。AIが入ることで、人ができなかった接点を作っていける可能性があります。例えば、Chatbotを御社で使ったら面白いのではないかなと思っています。
弓山:AIが介在してマッチングを手助けするクラウドソーシングサービスは面白そうですね。対話型サービスで高齢者や主婦の方も気軽に問い合わせができ、新しいマッチングの仕方が生まれそう。
林:海外では教育×Techという掛け合わせで、“アダプティブラーニング”が流行っていますよね。求職者のスキルアップをフォローするといった、仕事から教育までを網羅するビジネス展開も視野に入れていますか。
弓山:私たちは「”働く”を通して人々に笑顔を」というミッションに向かって事業を推進しています。今は「仕事」に注力していますが、安心して仕事を続けるためには、教育や社会保障も重要になってきます。世の中全体をいきなり変えるのは難しいけれど、身近なユーザーさんたちの想いに耳を傾けながら、サービスの拡充に取り組んでいきます。