「最新技術で切り拓くエッジコンピューティング&FPGAの未来」イベントレポート(主催:アヴネット株式会社)

AI、IoT、スマートファクトリーなど、近年注目される先端分野の成長を支えるのが、エッジコンピューティングやFPGA技術です。これらの技術にはリアルタイムのデータ処理や省電力化が必須であり、最適なハードウェアとソフトウェアの選定が重要な課題になります。

このような状況において急速な成長を見せているのが、アヴネット株式会社(以下、アヴネット)です。同社はアリゾナ州フェニックスに本社を置き、世界各国に250以上の拠点を持つグローバル・テクノロジー・ディストリビューターおよびソリューションプロバイダー。1921年の創業以来、顧客のグローバルなビジネスの成長を支え続け、2024年度の売上高は238億ドルを記録。AMDをはじめとする革新的なサプライヤーとの安定したパートナーシップにより、急成長の中でも安定したサービス提供を可能にしています。

アヴネットは2025年3月に、パートナー企業であるOKIアイディエス社、コンピュータマインド社およびNECプラットフォームズ社とともに「AMD最新エッジコンピューティング & FPGAソリューションセミナー 2025」を開催しました。イベントではエッジコンピューティングやFPGA技術の最新情報に加え、各社が提供する製品の紹介、実際のデモ環境を体験できる展示などが行われました。本記事では当日のダイジェストをご紹介します。

ほしい機能を自由に実装。アヴネット「Avnet Edge Computing Platform」の価値

1つめの講演は、AMD FPGA およびアダプティブSoC 製品を活用し、エッジコンピューティングに必要な低消費電力や低レイテンシの実現に向けた事例として、Edge AI Cameraを使用したAvnet Edge Computing Platformの環境についてです。

アヴネット株式会社 第3統括本部 半導体第2事業部 エンジニアリング部1課 課長の長内 和久 氏

エッジコンピューティングに必要な要素を網羅

近年、半導体業界の市場要求は大きく変化していますが、共通するトレンドは「リアルタイム性の確保」「通信量の削減」「セキュリティリスクの低減」の3つです。PCクラウドで実行した処理について、これまでは分散型だったものをなるべく集約しようという傾向でしたが、近年では再び分散型になってきており、エッジコンピューティングの必要性が高まっています。その際に課題となるハードウェア環境だけでなく、ツールフローなども含めてお客さまの課題を解決するプラットフォームが、サプライヤーであるAMD社の製品を利用した「Avnet Edge Computing Platform」です。

デモとして展示されたEdge AIカメラ

Avnet Edge Computing Platformが提供する最大の価値は、実現したい機能を自由に実装できる点です。エッジコンピューティングに必要なのは柔軟なツールフローと実装手段としてのハードウェアですが、これらを兼ね備えた数少ない製品です。

またAMD製品の特徴は、論理回路ツールによって最適化して実装ができるデバイスである点です。回路は出荷後も書き換えが可能で、追加に修正やアップデートができるという特徴があります。AMD製品を製品開発プラットフォームとして利用することで、製品ごとの機能最適化が可能になります。共通化やプラットフォーム化によって必要なタイミングで必要な部分を書き換えて対応できるため、コスト削減に貢献できます。

動的に機能の書き換えが可能な点も、AMD製品の大きな特徴で、運用中に機能停止せず、ハードウェア回路の書き換えができます。これはパーシャルリコンフィグレーションという機能で、今ではDFX(ダイナミックファンクションExchange)と呼ばれています。ハードウェアレベルで実行が可能な点も特徴で、PCIカードはこの機能を使っているため、PCIの部分を生かしたまま内部の回路を書き換えられます。

GPU/CPUはデータを蓄積して一括処理することで高いパフォーマンスを得ているため、処理能力を上げるためには周波数を上げたりコア数を増やしたりする必要があり、消費電力が高くなる傾向があります。蓄積分配など前段処理・後段処理に必要な時間も長くなります。

しかしAMD製品では、リソースが許す限り専用回路による完全並列化が可能ですので、パイプライン化でメモリアクセスを少なくでき、低周波数でも高いパフォーマンスを実現可能です。AMD製品は、装置内通信の高速化(高スループット)にも成功しています。伝送路のBER確認が可能で、デバッグが容易にできます。


こちらの機能のターゲットは主にVersalシリーズなどのデバイス製品や、キャリアカードを開発すれば製品化が可能なシステムモジュールなどです。具体的なターゲット製品にはVersal™、Kria™ SoM、Alveo™、AMD Embedded+™があります。これらのプラットフォームを使用すれば、PC上で開発したものを環境を変えずにHPC側に移行でき、エンドポイント側はデバイスに持っていくことが共通環境でできるようになります。

必要なのは最適化のみで、ソースコードやツールは共通です。共通の開発環境のため、評価後の量産適用時アプリケーションを実装するハードウェアは柔軟に選択できます。


このようなAMD製品の優位性を生かして、アヴネットにしかできない柔軟な製品開発(機能実現)が可能になります。今後もハードウェアを供給し、様々なソリューションを組み合わせた提案をする予定です。Avnet Edge Computing Platformについての開発の課題や要望も受け付けています。

画像の高速伝送を低負荷で実現。OKIアイディエス社「10GigE Vision® カメラプラットフォーム

2つめの講演は、AMD Kria KR260ロボティクススターターキットにCIS製のSLVS-ECの受信IPおよび画像処理IP、そして同社製品の10GigE Vision IPを実装したFAカメラ向けに構築したアプリケーションについてです。

株式会社OKIアイディエス 事業統括部営業SE部 サブチームリーダーの土屋 広幸 氏

画像の高速伝送とサーバー負荷軽減を実現する「GigE Visionソリューション iGiGE™」

AMD製品を活用したソリューションの1つとして、OKIアイディエス製品である10GigE Vision® カメラプラットフォームの紹介です。10GigE Vision® カメラプラットフォームには、マシンビジョンというシステムが使われています。マシンビジョンとは、コンピュータとカメラの応用により、画像の取り込みと処理に基づいて機器を制御するシステムです。自動検査、対象物の測定、ロボットアームの位置決めガイドなどに使われています。

マシンビジョンの代表的な規格には、GigE Vision、CoaXPress、USB3 Vision、Camera Linkがあります。これらは伝送するケーブルがそれぞれ異なるため、それぞれのインターフェースに合った形のマシンビジョンインターフェース規格が定義されています。今回紹介するGigE Visionは、2006年にEthernetを使用した画像伝送規格として策定されました。2011年にはv2.0へとバージョンアップし、現在は2022年策定のv2.2が最新です。

GigE Visionには次のような特徴・機能があります。

特徴

  • 専用I/Fボードを必要としないEthernetで画像を非圧縮のまま伝送可能
  • 画像パケットロスト時の再送機能を持ち、通信の信頼性を向上
  • GenICam(Generic Interface for Cameras)を採用し、マシンビジョンカメラに対する標準プログラミングインターフェースを提供
  • ツイストペアケーブルを使用すれば100m、光ケーブルを使用すれば数10kmまで伝送可能

機能

  • デバイス検索:受信側からローカルネット上のGigE Visionカメラの検索
  • デバイス制御:コマンドによってカメラ設定やデータ転送制御
  • 画像伝送:カメラから受信側へ画像データなどの送信
  • ブーストラップ:カメラ側に設定変更可能なカメラ固有情報を保持

このGigE Visionを活用した製品が、OKIアイディエス GigE Visionソリューション iGiGE™です。まずカメラ側向けGigE Vision Tx ソリューションはv2.0に対応したIPとして、「高精度PTP・軽量版」、「高機能版」をラインナップしました。受信PC用専用Driver+GenIcam Libも合わせて提供しており、IPとセットで購入できます。

モニター側向けGigE Vision Rx ソリューションについてもFPGAのIPとしてv1.2対応版が用意されています。このIPを採用すれば様々なセンサーやカメラの画像データをGigE Visionパケットとして伝送できます。リファレンスデザインを無償提供しているため、リファレンス部分はお客さまのシステムに合わせてカスタマイズ可能です。

TXソリューションのIPには、v2.0版としての「高精度PTP・軽量版」と「高機能版」の2種類に加え、バージョン違いの「v1.2版」という3種類のIPの違いについてご説明いたします。まず高精度PTP・軽量版の特徴は、高精度のPTP、BMCA付きPTPマスター機能、マルチストリーム送信に対応しているところ、そして省リソースである点です。

高機能版はAll-in Transmission ModeやJPEG/JPEG2000/H.264、OKIアイディエスの独自機能に対応しています。一方、v1.2版はGigE Vision v1.2の主要必須機能とPACKETRESEND、EVENT、当社の独自機能に対応しています。機能、用途に合わせてこれらのIPから最適なものを選択可能です。

MPSoCにGigE Vision v2.0 Tx IPを採用すると、MPSoCはARMによる画像処理やAIによる物体検知などを実現できます。ARMによる画像処理やVitis AIによる物体検知などとGigE Visionの画像伝送を組み合わせることで、エッジ側となるカメラでAI処理や画像処理を実施し、その結果をGigE Visionで高速伝送できます。このような画像処理のエッジ化により、サーバー側の負荷軽減を実現できます。

AI推論+画像処理+高速画像処理をかなえる「Kria™ KR260での10GigE Vision カメラプラットフォーム」

次に、Kria™ KR260での10GigE Vision カメラプラットフォームについてご紹介します。まずKria™とは、AMD社から登場したSoM(System on Module)シリーズです。現在は、Kria™ K26 SoMとKria™ K24 SoMの2種類があります。なかでもKria™ K26 SOMには次のような特徴があり、Kria™をiGiGE™に実装することでAI推論+画像処理+高速画像伝送を可能にしています。

Kria™ KR260での10GigE Vision カメラプラットフォームは、SLVS-EC接続カメラからの5.1Mpx60fps画像送信をKria™ KR260で実現したものです。画像の入力にはCIS製のSLVS-EC Receiver IPを搭載しています。このIPの特徴は、入力型のバイトデータからビットデータ抽出に特化しており、非常に省リソースである点です。”GigE Vision UDP Offloading Engine”によって画像データを5.1Gbps高速伝送でき、User ApplicationにAIを搭載すればエッジAI処理画像の高速伝送が実現可能になるプラットフォームです。

機器の構成については、中央にKria™ KR260 ロボティクススターターキットがあり、その左側にカメラが接続されています。KR260とPCの間はEthernetの光ケーブルで接続しています。一番左側にあるノートPCで再生されている映像を5.1Mpxカメラで撮影し、その画像データをKR260からPCに転送します。PCは受信した画像をモニターに表示する、という構成になっています。

日本企業として初めて、OKIアイディエス製プラットフォームがAMD社のKria™アプリストアへ掲載予定です。Kria™アプリストアでは、Kria SOMの開発や評価に役立つ無償のビルド済みアプリケーションが多く提供されていますので、ぜひ一度ご覧ください。

AI開発がもっと身近に。コンピュータマインド社のソフト「DeepEye」

3つめの講演では、AIモデルの開発から機械制御、業務アプリケーションまで、AIシステム構築をワンストップでサポートし、専門知識不要でディープラーニングを業務フローに導入可能な製品 Deep Eyeが紹介されました。

株式会社コンピュータマインド 開発本部 本部長 岩間 裕久 氏

AI開発は運用やアップデートを含めた「持続可能性」が重要

AI開発のプロセスには、様々な工程があります。PoCはテーマによって複数回行う場合もありますし、開発の中でAIモデルのアップデート、あるいは実証実験を行う中で現場のデータを取りながらアップデートしていく場合もあります。またリリース後に運用が始まれば、蓄積したデータをまたAIモデルにフィードバックしていくサイクルもあります。

このような業務をコンピュータマインドのようなソフトウェアベンダーに毎回委託しているとコストがふくらんでしまう問題が出てしまいます。そのコストを製品価格に乗せるのも、現実的には難しいでしょう。

すると、そもそもビジネスモデル自体が成り立たない、投資対効果が見合わないという理由で、話が進まないケースも多くあります。AI導入して終わりではなく、現場の運用やアップデートを含めた持続可能性を意識することが重要です。

ここでご紹介したいのが、コンピュータマインド製品のDeepEyeです。DeepEyeは簡単な操作でAIモデルの開発ができる、パッケージソフトです。画像分析や物体検出など、画像を用いたAIモデルを自作できます。環境構築済みのためすぐに試せて、GUIアプリケーションなので専門知識がなくてもAIモデルが作れる点もメリットです。

DeepEyeで作成したAIモデルは、外部連携用にエクスポートできます。各種AIエッジデバイス向けには、自動連携の仕組みも提供されます。さらに基本的な使い方であれば買い切り価格で非常にお得です。

AIベンダーに開発委託する場合は、エンジニアの単価に必要工数をかけ、それに管理費を乗せたものがAIモデル開発コストになります。これを社内リソースに置き換えて内製化するため、使えば使うほどコストメリットが大きくなっていきます。

イベント当日は、DeepEye × FPGAによるオールインワンAIプラットフォームの展示もありました。左側にはレゴ社のマインドストームという小型マイコンを使って生産ラインをイメージしたデモです。ホイールの傷の検査と同時に、人の侵入検知を行っています。推論などはNECのコンパクトボックスコントローラーで行っています。

この中にDeepEyeのソフトウェアと学習を行うためのGPU、FPGAベースのAIアクセラレータカードといったものがすべて入っています。その中で、今回のお話で紹介された2つのモデルがFPGA上に構成され、推論アプリケーションを通じて結果が表示されるという構造になっています。

デモで展示されたDeepEye × FPGAによるオールインワンAIプラットフォーム

DeepEye × FPGAによるオールインワンAIプラットフォームの優位性は大きく3つあります。1つめは、学習から推論、データ活用まで、エンベデッドPC1台で完結できる点です。1PC内でAIサイクルを回して、エンドポイントAIを実現できます。拡張性も高く、柔軟なシステム構築が可能です。

2つめは、FPGAベースのAIアクセラレータ活用です。高精度・低レイテンシ・低消費電力でのAI推論を実現できる点です。従来のFPGA実装の難しさをクリアし、ユーザーは意識せずに活用可能です。3つめは、DeepEyeの活用による持続可能なAIシステムの実現です。PoCや実証実験、運用後に生じるAIモデル開発コストを大幅低減します。AI学習効果も見込めるため、内製化を促進します。

株式会社コンピュータマインドでは、AIを中心にシステム構築全般をフェーズ、課題問わず請け負っています。エッジデバイスを用いた開発経験も豊富にあり、エンドポイントAIを実現します。AIでお困りの際には、ぜひお気軽にご相談ください。

エッジ端末に必要な機能が揃う。NECプラットフォームズ社「コンパクトボックス型コントローラ AMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデル」

4つめの講演では、今年の春に発売予定のAMD Ryzen (x86 CPU)とVersal アダプティブ SoC (FPGA)を単一ボード上でシステム融合した、コンパクトボックス型コントローラが紹介されました。

NECプラットフォームズ株式会社
コアテックソリューション統括部 新市場開拓グループ シニアエキスパート
永尾 裕樹 氏

省電力で高性能なエッジシステムをAll-in-Oneで実現

NECのコンパクトボックス型コントローラシリーズは、2020年に販売を開始したエッジデバイスの製品シリーズです。ベースモデルとしては、x86プロセッサ搭載モデルとAMD Zyng™ UltraScale+™ MPSoC搭載モデルがあり、またPCI Expressを拡張するための3種類の拡張ボックスモデルと、NEC独自技術であるExpEther™モデルがあります。そして2025年春より出荷を開始するのが、コンパクトボックス型コントローラ AMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデルです。

デモで展示されたコンパクトボックス型コントローラ AMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデル

AMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデルの特徴は大きく分けて3つあります。1つめは、ユーザビリティの高さです。メインOSにはWindowsを採用し、ユーザビリティの高いUIを提供しています。また、高性能なx86 CPU/Radeon GPU採用でより高速にWindowsアプリケーションが動作します。

2つめは、高性能かつAll-in-Oneであることです。AIや高負荷処理をVersal™でアクセラレートし、FPGAを用いて標準以外のインターフェース拡張に対応することで、エッジ端末に求められる機能を1つのボックスに集約しています。

3つめは、小型化と低コスト化です。GPUボードや外付けユニットの機能を20センチ弱の小型サイズに収め、それらを低コストで実現している画期的な製品になります。このような特徴により、コンパクトボックス型コントローラ AMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデルは省電力で高性能なエッジシステムをAll-in-Oneで実現します。

AMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデルは、AMD Embedded+の認定取得中です。AMD Embedded+とは、AMD社が提唱するCPU+FPGA統合プラットフォームです。このプラットフォームでは、単一ボード上にRyzen™ x86 CPUとVersal™(FPGA)を搭載します。この構成をとることでPCベースのソフトウェア資産やWindowsUIを活用するユーザビリティと、FPGAをアクセラレータとする高速なリアルタイム性を両立しています。この規格に準拠した製品について、国内唯一のODMデリバリー元としてNECプラットフォームズが開発・製造を行い、お客さまに提供します。

デバイスの融合により、幅広い機能要求・性能要求への対応が可能に

コンパクトボックス型コントローラAMD Ryzen™+ Versal™ 搭載モデルには、AMD最新の4nmプロセスで製造されたRyzen™ R88 40Uを搭載しています。このCPUはZen4アーキテクチャで構成されており、8コア/16スレッドのマルチスレッド処理が最大5.1GHzのクロックで動作します。同レンジのIntel製CPUと比較しても最大1.4倍程度の性能を有する高速なCPUになっています。また、GPU・DDR5・USB4・PCIeなどの高速インターフェース機能を有する高性能CPUです。

FPGAデバイスも、最新世代のVersal™(VE2302)を搭載しています。このデバイスにも内蔵ARM CPUと組み込みLinuxが搭載されており、AI処理や複雑な画像処理、インターフェース処理の高速化、リアルタイム化が実現できます。AI性能にフォーカスした場合、一般的なGPUデバイスとのワットあたりの性能比較で3.3倍の性能を発揮する事例もあり、エッジデバイスで必要なAI 性能レベルを、高効率に実行可能です。

AMD Embedded+は、Ryzen™とVersal™という特徴ある2つのデバイスを1台の装置内で融合し、エッジデバイスに求められる様々な機能要求・性能要求に対応可能な装置になっています。x86のCPUでは、組み込みCPUや組み込みOSでは難しかった複雑なマルチスレッド処理の高性能化、Windowsアプリソフトウェアライブラリの活用、そして何より使い慣れたWindowsのUIが活用できます。またFPGAでは一般的なPCでは難しいハードウェア並列実行による高速化、リアルタイム性の確保、低消費電力で動作するAIエンジン、多様なインターフェース拡張に対応するカスタムインターフェースを実現します。今までのエッジ端末に「あると良いな」と思われていた機能がすべて揃った装置だと言えるでしょう。

主要デバイスのVersal™、Ryzen™に加えて、最大96GBまで拡張可能なSO-DIMMメモリスロット、ストレージや無線通信カードが拡張可能な2種類のM.2スロット、映像出力はディスプレイポートとHDMI両方に対応しています。そして最大40Gbpsの高速転送に対応可能なUSB4を搭載するなど、強力なインターフェースを揃えています。

インターフェース機能を拡張する手段として、Expansion Boardによる機能拡張が可能です。Expansion BoardはAMD Embedded+で規格化されており、Versal™(FPGA)と入出力信号をダイレクトに接続し、FPGA部分に適切なIPコアを追加することで、お客様固有機能をシステムに追加できます。さらにPCI Expressボードを搭載可能な3種類の拡張ボックスもオプションとしてご提供可能で、大電力を必要とする、高性能なGPUカードを複数枚搭載するような構成にも対応しています。

PCにPCI Expressボードを搭載してお客さま専用の機能を実現するようなケースでは、大きなケースに拡張カードを搭載してシステムを作ることが多くあります。こうしたケースでNECプラットフォームズの製品を使用すると、マザーボード上にCPUとFPGAの両方が搭載されているため、ミニマムなサイズ感で実現可能です。またNECとして、この標準構成のシステムを大量に生産することで低コスト化を図っているため、多くのケースでお客様システムの小型化、低コストに貢献できると考えています。ぜひ採用をご検討ください。

コストと消費電力の最適化を実現。アヴネット社「AMDコスト重視ポートフォリオ製品」

最後の講演では、アヴネットから今年リリース予定のSpartan UltraScale+をメインに、用途に合わせたコスト重視製品が紹介されました。

アヴネット株式会社 第3統括本部 半導体第2事業部 エンジニアリング部1課 シニアスタッフ 小倉 一幸 氏

高密度で柔軟な I/O で幅広いニーズに対応

エッジでのFPGA普及や I/O 要件の高まりなどにより、現在あらゆる市場でコスト重視製品のニーズが高まっています。今回は、新たに発売されるSpartan UltraScale+のご紹介です。

Spartan UltraScale+の大きな特徴は、デザインの優先順位に基づく最適なデバイスの選択です。現在、お客さまによって I/O へのニーズは様々であり、高密度で柔軟な I/O に対する需要が高まっています。AMDでは3種類の I/O を用意し、最大ボルトも3.3V / 1.85V / 1.5Vの3パターンを設定しています。Spartan UltraScale+は3パターンすべての最大ボルトをカバーし、Max I/Osも672と最多です。これによって、Any-to-Anyでコネクティビティをサポートする柔軟な I/O を実現しています。

トランシーバーについては同じく弊社製品のArtix UltraScale+™ FPGAを利用すると、総帯域幅約200Gb / s、最大スピード32.75Gという高速データ転送が可能になります。デジタル信号処理で使うDSPは最大1,200DSPで、制御と意思決定はハードコアプロセッサ(Arm® Cortex® プロセッサ)とソフトコア プロセッサ(AMD MicroBlaze™ および MicroBlaze Vによって行います。

人工知能と機械学習については、プログラマブル ロジックとエンベデッドプロセッサの組み合わせによって様々な複雑さのモデルに対応し、汎用 CNN 推論スタックで Zynq UltraScale+ MPSoC とVitis AIの組み合わせをサポートします。またプログラマブル ロジックを使用してネットを効率的に実装し、低レンテンシで最大限のスループットを実現します。


ソフトコア プロセッサのMicroBlaze Vは次のような特徴を持ち、AMD FPGAでエンベデッド環境を実現します。

  • ロックステップ方式:不正操作防止、エラー保護
  • TMR(3重化冗長)機能:SEU軽減、多数決回路
  • AXIインターコネクト:プラグアンドプレイ IP、規格準拠
  • 3つのプリセット:コンフィギュレーション可能なIP、複数のISA拡張をサポート
  • セキュリティ:HMAC、AESを使用
  • FPGAファブリック:カスタムエンジン、拡張可能なペリフェラル

デモで展示されたAMD MicroBlaze V RISC-V プロセッサ

Spartan UltraScale+は大容量オンチップ メモリと高速オフチップ メモリを提供しており、メモリ要件にも優位性があります。内部メモリはLUT、分散RAM、ブロックRAM、Ultra RAM、外部メモリではDDRをカバーしています。最大4266 Mb/s のハード LPDDR5 をサポートすることでロジックを減らしてリソースを大幅に節約し、高帯域幅、低消費電力、低レイテンシに貢献します。また高度なパッケージング技術でフットプリントを最小化し、メカニズムの簡略化と低消費電力を実現しています。


IPの保護、改ざんの防止、システム運用時間の最大化などの観点から、プログラマブル デバイスにおけるセキュリティの重要性は日々高まっています。Spartan UltraScale+はコスト重視製品ポートフォリオの中でも最も高いセキュリティ機能を備えています。さらに複数のコンフィギュレーション オプションをご提供することで、高速コンフィギュレーションを可能にしています。



AMDでは、FPGA/アダプティブSoCの15年以上の製品ライフサイクルをサポートし、革新的ソリューションの提供実績を蓄積するために、2045年以降を視野に入れたコスト重視製品ポートフォリオへの長期投資を進めていきます。Spartan UltraScale+ファミリでは2025年後半から2026年にかけて、SU10P、SU25P、SU35P、SU50P、SU150P、SU200Pという6つの製品をリリース予定です。コスト重視製品ポートフォリオの開発ボードでは、現在Avnet AUBoard 15P 開発キット、Avnet ZUBoard 1CG MPSoC 開発キットの2製品が提供されていますが、2025年前半にはSpartan UltraScale+ SU35P デバイスの評価キットが提供開始予定です。




このように、アヴネットでは多様なアプリケーションに対応できる幅広いデバイスが提供されています。実績ある設計ツールで市場投入までの期間を短縮できることや、デザインを長期間使用できる信頼のサプライヤーである点も大きな強みです。はAMD製品の販売だけではなく、委託完成品も含めた提供も可能です。ぜひみなさまのビジネスや研究で役立ててください。


講演の間の休憩時間には展示スペースを訪れる方も多く、デモを見ながら機能について熱心に質問をされる姿や、具体的なビジネスの話が進んでいる様子が見られました。講演終了後も熱気は冷めやらず、登壇者のみなさんをまじえた交流も。手がけている仕事や研究の内容や、AI開発やFPGAの未来について意見を交換される場面もありました。

編集後記

生成AIの登場や5G、自動運転の発展によって、わたしたちの生活はますます便利になりました。こうした急速な技術進歩の一方で出てくるデータの高速処理や省電力化といった課題を解決するものとして、FPGAやエッジコンピューティングの技術は日々進歩しています。それに伴ってアヴネットやAMDの製品・サービスへの期待も高まっているのだと実感しました。幅広い分野で先端技術の活用が進むこれからの時代の開発において、2社のソリューションは欠かせないものとなるでしょう。技術面のサポートを得て、日本の企業が成長していく。わたしたちの生活がもっと便利に、もっと豊かになる。イベントに参加していると、そんな明るい未来が見えました。

取材/文:株式会社Tokyo Edit
撮影:伊東 祐輔

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