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オープンデータAdvent Calendar 2015

Day 13

米国開放政府 第三次国家行動計画のオモシロポインツ

Last updated at Posted at 2015-12-13

先だって行われたオープンガバメントパートナーシップ@メキシコですが、そこで、アメリカは次期のオープンデータ戦略を発表しました。

これ、海外のオープンデータ界隈の人には喝采をもって受け入れられたものですが、その内容はまだ日本ではあまり読まれていない気がします。
個人的にもこれは非常に興味深い試みだと思っていて、会った人には面白みを伝えているのですが、すべてのひとに会うわけにいかないので、いくつかオモシロポイントを列挙する試みです。

全体として

レバレッジ、という言葉がとても目につきます。

経済用語として一般的な言葉で、株とかFXとかの周辺でよく見ますね。
日本だとこれがでてくるあたりです。

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具体的な意味としては、「政府がちょっと行動することで、民間の側で効果を最大化する仕組み」を作ろう、というかんじです。
米国政府は基本的にそんなにお金が潤沢にあるわけではないので、「ちょっとの投資で最大効果を!」的な感じになるわけですね。

米国におけるオープンデータの基調

米国のオープンデータの特長として「情報公開請求で出さなきゃいけないものは全部、先に出してしまう」(=それによって情報公開請求の手間を減らす)という概念があります。

プロアクティブな公開、という書かれ方をします。
言われる前に出そう、あるいは、言われ続けるものは出してしまおう、という観点です。

日本でも、Google Innovation Nipponで行われた調査である「地方自治体の情報公開請求から見たデータの商業利用ニーズ」では「金入り設計書」と「事業所一覧・台帳」の請求が多いという結果がでていますし、日本国政府CIO連絡会議でも、「一年のうちに複数回情報公開請求されたデータは基本的にオープンデータにしてゆく」という方針が打ち出されています。

ここらへんは、簡単に公開できるための投資をしよう、という機運もすでに存在していることが、日本との大きな違いです。
「情報公開請求って手間がかかるよね」から全く議論が進展していない日本とは大きく異なります。

オモシロポインツ

さて、前段はこのくらいにして、オモシロポイントに進みましょう。

教育とオープンデータ

「Expand Access to Educational Resources through Open Licensing and Technology / オープンなライセンスと技術を使った教育リソースへのアクセス拡充」という項目です。

のっけから「オープンな教育リソースとは、人類の持続的な進展のための投資です」とか、ノリノリの文章でぶっこんできます。
「米国のためだけじゃない!僕たちは世界のためにやってるんじゃよ!」 とか、「私」のことを「私たち」のことにするのは、見ていてテンションがあがる論法です。

また、続く項目である「Help Students Make Informed Decisions About Higher Education / 生徒を対象とした、高等教育の選択肢についての情報提供支援」も、生徒に対して情報提供をより効果的に行うために、大学のダッシュボードを作成したり、そのデータをAPIで提供したりしています。

米国内の住所データ大公開

「Launch a Process to Create a Consolidated Public Listing of Every Address in the United States / 連邦域内のすべての公開住所一覧を統合し、作成する活動を開始」

openaddresses大勝利事案です。
プライバシー保護の法令や条例によって公開が禁止されている住所データを、機会可読な形で、すべて公開する、ということが謳われています。
防災や緊急医療などの利用法はもとより、これによって新しいイノベーションを起こそう、という記載がされています。

また、一時期僕の周りでも話題になりましたが、この事案は運輸省(Department of Transportation)の案件となっています。自動運転や自動配送など、この先にはいろいろなものが見えてきます。

当然ですが、氏名など、プライバシーへの配慮は最重要課題です。

保険分野とオープンデータ

「Empower Americans and Improve Health with Data Driven Precision Medicine / 米国民を対象とした、データ駆動の予防医療 (Precision Medicine) による健康状態改善ときっかけづくり」という項目があります。

個人情報を取り除いてオープンデータとして出すことで、他のデータと組み合わせた解析を行えるようにしよう、という試みですが、このへんに関してはもしかしたら、千葉市さんが行っているレセプト解析のビッグデータ事業のほうが先を行っているのかもしれません。

官僚のメール記録について

「Improve Management of Government Records / 政府記録の管理改善」という項目の中の実施事項として「Increase Transparency in Managing Email. / Eメール管理における透明性向上」というものがあり、政府官僚のメールを国立国会図書館に入れるとかそういう計画が書かれているようにみえます(誤読かも)。

政府の意思決定にメールは重要な手段であり、その内容は情報公開請求の対象となり得るという論文を読んだ記憶があって、ああ、その対策をちゃんと誤魔化さずにやろうとしてるのだなー、と思います。

下衆の勘繰りですが、「どうせWikiLeaksされたら表に出るし」と思っているのかもしれませんね。hehehe.

FOIAまわりについて

個人的には活目の内容です。

「Modernize Implementation of the Freedom of Information Act / 情報自由法 (Freedom of Information Act, 情報公開法) の近代化」とあります。

FOIAは米国の情報公開請求における根拠法の中心となっていて、1966年の制定、1977年と1996年の改定の流れからの施策がいくつか提示されています。
そのなかで、「Proactively Release Nonprofit Tax Filings. / 非営利組織への課税情報公開に向けた準備」というものがあり、これが僕的にはちょう注目です。

米国の認定NPOであり、税制処置がとり行われる対象組織である、いわゆる501(c)(3)組織を中心に、NPOを通じたお金の流れが可視化されることになります。
現在は機械可読な形式でやりとりされていないので、まずはそれを機械可読にする、という段階のようです。税制システムの改良や導入が行われるだろうことが推測されます。

オープンサイエンスの進展

「Advance Open Science through Increased Public Access to Data, Research,and Technologies / データ分野、研究分野、技術分野におけるパブリックアクセスを改善し、オープンサイエンスを発展」がそれです。

公金の入った研究については、データ自体を公開してオープンアクセスとし、オープンサイエンスで実験している野生の科学者と連携せよ、というかんじです。
これはもう、諸手を上げて歓迎します。
不正防止や調査資料の散逸防止、すべての面でメリットしかないです。

日本でも、可及的速やかにやればいい。

OpenStreetMapとの連携

「Collaborate with Citizen and Global Cartographers in Open Mapping / 市民そして全世界の地図作成者と協働し、オープンマッピングを実施」という項目です。

現在も米国政府はMapGiveとして、全世界を対象にしたクライシスマッピング、およびそれを通じた学びの機会を提供しています。

中心人物であった、Presidential Innovation FellowshipMikel Maronさんは政府を離れましたが、その試みはこれからも、政府の重要施策のひとつとして続けられることが確定しました。

MikelさんはもともとOpenStreetMapのHOT(人道支援チーム)の中心人物であり、現在はMapbox社にJoinしていると共に、先日のOpenStreetMap Foundation本家の理事選挙に立候補し、理事として当選しています。

Whistleblowing

そういえばよくみる単語なのですが、なんかこう、ピンと来ないので、誰か解説してほしいです。 :)

財政

財政支出、公募と助成金、案件落札情報の公開が大きく出されています。

これはもう、日本でもすぐに実施して欲しい項目です。

警察オープンデータ

警察と市民との信頼関係構築のため、警察の行っている活動や実績を可能な限りオープンにし、さらに、犯罪発生位置なども公開してゆくことによって予測と自衛、犯罪予防の仕組みを模索しているように見えます。

警察が公開するデータをもとに、科学技術政策局(the Office of Science and Technology Policy)と国内政策会議(the Domestic Policy Council)がデータ解析を行う、など、縦割りの壁を超えるためにデータが使われていることにも注目です。

持続可能な開発のための2030年アジェンダの対応

国連が発表した、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」ですが、その内容を米国国内で実践し、全世界の模範となるべく、いくつもの行動計画が定められています。

環境や人権、農業と食料、水問題、安全保障や透明性、多くの課題に対して「米国ならこう望む」という内容が打ち出されています。
非常に強力な内容であり、共感を呼びます。

はてさて

第三次行動計画には、他にも、オープンデータの利用エコサイクルの模索とか、面白そうな項目が並んでいます。
もし興味のでてきた方は、原文を読まれることをお勧めします。

とまれ、ここまで具体的に風呂敷を広げている米国があるわけで、その他の国がどう出てくるのか、個人的には楽しみでなりません。(実際にどこまでできるかどうかはともかくとして)

いろいろと、楽しみデスね! :)

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