はじめに
L3スイッチ(Catalyst等)の運用において、物理ポートの状態に左右されない「常にUPしているインターフェース」としてLoopbackインターフェースは非常に重宝されます。
しかし、宛先をLoopback IPにしてtracert(traceroute)を実行した際、構成上は経由しているはずのSVI(VLANインターフェース)のIPが表示されず、いきなりLoopbackに到達したように見えることがあります。この挙動の理由を技術的に解説します。
1.検証構成
以下のような、L2隣接したセグメント間でのルーティング構成を想定します。
PC: 172.18.72.100(VLAN 72)
L3SW (ターゲット機器):
SVI (VLAN 55): 172.18.55.11
Loopback 0: 172.18.61.11
スタティックルート:ip route 172.18.61.11 255.255.255.255 172.18.55.11
構成図(Claudeにて作成してもらいました)
2.現象:tracerouteの実行結果
PCからLoopback(172.18.61.11)へ tracert を実行すると、以下のような結果になります。
172.18.61.11 へのルートをトレースしています。経由するホップ数は最大 30 です
1 2 ms 2 ms 2 ms 172.18.72.1 (Default Gateway)
2 3 ms 4 ms 4 ms 172.18.61.11
経由地点である 172.18.55.11 (SVI) がホップとして表示されないというのが今回のポイントです。
3. なぜSVIは表示されないのか?
結論から言うと、ターゲットのスイッチにとって「SVI」も「Loopback」も同一筐体内の自分自身(Local IP)だからです。
ICMPのTTL挙動による理由
tracertはケットの** TTL (Time To Live)** を1ずつ増やしながら送信し、各ルータが「時間切れ(ICMP Time Exceeded)」を返すことで経路を特定します。
TTL:パケットが無限にネットワーク上をさまようのを防ぐためのもの。
ルーターを経由するたびにTTL値が1減り、0になるとパケットが廃棄される。
ホップ1: PCのデフォルトゲートウェイに到達。TTLが消費され、デフォルトゲートウェイのIPが応答します。
ホップ2: パケットがターゲットスイッチの物理ポート(SVI 55)に届きます。
内部処理: スイッチがパケットを受信した時点で、宛先(172.18.61.11)は自身の内部にあるインターフェースだと認識します。
注意ポイント
スイッチ内部でのインターフェース間の受け渡し(SVI → Loopback)は、「転送(ルーティングホップ)」ではなく「内部処理」として扱われます。デバイスを跨がないため、TTLを減らしてICMP Time Exceededを返すという処理が発生しません。
結果として、スイッチにパケットが届いた時点で「目的地に到着した」とみなされ、最終目的地のLoopbackのアドレスが応答を返します。
まとめ
SVIが表示されないのは正常
同一デバイス内の仮想インターフェースを経由する場合、中継ホップとしてカウントされません。
導通確認のポイント
tracert でSVIが見えなくても、最終的にLoopbackのIPから応答があれば、ルーティング(ip route)は正しく機能しています。
NW構成の把握
この挙動を知っておくことで、tracert の結果から「ターゲット機器がL2レベルで隣接しているか、別のルータを挟んでいるか」を正確に判断できるようになります。
