はじめに
地方で電気保安の現場を走り回っている実務技術者です(電験三種保持)。
前回の記事では、「ベテラン技術者の『耳と脳』が行っている異常検知プロセスは、AI(CNN)のアーキテクチャそのものである」という仮説についてお話ししました。
今回は有言実行ということで、「実際に現場の音をPythonで解析すると、どんな『模様』が見えるのか?」という実例を一挙に公開します。
私が1人泥臭くフィールドワークで集めてきた音声データ(PRPD解析による可視化)の中から、設備の劣化状態や現場の環境に伴うパターンの変化を図鑑形式でご紹介します。データサイエンティストやIoTエンジニアの皆さん、これを見て「どうAIに喰わせるか」をぜひ一緒に考えてみてください。
音を模様に変える「PRPD解析」の見方
おさらいになりますが、提示するグラフは、スマホで録音した音声を交流電圧の周期(50Hz=0.02秒)に合わせて20サイクル分切り出し、10枚に分割して重ね合わせる(加算平均化)ことで周期的な特徴をあぶり出すプログラム(PRPD解析)を通したものです。
横軸: 時間(0から1サイクル、半サイクル=0.01秒ごとに区切り線)最もエネルギーの大きいポイントを0か1にアジャスト
縦軸: 周波数(9.3kHz 〜 17.5kHzの高周波・超音波の入り口帯域)
色(明るさ): 音のエネルギーレベル(黄色に近づくほど音が大きい)
それでは、現場のリアルなデータ図鑑をどうぞ。
⓵事故る2月前のスペクトラム

この音声を録音した2月後にクリートから発熱し、キュービクル内部が焼損し需要設備が全停電となりました。
15KHZ近辺に周期的な脈動が見て取れます。
70MΩの屋外キュービクル

半サイクルでモヤっとエネルギーの高い部分が見て取れますね、MAX-84なので、さっきよりはエネルギーは低いものの、姿は似てますよね。
300MΩの屋外キュービクル

穴ぼこチーズのような同じ模様が下半分に見て取れます、300MΩは現場感覚では「悪くないけど良くもない」といったところですね。
ド新品キュービクルのスペクトラム


上の図はきれいな横縞、励磁音と思われます。
下の図はmax-101なので、何も鳴ってないに等しい状況です。
ド新品キュービクルの受電直後の録音です。
もう10年ずっと1ケタMΩのキュービクル

これが困ったもので、絶縁を測定したら1ケタMΩ(不良判定値)なのに、10年ほど事故になってないキュービクルです。ここの画像の中に大きなヒントがあるのか?はたまたもっと高い周波数帯を調べる必要があるのか?
いや、逆に絶縁測定では測れない何かがあるのではないか?
仮説が迷走して夜しか寝れません。
おわりに
いかがだったでしょうか。現場には単純な数式(閾値)では分類できないノイズや、メガの数値だけでは測れない「慢性疾患」のパターンが溢れています。だからこそ、この画像全体の特徴を捉えるCNN(画像認識AI)が必要だと確信しています。
このデータを5万件くらい集めたら、機械学習を使って劣化診断が出来そうな手ごたえを感じてます。
それには、全国の電気保安技師の協力と、AIに長けた仲間が必要です!
ラズパイへのエッジAI実装に腕が鳴る方、引き続き仲間を大募集しています!お気軽にコメントやDMください。