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一人会社の経営判断を AI 役員 9 人に壁打ちさせる仕組みを Claude Code で作った(役員は全員「ちいかわ」のキャラに擬人化したよ〜)

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Last updated at Posted at 2026-05-16

TL;DR

  • 一人で会社をやっていると、経営判断を壁打ちする相手がいない。財務・技術・営業・法務、全部自分の頭の中で完結してしまう。
  • そこで Claude Code 上に、役職ごとのペルソナを持った「AI 役員」9 人を置いて、CLI から相談・定例レポート・会議の裁定までやらせる仕組みを組んだ。
  • ポイントは「賢い AI を 1 個呼ぶ」ではなく、役割を分けて・独立に意見を出させ・人間が最後に決めるという構造にしたこと。
  • ついでに、各役員は全員「ちいかわ」のキャラに擬人化した。CFO はくりまんじゅう、CTO はハチワレ、COO はうさぎ…という感じ。これは趣味でもあるけど、毎日触るツールを愛着の持てる見た目にしておくと運用が続くという実用上の理由もある。
  • この記事では、ディレクトリ構成・ペルソナ設計・並列サブエージェントによる会議・機密の隔離設計を、再現できる粒度で書く。

想定読者: Claude Code を触っている人 / 一人〜少人数で事業をやっていて意思決定の質を上げたい人 / マルチエージェントの実運用に興味がある人。


背景:一人会社の一番の弱点は「壁打ち相手の不在」

受託・SES を中心に小さく会社をやっている。技術は手が動くし、数字もある程度読める。でも一人だと、

  • 「この案件、財務的に今 GO していい数字なのか?」
  • 「この契約、損害賠償の上限条項なくて大丈夫か?」
  • 「この発信、法務的にアウトじゃないか?」

を 誰にも当てずに自分の中だけで判断してしまう。判断が速いのは利点だが、観点の抜けが一番怖い。チームがいれば自然に出る「いやそれ法務的にまずいですよ」が、一人だと出ない。

LLM に相談はしていたが、毎回「あなたは CFO の視点で…」とプロンプトを書き直すのが面倒で、しかも全部同じトーンの優等生回答になりがちだった。役割を分けて、判断軸も口調も変えて、独立に意見をぶつけさせたい。それを Claude Code の skill とサブエージェントで仕組み化したのがこの「AI 役員チーム」。


全体像:9 つの役職を持った AI 役員

役職を 9 つに分け、それぞれにペルソナ Markdown を 1 枚ずつ持たせている。技術統括の配下に実装担当とレビュー担当をぶら下げる、という階層も作った。

それぞれ呼び出しは CLI から。例えば財務の相談なら /cfo 来月のキャッシュ大丈夫?、技術なら /cto、全員集めるなら /officer-meeting <議題>、定例レポートは /officer-brief weekly のように、**スラッシュコマンド(Claude Code の skill)**で叩く。


設計の肝 1:ペルソナは「口調」より「判断軸」を書く

各役員は 1 枚の Markdown(ペルソナ定義)を持つ。最初は口調や性格を凝って書いていたが、運用してわかったのは 効くのは「判断軸」と「担当外には踏み込まない」制約のほう、ということ。

ペルソナに必ず入れている要素:

  • 重視する評価軸 3 つ(例: 財務なら「キャッシュは血液」「数字なき発言は禁止」「短期と長期を分ける」)
  • 判断軸(迷ったときに何を優先するか)
  • 担当データソース(この役員はどのデータしか見ないか)
  • 書き込み権限の階層(読み取りだけ / 下書きまで / 確認付き実行 / 禁止)
  • タブー条項(特に広報・法務は「絶対やってはいけないこと」を厚く)

口調はあくまで「AI 平均文体を避けて意見を立たせる」ための味付け。本質は「観点を固定して、越境させない」こと。越境を許すと結局どの役員も同じ general-purpose な回答に収束してしまう。

おまけ:役員は全員「ちいかわ」のキャラに擬人化した

ここは完全に趣味だけど、実用上の効果もあったので書いておく。各役職に「ちいかわ」のキャラを当てている(CFO=くりまんじゅう、CTO=ハチワレ、COO=うさぎ、法務=ラッコ、広報=モモンガ、CPO=ちいかわ…という具合)。

毎日 CLI で叩くツールなので、呼び出す相手に愛着があると単純に運用が続く。「/cfo で数字を聞く」より「くりまんじゅうに相談する」のほうが、心理的なハードルが下がって自然に使う。一人だと"使い続ける動機づけ"が地味に効くポイントで、キャラ付けはそのための実装でもある。口調をキャラに寄せているのも、意見を平均文体から引き剥がす狙いと、この継続性の両取り。

注:「ちいかわ」は第三者の著作物(作者・ナガノ氏)です。本記事と本ツールは個人が趣味の範囲でキャラ名を内部コードネーム的に使っているだけで、公式の絵柄・ロゴ・画像は一切使用しておらず、権利者とは無関係です(公式が許諾・提携しているかのような表現はしていません)。


設計の肝 2:会議は「独立並列 → 人間裁定」

一番気に入っているのが会議スキル。/officer-meeting <議題> を叩くと、こう動く。

ポイントは 2 つ。

  1. 各役員を「並列の独立サブエージェント」で起動する。互いの意見を見せない。先に出た意見に引っ張られる同調を防ぐため。Claude Code はサブエージェントを並列で投げられるので、これがそのまま設計に使える。
  2. 裁定役(CEO秘書)は自分の意見を持たない。4 役員の出力を論点に整理し、反対意見・少数意見を必ず併記する。「全員一致」と書くのは禁止にしている。多数決で消えた意見が後で正解だったことが普通にあるから。

そして最後は必ず人間が決める。AI は「論点を立てて、選択肢と反対意見を並べる」ところまで。決定の代行はさせない。これは思想というより事故防止で、AI に経営判断そのものを委ねた瞬間に責任の所在が消える。


設計の肝 3:数字には必ず出典を、レポートには鮮度を

経営の相談で一番こわいのは AI が数字を“それっぽく”でっち上げること。なので運用ルールとして、

  • 数値発言はソース引用必須(出典のない数字を含む見解は再生成 or 法務 AI が自動レビュー)
  • レポート冒頭に「データ鮮度ブロック」必須(各データソースが何日前のものか、古ければ ⚠ を出す)

を強制している。たとえば朝の定例レポートはこういう書き出しになる(数値は本記事用のダミー)。

## データ鮮度
- 録音メモ 最終 sync: 4 日前 ⚠ 昨日分未取込
- タスク管理 最終 sync: 1 日前
- インフラ指標 最終 commit: 7 日前
- 会計データ: API 接続可

「いつのデータに基づく判断か」をレポートの一行目で必ず突きつける。これがないと、古いデータで自信満々に語る AI を信じてしまう。


設計の肝 4:実装は三段ゲートを通す

この役員システム自体のコード(スキルやスクリプト)を更新するときも、AI 役員にレビューさせている。フローはこう。

実装担当 AI が書き、レビュー担当 AI が一次レビュー(バグ・規約違反・セキュリティ)、技術統括 AI が最終確認、最後に人間が承認して初めて merge。一人開発でも「自分が書いて自分がレビューする」より観点が増える。レビュー担当には「確信度の低い指摘はノイズになるから出すな」と制約をかけていて、これで指摘の S/N 比がかなり上がった。


一人会社でも事故らないための機密隔離

これは声を大にして言いたい。AI に経営データを触らせるなら、機密の隔離設計が本体だと思っている。

やっていること:

  • 顧客名・金額・KPI 目標・会議の生ログ・認証情報は、ディレクトリ単位で commit 禁止(.gitignore で階層的に除外)。
  • AI が顧客名・金額を含む回答を保存する先は「ローカル限定ディレクトリ」に固定。公開用レポートはマスク済みの別ファイルを必ず分けて生成する。
  • ベクトル検索(RAG)に経営データを丸ごと食わせると、機密が無造作に索引化されて選択削除が困難になる落とし穴がある。実際に「このソースを取り込むと顧客情報が間接的に混ざる」と気づいて、その機能はいったん有効化を止め、是正を別タスクに切り出した。気づける設計(役員 AI に法務観点を持たせている)にしておいて助かったところ。

便利さに振り切る前に「この AI が見ていい情報の境界」を先に引く。順序を逆にすると詰む。


運用して正直どうだったか

良かったこと:

  • 観点の抜けが減った。特に法務 AI の「その契約、損害賠償上限の条項ないですよ」「その表記、景表法的に根拠いりますよ」は、一人だと絶対に出てこなかった指摘。
  • 会議スキルで反対意見が必ず文字で残るので、後から「あのとき少数意見が正しかった」を振り返れる。
  • 判断ログが貯まるので「あれ、いつ何を根拠に決めたんだっけ」がほぼ消えた。

過信してはいけないこと:

  • AI 役員は与えたデータの範囲でしか賢くない。データ鮮度ブロックを必須にしているのはこのため。古い数字で堂々と語るのが一番危ない。
  • 役員のキャラはあくまで観点を立てるための道具。最終判断は人間がやる、を崩した瞬間に意味が反転する。

まとめ

  • 一人会社の弱点は「壁打ち相手の不在」=観点の抜け。
  • 「賢い AI を 1 個」ではなく「役割を分けて・独立に意見させ・人間が決める」構造にすると、抜けが減る。
  • 仕組みの本体は派手な部分ではなく、出典強制 / データ鮮度の明示 / 機密の隔離 / 人間の最終決定という地味なルール。
  • Claude Code の skill とサブエージェント並列起動だけで、ここまでは個人でも組める。

補足:本記事の「AI 役員」は、Claude Code 上でペルソナ定義に基づいて生成している AI エージェントの連携であり、実在の従業員やエンジニアではありません。経営判断の最終決定は人間が行っています。記事中の数値・社名はすべて記事用のダミー or 一般化したものです。

補足 2:役員の擬人化に使っている「ちいかわ」は作者・ナガノ氏の著作物です。本ツールは個人が趣味の範囲で内部コードネーム的にキャラ名を用いているのみで、公式の絵柄・ロゴ・画像は一切使用しておらず、権利者とは一切関係ありません(許諾・提携を示すものではありません)。


この記事について

arecore.net の中の人が運用する AI 役員チームの実践記録です。受託開発・SES・自社プロダクト開発をやっています。ご相談・フィードバックは arecore.net からどうぞ。

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