AIに「これは来週やりますね」と言わせた。
来週になって、それを覚えていたのは私でもAIでもなく、誰でもなかった。
任せれば追ってくれる、と思ってた
会議の壁打ちも、調べ物も、ドラフト書きもAIエージェントに振っている。
判断が速い。手が速い。賢い。だから当然、こう思っていた。
「次にやること(next action)も、こいつが勝手に覚えて追いかけてくれるだろう」と。
実際、その場では完璧だった。「では来週Aを詰めます」「Bは見積もり待ちですね」。議事録もきれいに出る。満足して会話を閉じる。
つまずき:賢いのに、健忘症だった
運用していくと、同じ症状が繰り返し出た。
- 会議のたびに新しい「次やること」が3つ4つ生まれる。
- 次の会議でそれを蒸し返すのは、AIではなく私が思い出せた時だけ。
- 思い出せない週は、その打ち手は静かに消える。落としたことにすら気づかない。
賢い相棒は、毎回その場では最善を出す。なのに自分が先週なんと宣言したかは、次の会話に持って来ない。セッションが変われば、前回の「来週やります」は存在しなかったことになる。
期待していたのは有能な実行者。実際に隣にいたのは、実行は速いが宣言を一切追跡しない健忘症だった。
気づき:悪いのはAIの賢さじゃない
最初はプロンプトを盛ろうとした。「決めたことは必ず覚えて、毎回リマインドして」。
効かなかった。当然だ。会話の中の「覚えといて」は、会話が終われば消える。
ここで急所がひとつに絞れた。
問題は「AIが賢いか」ではなく、**「やり残しが構造として保持され、強制的に再掲される場所があるか」**だった。
人間相手でも同じだ。善意と記憶力に依存した「次回ちゃんと見ますね」は、たいてい見ない。AIなら「見ない」がもっと静かに、もっと確実に起きるだけ。
解決:3つだけ守れば言いっぱなしは死ぬ
やったことは派手じゃない。やり残しの置き場所を1つ作って、読むのを善意に任せるのをやめた。それだけ。
守ったのは結局この3点だけだった。
1. next action は「期日」と「所有者」が無いと記録させない
「あとでやる」は記録ではなく願望だ。いつ・誰が、が無い行は最初から書かせない。曖昧なまま通すと、追跡しようがないものが台帳に増えるだけ。
2. 保存先は会話の外に固定する
プロンプトやチャット履歴ではなく、独立した1ファイル(追記専用の台帳)に集約する。会話は揮発する前提で設計する。揮発しても残るのは「会話の外に書いたもの」だけ。
3. 参照を人の善意に頼らず、仕組みで強制する
ここが本丸だ。台帳は「気が向いたら見る」では機能しない。会議を始める前・1日の頭・週初め――決まった節目で、未完了を問答無用で全件先頭に再掲する。期限超過は赤字相当で目立たせる。読む/読まないの判断を人にもAIにも与えない。
結果、「あの件どうなった?」が消えた。正確には、消えたのではなく毎回向こうから突きつけられるようになった。気持ちはよくないが、それでいい。やり残しは、気持ちよく忘れられるから死ぬ。
過去の自分へ
賢いAIに任せれば管理ごと巻き取ってくれる、と思っていた自分に言いに行きたい。
AIに記憶力を期待するな。AIが必ず読む場所を、会話の外に作れ。
自動化の本体は、賢いモデルでも凝ったプロンプトでもなかった。「変わってないものは触らない」と同じで、当たり前を仕組みに落としただけ――やり残しを、忘れられる場所から、忘れられない場所へ移しただけだった。
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