概要
「それって真似だよね」への答
回答例「ええ、真似ですよ。それでも結構いい結果を出しているでしょう。
元にした技術だと〇〇の課題があったのですが、それを解決する△△したんですよ。
別な分野での□□がヒントになったんです。」
回答例「ええ、真似ですよ。まずは現状の技術でどれだけ使い物になるのかを確かめるの先決だと思うので、まずは、真似から始めています。」
開発の期限が決まっているプロジェクトの中で、使用するライブラリを、商用利用可能な実装の中から選んだときに、必ずといっていいほど、「それって独自性ないよね。」となる。また、それをヒントに追加の開発をしている場合も、「それって真似だよね。」となる。この文章では真似ること、標準に寄せることの重要性を主張する。
大昔の状況
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互換性重視の時代
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デジタルIC(汎用ロジックIC型番)
「他社メーカーが製造した同機能のICを「セカンドソース」と言います。」 -
産業的に成功した人物・組織の多くは、圧倒的に先行例をまねた人物・組織である。
- Macintosh, MS-Windows はともにAltoの影響受けたものである。
ある記述
「日本では1940年代の後半から1960年代の後半にかけて、自動車や家電製品などのほとんどの工業製品についてアメリカ製品の模倣品を作って売っていたとされています。
1970年代に入るとより良い製品を生み出すためにリバースエンジニアリングを用いた商品開発が始まり、1980年代には新しい技術を求めるフォアードイノベーションに移行していきました。」引用元
別な記述
「開発研究や商品開発でしかるべき成果をあげるためには、工夫・考案の能力が不可欠で、これもまた創造性発揮の表れと考えられる。ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈氏は、「日本人は欧米に比べて創造性に長けているとは言い切れないが、工夫・考案(contrivance)の才では抜群の力を発揮する。これを創造性が欠除しているなどといえば間違った評価になろう」と私に話している。」引用元
さらに別な記述
「松下電器産業の創業者である松下幸之助さんは戦後、我々社員の前で盛んにこう言っていた。幸之助さんの経営手法を今風の言葉で言えば、「キャッチアップモデル」である。先行する企業が開発した技術の種を後追いで学び、自分のものにしてしまう。当時は、こうした言葉はなかったが、戦後の混乱期には先行者に学ぶことこそが松下電器が生きていく道だと幸之助さんは判断した。だから「マネシタ電器」と揶揄(やゆ)されながらもキャッチアップに徹する姿勢を決して崩さなかったのである。」引用元
別な記述
- 「素人発想、玄人実行」(金出武雄)
- 「真似をしてもいいではないか、最初は同じものだが、それに何を付加するか、それを昇華するレベルがどれほど高いかが勝負の岐路である。とういうわけで、『ほとんどの創造は、真似に付加価値をつけたものである』。独創、創造は無から有を生み出す魔法ではない。」独創はひらめかない: 「素人発想、玄人実行」の法則
独創性に対する期待
- 日米貿易摩擦を生じたことから、日本の技術開発のなかで独創性を重視しようとする流れが生じた。
- 「当時の日本の貿易黒字となった製造業において、その源泉となった技術のベースがアメリカによるものである。これからの日本は、アメリカに依存しない独自の技術開発を重視し、独創性をたかめるべきだ。」そのような主旨の議論がされたらしい。
- 折しも、青色ダイオードの発明を成し遂げた人物が登場し、独創の重要性が理解されるようになる。
- 他者の特許を避けるために、開発して独自技術にたどりつこともある。また、自らの開発した技術を守るために、特許を書く。そこでは新しいものであること(新規性)、容易に考え出すことができないこと(進歩性)
が求められます。そのため、独創性が重要になることは自然なことです。
間違った期待
- 企業内における開発の中で、独創性・独自性を目標する開発がされるようになってしまった。
- 問題は、開発の中で独創性・独自性を目標としてしまったことだ。
- 独創性を過剰に重視した開発計画を立案する。
- 「日本独自開発の」、「自社独自の」技術を指向するようになる。
間違った期待がもたらしたもの
- 模倣の軽視
- 現状の最もよい結果を出している技術を無視した独自開発への過大な期待。
- 組織運営での独自開発への過大な期待
- 人事評価での独創性への過大な期待
「それって真似だよね」がもたらしたもの
- その時点の最新の実装を評価すること自体を抑制したり、
- その時点の最新の実装後も残る課題を見つけることをも抑制したり、
- その解決手法を、別の課題に対して横展開することをも抑制したり、
- その問題に取り組む事自体を否定したり、
してきた。
「それって真似だよね」という人が一時的に得る満足感
- 「自分は最近の技術の動向を知っているんだよ」と主張することで、組織の中でマウントをとる程度の動機しかないことがある。
- その問題に対する今取り組むべきアプローチを提案することもないし、その問題を取り組むべき課題だとも思っていないことがある。
欠如したまま残ったもの
- 事業分野で何が必要であって、どのような技術開発を推進するといいのかを、組織内で考えぬける能力。
- 誰が言っていることでも、正しいことは正しいと認められる組織運営。
- しぶとく考え抜く習慣。
- 優秀な開発者とはどういう行動様式なのかを知らない人事
- 優秀な開発者は独創性を目標としない。
まず問題と向き合うことから始める
- 何がしたいのかを明らかにする。
- 目標に対する現時点での最善の結果は何かを知る。
- そこで達成されていること、未達成の課題を明らかにする。
- さまざまにある未達成の課題のうち、何を解決するのかを選択する。
- 「なぜ今までのアプローチは失敗しているのか」、「今までのアプローチに対する不満はなんなのか」
- 最新研究はまねるだけでも簡単じゃない。
結論
だから、「それって真似だよね」に対して、自信をもって、「ええ、まずはそこからですよ」と答えたい。
追記
いきなり、新規の図面を書こうとする人がいて驚いた。
新規の実装をかけるためには、私だったら、以下の内容が必要だ。
- 達成するタスクがわかっていること
- 今までの実施例ではどういう工夫をしているのか理解すること
- どこに、改善したい部分があるのか理解すること
- それをどうやったら実現できるのかを案を出せること。
- それら複数の案のうちに、どれがもっとものぞましいのかを判断できること
- その判断が適切であることを、実験事実で確認すること