※2026年8月末時点での情報を元に記事を作成しています
2026年度末から本格稼働する「SCS評価制度(サプライチェーン・サイバーセキュリティ評価制度)」。多くの企業で、取引先から「★3(三つ星)」の取得を求められるケースが増えてくるはずです。
しかし、全25〜26項目におよぶ要求事項のリストを見て、「専任者がいないのにどうやって対応すればいいのか…」と頭を抱えている担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、SCS評価制度の「★3」で求められる基準を分かりやすく3つのブロックに分類し、最もつまずきやすいポイントと、それを最小工数で乗り切るための「ネットワーク境界防護(UTM)」を活用したアプローチについて解説します。
★3取得で求められる3つの基準ブロック
★3の基準は、サプライチェーンに参画する企業が「最低限クリアすべき標準ライン」です。細かな項目は、大きく以下の3つに分けることができます。
1. 体制と資産の管理(何を守るか決める)
セキュリティを「情シスの頑張り」に依存させず、組織としてのルールを定めるブロックです。
- 経営層の関与とルールの明文化: セキュリティ責任者を任命し、情報の取り扱いルールを文書化・周知する。
- IT資産の棚卸し: PC、サーバー、ネットワーク機器(NASや複合機含む)、利用中のクラウドサービスを台帳化する。
- 委託先の管理: 外部委託先に対しても、自社と同等のセキュリティ要件を求める。
2. アクセス制御と境界防御(入り口と出口を塞ぐ)
外部からの侵入と、内部からの情報漏えいを防ぐための技術的なブロックです。
- アカウントと認証の管理: IDの使い回し禁止、リモートアクセスやクラウド利用時の多要素認証(MFA)の導入。
- ネットワークの境界防御: インターネットと社内ネットワークの境界で、不正な通信(インバウンド通信など)を遮断する。デフォルトパスワードは必ず変更する。
- マルウェア・脆弱性対策: ウイルス対策ソフトの導入と、OS/ソフトウェアのセキュリティパッチを速やかに(14日以内など)適用する。
3. 検知・対応・復旧(万が一に備える)
「100%防ぐことは不可能」という前提で、被害を最小限に抑え、復旧するためのブロックです。
- ログの取得と監視: アクセスログや不審な通信のブロックログを取得し、一定期間保存する。
- インシデント初動対応: 異常発生時の連絡網や、初動対応の手順を整備しておく。
- バックアップと復旧テスト: ランサムウェア等に備えたバックアップと、実際にデータを復元できるかのテスト(訓練)を実施する。
審査の合否を分ける最大の壁は「エビデンス(証跡)」
★3の審査は「自己評価 + セキュリティ専門家による確認」で行われます。ここで最も注意すべきなのが、「対策をやっているだけでは審査に通らない」という点です。
専門家の確認が入るため、「ウイルスソフトを入れています」「ファイアウォールがあります」という口頭ベースの申告はNGとなります。
必ず「管理画面のキャプチャ」「設定ファイル」「数ヶ月分の通信ログやブロック履歴」といったエビデンス(証拠)の提出が求められます。
特に「ログの取得・保存・レポート化」は、手作業で行うと運用負荷が爆発するため、多くの企業がここで挫折します。
最小工数で要件をハックする「UTM」の活用
限られたリソースでこれらの要件(特に技術的要件とログのエビデンス)をクリアするための最適解の一つが、UTM(統合脅威管理)の導入です。
UTMを活用することで、以下のように審査対応の工数を劇的にショートカットできます。
① 「第2ブロック(防御)」の要件を一台で網羅
ファイアウォール、IPS(侵入防御)、危険なWebサイトへのアクセス制限、マルウェア通信の出口対策など、★3で求められるネットワーク境界のセキュリティ要件をオールインワンでカバーできます。個別に機器やソフトを導入・設定する手間が省けます。
② エージェントレス機器もまとめて保護できる
PCのウイルスソフトだけでは守れない、社内のNAS(ファイルサーバー)、ネットワークプリンタ、監視カメラなどのIoT機器も、ネットワークの出入り口にUTMを置くことで一括して保護対象(審査のアピール材料)にできます。
③ 「第3ブロック」のエビデンス提出が即座に終わる
これが最大のメリットです。UTMはネットワーク全体の通信ログや、脅威をブロックした履歴を自動で蓄積し、月次のセキュリティレポートを出力してくれます。審査員から「エビデンスを出して」と言われた際、このレポートをそのまま提出するだけで要件をクリアできます。
★3の評価は「誰が・どうやって」行うのか?
SCS評価制度の★3は、企業が勝手に「うちは三つ星です」と名乗れるわけではありません。審査は基本的に以下のステップで行われます。
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自己評価とエビデンスの用意
企業側が要求事項のチェックリストに回答し、それを裏付ける証拠(台帳、規程、ログデータなど)を準備します。 -
認定された「セキュリティ専門家」による書面審査
専用のポータルサイト等を通じて提出された資料を、国(IPAなど)が認定した外部の評価機関・監査員がチェックします。 -
登録と公表
専門家が「要件を満たしている」と承認して初めて、公式ポータルサイトに★3企業として公開されます。
専門家の「目視チェック」が入るからこそ、ごまかしが効かない
ここでのポイントは、「人間の専門家による証拠(エビデンス)のチェックが入る」ということです。
例えば、「ネットワークの境界防御をしていますか?」というチェック項目に対して、「はい(市販のルーターを入れています)」と回答しても、専門家から「そのルーターで本当に不正アクセスを遮断したログ(証拠)を見せてください」と突っ込まれた時点で、提出できるものがなければ審査には落ちてしまいます。
★4のような厳しい「現地への立ち入り監査」がない代わりに、提出するドキュメント(特にシステムのログやレポート)の質が合否を直撃するのが★3審査の特徴です。
だからこそ、誰が見ても一目で「防御が機能している」ことがわかるUTMの月次レポートが、外部の専門家を納得させる最強のパスポート(通行証)になるのです。
まとめ
SCS評価制度の★3取得には、「半年〜1年程度の運用実績(ログ)」が必要になると言われています。直前になって慌てても間に合いません。
まずは「IT資産の棚卸し」から着手しつつ、技術的要件とログ取得の仕組みが不足している場合は、自力で個別に構築するのではなく、UTMのような「丸投げできる仕組み」を賢く活用して、運用工数を最小化することをおすすめします。