所信表明
去年に引き続き、エンジニア講師人材育成と、講師現場のリアルについて周知します。
エンジニアはもちろん、受講生や非エンジニアの関係者の方にも気付きの機会になることを期待しています。
(とはいえ、今年の振り返りをしたい思いもあり、この話ばかり書くわけではありません)
去年実績を振り返る
目的
- エンジニア講師人材を増やす
- エンジニアの新しいキャリアパスとして、エンジニア講師を提案する
- エンジニアが講師をする楽しさやポイントを実体験から解説する
背景
フリーランスとしてエンジニアリング事業とエンジニア人材育成事業を展開しておりますが、2022年に育成事業としてデジタルスキル標準(DSS)が示され、今もなおアップデートがされ続けています。
私もエンジニア人材育成事業を「IT/DX人材育成事業」と形を変えてデータアナリスト方面にも活動を広げました。
その結果、ただのエンジニア教育から研修内容の幅を大きく広げることになったため、人材研修のコンサルティングへの需要を感じております。そして、Train the Trainer(以下、TTT)を体系的に実施する必要を強く認識しました。
また、研修会社こそ多くありますが、まともにTTTを実施しているのは1社だけでした。
本カレンダーでは、最新のエンジニア研修と今後DX推進も見据えたデジタル人材育成の課題、また範囲を学生向けの新しい教育指導要綱、具体的には「情報Ⅰ、情報Ⅱ」の科目と小中学校でのアルゴリズム教育も含めて、IT教育の難しさや課題、そして解決アプローチを模索していきます。(本稿用に表記をいじっています)
という目標を掲げていました。
改めて読み返すと、これらについて達成できたものと微妙なものはありますが、やろうとはしたので、うん。
今年も思いは同じですが、アプローチを若干変えていきます。
今年の目標
目的
- エンジニア講師人材を増やす
- エンジニアの新しいキャリアパスとして、エンジニア講師を提案する
- エンジニアが講師をする楽しさやポイントを実体験から解説する
- 最高のアウトプットはカンファレンスにスタッフとして参加すること!をPRする
背景
フリーランスとしてエンジニアリング事業とエンジニア人材育成事業を展開しておりますが、2022年に育成事業としてデジタルスキル標準(DSS)が示され、今もなおアップデートがされ続けています。
私もエンジニア人材育成事業を「IT/AI/DX人材育成事業」と形を変えてデータアナリスト方面にも活動を広げました。
その結果、ただのエンジニア教育から研修内容の幅を大きく広げることになったため、人材研修のコンサルティングへの需要を感じております。そして、Train the Trainer(以下、TTT)を体系的に実施する必要を強く認識しました。
また、研修会社こそ多くありますが、まともにTTTを実施しているのは多くはありません。
特にAI領域においては最新技術をキャッチアップし、来月使えなくなってしまっている知識や技術を教材化するための動きが早くならない事には、直接的な指導が難しいという側面もあるからです。本カレンダーでは、最新のエンジニア研修と今後DX推進も見据えたデジタル人材育成の課題、また範囲を学生向けの新しい教育指導要綱、具体的には「情報Ⅰ、情報Ⅱ」の科目と小中学校でのアルゴリズム教育も含めて、IT教育の難しさや課題、そして解決アプローチを模索していきます。
SDGsに迎合できるかは微妙ですが、なるべくエンジニアまたは希望者の学習持続可能性に注目して支援をしていきたいです。
ソフトウェア開発業と講師業を続ける理由
全てのスクールや環境がそうだ、という話をしていません。
また、私の意見が絶対的に正しいものとは考えていません。
私も参画させていただいたスクール事業社さんのうち、良い取り組みや「ここを解決できたら良くなる」という気付きをまとめています。
昨今のエンジニア指導について思うこと
エンジニア教育の需要は高まっていますが、ソフトウェア開発の現場を知る人が講師になるかと言えばかなり割合は下がります。ましてや、エンジニア講師はまともな指導教育を受けていないのが実情であり、実務経験(新卒研修や部下指導など)によるものばかりです。
昨今はオンライン研修も多く実施されていますが、指導で使えるツールも多く出てきてはいますがいわゆる開発業務ほど重視されてはいません。
また、プログラミングスクールの運営関係者(残念ながら講師ですら一部含む)ですら現場経験もなければ、場合により指導経験もないという状態で事業が営まれていることが多く、指導経験自体はプログラミング・エンジニアリングに限らず経験者を何人か入れて運営業務を担っているようです。
このような状態ではありますが、関係機関・省庁は「IT人材の育成数」というKPIを立てて、この目標自体は「達成されている」と評価されています。
誤解を恐れずに言うと「(KPIとして)IT人材育成は達成されているが、なぜかIT人材不足か解消されていない」というギャップが依然残り続けています。
はたして、これが真に「IT人材の育成に成功した」と言えるのか?というと私は非常に強い疑問を持っています。
IT業務に関してはルーティンワークではないことと、毎日がケースバイケースな対応を求められる上に技術要件も千差万別であるため「学んだ事が役に立たない」という前提を持って、その上で現場に対応できるか?という面で評価は必須のはずなのですが、なぜか忘れ去られてしまっているように思います。
スクール運営の課題
営業利益を上げるなど持続性(事業性)を一旦横において、現場目線から評価します。
- プログラミングスクールで学んだ事がそのまま使えない
- 開発手法の体得(HTML/CSS/JavaScriptの一部のDOM)や(手順が明確な)成果物を作ることを達成目標としているが、実践ではAjaxや関連フレームワークを使って顧客の課題を解決する(手順をこれから検討・設計する)成果物を作ることを求められる
- 実践課題を仮想に設定し、課題として与えられるカリキュラム設計ができない
- そして、成果物をプロダクト・プロジェクト双方の面で評価できない
- アセスメント設計に課題がある
- そもそも、学習内容に対して学んだことを理解したか・学んだことを活かして課題分析ができるか・課題を解決するプロダクトを起こせるか・実装可能か、などを評価する仕組みがない
こういった面で見ると、toC研修は「学習のしやすさ」を重視する傾向があるため、市場にある多くの簡単な案件を想定して教育カリキュラムを設計していくのだろう、と思われます。
そう考えると、toB研修は研修後の業務に参画できる状態がゴールになるため研修も高度になってくる傾向にあります。
教育者の現実
いわゆる学校教諭は公務員という立場です1。
そのため、開発現場を経験しながら現場に即した指導を行う、という事はできません。
目的がエンジニア育成ではないとは言えど、現場経験が積めない教師(状態)で指導させる、というのも疑問しかないのですが、そもそも現場経験が積める状態であったとしてもスキル差が出やすいため「ここまで教えればOK」というものは教諭個人のスキルに依存しそうです。
これは塾講もですね。
情報科が必修となったとはいえ、現状は情報科のアセスメント自体が成熟していないように感じる部分が多いためとりあえず作ったけど現実的な状態になっていないというギャップが懸念です。
細かいことを言うと、たとえば国語系(古文・現代文)にしても数学にしても、実践的な内容を教えているか?というとそうなっていないので気にしすぎではあるのですが、教育指導要綱には情報科を設立・必修化した目的が明記されているので、その通りになっているかどうかは評価する仕組みがあった方がよさそうにも思いますね。
加えて、昨今は教育系YoutuberからAIに師事先を変える動きもあり、学習面でもより高度なタイパを求められるようになっているように見えます。
各学校に現場エンジニア経験がある人が入るだけでかなり変わりそうなのですが、それはそれで危険な香りがするので賛否両論ありそうです。
私の立場としては「学校とは関係のない場所でプログラミングスキルを高めたい or インターンではないが先に職業体験のような経験や知見を得たい学生」を支援する立場としてお話しできる環境を作るぐらいでしょうか。
この辺りはまだ結論がありません。
私ができたこと
民間のみで運営しているtoB, toCのプログラミングスクールや、産学官の学習環境など現場を選ばず、またオンライン・現地も問わず幅広に研修講師として登壇してきたところでそれぞれ一様に実践してみました。
私が担当した受講生のモチベーション・目的意識が高い方ばかりだったからかも知れませんが、よく聞かれる「明らかにやる気がない状態」には未だに出会したことはありません。
ただし「私がやりたいのはプログラミングではなかった」という結論を出して、自らの目標を見つけて邁進されている方はいました。
これが「プログラマーの育成」の観点で見ると失敗ではあるのですが、先述した通り「数より質」を課題に感じているため大きな問題ではないと思っています。
個人の意見でしかありませんが、プログラミングスクールを通じて学習していった結果として「プログラマーは向いていない」と感じられるようになったという事は良い気付きだと思っています。
全ての野球好きが全員プロ野球プレイヤーまたは関係者になれないのと同じように、全員がプログラマーになれるとは思っていないからです。
その代わり、といってはなんですが「プログラマーではないIT業界関係者」や「IT業界以外で活躍したい可能性の成就」といった、エンジニアの現場を知ってもらって、役立てるためには?という考え方にシフトすることで解決するようにしていました。
受講生にマインドセットを都度促すようにしており、プログラマーになるための学習方法や目標と、AIにプログラミングをやらせて作りたいシステムを作れるようにするか、あるいは何かの目的のついでにプログラミングを学ぶのか、など細かく講義方針やアセスメント設計をカスタマイズしています。
心当たりがこれしかないので、そのためだと思うのですがプログラマーになろうとした方や、プログラマーを諦めた方も含めてかなり満足度が高いとご評価をいただいているという実績になりました。
リスキリングだけではない、エンジニア教育
本題ではないので簡単に触れます。ここでは2軸で見てみます。
私が預かる立場として
私にとっては事業性の目的なのですが、学校併設またはそうではない学童保育・子どもセンターの職員として短期的に従事させていただく機会をもてました。
教育の機会もあったのですが、やはり世間的には五教科がメインで情報科はあくまで必修というだけで、いわゆる保健体育や芸術(音楽・美術)、家庭といったカテゴリにあります。
いわゆる進学の試験要件である五教科の成績の価値がほかの必修科目と比べると高いので、学習塾としては取り上げていないというのが実情なのだろうと推察しますが、五教科以外の必修科目でも突き詰めれば(専門的に学習すると)職業になることもあるというのは同じか、ことITに限定しますと学習の方法もかなり門戸が開かれていることと無料で学ぶ環境も多くあるので、こういった場を持つか、気付いてもらうだけで変わっていきそうな気がしています。
と、色々考えてはみたのですが、結局私が直接関わったのは算数/数学ですとか理科系(物理)ぐらいでした。
私が預ける立場として
私が本職だから、という事もあるのですが子供にプログラミング言語を指導するよりは、プログラミング言語を抜きにアルゴリズムの基礎となる論理的思考や空間処理を養う環境の方が重要度は高いと思っています。
私の指導経験から、というのもあるのですが「ルールのない環境で、ゴールを決めないでいろいろやってみる」という時間をどれだけ作れたか、が重要なのだと思います。
そのため、将棋や囲碁、チェス、オセロのような「ルールがあって、やることが決まっていて勝利条件がある」というゲーム性の中で定跡(定石)の意味や目的を学んで=強化学習をすることによるスキルとは分けて扱われるべきではないかと考えています。
そういった意味でも、自由度の高いゲームを説明なしで与えられた時に、それを使って何をするか、どこまで突き詰められるか、を自ら目標を決めて動き出し、何かを作れる状態がまず目指すべき最初のゴールです。
本アドカレは、私のプログラミング教育の目的を現場指導をしてきた結果と考察をまとめたものとなります。
ここからは、より具体なケースを見ていくことにしましょう。
注釈
-
【^教師は公務員?】https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317771.htm 国公立の場合を想定。私立の場合はこの限りではない ↩