横文字多すぎ問題
AI関連のニュースや記事を見るたびに、「GPT」「LLM」「RAG」 といった横文字が次々に出てきて、それぞれの違いがよくわからない…という経験はありませんか?
この記事では、2025年現在のAI業界で頻繁に登場する重要キーワードを、小学生でも理解できるくらい簡単に解説します。
専門用語を避け、身近な例えを使って説明するので、AI初心者の方もスッと理解できるはずです!
まず全体像を理解しよう
AI用語の関係性を図にすると、こんな感じです:
AI(人工知能)
│
├─【今あるAI】特定の仕事が得意
│ │
│ ├─ 生成AI ← 新しいものを作るAI
│ │ └─ LLM(大規模言語モデル) ← 文章専門の生成AI
│ │ └─ GPT ← LLMの有名なシリーズ
│ │
│ ├─ 画像認識AI(顔認証など)
│ ├─ 音声認識AI(Siriなど)
│ └─ その他いろいろ
│
└─【まだ無いAI】
└─ AGI(汎用人工知能) ← 自分で考えて学ぶAI。ほぼ人間
補助技術
- RAG = LLMが持たない情報を検索して取り込む技術
1. AI(人工知能)
コンピューターに人間のような賢い仕事をさせる技術全体
AIは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略です。人間が普段やっている「考える」「判断する」「学習する」といったことを、コンピューターにもやらせようという技術全体を指します。
今あるAI vs まだ無いAI
今あるAI(特化型AI)
- 特定の仕事だけが得意
- 例: 文章を書く、顔を認識する、将棋を指す
- ChatGPT、自動運転、顔認証など
まだ無いAI(AGI = 汎用人工知能)
- 人間のように色々なことができる
- 自分で新しいことを学び、応用できる
- 研究中で、まだ実現していない
身近な例
- スマホの顔認証(画像認識AI)
- Siriやアレクサ(音声認識AI)
- YouTubeのおすすめ動画(推薦AI)
- ChatGPT(文章生成AI)
2. 生成AI
何もないところから新しいコンテンツを作り出すAI
生成AIは、文章、画像、音声、動画など、さまざまなコンテンツを「生成」できるAIのことです。2022年末にChatGPTが登場してから、一気に注目を集めました。
ポイント: 生成AIは「AIの一種」です。AIという大きな傘の中にある、「学習データを参考にして何かを作る」ことが得意なタイプのAIです。
身近な例
- 文章: ChatGPT、Claude
- 画像: DALL-E、Stable Diffusion、Midjourney
- 動画: Sora
- 音楽: Suno AI
質問に答えたり、物語を書いたり、イラストを描いたり…人間のクリエイティブな作業をサポート(あるいは代替)できる可能性を持っています。
注意点: ハルシネーション
生成AIは便利ですが、時々間違った情報をもっともらしく答えることがあります。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
これはAIが「嘘をついている」のではなく、AIの仕組み上、確率的に最もらしい答えを生成しているだけなので、事実と異なることを答えてしまうのです。
重要な判断をする際は、必ず人間が確認する必要があります。
3. LLM(大規模言語モデル)
膨大な文章を学習して、人間のように文章を書けるようになったAI
LLMは「Large Language Model(大規模言語モデル)」の略です。インターネット上の本、記事、ウェブサイトなど、大量の文章データから「言葉の使い方」や「知識」を学習したAIモデルのことです。
ポイント: LLMは「生成AIの一種」で、特に「文章生成」に特化したものです。
LLMの仕組み(簡単に)
LLMは「次にどんな単語が来るか」を予測することで文章を生成します。
例えば、「今日はいい天気なので、公園に___」と入力すると、過去に学習した膨大な文章から「行きました」「散歩に」などが来る確率が高いと予測して、自然な文章を作ります。
もちろん実際はもっと複雑で、文脈を理解したり、推論したり、コードを書いたりといった高度なことができます。
代表的なLLM
- GPT-4、GPT-4o(OpenAI)
- Claude(Anthropic) ← 今あなたが使っているのがこれ!
- Gemini(Google)
- Llama(Meta)
LLMの限界
LLMは学習したデータまでの情報しか知りません。
例えば、2024年1月までのデータで学習したモデルは、それ以降の出来事について正確に答えられません。また、企業の社内文書など、インターネット上に公開されていない情報も知りません。
この弱点を補うのが、後ほど紹介する「RAG」という技術です。
4. GPT
OpenAIが開発した、最も有名なLLMシリーズ
GPTは「Generative Pre-trained Transformer(生成可能な事前学習済み変換器)」の略です。OpenAIという会社が開発しているLLMのシリーズ名で、ChatGPTの中核技術でもあります。
ポイント: GPTは「LLMの一種」です。たくさんあるLLMの中で、特に有名なシリーズです。
GPTの歴史
- GPT-1(2018年): 1.17億パラメーター
- GPT-2(2019年): 15億パラメーター
- GPT-3(2020年): 1,750億パラメーター
- GPT-4(2023年): パラメーター数非公開(推定1兆以上)
- GPT-4o(2024年): より高速で効率的なバージョン
数字が大きくなるほど、より賢く、より自然な会話ができるようになっています。
よくある勘違い
「GPT」と「ChatGPT」は違います
- GPT = AIモデルそのもの
- ChatGPT = GPTを使った会話サービス
5. RAG(検索拡張生成)
LLMに「参考資料」を渡して、より正確な答えを出させる仕組み
RAGは「Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」の略です。
LLMが持っていない情報(最新ニュース、専門知識など)を検索して取ってきて、それを参考にしながら回答を生成する技術です。
RAGの仕組み(3ステップ)
- 検索(Retrieval): ユーザーの質問に関連する情報をデータベースやウェブから探す
- 拡張(Augmented): 見つけた情報をLLMに渡す
- 生成(Generation): その情報を参考にしてLLMが回答を作る
例↓
- LLMだけ: 記憶だけでテストに答える(知らないことは答えられない/間違えることも)
- LLM + RAG: 教科書や参考書を見ながらテストに答える(正確性が大幅アップ)
RAGのメリット
- 最新の情報を反映できる(ニュース、株価など)
- ハルシネーション(AIの間違い)を減らせる
- 情報の出所を明示できる(どの資料を参考にしたか分かる)
RAGの課題
- 検索が不正確だと、間違った情報を参考にしてしまう
- 関連性の低い情報を取ってくると、逆に回答精度が下がることがある
- システムが複雑になり、構築や運用にコストがかかる
2024年にRAG技術は大きく進化しました。単純なRAGでは問題があることが分かり、「Speculative RAG」など、より高度な手法が登場しています。
また、2025年は「RAGの次」として、自律的に行動できる「AIエージェント」が注目されています。
よく一緒に出てくる用語集
ハルシネーション(幻覚)
AIが事実と異なる情報を、もっともらしく生成してしまう現象です。まるで「幻覚を見ている」かのように、存在しない出来事や間違った情報を自信満々に答えます。
これはAIが意図的に嘘をついているのではなく、AIの構造上の限界によるものです。
プロンプト
AIに指示を出すための文章のことです。「〇〇について教えて」「〇〇を作って」といった、ユーザーがAIに送るメッセージ全般を指します。
良いプロンプトを書くことで、AIからより良い回答を引き出せます。
ファインチューニング
すでに学習済みのAIモデルに、追加の学習をさせることです。特定の業界や用途に特化したAIを作る際に使われます。
例: 医療用語に特化したLLM、法律文書専門のLLMなど
トークン
LLMが処理する際の文章の最小単位です。英語では1単語が1トークン程度ですが、日本語の場合、1文字が複数トークンになることもあります。
多くのAIサービスでは、このトークン数によって料金が決まります。
AIエージェント
自律的に目標を設定し、ツールを使って課題を解決できるAIシステムです。2025年のトレンドキーワードで、単なる質問応答を超えて、複雑なタスクを自動で実行できます。
例: 「来週の会議の資料を作って」と頼むと、自動で情報を集め、整理し、スライドを作成するようなAI
まとめ
この記事では、AI関連の重要キーワードを解説しました。
用語の関係性
- AI: コンピューターに賢い仕事をさせる技術全般
- 生成AI: 新しいコンテンツを作り出すAI(AIの一種)
- LLM: 文章生成に特化した生成AI(生成AIの一種)
- GPT: OpenAIが開発した有名なLLM(LLMの一種)
- RAG: LLMに最新情報を教える技術(補助技術)
覚えておきたいポイント
- AIは「大きな傘」で、その中に生成AIやLLMがある
- GPTはLLMの有名なシリーズの一つ
- RAGはLLMをより賢く使うための技術
- どのAIも完璧ではなく、ハルシネーション(間違い)には注意が必要
これらの技術は急速に進化しており、2025年現在も新しい手法やモデルが次々と登場しています。
基本的な概念を理解しておけば、最新のニュースや技術トレンドも理解しやすくなるはずです!