Claude Codeはソフトウェア開発のためのツールだと思われがちですが、実はコードを一行も書かない業務にも使えます。議事録の整理、レポートの作成、メールの下書き、データの集計。PMが日々こなしている作業の多くは、Claude Codeで仕組み化できます。
この記事では、PM業務にClaude Codeを導入する考え方と進め方を解説します。
この記事の対象読者と得られること
| 対象読者 | この記事で得られること |
|---|---|
| PMとしてAIを業務に取り入れたい方 | Claude Codeの導入アプローチと進め方 |
| Claude Codeに興味はあるが「開発者向け」だと敬遠していた方 | PM業務への具体的な活用イメージ |
| 業務の属人化や引き継ぎに課題を感じているPM | 業務の構造化・可視化の副次効果 |
PM業務の正体は「情報の加工と受け渡し」
PMの仕事を振り返ると、ほとんどが情報の変換作業です。
会議の音声をテキストにする。テキストから要点を抜き出して議事録にする。議事録の内容をクライアント向けに書き換える。書き換えた資料をPDFにしてメールに添付する。
入力と出力の形が変わるだけで、情報の中身は同じです。この「入力 → 加工 → 出力」の連鎖がPM業務の正体だと考えると、どこをAIに任せられるかが見えてきます。
緑のステップが Claude Code で自動化できる部分です。
すべてを自動化する必要はありません。「この会議のこの発言は、クライアントにはこう伝えるべき」といった判断は人間にしかできません。定型的な変換をClaude Codeに任せて、判断が必要な部分に集中する。それがPM業務におけるAI活用の基本方針です。
Claude Codeの基礎知識(PM向け)
Claude Codeは、Anthropicが提供するターミナル(コマンドライン)で動くAIアシスタントです。ChatGPTのようなWebチャットとの違いは、ローカルのファイルを直接読み書きできる点にあります。
PM業務では社外に出せない情報を扱うことも多いです。Claude Codeはデフォルトでは Anthropic の API を使いますが、自社契約の Azure や AWS Bedrock などを経由して利用することもできます。接続先の切り替えには CC Switch のようなツールが便利です。
PMにとって押さえておくべき概念は3つだけです。
CLAUDE.md ── プロジェクトの前提知識
CLAUDE.mdは、プロジェクトのルートフォルダに置くテキストファイルです。Claude Codeはセッションを開始するたびにこのファイルを読み込みます。
ここにプロジェクト固有の情報を書いておくと、毎回同じ説明を繰り返す必要がなくなります。
# プロジェクトA
## 関係者
- 田中(クライアント側PM): 週次報告の宛先
- 佐藤(開発リーダー): 技術的な質問の相手
## 用語
- 「KPI会議」: 毎週月曜10時のステークホルダー会議のこと
- 「本番環境」: production.example.com を指す
## 報告ルール
- クライアント向け資料では技術用語を使わない
- 障害報告は発生時刻・影響範囲・対応状況の3点セット
このファイルがあると、Claude Codeは「田中さん宛のメールを書いて」と頼むだけで、誰に向けてどういうトーンで書くべきかを理解します。
スキル ── 繰り返す作業の手順書
スキルは、Claude Codeに「こうやってね」と手順を書いたファイルです。.claude/skills/ フォルダに置きます。
たとえば「議事録を作って」と頼んだとき、毎回「日時、参加者、議題、決定事項、次のアクションの順番で書いて」と指示するのは手間です。スキルにしておけば、/create-minutes のようなコマンド一発で同じ品質の出力が得られます。
フォルダ構成 ── 情報の置き場所
Claude Codeはローカルのファイルを直接操作します。つまり、フォルダ構成がそのまま業務の構造になります。あとで詳しく説明します。
導入の進め方:3ステップで段階的に
最初から完璧な仕組みを設計する必要はありません。手を動かしながら、少しずつ育てていくのが現実的です。
ステップ1: まず1つの業務を手動で頼んでみる
最初はチャットのように使います。
あなた: 今日の会議の議事録を作って。参加者は田中さん、
佐藤さん、自分。議題は来月のリリーススケジュール。
Claude: 議事録を作成しました。minutes/2026-03-02-release.md に
保存しています。
この段階では、Claude Codeはただの便利なアシスタントです。大事なのは、出力が意図と合っているかを確認し、違っていたら指摘すること。「クライアント向け資料では箇条書きじゃなくて文章で書いて」のように、フィードバックを繰り返すことで精度が上がります。
数日これを続けると、2つのことがわかってきます。
- 毎日繰り返している作業は何か
- Claude Codeがうまく処理できる作業とできない作業の境界
ステップ2: 繰り返す作業をスキルにする
「また同じことを頼んでいるな」と思ったら、それがスキル化のタイミングです。
Claude Codeに「今やった作業をスキルにして」と伝えるだけで、手順をファイルに書き出してくれます。自分でMarkdownを書く必要はありません。
スキルは、1つの作業に1つ作るのがコツです。
| スキルの例 | やること |
|---|---|
/create-minutes |
会議情報から議事録テンプレートを生成する |
/search-email |
特定の条件でメールを検索してまとめる |
/weekly-summary |
今週のタスク進捗を集計してレポートを作る |
/draft-report |
議事録から報告資料を作成する |
1つ1つは小さな作業です。「メールを検索する」「議事録のテンプレートを作る」くらいの粒度で十分です。
スキルが増えてきて似たようなものが出てきたら、Claude Codeに「スキルを整理して」と頼むと、重複を指摘してくれたり統合案を出してくれたりします。
ステップ3: スキルを組み合わせて一連の流れにする
個別のスキルが揃ったら、それらを繋げて1つの業務フローにします。
たとえば「会議が終わったあとにやること」を1つのスキルにまとめると、こうなります。
/meeting-followup
1. 録音ファイルからテキストを起こす
2. テキストから議事録を作成する
3. 議事録をクライアント向けに整形する
4. PDFを生成する
5. メールの下書きを作成する
5つのステップを毎回手動で実行する代わりに、/meeting-followup とだけ打てば一気に進みます。途中で人間の確認が必要なステップがあれば、そこで一時停止させることもできます。
フォルダ設計が業務の骨格になる
Claude Codeはローカルファイルを中心に動くため、フォルダ構成が業務の流れそのものを反映します。
PM業務向けのフォルダ構成例です。
project-a/
├── CLAUDE.md # プロジェクトの前提知識
├── .claude/skills/ # スキル定義
├── minutes/ # 議事録(生データ〜完成版)
├── reports/ # 報告資料・成果物
├── tasks/ # タスク定義・進捗管理
├── docs/ # 業務手順書・引き継ぎ資料
└── data/ # 分析用データ
ポイントは、情報が必ずどこかのフォルダを経由する設計にすること。会議の音声はまず minutes/ に入り、加工されて reports/ に移る。この流れがフォルダ構成から読み取れると、自分以外の人が見ても何がどこにあるかがわかります。
もう1つの利点は、作業の途中経過がファイルとして残ることです。Claude Codeのセッションが切れても、フォルダを開けば「昨日どこまで進んだか」がすぐわかります。チャットのログを遡る必要はありません。
CLAUDE.mdに何を書くか
CLAUDE.mdはスキルの動作を左右する最も重要なファイルです。
スキルは「議事録を作れ」という汎用的な手順書です。一方、CLAUDE.mdは「このプロジェクトでは、議事録はこういうフォーマットで、この人たちに共有するもの」というプロジェクト固有の文脈を提供します。
同じ議事録作成スキルを使っても、CLAUDE.mdの内容が異なれば出力も変わります。
書くべき内容
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 関係者 | 名前、役割、連絡先、報告ラインの関係 |
| 用語集 | プロジェクト固有の略語や業界用語の定義 |
| ルール・制約 | 報告のフォーマット、承認フロー、セキュリティ要件 |
| テンプレート | よく使う検索条件、メールの定型文 |
書かなくていい内容
- Claude Codeが推測できること(一般的なビジネスマナーなど)
- 一度しか使わない情報(その場で口頭で伝えれば十分)
- 頻繁に変わる情報(こちらはタスクファイル等で管理する)
CLAUDE.mdはClaude Codeが毎回読み込むファイルです。長くなりすぎると処理効率が落ちます。A4で1〜2ページ程度に収めて、詳細は別ファイルに書いてCLAUDE.mdからリンクする形がおすすめです。
副次効果:業務が「見える化」される
スキルとフォルダに業務を落とし込んでいくと、思わぬ副産物が得られます。業務の全体像が可視化されるのです。
スキル定義を見れば「何をやっているか」がわかります。フォルダを見れば「情報がどう流れているか」がわかります。CLAUDE.mdを見れば「前提知識は何か」がわかります。
これらが揃った状態でClaude Codeに「自分の業務フローを分析して」と頼むと、週次の業務サイクルや情報フロー図を作ってくれます。属人化していた業務が構造として記述されるので、引き継ぎやオンボーディングの資料としてそのまま使えます。
自動化を目的として始めた取り組みが、結果として業務設計のドキュメントになる。これはPMにとって大きな価値です。
始めるための最初の一歩
すべてを一度に構築する必要はありません。以下の順番で少しずつ進めるのが現実的です。
- プロジェクトフォルダに
CLAUDE.mdを作り、関係者と用語だけ書く - Claude Codeに1つ業務を頼んでみる(議事録作成がおすすめ)
- 同じ作業を2〜3回頼んだら「スキルにして」と言う
- ファイルが増えてきたらフォルダを整理する
2〜4を繰り返すうちに、自分のプロジェクトに合った仕組みが自然にできあがります。最初から完成形を目指す必要はありません。
付録: コピーして使えるサンプル集
ここからは、すぐに使えるサンプルファイルを紹介します。自分のプロジェクトに合わせて中身を書き換えてください。
セットアップ(ターミナルで実行)
まずプロジェクトフォルダを作り、必要なディレクトリを用意します。
# プロジェクトフォルダを作成
mkdir project-a && cd project-a
# フォルダ構成を一括作成
mkdir -p .claude/skills minutes reports tasks docs data
# CLAUDE.mdを作成(中身はこの後書きます)
touch CLAUDE.md
Claude Codeのインストールがまだの方は、ターミナルで npm install -g @anthropic-ai/claude-code を実行してください。Node.js v18以上が必要です。インストール後、claude コマンドで起動できます。
サンプル1: CLAUDE.md(プロジェクトの前提知識)
以下をそのまま CLAUDE.md にコピーし、自分のプロジェクトの情報に書き換えてください。
# Webリニューアルプロジェクト
## 関係者
| 名前 | 所属 | 役割 | 備考 |
|------|------|------|------|
| 山田太郎 | クライアント(株式会社ABC) | プロジェクトオーナー | 週次報告の宛先。最終承認者 |
| 鈴木花子 | クライアント(株式会社ABC) | 担当者 | 日常的な連絡窓口 |
| 佐藤一郎 | 自社 | テックリード | 技術的な判断はこの人に確認 |
## 用語
- 「定例」: 毎週火曜14時のクライアント定例会議
- 「ステコミ」: 月1回のステアリングコミッティ。経営層向け報告の場
- 「STG」: ステージング環境(stg.example.com)
- 「本番」: 本番環境(www.example.com)
## 報告ルール
- クライアント向け資料では技術用語を避け、ビジネスへの影響で説明する
- 障害報告は「発生時刻」「影響範囲」「対応状況」「再発防止策」の4項目
- 週次報告は毎週月曜中に作成し、火曜の定例前にメールで送付
## 成果物のフォーマット
- 議事録: Markdown形式で minutes/ に保存
- 報告資料: Markdown → PDF変換して reports/ に保存
- メール下書き: 件名と本文をMarkdownで出力
## スケジュール
- フェーズ1(要件定義): 2026年1月〜3月
- フェーズ2(設計・開発): 2026年4月〜8月
- フェーズ3(テスト・移行): 2026年9月〜11月
- リリース: 2026年12月1日
サンプル2: 議事録作成スキル
.claude/skills/create-minutes.md に保存します。Claude Code上で /create-minutes と打つと実行されます。
# 議事録作成
会議情報をもとに議事録を作成し、Markdownファイルとして保存する。
## 入力
ユーザーから以下の情報を受け取る(不足があれば確認する)。
- 会議名
- 日時
- 参加者
- 議題・話し合った内容
## 手順
1. CLAUDE.md の「関係者」と「用語」を参照し、正しい名前表記と用語を使う
2. 以下のテンプレートに沿って議事録を作成する
3. `minutes/YYYY-MM-DD-[会議名の略称].md` に保存する
## テンプレート
```
# [会議名] 議事録
- 日時: YYYY年MM月DD日 HH:MM〜HH:MM
- 参加者: [名前をカンマ区切り]
- 記録者: [自分の名前]
## 議題と議論内容
### 1. [議題1]
[話し合った内容を箇条書きで整理]
### 2. [議題2]
[話し合った内容を箇条書きで整理]
## 決定事項
- [ ] [決まったこと1]
- [ ] [決まったこと2]
## 次のアクション
| 担当 | 内容 | 期限 |
|------|------|------|
| [名前] | [やること] | MM/DD |
## 次回会議
- 日時: YYYY年MM月DD日 HH:MM
- 議題(予定): [次回話す予定のこと]
```
## 注意
- 技術的な議論は、非エンジニアにもわかる表現に言い換える
- 決定事項とアクションは必ずチェックボックス付きで書く
- 曖昧な内容は「要確認」と明記し、確認先の名前を添える
サンプル3: 週次レポート作成スキル
.claude/skills/weekly-report.md に保存します。
# 週次レポート作成
今週の議事録とタスク状況から、クライアント向けの週次レポートを作成する。
## 手順
1. `minutes/` から今週分の議事録をすべて読み込む
2. `tasks/` からタスクの進捗状況を読み込む
3. CLAUDE.md の「報告ルール」に従ってレポートを作成する
4. `reports/weekly-YYYY-MM-DD.md` に保存する
## テンプレート
```
# 週次報告: MM月DD日週
## 今週の進捗サマリー
[3〜5行で今週の全体像をまとめる]
## 完了したタスク
- [タスク名]: [成果の概要]
## 進行中のタスク
| タスク | 担当 | 進捗 | 予定完了日 | 備考 |
|--------|------|------|-----------|------|
| [名前] | [担当者] | XX% | MM/DD | [補足] |
## 課題・リスク
| 内容 | 影響度 | 対応策 | 担当 |
|------|--------|--------|------|
| [課題] | 高/中/低 | [対応策] | [名前] |
## 来週の予定
- [予定1]
- [予定2]
```
## 注意
- 技術用語はビジネスへの影響に翻訳する(例: 「APIレスポンスが遅い」→「画面表示に時間がかかる」)
- 課題は必ず対応策をセットで書く。対応策がない場合は「検討中」と明記する
- 進捗率は正直に書く。問題があれば早めに報告する
サンプル4: 会議後の一括処理スキル(複合スキル)
.claude/skills/meeting-followup.md に保存します。サンプル2の議事録作成を含む一連の流れを自動化したものです。
# 会議後の一括処理
会議後に必要な作業をまとめて実行する。
## 入力
- 会議名、日時、参加者、議論内容
## 手順
### ステップ1: 議事録作成
/create-minutes スキルに従い、議事録を作成する。
### ステップ2: 確認
作成した議事録をユーザーに提示し、内容の確認を取る。
修正指示があれば反映する。OKが出るまで次に進まない。
### ステップ3: クライアント向けに整形
議事録をもとに、クライアント共有用の要約を作成する。
- 社内の議論経緯は省略し、決定事項とアクションに絞る
- CLAUDE.md の「報告ルール」に従う
- `reports/minutes-YYYY-MM-DD-[略称].md` に保存する
### ステップ4: メール下書き作成
クライアント向け要約を添付する前提で、送付メールの下書きを作成する。
- 宛先: CLAUDE.md の「関係者」から適切な人を選ぶ
- 件名: 「【議事録】[会議名] MM月DD日」
- 本文: 3〜5行の概要 + 「詳細は添付の議事録をご確認ください」
下書きを `reports/mail-draft-YYYY-MM-DD.md` に保存する。
### ステップ5: 最終確認
すべてのファイルの保存先を一覧表示し、ユーザーに最終確認を取る。
使い方の流れ
セットアップが終わったら、プロジェクトフォルダで claude を起動して試してみてください。
$ cd project-a
$ claude
あなた: /create-minutes
Claude: 会議の情報を教えてください。会議名、日時、参加者、
議題を教えていただければ議事録を作成します。
あなた: 今日14時からの定例。参加者は山田さん、鈴木さん、佐藤、自分。
リリーススケジュールの見直しと、STG環境の不具合について話した。
リリースは12月1日のまま変更なし。
STGの不具合は佐藤が来週水曜までに修正する。
Claude: 議事録を作成しました。minutes/2026-03-04-regular.md に
保存しています。内容を確認してください。
スキルの中身は自分で書く必要はありません。最初は手動で何度か頼んで、品質に満足したら「今の作業をスキルにして」とClaude Codeに伝えるだけです。上のサンプルは、そうやって育てていくときの参考にしてください。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| PM業務の本質 | 情報の「入力 → 加工 → 出力」の連鎖 |
| 導入の進め方 | 手動で頼む → スキル化 → スキルを繋げる |
| フォルダ設計 | 情報の流れをフォルダ構成に反映する |
| CLAUDE.md | プロジェクト固有の文脈を書く。スキルの出力品質を左右する |
| 副次効果 | 業務が構造化され、引き継ぎ可能になる |
Claude Codeは開発者だけのツールではありません。情報を扱うすべての仕事、とりわけPM業務との相性は抜群です。