はじめに
「Claude使ってますか?」——この問いに「はい」と答える開発者が増えています。しかし、Claudeには複数の利用形態があり、それぞれ異なる強みと用途を持っています。
本記事では、Claude Desktop Appと**Claude Code(IDE統合版 + CLI版)**を徹底的に比較します。両者の違いを理解することで、あなたのワークフローに最適な選択ができるようになります。
本記事の対象読者
- Claudeを使い始めたばかりの開発者
- Claude Desktop AppとClaude Codeの違いがよくわからない人
- どちらを使うべきか迷っている人
- 両方を効果的に使い分けたい人
本記事で得られること
- 両者の本質的な違いと位置づけの理解
- 詳細な機能比較と実践的な使い分け方
- 自分のユースケースに最適な選択基準
目次
第1部:基礎理解
-
大枠の概要
- Claude Desktop Appとは
- Claude Code(IDE統合版 + CLI版)とは
- 両者の本質的な違い
第2部:詳細比較
-
- コンテキストウィンドウとは
- Desktop App:会話フロー蓄積型
- Code IDE版:プロジェクト全体俯瞰型
- Code CLI版:明示的コンテキスト指定型
- 実践的な使い分け戦略
- ベストプラクティス
-
- 通信フローとアーキテクチャ
- コードベースインデックス化の仕組み
- トークン管理の内部処理
- キャッシング戦略
- パフォーマンス最適化
- データフローの全体像
第3部:実践活用
-
- シーン別の選択基準
- フェーズ別の推奨ツール
- スキルレベル別の推奨
-
- 新機能開発のフロー
- リファクタリングのフロー
- バグ修正のフロー
第4部:FAQ・まとめ
大枠の概要
まず、両者の本質的な違いと位置づけを理解しましょう。
Claude Desktop App(Claude Desktop App)とは
Claude Desktop Appは、Anthropicが提供するスタンドアロンのデスクトップアプリケーションです。
特徴:
- 汎用性: コーディングだけでなく、文章作成、分析、相談など幅広い用途
- 独立性: IDE不要で単体で動作
- 対話中心: 会話形式でタスクを進める
- 柔軟性: 自由な形式でコミュニケーション
位置づけ:
Claude Desktop Appは「万能なAIパートナー」。開発以外のタスク(企画、リサーチ、文書作成、データ分析)にも対応する、開発者の右腕的存在。
Claude Code(IDE統合版 + CLI版)とは
Claude Codeは、開発環境に深く統合されたClaudeです。主に以下の2つの形態があります:
- IDE統合版: Cursor、Windsurf、Continue(VS Code拡張)など
- CLI版(Claude Code CLI): ターミナルから直接利用
特徴:
- 専門性: コーディングタスクに最適化
- 統合性: IDEまたはCLIからシームレスに利用
- 効率性: コードベース全体を理解した支援
- 即応性: リアルタイムでのコード生成・修正
- 自動化: CLI版でCI/CDパイプラインにも統合可能
位置づけ:
Claude Codeは開発環境に組み込まれた「専属コーディングアシスタント」。IDE統合版はリアルタイムな実装支援、CLI版は自動化・バッチ処理を担当。コードを書く・読む・直す・テストする——開発の全フローを加速する、開発者専用の相棒。
両者の本質的な違い(一言で)
| 観点 | Claude Desktop App | Claude Code |
|---|---|---|
| 本質 | 汎用AIアシスタント | 専用コーディングアシスタント |
| 範囲 | 広く浅く | 狭く深く |
| 統合 | スタンドアロン | IDE統合 |
| 最適用途 | 企画・設計・相談 | 実装・デバッグ・リファクタリング |
例え話:
- Claude Desktop App = 万能な「コンサルタント」(何でも相談できるが、細かい実装は任せにくい)
- Claude Code = 専門の「ペアプログラマー」(実装は任せられるが、戦略的な相談には不向き)
詳細比較
ここからは、具体的な比較カテゴリごとに両者を詳しく見ていきます。
比較カテゴリ一覧
1. 基本情報
Claude Desktop App
提供元: Anthropic
対応OS: macOS, Windows, Linux
リリース: 2024年(正式版)
アクセス方法: デスクトップアプリ(ダウンロード・インストール)
前提条件: なし(アプリ単体で動作)
アカウント: Claude Pro/Team/Enterpriseのいずれか
Claude Code
提供元: IDEベンダー(Cursor, Windsurf等)+ Anthropic
IDE統合版:
-
対応IDE:
- Cursor(最も統合が深い)
- Windsurf
- Continue(VS Code/JetBrains拡張)
- その他Claude API対応エディタ
- アクセス方法: IDE内から直接利用
- 前提条件: 対応IDEのインストール
CLI版(Claude Code CLI):
- 対応環境: macOS, Linux, Windows(WSL)
- アクセス方法: ターミナルからコマンド実行
- 前提条件: Node.js/npm または直接バイナリ
-
主な用途:
- 自動化スクリプト
- CI/CDパイプライン統合
- バッチ処理
- コード生成の自動化
アカウント: IDE側のサブスクリプション or Claude API Key
詳細解説:
Claude Desktop Appは「アプリ単体」で完結するため、導入が非常にシンプルです。ダウンロードしてログインすれば、すぐに使い始められます。
一方、Claude CodeはIDE統合版とCLI版の2つの形態があります。IDE統合版は「IDEの一部」として機能するため、まずIDEをセットアップする必要があります。Cursorの場合、Claude統合が標準搭載されているため比較的スムーズですが、Continueの場合はVS Codeにインストール後、Claude API Keyの設定が必要です。
CLI版は、ターミナルからclaude-codeコマンドで直接利用でき、CI/CDパイプラインや自動化スクリプトとの統合が可能です。例えば、PRの自動レビュー、コード生成の自動化、定期的なコード品質チェックなどに活用できます。
どちらが簡単?
- 初心者: Claude Desktop App(設定不要)
- 既にCursor等を使っている人: Claude Code IDE統合版(追加設定なし)
- 自動化したい人: Claude Code CLI版(スクリプト組み込み可能)
2. インターフェースと操作性
Claude Desktop App
インターフェース:
- チャット形式の会話UI
- マルチセッション対応(複数の会話を並行)
- ファイルドラッグ&ドロップ
- Markdown/コードブロックのリッチ表示
- 画像添付・表示
操作フロー:
1. 質問やタスクを自然言語で入力
2. Claudeが回答・提案
3. 必要に応じてファイル添付や追加質問
4. 会話履歴を保存・検索
UI特徴:
- シンプルで直感的
- 会話の流れが一目でわかる
- コピペが容易
- サイドバーで会話履歴管理
Claude Code
IDE統合版のインターフェース:
- IDEのサイドパネル/インラインチャット
- エディタと同じ画面内で操作
- コード選択→質問/編集のショートカット
- 差分表示(diff view)
- 複数ファイル同時編集
IDE統合版の操作フロー(Cursorの例):
1. Cmd+K(インライン編集)または Cmd+L(チャット)
2. コード選択 + 指示
3. Claudeが差分を生成
4. Accept/Rejectで反映
5. 編集履歴をGitで管理
CLI版のインターフェース:
- ターミナルベースのコマンド実行
- 標準入出力でのやり取り
- パイプライン対応
- バッチ処理・スクリプト統合
CLI版の操作フロー:
# 単発コマンド
claude-code "このファイルをリファクタリングして" < input.ts > output.ts
# パイプライン統合
git diff | claude-code "このdiffをレビューして" > review.md
# CI/CD統合
claude-code --context project.md "PRのコードをレビュー" --pr-number 123
UI特徴:
- IDE版: コードに特化した表示、差分の視認性が高い、キーボード中心の操作
- CLI版: スクリプト化可能、自動化に最適、非対話的処理
詳細解説:
Claude Desktop Appは「会話」が中心です。問題を説明し、提案を受け、議論を重ねる——このプロセスが得意です。コードブロックをコピペしてエディタに貼り付ける手間はありますが、「考える時間」を持てるメリットがあります。
Claude Code IDE統合版は「実装」が中心です。選択したコードに対して「このバグを直して」と指示すれば、即座に修正案が差分表示されます。Accept一つで反映——このスピード感がClaude Desktop Appとの最大の違いです。
Claude Code CLI版は「自動化」が中心です。スクリプトやCI/CDパイプラインに組み込むことで、コードレビュー、テスト生成、ドキュメント更新などを完全自動化できます。人間の介入なしで大量のタスクを処理できるのが強みです。
どちらが使いやすい?
- 設計・相談フェーズ: Claude Desktop App(じっくり考えられる)
- 実装フェーズ: Claude Code IDE統合版(即座に反映できる)
- 自動化フェーズ: Claude Code CLI版(バッチ処理可能)
3. 機能・能力
Claude Desktop App
| 機能 | 対応 | 詳細 |
|---|---|---|
| テキスト生成 | ⭕ 優秀 | あらゆる種類の文章作成 |
| コード生成 | ⭕ 良好 | 言語問わず対応、ただし手動コピペ |
| コード理解 | ⭕ 良好 | 添付ファイルから理解 |
| コードベース全体把握 | ❌ 不可 | 個別ファイルのみ |
| リアルタイム編集 | ❌ 不可 | 提案のみ |
| ファイル添付 | ⭕ 可能 | 画像、PDF、コードなど |
| Web検索 | ⭕ 可能 | 最新情報の取得 |
| 画像生成 | ❌ 不可 | テキストのみ |
| データ分析 | ⭕ 可能 | CSVなどを分析 |
| マルチモーダル | ⭕ 可能 | テキスト・画像・ファイル |
Claude Code
| 機能 | IDE統合版 | CLI版 | 詳細 |
|---|---|---|---|
| テキスト生成 | ⭕ 良好 | ⭕ 良好 | コメント・ドキュメント中心 |
| コード生成 | ⭕ 優秀 | ⭕ 優秀 | IDE版は即反映、CLI版はファイル出力 |
| コード理解 | ⭕ 優秀 | ⭕ 優秀 | コードベース全体を理解 |
| コードベース全体把握 | ⭕ 可能 | ⭕ 可能 | インデックス機能あり |
| リアルタイム編集 | ⭕ 可能 | ❌ 不可 | CLI版はバッチ処理 |
| バッチ処理 | △ 限定的 | ⭕ 優秀 | CLI版は大量処理に最適 |
| CI/CD統合 | △ 限定的 | ⭕ 優秀 | CLI版は完全自動化可能 |
| ファイル添付 | △ 限定的 | ⭕ 可能 | CLI版は標準入力から可能 |
| Web検索 | △ 限定的 | △ 限定的 | 環境依存 |
| 画像生成 | ❌ 不可 | ❌ 不可 | コード中心 |
| データ分析 | △ 限定的 | △ 限定的 | コード内データのみ |
| マルチモーダル | △ 限定的 | △ 限定的 | 主にテキスト・コード |
詳細解説:
Claude Desktop Appの強み:
- 汎用性: コーディング以外のタスクにも対応
- Web検索: 最新の技術情報を取得できる
- ファイル多様性: 画像、PDF、スプレッドシートなど多彩
例: 「このAPIドキュメント(PDF)を読んで、TypeScriptのSDKを設計して」という複合タスクが可能。
Claude Codeの強み:
- コードベース理解: プロジェクト全体の構造を把握(IDE版・CLI版共通)
- 即時反映: IDE版は生成したコードがそのままエディタに
- 差分管理: IDE版は変更箇所が明確で、Acceptが容易
- 自動化: CLI版はCI/CDパイプライン統合で完全自動化
- 大量処理: CLI版は数百ファイルの一括処理も可能
例:
- IDE版: 「この認証ロジックをミドルウェアに切り出して、全エンドポイントに適用して」という複雑なリファクタリングが可能
- CLI版: 「全PRのコードレビューを自動化し、問題があればコメント投稿」という完全自動化が可能
どちらが優秀?
- コード生成の速度: Claude Code IDE版 ≫ Claude Desktop App
- コード理解の深さ: Claude Code ≫ Claude Desktop App(コードベース全体を見れる)
- 汎用性: Claude Desktop App ≫ Claude Code
- 自動化: Claude Code CLI版 ≫≫ その他
4. ワークフロー統合
Claude Desktop App
統合レベル: スタンドアロン(外部ツール)
典型的なワークフロー:
設計フェーズ:
Claude Desktop App → 設計案作成 → 手動でエディタにコピペ → 実装開始
相談フェーズ:
実装中の問題 → Claude Desktop Appに質問 → 回答を参考に手動修正
統合できるツール:
- なし(基本的に独立)
- ファイルシステムとの連携(ファイル添付)
- クリップボード経由でエディタと連携
詳細解説:
Claude Desktop Appは「外部のアドバイザー」という位置づけです。開発環境と直接連携しないため、生成されたコードは手動でコピペする必要があります。
この「手間」が逆にメリットになる場面もあります:
- レビュー機会: コピペ前に内容を確認できる
- 学習効果: コードを読みながら貼り付けることで理解が深まる
- 柔軟性: 必要な部分だけ採用できる
しかし、大量のコード生成や頻繁な修正が必要な場合は、この手間がボトルネックになります。
Claude Code
IDE統合版
統合レベル: IDEネイティブ(完全統合)
典型的なワークフロー:
実装フェーズ:
Cmd+K → 指示 → 差分確認 → Accept → 完了(数秒)
デバッグフェーズ:
エラー選択 → Cmd+K → 「このエラーを修正して」 → 自動修正 → テスト
統合できるツール:
- Git(バージョン管理と連携)
- Linter/Formatter(自動修正と連携)
- Terminal(コマンド実行)
- デバッガ(エラー解析)
- テストランナー(自動テスト)
CLI版
統合レベル: CI/CDパイプライン、自動化スクリプト(完全自動化)
典型的なワークフロー:
# PR自動レビュー
claude-code review --pr $PR_NUMBER > review.md
gh pr comment $PR_NUMBER --body-file review.md
# コード生成自動化
for file in src/**/*.ts; do
claude-code "このファイルにJSDocを追加" < $file > ${file}.new
done
# CI/CDでのテスト生成
claude-code "新規追加された関数のテストを生成" \
--diff origin/main..HEAD \
--output tests/
統合できるツール:
- GitHub Actions / GitLab CI(CI/CD)
- Jenkins / CircleCI(継続的インテグレーション)
- pre-commit hooks(Git フック)
- cron(定期実行)
- Make / npm scripts(ビルドツール)
詳細解説:
IDE統合版はIDEの一部として機能するため、開発ワークフローに完全に統合されます。
強力な統合例(IDE版):
-
Git統合:
- Claude Codeが生成した変更は、Gitのdiffとして即座に確認可能
- コミット前にレビューできる
- 気に入らなければ簡単にRevert
-
Linter統合:
- 生成コードが自動的にLintチェックされる
- エラーがあれば即座に修正指示可能
-
テスト統合:
- 「このテストを通るように実装して」という指示が可能
- Test-Driven Development (TDD) が加速
CLI版はCI/CDパイプラインやスクリプトに統合され、完全自動化を実現します。
強力な統合例(CLI版):
-
GitHub Actions統合:
- name: Auto Review PR run: | claude-code review --pr ${{ github.event.pull_request.number }} \ --context .ai/review-policy.md > review.md gh pr comment ${{ github.event.pull_request.number }} --body-file review.md -
pre-commit hooks統合:
# .git/hooks/pre-commit changed_files=$(git diff --cached --name-only --diff-filter=ACM) claude-code "このdiffをレビューして問題があれば指摘" \ --files $changed_files \ --exit-code-on-issues -
定期実行統合:
# crontab: 毎日コード品質チェック 0 2 * * * cd /project && claude-code audit --full-scan > /reports/$(date +\%Y\%m\%d).md
この統合度の違いが、生産性に大きな差を生みます。
どちらが効率的?
- 単発の設計・相談: Claude Desktop App(切り替え不要)
- 継続的な実装: Claude Code IDE版(統合の恩恵が大きい)
- 大規模な自動化: Claude Code CLI版(完全自動化可能)
5. コンテキスト管理
コンテキスト管理は、AIアシスタントの精度を左右する重要な要素です。
Claude Desktop App
コンテキスト取得方法:
- 手動でファイルを添付
- 会話履歴を参照
- Webページを参照(検索機能)
コンテキストの範囲:
- 1会話あたり: 約200,000トークン(Claude 3.5 Sonnet)
- 複数ファイル添付可能
- 会話履歴を自動保持
コンテキスト管理の手間:
必要なファイルを毎回手動で添付
↓
会話が長くなるとコンテキストが肥大化
↓
新しいセッションで再度添付が必要
詳細解説:
Claude Desktop Appのコンテキスト管理は「手動」が基本です。必要なファイルをドラッグ&ドロップで添付し、会話を進めます。
メリット:
- 明示的: 何を渡したか明確
- 柔軟: 任意のファイルを組み合わせ可能
- 安全: 意図しない情報漏洩を防げる
デメリット:
- 手間: 毎回添付が必要
- 不完全: プロジェクト全体を渡すのは困難
- 忘れやすい: 必要なファイルを忘れると的外れな回答
実例:
❌ Bad: コンテキスト不足
「この関数を最適化して」
→ Claudeは関数だけ見て提案(他のコードとの関連を知らない)
✅ Good: 十分なコンテキスト
「この関数(添付)を、他のモジュール(添付)との整合性を保ちながら最適化して」
→ Claudeは全体を理解して提案
Claude Code
コンテキスト取得方法:
- コードベース全体を自動インデックス
- 開いているファイルを自動認識
- 選択範囲を自動取得
- Gitリポジトリ構造を理解
コンテキストの範囲:
- プロジェクト全体(サイズに依存)
- 依存関係も追跡
- 会話履歴 + コードベース
コンテキスト管理の手間:
初回インデックス(自動)
↓
以降は自動更新
↓
開発者は何もしなくてOK
詳細解説:
Claude Codeの最大の強みは「自動コンテキスト管理」です。プロジェクトを開いた瞬間、裏でコードベース全体がインデックスされ、Claudeはプロジェクト構造を理解します。
メリット:
- 自動: 手間ゼロ
- 完全: プロジェクト全体を理解
- 正確: 依存関係も把握
デメリット:
- 制御困難: 何を渡したか不明瞭
- プライバシー: 意図しないコードも渡る可能性
- パフォーマンス: 大規模プロジェクトでは重い
実例:
✅ 自動コンテキスト活用
「認証ミドルウェアを、既存のUser型と整合させて実装して」
→ Claude CodeはUser型を自動で見つけて、適切に実装
✅ プロジェクト全体理解
「このAPIエンドポイントに認証を追加して」
→ 既存の認証パターンを自動認識し、一貫性のある実装
どちらが優秀?
- コンテキストの完全性: Claude Code ≫ Claude Desktop App
- コンテキストの透明性: Claude Desktop App > Claude Code
- 手間: Claude Code ≪ Claude Desktop App
コンテキストウィンドウの考え方の違い(深掘り)
ここでは、3つのツールが「コンテキストウィンドウ」をどのように扱うか、その哲学的な違いを深く掘り下げます。
コンテキストウィンドウとは?
定義: AIモデルが一度に「見る」ことができる情報の範囲。Claudeの場合、約200,000トークン(≒15万語、≒本1冊分)のテキストを一度に処理できます。
しかし、「何を」「どのように」このウィンドウに詰め込むかが、3つのツールで大きく異なります。
1. Claude Desktop App:会話フロー蓄積型
考え方: 「会話の流れでコンテキストを積み上げる」
┌─────────────────────────────────┐
│ コンテキストウィンドウ (200K) │
├─────────────────────────────────┤
│ [会話1] あなた: 質問A │ ← 古い会話
│ [会話1] Claude: 回答A │
│ [会話2] あなた: 質問B │
│ [会話2] Claude: 回答B │
│ [会話3] 添付ファイル: code.ts │
│ [会話3] あなた: 質問C │ ← 現在
│ [会話3] Claude: 回答C (生成中) │
└─────────────────────────────────┘
特徴:
- 時系列で蓄積: 会話が進むほどコンテキストが増える
- 手動管理: あなたが「何を渡すか」を完全にコントロール
- 会話依存: 過去の会話内容が回答に影響
例: APIクライアントを作る場合
# 会話の流れ
[ターン1] あなた: 「認証APIの仕様を説明します(仕様書添付)」
→ Claude: 仕様を理解
[ターン2] あなた: 「この仕様でTypeScriptのAPIクライアントを設計して」
→ Claude: 設計案を提示(仕様書の内容を参照)
[ターン3] あなた: 「では実装コードを書いて」
→ Claude: コード生成([ターン1]の仕様 + [ターン2]の設計 を参照)
[ターン4] あなた: 「エラーハンドリングを強化して」
→ Claude: 改良版を生成(過去3ターンの文脈を全て参照)
メリット:
- 学習効果: 会話を重ねるごとに理解が深まる
- 柔軟性: 途中で方向転換しやすい
- 透明性: 何を伝えたか明確
デメリット:
- コンテキスト肥大化: 会話が長くなるとウィンドウが満杯に
- 関連情報の欠落: プロジェクト全体は見えない
- リセットコスト: 新セッションで再度説明が必要
実際の問題例:
❌ よくある失敗
[ターン1] 「このコードをレビューして」(file1.ts 添付)
→ Claude: レビュー
[ターン10] 「では別のファイルも直して」(file2.ts の話)
→ Claude: 「file2.ts の内容が分かりません」
理由: file2.ts は添付されていないため、Claudeは見えていない
2. Claude Code IDE版:プロジェクト全体俯瞰型
考え方: 「プロジェクト全体を常に把握した状態で会話」
┌─────────────────────────────────────────┐
│ コンテキストウィンドウ (200K) │
├─────────────────────────────────────────┤
│ [自動取得] │
│ - プロジェクト構造 (src/, tests/, ...) │
│ - 開いているファイル │
│ - 選択中のコード │
│ - 関連する依存ファイル │
│ - Gitの変更履歴 │
│ │
│ [会話] │
│ - あなた: 質問 │
│ - Claude: 回答 │
└─────────────────────────────────────────┘
特徴:
- 自動インデックス: プロジェクトをIDEが自動的に解析
- 関連性推論: 質問に関連するファイルを自動的に含める
- 即時反映: コード変更が即座にコンテキストに反映
例: 同じAPIクライアントを作る場合
// プロジェクト構造
src/
├── api/
│ ├── client.ts // 既存のHTTPクライアント
│ └── types.ts // 型定義
├── auth/
│ └── service.ts // 既存の認証ロジック
└── utils/
└── errors.ts // エラーハンドリング
# IDE統合版の挙動
あなた: 「認証APIのクライアントを実装して」
↓ Claude Code が自動的に認識
1. src/api/client.ts を読む(既存パターンを理解)
2. src/api/types.ts を読む(型定義を理解)
3. src/auth/service.ts を読む(認証フローを理解)
4. src/utils/errors.ts を読む(エラー処理を理解)
→ Claude: プロジェクト全体の既存パターンに沿って実装を生成
結果: 他のコードと一貫性のある、プロジェクトに馴染むコード
メリット:
- 完全性: プロジェクト全体を理解
- 一貫性: 既存パターンに自動的に従う
- 手間ゼロ: 開発者は何も指定しなくてOK
デメリット:
- ブラックボックス: 何が渡されているか不透明
- ノイズ: 無関係なファイルも含まれる可能性
- サイズ制限: 巨大プロジェクトは全て入らない
実際の動作例:
✅ 自動コンテキスト活用
# ケース1: 型の自動認識
あなた: 「Userを作成する関数を書いて」
→ IDE: src/types/user.ts の User型を自動検出
→ Claude: User型に準拠した関数を生成
# ケース2: パターンの自動継承
あなた: 「新しいAPIエンドポイントを追加して」
→ IDE: 既存のエンドポイント実装を自動検出
→ Claude: 既存と同じ構造(認証、エラーハンドリング等)で生成
# ケース3: 依存関係の自動解決
あなた: 「このバグを修正して」(関数Aを選択)
→ IDE: 関数Aが依存する関数B, Cも自動取得
→ Claude: 依存関係を理解した上で修正案を提示
3. Claude Code CLI版:明示的コンテキスト指定型
考え方: 「必要なコンテキストを明示的に指定して実行」
# 基本形
claude-code [コンテキスト指定] [命令]
# 例
claude-code \
--context README.md \ # ドキュメント
--context src/types/ \ # 型定義ディレクトリ
--files src/api/*.ts \ # 対象ファイル
"全APIエンドポイントにレート制限を追加"
┌─────────────────────────────────────────┐
│ コンテキストウィンドウ (200K) │
├─────────────────────────────────────────┤
│ [明示的に指定] │
│ - --context で指定したファイル │
│ - --files で指定した対象ファイル │
│ - 標準入力からのデータ │
│ - --diff で指定した差分 │
│ │
│ [命令] │
│ - コマンドライン引数の命令文 │
└─────────────────────────────────────────┘
特徴:
- 完全制御: 何をコンテキストに含めるか100%制御可能
- 再現性: 同じコマンド = 同じコンテキスト
- パイプライン統合: Unix哲学に基づく合成可能
例: 同じAPIクライアントをCLIで生成
# ステップ1: 設計書を元に型定義を生成
cat docs/api-spec.md | \
claude-code "この仕様からTypeScriptの型定義を生成" \
> src/types/api.ts
# ステップ2: 型定義を元にクライアントを実装
claude-code \
--context src/types/api.ts \
--context src/api/base-client.ts \
"api.tsの型定義に基づいてAPIクライアントを実装" \
> src/api/auth-client.ts
# ステップ3: 既存パターンに従ってテストを生成
claude-code \
--context src/api/auth-client.ts \
--context tests/api/example.test.ts \
"example.test.tsのパターンに従ってauth-clientのテストを生成" \
> tests/api/auth-client.test.ts
メリット:
- 精密性: 必要なものだけを渡せる
- 自動化: スクリプト化・CI/CD統合が容易
- スケーラビリティ: 数百ファイルの一括処理も可能
デメリット:
- 手動指定: 必要なコンテキストを自分で考える必要
- 学習コスト: 適切なコンテキスト設計を学ぶ必要
- 非対話的: フィードバックループがない
実践例: CI/CDでの活用
# .github/workflows/auto-review.yml
name: Auto Review
on: [pull_request]
jobs:
review:
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- uses: actions/checkout@v2
- name: Review PR
run: |
# コンテキスト: レビューポリシー + 変更ファイル
claude-code \
--context .ai/review-policy.md \
--context CONTRIBUTING.md \
--diff origin/main..HEAD \
"このPRを企業のコーディング規約に基づいてレビュー" \
> review.md
# 結果をPRにコメント
gh pr comment ${{ github.event.pull_request.number }} \
--body-file review.md
コンテキストウィンドウ戦略の比較表
| 項目 | Desktop App | Code IDE版 | Code CLI版 |
|---|---|---|---|
| 管理方式 | 手動・会話型 | 自動・俯瞰型 | 明示・指定型 |
| 情報の選択 | あなたが選ぶ | IDEが推論 | あなたが指定 |
| プロジェクト理解 | 部分的 | 完全自動 | 必要な部分のみ |
| コンテキストの透明性 | ⭕ 高い | △ 低い | ⭕ 完全 |
| 設定の手間 | 毎回必要 | ゼロ | 初回設計必要 |
| 再現性 | △ 低い | △ 中程度 | ⭕ 完全 |
| 学習コスト | 低 | 低 | 中〜高 |
| 最適な用途 | 探索的開発 | 実装 | 自動化 |
実践的な使い分け戦略
1. 探索フェーズ(要件不明確)
Claude Desktop App を使用
理由:
- 会話を通じて要件を明確化
- 複数の設計案を検討
- コンテキストを段階的に追加
例:
[会話形式で探索]
あなた: 「認証システムを作りたい。どんな設計が考えられる?」
Claude: 3つの設計案を提示
あなた: 「案2について、セキュリティリスクは?」
Claude: リスク分析
あなた: 「では案2を採用。詳細設計をして」
Claude: 詳細設計を生成
2. 実装フェーズ(設計確定)
Claude Code IDE版 を使用
理由:
- プロジェクト全体を自動的に理解
- 既存コードとの一貫性を保証
- リアルタイムで修正
例:
// IDE内で Cmd+K
あなた: 「設計書通りに認証ミドルウェアを実装して」
// Claude Code が自動的に:
// - 既存のミドルウェアパターンを検出
// - 型定義を読み込み
// - 依存関係を解決
// → 一貫性のある実装を生成
3. 自動化フェーズ(パターン確立)
Claude Code CLI版 を使用
理由:
- 確立したパターンを大量適用
- CI/CDに統合
- 人間の介入なしで実行
例:
# 全コントローラーに同じパターンの認証を追加
for file in src/controllers/*.ts; do
claude-code \
--context src/middleware/auth.ts \
--context "$file" \
"このコントローラーにauth.tsのパターンで認証を追加" \
> "${file}.new"
mv "${file}.new" "$file"
done
コンテキストウィンドウ管理のベストプラクティス
1. Desktop App使用時
✅ Do:
- 関連ファイルを一度にまとめて添付
- 長い会話は定期的に要約を依頼
- 重要な情報は会話の最初に配置
❌ Don't:
- 必要なファイルを後から少しずつ追加(コンテキストが分散)
- 会話が長くなりすぎる(200Kを超えると古い情報が消える)
- 曖昧な質問(コンテキスト不足で的外れな回答)
2. Code IDE版使用時
✅ Do:
- プロジェクト構造を整理(Claude が理解しやすい)
- .cursorignore で不要ファイルを除外
- 明確な命名規則(Claude が関連ファイルを見つけやすい)
❌ Don't:
- 巨大な単一ファイル(コンテキスト圧迫)
- 無秩序なファイル配置(Claude が迷う)
- node_modules を含める(ノイズ)
3. Code CLI版使用時
✅ Do:
- コンテキストファイルをプロジェクトで管理
(例: .ai/context/base.md)
- スクリプト化して再利用
- --context の順序を工夫(重要なものを先に)
❌ Don't:
- 全プロジェクトを --files で指定(200K超過)
- コンテキストなしで実行(曖昧な結果)
- 結果を検証せず自動適用(危険)
コンテキストウィンドウの制限と対処法
問題1: ウィンドウが満杯になる
症状: "コンテキストが大きすぎます" エラー
対処法:
- Desktop App: 新しい会話を開始、要約を活用
- Code IDE版: .cursorignore で不要ファイルを除外
- Code CLI版: --files の範囲を絞る
問題2: 関連情報が漏れる
症状: Claude が「その情報は見当たりません」と回答
対処法:
- Desktop App: 必要なファイルを明示的に添付
- Code IDE版: ファイル名を具体的に指示
- Code CLI版: --context で明示的に指定
問題3: 無関係な情報が多い
症状: Claude の回答が的外れ
対処法:
- Desktop App: 会話をリセット、必要最小限を再添付
- Code IDE版: 具体的なファイル名・行番号を指定
- Code CLI版: --files で対象を絞る
まとめ: コンテキストウィンドウの哲学
Claude Desktop App = 「会話で積み上げる」
→ 柔軟だが手動管理が必要
Claude Code IDE版 = 「全体を常に俯瞰」
→ 自動だが制御が難しい
Claude Code CLI版 = 「必要なものを明示」
→ 精密だが設計が必要
最適な開発フロー:
1. Desktop App で設計(会話型コンテキスト)
↓
2. Code IDE版 で実装(自動コンテキスト)
↓
3. Code CLI版 で自動化(明示コンテキスト)
この三位一体のアプローチで、コンテキストウィンドウを最大限に活用できます。
内部アーキテクチャとメカニズム(技術深掘り)
ここでは、3つのツールがどのように動作しているか、技術的な内部メカニズムを深く掘り下げます。
1. 通信フローとアーキテクチャ
Claude Desktop App の通信フロー
技術的特徴:
-
プロトコル: HTTPS + Server-Sent Events (SSE)
POST https://api.anthropic.com/v1/messages Content-Type: application/json { "model": "claude-3-5-sonnet-20241022", "messages": [...], "stream": true, "max_tokens": 4096 } -
ストリーミング応答:
- トークンごとにリアルタイムで受信
- ユーザーは生成過程を見られる
- 接続が切れても再開可能(Resumable)
-
セッション管理:
- 会話履歴はローカルに保存(SQLite等)
- クラウド同期はオプション
- 各会話に一意のID付与
Claude Code IDE版 の通信フロー
技術的特徴:
-
IDE統合技術:
// Extension API の例 (VS Code) import * as vscode from 'vscode'; // エディタのコンテキスト取得 const document = vscode.window.activeTextEditor?.document; const selection = vscode.window.activeTextEditor?.selection; // Language Server Protocol (LSP) で型情報取得 const typeInfo = await vscode.languages.getHover( document.uri, selection.start ); -
リアルタイムインデックス:
- ファイル変更を監視(File Watcher)
- インクリメンタル更新(変更部分のみ)
- バックグラウンドで再インデックス
-
差分適用メカニズム:
// 差分計算と適用 const diff = calculateDiff(originalCode, generatedCode); await editor.edit(editBuilder => { editBuilder.replace(range, newContent); });
Claude Code CLI版 の通信フロー
技術的特徴:
-
標準入出力処理:
# パイプライン統合 cat input.ts | claude-code "リファクタリング" > output.ts # 内部では標準入力をバッファリング stdin -> buffer -> API -> stdout -
非同期バッチ処理:
// CLI内部の疑似コード (Go言語の例) func processFiles(files []string) { var wg sync.WaitGroup semaphore := make(chan struct{}, 10) // 並列数制限 for _, file := range files { wg.Add(1) go func(f string) { defer wg.Done() semaphore <- struct{}{} // 取得 defer func() { <-semaphore }() // 解放 result := callClaudeAPI(f) writeResult(f, result) }(file) } wg.Wait() } -
API呼び出し最適化:
- リクエストバッチング(複数ファイルをまとめて処理)
- レート制限の自動調整
- リトライ機構(指数バックオフ)
2. コードベースインデックス化の仕組み
インデックス化の技術スタック
ステップ1: 構文解析とAST生成
// Tree-sitter を使った構文解析の例
import Parser from 'tree-sitter';
import TypeScript from 'tree-sitter-typescript';
const parser = new Parser();
parser.setLanguage(TypeScript);
const sourceCode = `
function authenticate(user: User): Promise<Token> {
// 実装
}
`;
const tree = parser.parse(sourceCode);
// AST (Abstract Syntax Tree) を取得
AST の例:
program
├── function_declaration
│ ├── name: "authenticate"
│ ├── parameters
│ │ └── parameter: "user: User"
│ ├── return_type: "Promise<Token>"
│ └── body: { ... }
ステップ2: セマンティック解析
// シンボル情報の抽出
interface SymbolInfo {
name: string;
kind: 'function' | 'class' | 'interface' | 'variable';
location: { file: string; line: number };
signature: string;
dependencies: string[];
documentation?: string;
}
// 例: authenticate 関数の情報
const symbolInfo: SymbolInfo = {
name: "authenticate",
kind: "function",
location: { file: "auth.ts", line: 10 },
signature: "(user: User) => Promise<Token>",
dependencies: ["User", "Token"],
documentation: "ユーザー認証を行う関数"
};
ステップ3: エンベディング生成
# エンベディングモデルでベクトル化
from sentence_transformers import SentenceTransformer
model = SentenceTransformer('all-MiniLM-L6-v2')
# コードの意味をベクトル化
code_text = """
function authenticate(user: User): Promise<Token>
ユーザー認証を行う関数。JWTトークンを返す。
"""
embedding = model.encode(code_text)
# 結果: 384次元のベクトル [0.12, -0.34, 0.56, ...]
ステップ4: ベクトルデータベースに保存
// Chromadb や FAISS を使った例
import { ChromaClient } from 'chromadb';
const client = new ChromaClient();
const collection = await client.createCollection("codebase");
// ベクトルと共にメタデータを保存
await collection.add({
ids: ["auth_authenticate"],
embeddings: [embedding],
metadatas: [{
file: "auth.ts",
function: "authenticate",
signature: "(user: User) => Promise<Token>"
}],
documents: [code_text]
});
ステップ5: セマンティック検索
// ユーザーの質問をベクトル化
const query = "ユーザーログインの処理をしているコードは?";
const queryEmbedding = model.encode(query);
// 類似度検索(コサイン類似度)
const results = await collection.query({
queryEmbeddings: [queryEmbedding],
nResults: 5
});
// 結果:
// 1. authenticate 関数 (類似度: 0.89)
// 2. login 関数 (類似度: 0.85)
// 3. verifyCredentials 関数 (類似度: 0.78)
インデックスの更新戦略
インクリメンタル更新:
// ファイル変更を監視
const watcher = vscode.workspace.createFileSystemWatcher("**/*.ts");
watcher.onDidChange(async (uri) => {
// 変更されたファイルのみ再インデックス
const affectedSymbols = await parseFile(uri);
// 依存関係も更新
const dependents = dependencyGraph.getDependents(uri);
for (const dep of dependents) {
await updateIndex(dep);
}
});
キャッシュ戦略:
interface IndexCache {
files: Map<string, {
hash: string; // ファイルのハッシュ
symbols: Symbol[]; // 抽出されたシンボル
embedding: number[]; // ベクトル
timestamp: number; // 最終更新時刻
}>;
}
// ファイルが変更されていない場合はキャッシュを使用
function shouldReindex(file: string, cache: IndexCache): boolean {
const currentHash = calculateHash(file);
const cached = cache.files.get(file);
return !cached || cached.hash !== currentHash;
}
3. トークン管理の内部処理
トークン化のメカニズム
BPE (Byte Pair Encoding) トークナイザー:
# Claudeが使用するトークナイザーの概念図
text = "function authenticate(user)"
# トークン化のステップ
# 1. サブワード分割
tokens = ["function", " authenticate", "(", "user", ")"]
# 2. トークンIDに変換
token_ids = [1234, 5678, 9012, 3456, 7890]
# 各トークンは約4文字相当
print(f"Total tokens: {len(token_ids)}") # 5 tokens
トークン数の計算:
// 概算式
const estimateTokens = (text: string): number => {
// 英語: 1トークン ≒ 4文字
// 日本語: 1トークン ≒ 1-2文字
// コード: 1トークン ≒ 3-4文字
const englishChars = text.match(/[a-zA-Z0-9]/g)?.length || 0;
const japaneseChars = text.match(/[\u3040-\u309F\u30A0-\u30FF\u4E00-\u9FAF]/g)?.length || 0;
return Math.ceil(englishChars / 4 + japaneseChars / 1.5);
};
コンテキストウィンドウの優先順位付け
interface ContextPriority {
score: number;
content: string;
type: 'current_file' | 'dependency' | 'history' | 'related';
}
// 優先度計算アルゴリズム
function calculatePriority(item: ContextItem): number {
let score = 0;
// 現在開いているファイル: 最高優先度
if (item.type === 'current_file') score += 100;
// 選択範囲: 高優先度
if (item.isSelected) score += 80;
// 直接の依存関係: 中優先度
if (item.type === 'dependency') score += 60;
// セマンティック類似度: 可変
score += item.semanticSimilarity * 50;
// 最近編集: ボーナス
if (item.recentlyEdited) score += 20;
return score;
}
// コンテキストウィンドウに収まるように選択
function selectContext(items: ContextItem[], maxTokens: number = 200000): ContextItem[] {
// 優先度でソート
items.sort((a, b) => calculatePriority(b) - calculatePriority(a));
let totalTokens = 0;
const selected: ContextItem[] = [];
for (const item of items) {
if (totalTokens + item.tokens <= maxTokens) {
selected.push(item);
totalTokens += item.tokens;
} else {
break; // ウィンドウが満杯
}
}
return selected;
}
自動トリミング戦略
// 古い会話を要約して圧縮
async function compressHistory(messages: Message[]): Promise<Message[]> {
if (messages.length < 20) return messages;
// 古いメッセージを要約
const oldMessages = messages.slice(0, -10);
const recentMessages = messages.slice(-10);
const summary = await claudeAPI.summarize({
messages: oldMessages,
instruction: "この会話を3-5文で要約してください"
});
return [
{ role: 'system', content: `過去の会話の要約: ${summary}` },
...recentMessages
];
}
4. キャッシング戦略
Prompt Caching (Anthropic API機能)
// Prompt Caching の活用
const response = await anthropic.messages.create({
model: "claude-3-5-sonnet-20241022",
max_tokens: 1024,
system: [
{
type: "text",
text: "あなたは優秀なプログラマーです。",
cache_control: { type: "ephemeral" } // キャッシュ対象
}
],
messages: [
{
role: "user",
content: [
{
type: "text",
text: largeCodebase, // 巨大なコードベース
cache_control: { type: "ephemeral" } // これもキャッシュ
},
{
type: "text",
text: "このバグを修正して" // 毎回変わる部分
}
]
}
]
});
// 効果:
// - 初回: 通常の処理時間 + トークンコスト
// - 2回目以降: キャッシュヒット → 90%高速化、90%コスト削減
キャッシュの仕組み:
┌─────────────────────────────────────┐
│ リクエスト1 (初回) │
├─────────────────────────────────────┤
│ System Prompt (キャッシュ) ───┐ │
│ Large Codebase (キャッシュ) ──┼─→ [Cache]
│ User Query │ │
└───────────────────────────────┘ │
│
┌─────────────────────────────────────┤
│ リクエスト2 (2回目) │
├─────────────────────────────────────┤
│ System Prompt ←──────────────┐ │
│ Large Codebase ←─────────────┼─── [Cache] (再利用)
│ User Query (新しい) │ │
└─────────────────────────────────────┘
処理時間: 5秒 → 0.5秒
コスト: $1.00 → $0.10
ローカルキャッシュ(IDE版)
interface LocalCache {
// インデックスキャッシュ
indexCache: Map<string, {
fileHash: string;
symbols: Symbol[];
embeddings: number[][];
timestamp: number;
}>;
// 応答キャッシュ
responseCache: Map<string, {
query: string;
response: string;
contextHash: string; // コンテキストのハッシュ
timestamp: number;
}>;
}
// キャッシュキーの生成
function generateCacheKey(query: string, context: string[]): string {
const contextHash = crypto
.createHash('sha256')
.update(context.join(''))
.digest('hex');
return `${query}:${contextHash}`;
}
// キャッシュの活用
async function getCachedResponse(query: string, context: string[]): Promise<string | null> {
const key = generateCacheKey(query, context);
const cached = localCache.responseCache.get(key);
if (cached && Date.now() - cached.timestamp < 3600000) { // 1時間以内
return cached.response;
}
return null;
}
5. パフォーマンス最適化
並列処理戦略
Desktop App: ストリーミング + 非同期レンダリング
// ストリーミング応答の処理
async function* streamResponse(request: APIRequest) {
const stream = await fetch(API_URL, {
method: 'POST',
body: JSON.stringify({ ...request, stream: true })
});
const reader = stream.body.getReader();
const decoder = new TextDecoder();
while (true) {
const { done, value } = await reader.read();
if (done) break;
const chunk = decoder.decode(value);
yield chunk; // 即座にUIに反映
}
}
// UI更新 (React の例)
function ChatMessage({ streamingContent }: Props) {
const [content, setContent] = useState('');
useEffect(() => {
const stream = streamResponse(request);
for await (const chunk of stream) {
setContent(prev => prev + chunk); // リアルタイム更新
}
}, []);
return <div>{content}</div>;
}
IDE版: マルチスレッド処理
// Web Worker でインデックス化を並列実行
// main.ts
const worker = new Worker('indexer.worker.js');
worker.postMessage({
type: 'index',
files: ['file1.ts', 'file2.ts', 'file3.ts']
});
worker.onmessage = (event) => {
const { type, data } = event.data;
if (type === 'indexed') {
updateIndex(data);
}
};
// indexer.worker.js
self.onmessage = async (event) => {
const { files } = event.data;
// 並列でファイルを解析
const results = await Promise.all(
files.map(file => parseAndIndex(file))
);
self.postMessage({ type: 'indexed', data: results });
};
CLI版: ワーカープール
// Go言語での並列処理の例
type WorkerPool struct {
workers int
jobs chan Job
results chan Result
}
func NewWorkerPool(workers int) *WorkerPool {
return &WorkerPool{
workers: workers,
jobs: make(chan Job, 100),
results: make(chan Result, 100),
}
}
func (wp *WorkerPool) Start() {
for i := 0; i < wp.workers; i++ {
go wp.worker(i)
}
}
func (wp *WorkerPool) worker(id int) {
for job := range wp.jobs {
result := processFile(job) // Claude APIを呼び出し
wp.results <- result
}
}
// 使用例
pool := NewWorkerPool(10) // 10並列
pool.Start()
for _, file := range files {
pool.jobs <- Job{File: file}
}
インクリメンタル更新
// Git diff を使った効率的な更新
import simpleGit from 'simple-git';
const git = simpleGit();
async function getChangedFiles(): Promise<string[]> {
// 最後のコミット以降の変更を取得
const status = await git.status();
return [
...status.modified,
...status.created,
...status.renamed.map(r => r.to)
];
}
async function incrementalUpdate() {
const changedFiles = await getChangedFiles();
// 変更されたファイルのみ再インデックス
for (const file of changedFiles) {
await updateFileIndex(file);
// 依存関係のあるファイルも更新
const dependents = dependencyGraph.get(file);
for (const dep of dependents) {
await updateFileIndex(dep);
}
}
}
レート制限の自動調整
class RateLimiter {
private tokens: number;
private maxTokens: number;
private refillRate: number; // tokens per second
private lastRefill: number;
constructor(maxTokens: number, refillRate: number) {
this.tokens = maxTokens;
this.maxTokens = maxTokens;
this.refillRate = refillRate;
this.lastRefill = Date.now();
}
async acquire(): Promise<void> {
// トークンを補充
const now = Date.now();
const elapsed = (now - this.lastRefill) / 1000;
this.tokens = Math.min(
this.maxTokens,
this.tokens + elapsed * this.refillRate
);
this.lastRefill = now;
if (this.tokens >= 1) {
this.tokens -= 1;
return;
}
// トークンが不足している場合は待機
const waitTime = (1 - this.tokens) / this.refillRate * 1000;
await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, waitTime));
this.tokens = 0;
}
}
// 使用例
const limiter = new RateLimiter(50, 5); // 50リクエスト/秒、5リクエスト/秒で補充
for (const file of files) {
await limiter.acquire(); // レート制限を遵守
await processFile(file);
}
6. データフローの全体像
Desktop App のデータフロー
[あなた]
↓ メッセージ入力
[Desktop App UI]
↓ イベント
[Application Layer]
↓ HTTP Request (JSON)
[Network Layer] ←─ TLS/SSL暗号化
↓
[Anthropic API Gateway]
↓ ロードバランシング
[Claude Model (複数GPU)]
↓ 推論
[Response Generator]
↓ SSE Stream
[Network Layer]
↓ 復号化
[Desktop App]
↓ レンダリング
[UI更新] → [あなた] リアルタイム表示
IDE版 のデータフロー
[あなた] Cmd+K
↓
[IDE Core]
↓ イベント
[Claude Extension]
├─→ [Local Index DB] コンテキスト取得
│ ↓
└─→ [Context Builder] コンテキスト構築
↓
[API Client]
├─→ [Cache Layer] キャッシュチェック
│ ↓ ミス
└─→ [HTTP Client] リクエスト送信
↓
[Anthropic API]
↓
[Response] ストリーミング
↓
[Diff Generator] 差分計算
↓
[Editor API] 適用
↓
[UI] 差分表示 → [あなた] Accept/Reject
CLI版 のデータフロー
[CI/CD Pipeline / Script]
↓ シェルコマンド
[CLI Binary]
↓
[Args Parser] コマンドライン引数解析
├─→ [File Reader] --context ファイル読込
├─→ [Stdin Reader] 標準入力読込
└─→ [Git Reader] --diff 差分読込
↓
[Context Aggregator] コンテキスト集約
↓ (200K以下に圧縮)
[API Client]
├─→ [Retry Logic] エラー時リトライ
└─→ [Rate Limiter] レート制限遵守
↓
[Anthropic API] バッチリクエスト
↓
[Response Parser]
↓
[Output Formatter] JSON/Markdown/Diff
↓
[Stdout / File] 結果出力
↓
[CI/CD] 次のステップへ
まとめ: 技術的な違い
| 技術要素 | Desktop App | Code IDE版 | Code CLI版 |
|---|---|---|---|
| 通信方式 | SSE (ストリーミング) | WebSocket + SSE | HTTP (バッチ) |
| コンテキスト取得 | 手動アップロード | 自動インデックス | 明示的指定 |
| キャッシング | Prompt Cache | Prompt + Local Cache | Prompt Cache |
| 並列処理 | 非同期UI更新 | Worker Thread | Process Pool |
| インデックス技術 | なし | AST + Embedding + Vector DB | なし |
| レート制限 | 自動 | 自動 + ローカル調整 | 手動調整可能 |
| レイテンシ | 低(ストリーミング) | 最低(ローカルキャッシュ) | 中(バッチ) |
内部メカニズムの理解が重要な理由:
- パフォーマンス最適化: ボトルネックを理解して最適化できる
- コスト削減: キャッシングを活用してAPI呼び出しを削減
- トラブルシューティング: 問題が起きた時に原因を特定しやすい
- 高度な活用: 仕組みを理解して、より効果的に使いこなせる
これらの内部メカニズムを理解することで、3つのツールをより戦略的に使い分けられるようになります。
6. 料金・プラン
Claude Desktop App
料金プラン:
| プラン | 月額 | 特徴 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 制限あり(メッセージ数上限) |
| Pro | $20 | 5倍のメッセージ上限 |
| Team | $25/人 | チーム機能、優先アクセス |
| Enterprise | 要相談 | カスタム機能、SLA保証 |
制約:
- Free: 1日あたり約30-50メッセージ(変動あり)
- Pro: 1日あたり約150-200メッセージ
- レート制限あり(連続送信に制限)
Claude Code
料金プラン(IDE依存):
Cursorの例:
| プラン | 月額 | 特徴 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 制限あり |
| Pro | $20 | Claude Sonnet 500リクエスト/月 |
| Business | $40 | 無制限 + 優先サポート |
Continueの例(VS Code拡張):
- 無料: 自分のClaude API Keyを使用
- コスト: 使用量に応じた従量課金(Anthropic直接)
制約:
- プラン毎にリクエスト数上限
- 大規模コードベースでは消費が早い
- IDE毎に異なる料金体系
詳細解説:
Claude Desktop Appの料金は非常にシンプルです。Pro版で$20/月を払えば、ほとんどのユースケースに対応できます。
Claude Codeの料金は複雑です。IDEベンダーがClaude APIを仲介するため、IDE側のサブスクリプションが必要になります。
コスパ比較:
個人開発者(月50時間):
- Claude Desktop App Pro: $20(十分)
- Cursor Pro: $20(軽いコードなら十分)
- Cursor Business: $40(大規模プロジェクトで安心)
ヘビーユーザー(月100時間以上):
- Claude Desktop App Pro: $20(制限に引っかかる可能性)
- Cursor Business: $40(無制限で安心)
- Continue + API Key: 使用量次第($50-100)
どちらがコスパ良い?
- 汎用用途: Claude Desktop App Pro($20で広範囲)
- コーディング特化: Cursor Pro($20で効率的)
- ヘビーユーザー: Cursor Business($40で無制限)
7. パフォーマンスと制約
Claude Desktop App
応答速度:
- テキスト生成: 高速(ストリーミング)
- コード生成: 高速
- ファイル分析: 中速(サイズ依存)
制約:
- ファイルサイズ制限: 1ファイルあたり約10MB
- 同時添付数: 約20ファイル
- 会話長: 約200,000トークン
- レート制限: 連続送信に制限あり
パフォーマンスボトルネック:
- 大量のファイル添付時
- 非常に長い会話履歴
- ピークタイム(混雑時)
Claude Code
応答速度:
- インライン補完: 非常に高速(1-2秒)
- コード生成: 高速
- 大規模リファクタリング: 中速(範囲依存)
制約:
- コードベースサイズ: プラン依存(数万~数十万行)
- 同時編集ファイル数: 通常10-20ファイル
- インデックス時間: 初回数分、更新は数秒
- リクエスト数: プラン毎の上限あり
パフォーマンスボトルネック:
- 非常に大規模なコードベース(10万行超)
- 複雑な依存関係の解析
- リクエスト数上限到達
詳細解説:
Claude Desktop Appのパフォーマンスは安定しています。単一の会話であれば、ほとんど遅延を感じません。ただし、複数の大きなファイルを添付すると、初回分析に10-30秒かかることがあります。
Claude Codeのパフォーマンスは「体感速度」が非常に速いです。Cmd+Kを押してから差分が表示されるまで、通常1-3秒。この速度が、実装フェーズの生産性を大きく向上させます。
実測例(参考値):
| タスク | Claude Desktop App | Claude Code |
|---|---|---|
| 単純な関数生成 | 3-5秒 | 1-2秒 |
| 複雑なクラス生成 | 10-15秒 | 5-8秒 |
| リファクタリング(10ファイル) | 手動コピペ含め5-10分 | 30秒-1分 |
| プロジェクト全体理解 | 不可能 | 初回数分 |
どちらが速い?
- 単発の質問: ほぼ互角
- 継続的な実装: Claude Code ≫≫ Claude Desktop App(手動コピペの時間差)
8. セキュリティとプライバシー
Claude Desktop App
データの扱い:
- 会話内容: Anthropicのサーバーに送信
- 添付ファイル: 一時的に保存、処理後削除
- 会話履歴: クラウドに保存(アカウント紐付け)
セキュリティ機能:
- HTTPS通信(暗号化)
- ログイン認証(OAuth)
- 会話履歴の手動削除可能
プライバシー懸念:
- 機密情報を含むファイルを添付する際は注意
- 会話履歴がクラウドに残る
- Anthropicのプライバシーポリシーに依存
Enterprise向け機能:
- データ保持期間のカスタマイズ
- SLA保証
- 専用サポート
Claude Code
データの扱い:
- コードベース: ローカルでインデックス or クラウド送信(IDE依存)
- 編集内容: Anthropic/IDEベンダーのサーバーに送信
- 会話履歴: IDE側で管理
セキュリティ機能:
- ローカル処理オプション(IDE依存)
- .gitignore連携(機密ファイル除外)
- プロジェクト単位の管理
プライバシー懸念:
- コードベース全体が外部サーバーに送信される可能性
- 機密情報の自動送信リスク
- IDEベンダー + Anthropic の2箇所にデータ
Enterprise向け機能(Cursor Businessなど):
- オンプレミス展開オプション
- データ残留ゼロ保証
- 監査ログ
詳細解説:
Claude Desktop Appのセキュリティは「手動コントロール」が基本です。何を送信するかは開発者が明示的に決定します。
ベストプラクティス:
✅ DO:
- 機密情報はマスキングしてから添付
- API Keyやパスワードは削除してから送信
- 定期的に会話履歴をクリーンアップ
❌ DON'T:
- 本番環境のデータをそのまま添付
- 顧客情報を含むファイルを送信
Claude Codeのセキュリティは「自動」が前提のため、より注意が必要です。
ベストプラクティス:
✅ DO:
- .gitignoreを適切に設定(機密ファイル除外)
- .env.localなど機密設定は除外
- プロジェクト単位でClaude Codeを有効化
❌ DON'T:
- 全てのプロジェクトで無条件に有効化
- 顧客プロジェクトで無制限に使用
どちらが安全?
- コントロール性: Claude Desktop App > Claude Code
- 自動除外機能: Claude Code > Claude Desktop App(.gitignore連携)
- Enterprise対応: 両者とも対応あり
9. 適したユースケース
Claude Desktop App
最適なユースケース:
-
プロジェクト初期の設計フェーズ
「このアプリのアーキテクチャを設計して」 「技術スタックの選定理由を教えて」 「データモデルを設計して」 -
技術調査・学習
「GraphQLとRESTの違いを説明して」 「この新しいライブラリの使い方を教えて」 -
ドキュメント作成
「このAPIのドキュメントを書いて」 「READMEを作成して」 「技術ブログ記事を書いて」 -
コードレビュー
「このコード(添付)のセキュリティリスクを指摘して」 「パフォーマンスの改善点を提案して」 -
データ分析・変換
「このCSVを分析して」 「JSONをYAMLに変換して」 -
非コーディングタスク
「プロジェクト提案書を作成して」 「会議の議事録をまとめて」
Claude Code
IDE統合版の最適なユースケース:
-
新機能の実装
Cmd+K: 「ユーザー認証機能を実装して」 → 複数ファイルに渡る実装を自動生成 -
バグ修正
エラー選択 + Cmd+K: 「このバグを修正して」 → 即座に修正案を適用 -
リファクタリング
「この関数を3つのモジュールに分割して」 → プロジェクト全体の整合性を保ちながらリファクタ -
テスト作成
「この関数のユニットテストを書いて」 → テストファイルを自動生成 -
コード補完・提案
コメント: // ユーザーをメールで検索する関数 → Claude Codeが自動で実装提案 -
ドキュメント生成(コード内)
「この関数にJSDocコメントを追加して」 → 即座にコメント挿入
CLI版の最適なユースケース:
-
PR自動レビュー
# GitHub Actionsで自動実行 claude-code review --pr $PR_NUMBER \ --context .ai/review-policy.md \ --output review.md -
コード品質監査
# 定期実行でコードベース全体をチェック claude-code audit \ --include "src/**/*.ts" \ --rules .ai/quality-rules.md \ --format json > audit-report.json -
ドキュメント自動生成
# 全APIエンドポイントのドキュメント生成 claude-code generate-docs \ --source "src/api/**/*.ts" \ --output docs/api/ -
マイグレーション自動化
# 大量ファイルの一括変換 find src -name "*.js" | while read file; do claude-code "ES5からES6+に変換" < "$file" > "${file%.js}.mjs" done -
テストカバレッジ向上
# テストが無い関数を自動検出してテスト生成 claude-code generate-missing-tests \ --coverage-report coverage.json \ --output tests/auto/ -
セキュリティスキャン
# 定期的なセキュリティチェック claude-code security-scan \ --severity high \ --include "src/**" \ --exclude "test/**" > security-report.md
詳細解説:
使い分けの鉄則:
設計・相談 → Claude Desktop App
実装・修正 → Claude Code IDE版
自動化・CI/CD → Claude Code CLI版
実例: 新機能開発の流れ
1. 設計フェーズ(Claude Desktop App)
「決済機能のアーキテクチャを設計して」
→ 全体設計、データモデル、API設計
2. 実装フェーズ(Claude Code IDE版)
Cmd+K: 「決済サービスを実装して」
→ 実際のコード生成・編集
3. レビューフェーズ(Claude Desktop App)
実装したコードを添付: 「セキュリティリスクを指摘して」
→ 客観的なレビュー
4. 修正フェーズ(Claude Code IDE版)
指摘箇所を選択 + Cmd+K: 「この脆弱性を修正して」
→ 即座に修正
5. 自動化フェーズ(Claude Code CLI版)
# CI/CDでPR自動レビュー設定
claude-code review --pr $PR_NUMBER --context .ai/security-policy.md
→ 以降のPRは自動レビュー
どちらを使うべき?
- 「何を作るか」を考える: Claude Desktop App
- 「どう作るか」を実装する: Claude Code IDE版
- 「どう自動化するか」を実現する: Claude Code CLI版
- 三位一体で使うのが最も効率的
10. 学習コストとオンボーディング
Claude Desktop App
学習曲線:
時間
↑
| ┌─────── 安定期
| /
| /
| /
| /
|/
└─────────────────→ 習熟度
初日 1週間 1ヶ月
習得時間:
- 基本操作: 10分
- 効果的な質問方法: 1週間
- 高度な活用: 1ヶ月
学習リソース:
- 公式ドキュメント
- 内蔵のサンプルプロンプト
- コミュニティフォーラム
Claude Code
IDE統合版の学習曲線:
時間
↑
| ┌─── 安定期
| /
| /
| /
| /
| /
| /
|/
└─────────────────→ 習熟度
初日 1週間 2週間 1ヶ月
IDE統合版の習得時間:
- 基本操作(Cmd+K): 30分
- IDEショートカット: 1週間
- プロジェクト全体活用: 2週間
- 高度なワークフロー: 1ヶ月
CLI版の習得時間:
- 基本コマンド実行: 15分
- スクリプト統合: 1-2時間
- CI/CD統合: 半日
- 高度な自動化: 1週間
学習リソース:
- IDE統合版: IDE内チュートリアル、ビデオデモ、コミュニティベストプラクティス
- CLI版: コマンドラインヘルプ(
claude-code --help)、公式ドキュメント、サンプルスクリプト
詳細解説:
Claude Desktop Appの学習は非常にシンプルです。「質問を入力→回答を読む」という直感的なフローなので、誰でもすぐに使い始められます。
難しいのは「良い質問の仕方」を学ぶことです:
❌ 悪い質問:
「良いコードを書いて」
→ 曖昧すぎて、期待と違う回答
✅ 良い質問:
「TypeScriptで、ユーザー認証APIを実装して。JWT使用、エラーハンドリング必須、テストコード付き」
→ 具体的で、期待通りの回答
Claude Code IDE統合版の学習は、IDE操作との組み合わせが必要です。Cmd+K, Cmd+Lなどのショートカットを覚え、差分の承認フローに慣れる必要があります。
最初の1週間は「手動コピペの方が早い」と感じるかもしれませんが、2週間目以降は圧倒的にClaude Code IDE版が速くなります。
Claude Code CLI版の学習は、シェルスクリプトやCI/CDに慣れている人にとっては非常に直感的です。基本的なコマンドは数分で習得でき、既存のスクリプトやパイプラインに統合するのも簡単です。ただし、最適な引数やコンテキスト設定を学ぶには実践が必要です。
どちらが簡単?
- 初心者: Claude Desktop App(すぐ使える)
- 中級者(IDE中心): Claude Code IDE版(IDEに慣れていればスムーズ)
- 中級者(自動化志向): Claude Code CLI版(シェルスクリプトに慣れていれば即戦力)
使い分けガイド
ここまでの比較を踏まえて、実践的な使い分けガイドを提供します。
シーン別推奨
| シーン | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| プロジェクト設計 | Claude Desktop App | 自由な発想、図表作成 |
| 技術選定 | Claude Desktop App | Web検索機能、比較分析 |
| API設計 | Claude Desktop App | ドキュメント作成、レビュー |
| コーディング | Claude Code | リアルタイム実装、差分管理 |
| デバッグ | Claude Code | エラー箇所の即座修正 |
| リファクタリング | Claude Code | コードベース全体理解 |
| コードレビュー | Claude Desktop App | 客観的視点、セキュリティ分析 |
| ドキュメント作成 | Claude Desktop App | Markdown編集、画像添付 |
| テスト作成 | Claude Code | 既存コードと連携 |
| 学習・調査 | Claude Desktop App | Web検索、詳細説明 |
開発フェーズ別推奨
フェーズ別詳細:
-
企画フェーズ → Claude Desktop App
- 要件整理、市場調査、競合分析
-
設計フェーズ → Claude Desktop App
- アーキテクチャ設計、API設計、データモデル設計
-
実装フェーズ → Claude Code
- コード生成、実装、コンポーネント作成
-
テストフェーズ → Claude Code
- ユニットテスト、統合テスト作成
-
デバッグフェーズ → Claude Code
- バグ修正、パフォーマンス最適化
-
リリースフェーズ → Claude Desktop App
- リリースノート作成、ドキュメント更新
開発者レベル別推奨
初心者(経験1年未満)
推奨: Claude Desktop App中心
理由:
- 学習に最適(詳細な説明)
- 自分のペースで進められる
- コードを読みながら学習できる
使い方:
1. Claude Desktop Appで基礎を学ぶ
2. 生成されたコードを理解しながらコピペ
3. 徐々にClaude Codeも併用
中級者(経験1-3年)
推奨: 両方をバランス良く使用
理由:
- 設計力とコーディング速度を両立
- それぞれの強みを活かせる
使い方:
1. Claude Desktop Appで設計・相談
2. Claude Codeで実装・修正
3. Claude Desktop Appでレビュー
上級者(経験3年以上)
推奨: Claude Code中心、Claude Desktop Appを補助的に
理由:
- 実装速度最優先
- アーキテクチャは自分で決められる
使い方:
1. 自分で設計
2. Claude Codeで高速実装
3. 必要に応じてClaude Desktop Appで深い相談
プロジェクト規模別推奨
小規模(個人・PoC)
推奨: Claude Desktop App中心
理由:
- 設計から実装まで一人で完結
- コピペの手間も許容範囲
- コスト最小(Pro版で十分)
中規模(チーム5-20人)
推奨: Claude Code中心、Claude Desktop Appも併用
理由:
- チーム全体の実装速度が重要
- コードベース全体の理解が必要
- 一貫性のある実装
大規模(チーム20人以上)
推奨: Claude Code必須、Claude Desktop Appも標準装備
理由:
- 実装速度がプロジェクト成功の鍵
- コードベースが巨大で手動は不可能
- Enterprise契約で両方使える
実践的なワークフロー例
ワークフロー1: 新機能開発(フルスタック)
シーン: ユーザー管理機能の追加(API + フロントエンド)
ステップ:
1. 設計(Claude Desktop App - 30分)
「ユーザー管理機能の設計を提案して。
- RESTful API
- React + TypeScript フロントエンド
- PostgreSQL
- JWT認証」
→ 全体アーキテクチャ、APIエンドポイント、データモデル設計
2. バックエンド実装(Claude Code - 2時間)
Cmd+K: 「User APIエンドポイントを実装して」
→ /api/users のCRUD実装
Cmd+K: 「JWT認証ミドルウェアを実装して」
→ 認証機能実装
3. フロントエンド実装(Claude Code - 2時間)
Cmd+K: 「ユーザー一覧コンポーネントを実装して」
→ Reactコンポーネント生成
4. テスト作成(Claude Code - 1時間)
Cmd+K: 「このAPIのテストを書いて」
→ Jest/Supertest テスト生成
5. レビュー(Claude Desktop App - 30分)
実装コードを添付: 「セキュリティとパフォーマンスをレビューして」
→ 問題点の指摘と改善提案
6. 修正(Claude Code - 30分)
指摘箇所を選択 + Cmd+K: 「この問題を修正して」
→ 即座に修正
総時間: 約6.5時間(従来の半分以下)
ワークフロー2: レガシーコードのリファクタリング
シーン: 5000行の古いJavaScriptコードをTypeScript化
ステップ:
1. 分析(Claude Desktop App - 1時間)
コード全体を添付: 「このコードの構造を分析して、TypeScript化の戦略を提案して」
→ リファクタリング計画作成
2. 段階的移行(Claude Code - 8時間)
Phase 1: 型定義作成
Cmd+K: 「このモジュールの型定義を作成して」
Phase 2: 関数単位で移行
ファイル選択 + Cmd+K: 「TypeScriptに変換して」
Phase 3: テスト追加
Cmd+K: 「変換した関数のテストを作成して」
3. 検証(Claude Desktop App - 30分)
移行後のコードを添付: 「型安全性とバグのリスクを評価して」
4. 最終調整(Claude Code - 1時間)
指摘箇所を修正
総時間: 約10.5時間(従来の1/3)
ワークフロー3: バグ修正(緊急)
シーン: 本番で発生したバグの緊急修正
ステップ:
1. 原因分析(Claude Desktop App - 10分)
エラーログとコードを添付: 「このエラーの原因を特定して」
→ 原因の特定と修正方針
2. 修正(Claude Code - 5分)
問題箇所を選択 + Cmd+K: 「このバグを修正して」
→ 即座に修正案適用
3. テスト(Claude Code - 5分)
Cmd+K: 「この修正のテストを書いて」
→ 回帰テスト作成
4. レビュー(Claude Desktop App - 5分)
修正内容を添付: 「他の影響がないか確認して」
→ 副作用の確認
総時間: 約25分(従来の1/4)
よくある質問
Q1: 両方契約する必要がありますか?
A: 用途によります。
- コーディング中心: Claude Codeだけで十分
- 汎用的に使いたい: Claude Desktop Appだけで十分
- プロフェッショナル開発: 両方契約がベスト
コスト: Claude Desktop App Pro ($20) + Cursor Pro ($20) = $40/月
→ 生産性向上を考えると十分にペイする
Q2: Claude Desktop AppとClaude.ai(Web版)の違いは?
A: 機能はほぼ同じですが、Claude Desktop Appの方が:
- ローカルファイルへのアクセスが容易
- オフライン時の履歴閲覧可能
- ネイティブアプリの快適さ
Web版でも十分な場合もあります。
Q3: Claude CodeはCursorだけですか?
A: いいえ。IDE統合版とCLI版があります:
IDE統合版:
- Windsurf(Codeium製)
- Continue(VS Code/JetBrains拡張)
- その他Claude API対応エディタ
Cursorが最も統合が深いですが、他でも十分使えます。
CLI版:
- ターミナルから直接利用
- IDEに依存しない
- CI/CDパイプラインに統合可能
Q4: セキュリティが心配です。企業で使えますか?
A: Enterprise版を推奨します:
- データ保持期間のカスタマイズ
- SLA保証
- 専用サポート
- オンプレミスオプション(IDE依存)
機密プロジェクトでは、適切なセキュリティポリシーと併用してください。
Q5: どちらから始めるべきですか?
A: Claude Desktop Appから始めることを推奨します。
理由:
- 学習コストが低い
- 汎用的に使える
- Claude全般の使い方を学べる
慣れたら、以下の順序で導入すると効率が大幅に向上します:
- Claude Code IDE版(実装を加速)
- Claude Code CLI版(自動化を推進)
Q6: 無料版でも使えますか?
A: 両方とも無料版がありますが、制限があります:
- Claude Desktop App Free: 1日30-50メッセージ(軽い用途ならOK)
- Cursor Free: 月50リクエスト(お試しレベル)
本格的に使うなら有料版を推奨します。
結論
両者の本質的な違い(まとめ)
Claude Desktop App:
- 汎用AIアシスタント
- 思考・相談・設計に最適
- スタンドアロンで柔軟
- 学習コストが低い
Claude Code:
- 専用コーディングアシスタント
- IDE統合版: 実装・修正・テストに最適
- CLI版: 自動化・CI/CD統合に最適
- IDE/ターミナルから即座に利用
- 実装・自動化フェーズで圧倒的
最適な選択は?
シンプルな答え: 両方使うのがベスト
ただし、予算や用途に応じた選択も合理的です:
Claude Desktop App単体で十分な人:
- 個人開発者(コーディング頻度が低い)
- 非開発者(文章作成、分析メイン)
- 学生(学習・調査メイン)
Claude Code単体で十分な人:
- プロフェッショナル開発者(コーディングがメイン)
- 設計は自分でできる中級者以上
- IDEから離れたくない人
- CI/CD自動化を進めたいDevOpsエンジニア
両方使うべき人:
- フルスタック開発者
- プロジェクトリーダー
- チームで開発する人
- 生産性を最大化したい人
使い分けの鉄則(再掲)
考える・相談する → Claude Desktop App
作る・直す・試す → Claude Code IDE版
自動化・CI/CD統合 → Claude Code CLI版
レビュー・確認する → Claude Desktop App
大量ファイルの一括処理 → Claude Code CLI版
この使い分けを徹底することで、開発効率は2-3倍になります。
最後に
AIアシスタントの選択は、単なる「ツール選び」ではありません。あなたの開発スタイルを決定する重要な決断です。
Claude Desktop App、Claude Code IDE版、Claude Code CLI版——それぞれが異なる強みを持ち、異なる場面で輝きます。三者を理解し、適切に使い分けることで、あなたの開発は次のレベルに到達します。
推奨導入順序:
- まずはClaude Desktop Appから始める(学習コストが低い)
- 慣れたらClaude Code IDE版を導入(実装を加速)
- さらにClaude Code CLI版でCI/CDを自動化(チーム全体の効率化)
三位一体の力を借りて、より良いソフトウェアを、より速く、より楽しく作りましょう。