はじめに
OpenClaw は、2025年末の公開から約60日で GitHub スター数 250k を突破し、React を抜いて GitHub 史上最多スターのソフトウェアプロジェクトになった OSS AI アシスタントです。2026年3月時点でスター数は 321k を超えています。
この急成長には理由があります。
- ローカルファースト: データはすべて自分のマシンに Markdown ファイルとして保存される
- チャネル統合: WhatsApp・Slack・Discord・Telegram・iMessage など 50 以上のメッセージングアプリから操作できる
- モデル非依存: Anthropic・OpenAI・Ollama(ローカルモデル)など、好きな LLM を選べる
- MIT ライセンス: 商用利用を含め自由に使える
さらに、2026年3月17日の NVIDIA GTC 2026 で、Jensen Huang CEO が「NemoClaw」を発表しました。OpenClaw をベースにエンタープライズ向けのセキュリティ・ガードレールを追加したもので、OSS コミュニティとエンタープライズの両輪で開発が進む体制になっています。
公式ドキュメントには日本語版(docs.openclaw.ai/ja-JP)が用意されていますが、実践的なセットアップ手順をステップバイステップで解説した日本語記事はまだ少ない状況です。Control UI の i18n 対応も日本語は未サポート(対応済みは en・zh-CN・zh-TW・pt-BR・de・es の6言語以上)です。
この記事では、OpenClaw のインストールから日本語で使うための設定、実際に動かすところまでを一通りカバーします。
OpenClaw のアーキテクチャや設計思想を知りたい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
- 3ヶ月で23万スターを獲得したAIアシスタント「OpenClaw」の全貌 ── 4層アーキテクチャとpi-mono基盤の解説
- OpenClaw深掘り① インターフェース層 ── 26+チャネルを束ねるアダプターパターンの設計
OpenClaw のアーキテクチャ
設定の前にアーキテクチャを把握しておくと、トラブル時に切り分けがしやすくなります。
- Gateway: 常駐する Node.js サービスで、すべてのやり取りのハブになる
- Agent: LLM とのやり取り、ツール実行を担当する。複数エージェントの同時運用も可能
- Skills: シェルコマンド実行やブラウザ操作など、エージェントの能力を拡張するアドオン
- Channels: メッセージングアプリとの接続を担当する
前提条件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| OS | macOS / Linux / Windows(WSL2 経由) |
| Node.js | v22.16 以上(v24 推奨) |
| LLM API キー | Anthropic / OpenAI / OpenRouter のいずれか(Ollama ならローカルで完結) |
Node.js が未インストールの場合は、ワンライナーインストーラーが自動でインストールしてくれます。
インストール
方法1: ワンライナー(推奨)
Node.js を含む依存関係を自動でインストールしてくれる方法です。
curl -fsSL https://get.openclaw.ai | bash
方法2: npm / pnpm
Node.js がすでにインストールされている場合はこちらが手軽です。
# npm の場合
npm install -g openclaw@latest
# pnpm の場合
pnpm add -g openclaw@latest
npm のグローバル bin ディレクトリが PATH に含まれていない場合、openclaw コマンドが見つからないことがあります。その場合は ~/.zshrc や ~/.bashrc に以下を追加してみてください。
export PATH="$(npm prefix -g)/bin:$PATH"
方法3: ソースからビルド
最新の開発版を使いたい場合はソースからビルドできます。
git clone https://github.com/openclaw/openclaw.git
cd openclaw
npm install
npm run build
npm start
macOS での注意点
macOS で sharp ライブラリのインストールに失敗する場合があります。Xcode Command Line Tools がインストールされていることを確認してみてください。
xcode-select --install
初期セットアップ(オンボーディングウィザード)
インストールが完了したら、オンボーディングウィザードを実行します。
openclaw onboard --install-daemon
ウィザードでは以下の設定を対話形式で進めます。
- アシスタント名の設定 — エージェントに好きな名前を付ける
- セットアップモードの選択 — QuickStart(デフォルト設定で高速)か Advanced(細かく制御)を選ぶ
- AI プロバイダーの選択 — Anthropic / OpenAI / Ollama から選ぶ
- API キーの入力 — 選択したプロバイダーの API キーを入力する
- モデルの選択 — 使用するモデルを選ぶ
- チャネルの設定(任意)— WhatsApp や Slack などの接続は後からでも設定可能
- Web検索プロバイダーの選択(任意)— Perplexity / Brave / Gemini などから選ぶ
- デーモンのインストールと起動 — Gateway を常駐サービスとして登録する
完了すると ~/.openclaw/openclaw.json に設定ファイルが生成されます。
まず動作確認だけしたい場合は、チャネル設定をスキップして openclaw dashboard で Control UI(ブラウザ)から直接チャットするのが最速です。
設定ファイルの構成
OpenClaw の設定は ~/.openclaw/openclaw.json に集約されています。Gateway はこのファイルを監視しており、変更を保存すると自動で反映されます(ホットリロード)。
主要な設定項目を確認しておきます。
{
// Gateway の基本設定
"gateway": {
"port": 18789
},
// エージェント定義
"agents": {
"list": [
{
"id": "main",
"name": "アシスタント",
"model": "anthropic/claude-sonnet-4-5",
"fallbackModels": ["openai/gpt-5.2"],
"workspace": "~/.openclaw/agents/main"
}
]
},
// LLM プロバイダー
"models": {
"providers": {
"anthropic": {
"apiKey": "${ANTHROPIC_API_KEY}"
}
}
},
// チャネル(メッセージングアプリ)
"channels": {
// 後述
},
// エージェントとチャネルの紐付け
"bindings": [
// 後述
]
}
API キーは設定ファイルに直接書かず、環境変数経由で参照するのがおすすめです。${ANTHROPIC_API_KEY} のように書くと、環境変数 ANTHROPIC_API_KEY の値が展開されます。
日本語環境の設定
OpenClaw 自体には日本語ロケール設定はありませんが、エージェントの振る舞いをカスタマイズする仕組みが充実しています。ここを活用して日本語での応答を実現します。
SOUL.md でエージェントの人格を定義する
OpenClaw のエージェントは起動時に SOUL.md を最初に読み込みます。「エージェントが自分自身を読んで、自己を形成する」という設計思想です。
ワークスペースディレクトリ(デフォルトは ~/.openclaw/agents/main/)に SOUL.md を作成します。
# Soul
## Language
- 日本語で応答する
- 技術用語は英語のままでよいが、説明は日本語で行う
- 敬語(です/ます調)を使う
## Communication Style
- 結論を先に述べる
- 冗長な前置きは省く
- 具体例を交えて説明する
- 曖昧な表現を避け、数値や事実に基づいて話す
## Values
- 正確性を最優先する
- わからないことは「わからない」と正直に伝える
- ユーザーの時間を無駄にしない
AGENTS.md でワークスペースルールを定義する
AGENTS.md はエージェントの行動ルールを定義するファイルです。同じワークスペースディレクトリに作成します。
# Agent Rules
## 基本ルール
- ファイルの読み書きは必ずユーザーの確認を取ってから行う
- シェルコマンドの実行前に、何をするか説明する
- エラーが発生した場合は、原因と対処法を日本語で説明する
## 出力フォーマット
- コードブロックにはファイル名と言語を明記する
- 長い出力は要約してから全文を提示する
IDENTITY.md でプレゼンテーション情報を定義する
IDENTITY.md はエージェントの表示名やアイコンを定義します。
# Identity
name: アシスタント
emoji: 🤖
description: 日本語で対応する個人AIアシスタント
設定の反映を確認する
ファイルを保存したら、Gateway を再起動するか、新しいセッションを開始すると反映されます。
# Gateway の再起動
openclaw gateway restart
# Control UI で確認
openclaw dashboard
基本操作
Control UI(ブラウザ)で使う
最も手軽な方法です。
openclaw dashboard
ブラウザが開き、http://localhost:18789 で Control UI にアクセスできます。WebChat タブからすぐにチャットを開始できます。
CLI で使う
ターミナルから直接やり取りすることも可能です。
# 対話モード
openclaw chat
# 単発のコマンド実行
openclaw run "今日の天気を調べて"
チャネル経由で使う
Slack や Discord などのメッセージングアプリからエージェントを操作する場合は、チャネルの設定が必要です。
Slack の設定例を示します。
// ~/.openclaw/openclaw.json に追加
{
"channels": {
"slack": {
"accounts": [
{
"id": "my-slack",
"token": "${SLACK_BOT_TOKEN}",
"appToken": "${SLACK_APP_TOKEN}"
}
]
}
},
"bindings": [
{
"agentId": "main",
"channel": "slack",
"accountId": "my-slack"
}
]
}
Skills(拡張機能)の活用
OpenClaw には 100 以上のプリセット Skills が用意されています。Skills は SKILL.md で定義され、エージェントの能力を拡張します。
Skills の一覧を確認する
openclaw skills list
Skills のインストール
ClawHub(Skills マーケットプレイス)から追加できます。
# 例: ブラウザ操作スキルのインストール
openclaw skills install @openclaw/browser-automation
主要な Skills
| スキル | 用途 |
|---|---|
browser-automation |
ブラウザ操作(Web スクレイピング、フォーム入力など) |
file-manager |
ファイルの読み書き・管理 |
shell-executor |
シェルコマンドの実行 |
cron-scheduler |
定期タスクの設定 |
web-search |
Web 検索 |
soul-md |
SOUL.md からの人格読み込み |
長期メモリ
OpenClaw はローカルファーストの長期メモリを持っています。会話の文脈、ユーザーの好み、進行中のプロジェクト情報などが ~/.openclaw/agents/<agentId>/sessions/ に Markdown ファイルとして保存されます。
USER.md を使って、ユーザー固有の情報を定義することもできます。
# Memory
## ユーザー情報
- 名前: Taka
- 使用言語: 日本語
- タイムゾーン: Asia/Tokyo
## プロジェクト情報
- メインの開発言語: TypeScript
- よく使うフレームワーク: Next.js, Hono
NemoClaw: エンタープライズ向け拡張
2026年3月17日、NVIDIA は GTC 2026 で NemoClaw を発表しました。OpenClaw の上にエンタープライズ向けのセキュリティレイヤーを追加するスタックです。
NemoClaw の主な特徴
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| OpenShell | カーネルレベルのサンドボックスと最小権限アクセス制御 |
| プライバシールーター | エージェントの通信を監視し、ポリシーベースで制御 |
| ローカルモデル対応 | NVIDIA Nemotron モデルを GeForce RTX / DGX 上でローカル実行 |
| ポリシー管理 | YAML でセキュリティポリシーをホットスワップ可能 |
| GPU 非依存 | NVIDIA GPU がなくても動作する |
NemoClaw のインストール
OpenClaw がインストール済みの環境にワンコマンドで追加できます。
openclaw install nemoclaw
NemoClaw は2026年3月時点でアルファ版です。NVIDIA 自身が「rough edges を覚悟してほしい」と明言しています。本番環境への導入は時期尚早です。
エンタープライズでの意義
NemoClaw の登場は、OpenClaw のエコシステムにとって大きな転換点です。
- セキュリティの標準化: OpenShell は OSS として公開され、Cisco・CrowdStrike・Google・Microsoft Security と連携してエンタープライズセキュリティスタックへの組み込みが進んでいる
- 開発者コミュニティとの共存: NemoClaw は OpenClaw の上に構築されるため、コミュニティの Skills やプラグインがそのまま使える
- ハードウェア中立: NVIDIA 製品に縛られない設計になっている
よくあるトラブルと対処法
Gateway が起動しない
# ログを確認する
openclaw gateway logs
# 設定ファイルのバリデーション
openclaw config validate
OpenClaw は設定ファイルのスキーマを厳密にチェックします。不明なキーや型の不一致があると起動を拒否します。
API キーのエラー
環境変数が正しく設定されているか確認してみてください。
echo $ANTHROPIC_API_KEY
# 空の場合は設定する
export ANTHROPIC_API_KEY="sk-ant-..."
シェルの設定ファイル(~/.zshrc など)に追記しておくと、ターミナルを開き直しても有効になります。
Node.js のバージョンが古い
node -v
# v22.16 未満の場合はアップデートする
# nvm を使っている場合
nvm install 24
nvm use 24
sharp ライブラリのビルドエラー(macOS)
# Xcode CLT のインストール
xcode-select --install
# node-gyp のインストール
npm install -g node-gyp
まとめ
OpenClaw は「ローカルファースト・モデル非依存・チャネル統合」という設計思想で、個人の AI アシスタントとして高い拡張性を持っています。
日本語環境での利用は、SOUL.md と AGENTS.md を日本語で記述することで実現できます。UI の日本語対応はまだですが、チャットの応答は問題なく日本語で得られます。
NemoClaw の登場により、個人利用だけでなくエンタープライズでの採用も現実的になりつつあります。セキュリティが課題で導入を見送っていた組織にとっては、検証を始めるよいタイミングです。