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0()から始まるPostgreSQL

Last updated at Posted at 2023-11-30

はじめに

これはPostgreSQLを0から学ぶための入門記事ではありません。
誤解を招くタイトルで申し訳ありません。

PostgreSQLで0にまつわる話を書いていきます。

最小のテーブル構成

SQLは(複数の)テーブルを対象として、1つのテーブルを求めるための言語です。
SQLが対象とするテーブルの構造は、行(row)と列(column)で構成されています。

列1 列2 列3
行1 行1 行1
行2 行2 行2
行3 行3 行3

最小のテーブル構成は何でしょうか?理論上は0行0列のテーブルが最小のテーブル構成となります。この場合の0は、プログラミング言語でいう配列の一番目[0]ではなく、長さが0の配列[]のようなものです。

行0のテーブル

行が0のテーブルは、ごく普通に存在します。通常の検索で、検索条件にヒットしなければ、0行の結果テーブルが返されますし、CREATE TABLEで作成しただけのテーブルは、行が0のテーブルです。

列0のテーブル

列が0のテーブルは、通常見ることはありません。列が0のテーブルは、値を持てないので、わざわざ作る必要がないからです。
標準のSQLでは、列が0のテーブルを作ることはできないらしく、大抵のRDBでも列が0のテーブルは作れません。

しかしPostgreSQLでは、列が0のテーブルを作ることができます。

CREATE TABLE zero_column ();

PostgreSQL 7.4から列が0のテーブルを作成できることが明示されています

考え方としては、ALTER TABLE テーブル DROP COLUMN 列名で列を削除することで列が0のテーブルを作成できてしまうため、DROP COLUMNで列があったとしても、列数が0にならないようにチェックするか、列が0になるのを許容するかで、PostgreSQLは後者を選択したようです。

なので、他のプログラミング言語ではよくおこなわれているような、不定長の配列(スライス)をまず空で作成して、後から要素を追加していくのが便利なように、
PostgreSQLでも理論上は、空のテーブルを作成したあとに、列を追加していくといったこともできます。

CREATE TABLE add_user ();
ALTER TABLE add_user ADD COLUMN id SERIAL;
ALTER TABLE add_user ADD COLUMN name TEXT;
ALTER TABLE add_user ADD COLUMN age INT;

まあ、いろんな事情により、通常やらないですし、DBAにとっては悪夢のように見えるかもしれません...

INSERTは0列に対応しているか?

そして、ちょっと意味がわからないかもしれませんが、列が0のテーブルに行を追加することもできます。
とはいえ、INSERT INTO zero_column VALUES ();INSERT INTO zero_columns () VALUES ();では追加できません。
どうやって書くのかわかりますか?折りたたんでおくので、考えてみてください。

0列に行挿入
INSERT INTO zero_column DEFAULT VALUES;

さらに、SELECTでリストを空にもできるようになっています(これはPostgreSQL 9.4から)。

SELECT FROM anther_table;

ということで、0列のテーブルに行を追加するもう一つの方法です。

0列に行挿入する別の方法
INSERT INTO zero_column SELECT FROM anther_table;

これにより0列複数行のテーブルが作成できます。

最小のSELECT

SELECT文はFROM句が省略できることが知られています。SELECTのリストも空にできるので、最小のSELECTは以下のようになります。

SELECT;

これをpsqlで実行すると、以下のようになります。

postgres=# SELECT;
--
(1 row)

結果に疑問を持たれた方もいるかもしれません。SELECT;の結果は0列0行のテーブルではなく、0列1行(row)のテーブルです。
SELECT文でFROM句を省略する場合、通常はSELECT 'TEST', 1+2のような定数を返すために使われます。
つまり、SELECT文でFROM句を省略した場合は1行(以上)のテーブルを生成すると考えられるため、0列1行のテーブルが返されます。

行を0にする方法は当然あるので、0列0行を返したいときには(いくつか方法がありますが)、私が思いついたのは以下です。

0列0行を返すSELECT
SELECT WHERE false;
SELECT LIMIT 0;

0列1行よりも0列0行を返す方が長くなるのは、面白いですね。

ちなみにpsqlでは列が0のテーブルは(改行も含めて)表示されないようになっているようです。

SELECT FROM zero_column ;
--
(6 rows)

これはクライアントの表示の仕方の問題で、拙作のtrdsqlでJSONで出力してみると、以下のように表示されます。

$ trdsql -driver postgres -ojson "SELECT FROM zero_column"
[
  {},
  {},
  {},
  {},
  {},
  {}
]

PostgreSQLは0列に対応していますが、SQLの標準では(内部的以外は)0列に対応していないため、0列に対応しているかは構文によります。
以下はそれを見ていきます。

SELECT COUNTは0列に対応しているか?

SELECTのリストは空にできますが、COUNT関数は空にできません。

SELECT count() FROM zero_column ;
ERROR:  42809: count(*) must be used to call a parameterless aggregate function
LINE 1: SELECT count() FROM zero_column ;
               ^
LOCATION:  ParseFuncOrColumn, parse_func.c:788

COUNT(*)ではちゃんと行数が返されます。

SELECT count(*) FROM zero_column
 count 
-------
     6
(1 row)

*は列のリストの全部を表すと思ってしまいますが、もう少し複雑です。マニュアルには以下のように書かれています。

https://www.postgresql.jp/document/current/html/sql-syntax-lexical.html#SQL-SYNTAX-IDENTIFIERS
アスタリスク(*)は、いくつかの文脈において、テーブル行や複合型の全てのフィールドを表現するために使用されます。 また、集約関数の引数として使われる場合も特殊な、つまり、その集約が明示的なパラメータをまったく必要としないという意味を持ちます。

COUNTは集約関数なので、特殊な意味を持つことになります。

VALUESは0列に対応しているか?

PostgreSQLではVALUESは単体でも使用できます。VALUESは、SELECT文のFROM句を省略した場合と同じように、定数をテーブルにするために使われます。

VALUES(1,'a');
 column1 | column2 
---------+---------
       1 | a
(1 row)

ということは、VALUESを使えば、0列のテーブルを作成できそうと思ったのですが、エラーになりました。

VALUES();
ERROR:  42601: syntax error at or near ")"
LINE 1: values();
               ^
LOCATION:  scanner_yyerror, scan.l:1176

INSERT INTO zero_column VALUES ();がエラーになった理由がわかりましたね。

DELETEは0列に対応しているか?

DELETEWHEREを省略すると、テーブルの全行を削除するので問題なく動作します。

DELETE FROM zero_column ;
DELETE 6

では、0列が6行あるとして3行目を削除できるか?

...お前は何を言っているんだ?...案件ですが、最後の手を使って書いてみました。

0列の3行目を消すDELETE

SELECT ctid FROM zero_column ;
  ctid  
--------
 (0,7)
 (0,8)
 (0,9)   <-- これを消したい 
 (0,10)
 (0,11)
 (0,12)
(6 rows)
DELETE FROM zero_column WHERE ctid = '(0,9)';
DELETE 1

他に思いついたのは、ことごとく失敗しました。

UPDATEは0列に対応しているか?

さすがに意味わからん。ムーリー。

まとめ

SELECT FROM オチ;
--
(1 rows)
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