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2026年 企業がAIに出遅れないために:最初は M365 Copilot か Google AI Studio のどちらかを"社員に解放"する

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Last updated at Posted at 2026-01-15

伊藤 昇です。株式会社ベネフィット・ワンで生成AI活用に取り組んでいます。
本稿では「企業がAIに出遅れない最初の一手」を、実務視点で整理します。

※発信内容は個人の見解です。
※本稿は「LLM比較」や「最新モデル論争」ではなく、企業導入の初動設計に焦点を当てます。


この投稿で得られること(読む前に)

読むのにかかる時間:5〜7分

この投稿は「生成AIを入れたいのに、社内で止まってしまう」人向けに、

  • なぜ止まるのか(よくある詰まりポイント)
  • まず何をすべきか(現実的に通る一手)
  • その後どう回すか(最小の仕掛け3つ)

を、現場目線でまとめたものです。

結論だけ先に言うと、企業の初動はだいたいこれで決まります。

「まずは“会社が用意したAI”を解放する。ユースケースは後から生まれる」


Qiita AI Summit の関連テーマです

本記事のテーマは「Qiita AI Summit」でも扱う内容の延長です。
企業での生成AI活用に関心がある方は、こちらもぜひ。


結論:まずは「道具」を配る。ユースケースは後で生まれる

生成AIの難しさは、導入初期に「ユースケースが先に確定しづらい」点です。
ExcelやSlackのように、最初から用途が明確なツールとは違います。

だから私は、生成AIは "ユースケース起点で選定する" よりも、まずは

一定の安全性が担保された生成AI環境を用意し、試せる状態にする

のが先だと思っています。

企業がAIに出遅れる原因の多くは「AIが無いこと」ではなく、

  • セキュリティレビューで止まる
  • 使える環境が人によって違う
  • "やってみた人"が増えない

といった、環境の未整備です。

AI導入の停滞と改善.png


2026年の企業とAI

2025年から生成AI(LLM)が業務に入り込むスピードが加速しています。
もはや「AIを使うかどうか」ではなく、「どの順番で浸透させるか」が勝負になってきました。

ただ、多くの企業で見かけるのが次の2パターンです。

  • A:議論は盛り上がるが、結局使われない
  • B:一部の詳しい人だけが使って、全社には広がらない

本稿では、企業でAI活用を進めたい人向けに、「最初の一手」として私が有効だと考えている打ち手を整理します。

結論はタイトルの通り、

最初は Microsoft 365 Copilot か Google AI Studio のどちらかを"社員に解放"する

です。


なぜ「M365(Copilot) / Google AI Studio」なのか?

理由はシンプルで、多くの日本企業ではすでに

  • Microsoft 365
  • Google Workspace

のどちらかを契約済みであることが多いからです。

つまり、生成AIも「新しい謎ツールを入れる」より先に、

既存契約のオプションとして生成AIを解放する

という形のほうが、導入の初速が出ます。

さらに重要なのが、社員にとってのメッセージが非常に明快になる点です。

  • ✅ 会社が用意したAIは使っていい
  • ❌ 個人のAI(個人契約のChatGPTなど)は業務では使わない

この誘導は、社内ルールとしても分かりやすく、セキュリティ的にも事故が起きにくい。
だから私は「最初の一手」として、Microsoft 365 CopilotGoogle AI Studio のどちらかを解放することを推しています。
(Copilot Chat は導入口としては有効ですが、応答品質の面で注意が必要です)


最初の解放先:M365(Copilot Chat / Microsoft 365 Copilot)か Google AI Studio

選択肢としては、3つあるかと思います。

 ① Copilot Chat(無料枠)
 ② Microsoft 365 Copilot
 ③ Google AI Studio

最初の選択肢として現実的なのは、下記2つのどちらかです。

私の推奨:② Microsoft 365 Copilot か ③ Google AI Studio

先に結論を言うと、品質を担保しつつ試行回数を稼ぐなら、② か ③ を推奨します。

① Copilot Chat(無料枠)は導入ハードルが低い一方、応答品質が一段落ちます。
すでに無償版の ChatGPT や Gemini を使っている社員からすると、「会社が用意したAIの方が使えない」と判断されやすく、定着しにくいリスクがあります。


① Copilot Chat(無料枠・チャット中心)

対象のM365契約 + Microsoft Entra ID があれば追加費用なしで使えます。

  • 「安全な企業向けチャットAI」として使える
  • GPT-4o相当 "クラス" のモデル
  • (設定・条件下で)商用データ保護が有効になる

※最新の仕様・提供条件は変更される可能性があるため、Microsoft公式サイトをご参照ください。

良い点

  • 追加コストなしで始められる(導入ハードルが低い)
  • 非エンジニアでも使いやすい
  • 「会社が用意したAI」として誘導しやすい

注意点

  • 応答品質が②③より一段落ちる傾向がある
    • 無償版ChatGPT/Geminiを使っている社員には「劣化版」に見えることも
  • Word/Excel/PowerPoint などのアプリ統合はない(チャットのみ)
  • 企業データ(SharePoint, OneDrive等)を"そのまま活用できる"とは限らない
    • 社内データ連携は設計が必要(初動では割り切りが必要)

位置づけ

  • 「まず全員に配る」導入口としては有効だが、これだけで満足されるとは限らない
  • ②③と併用し、希望者には上位環境を提供する設計がベター

②【推奨】Microsoft 365 Copilot(有料・業務アプリ統合)

追加ライセンス課金が必要ですが、業務アプリとの統合が強みです。

  • Word / Excel / PowerPoint / Outlook / Teams に統合
  • 企業データ(Microsoft Graph)を踏まえた回答ができる
  • GPT-4 系の最新モデルを利用

良い点

  • 業務アプリの中でAIが使える(=日常業務に入りやすい)
  • 管理者側の統制が取りやすい
  • 社内データを活用した回答が可能
  • 応答品質が高く、「使える」と感じてもらいやすい

注意点

  • ユーザー単位の課金で、コストが高めになりやすい
  • 使い方を誤ると「要約しかしてない」状態になりがち

③【推奨】Google AI Studio(Gemini)

こちらは「実験環境」として強いです。
予算が限られる場合、まずここで試行回数を稼ぐのが現実解。

良い点

  • 触れるモデルの幅が広い(試行錯誤が進む)
  • 無料枠でも高品質なモデルに触れられる
  • プロンプトや構造化出力の学習に向く
  • 開発者・準開発者層がハマりやすい

注意点

  • 非エンジニアには少し難しく見える
  • "遊び"と"業務"の線引きが曖昧になることがある

選び方の目安

状況 推奨
M365契約あり+予算確保できる ② Microsoft 365 Copilot
M365契約あり+予算が厳しい ① Copilot Chat(ただし期待値調整が必要)
Google Workspace契約 or 開発者層が多い ③ Google AI Studio
とにかく試行回数を稼ぎたい ③ Google AI Studio

社内での「AI導入の詰まり」はツール以前の話だった

ここからが一次情報です。

私は社内で生成AIの企画・推進に関わっていますが、導入が進みにくい会社には共通点があります。
それは技術選定ではなく、もっと前段の

「使っていいAIがどれか分からない」問題

です。

生成AIが流行ってから、多くの社員がこうなりました。

  • ChatGPTを使いたいが、会社的にOKなのか分からない
  • 無料版を触ってみたが、機密が怖くて業務に使えない
  • 使ってる人がいるらしいが、何をしているか見えない

結果として、せっかく関心が高まっても、組織としてはこうなる。

関心は高いのに、経験値が増えない
(=AIが"流行り"で終わる)

これは非常にもったいない。

だから私は「最初の一手」は、ユースケースを先に決めることではなく、
環境を"公式化"することだと考えています。


ベネフィット・ワンではこう進めました

参考までに、株式会社ベネフィット・ワンでは生成AI導入を次のように進めました。

  • Copilot Chat を全社員に解放
    • 既存のMicrosoft 365契約 + Entra ID で追加コストなし
    • 導入初期の「使える環境の標準化」に適していた
  • 希望者には追加で以下を提供
    • Microsoft 365 Copilot(業務アプリ統合版)
    • Vertex AI(Gemini)
  • リサーチャーやアナリティクスの機能も、希望者を対象に段階的に提供

加えて、AI導入に関する教育(使い方・ルール・活用例)も全社に対して実施しました。

一方で、ここまで整備しても「導入が完了した」わけではなく、現在の課題は

ユースケースの育成・定着(業務への入り込み)

です。

生成AIは、仕組みを整えるだけでは使われません。
現場の小さな成功を拾い、共有し、再現可能な形にしていく運用が必要だと感じています。

なお、ここまでの環境整備はインフラ/IT部門を中心とした支援があって初めて実現できたもので、
この場を借りて感謝を表明しておきます。


ユースケースは"発見される"もの:最初は3つだけ仕掛ける

とはいえ、ただ解放しても混沌が生まれるだけです。

私が良いと思うのは、最初にこの3つだけ仕掛けることです。

仕掛け1:ユースケース募集(ただし軽め)

「AIで何ができそう?」を募集します。

重要なのは、気合いの入った提案書を求めないこと。
軽い気持ちで投稿できるようにします。

  • 会議の議事録
  • 自分のMBOの相談(壁打ち)
  • 調査の依頼

仕掛け2:小さく成功を見せる(2週間単位)

全社展開の前に、少人数で回します。

  • 2週間で「業務が1つ楽になった」を作る
  • その事例を社内で共有する

最初の事例は、派手じゃなくていいです。


仕掛け3:ルールを"短く"書いて配る

ガチガチの規程は、初動を殺します。
弊社では、社内規定を定めた後は、そのルール内で推進しております。

  • 入れてはいけない情報
  • 出力の取り扱い(社外秘扱い 等)
  • 困った時の問い合わせ先

まとめ:最初の成功は「AIを導入する」ではなく「試せる社員を増やす」

生成AIの導入は、いきなり大成功させるものではなく、

試行回数を増やして、当たりユースケースを拾う

ゲームに近いです。

だから最初の一手は「正しい答えを選ぶ」よりも、

  • Microsoft 365 Copilot
  • Google AI Studio

のどちらかを解放して、社員が試せる状態を作ること。

その上で、小さな仕掛けを入れて、"ユースケースが発見される土壌" を育てる。

まずはここからで十分です。


※本稿は個人の見解です。機密・社外秘に触れない範囲で記載しています。

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