この記事は SAP Advent Calendar 2025の12月7日分の記事として執筆しています。
はじめに
JouleとはSAPが提供する生成AIアシスタントです。これまで、ソリューション自体は知っていましたが、自分が業務で活用するイメージはあまり持てていませんでした。しかし、SAP TechEdに参加して実際のデモや各種セッションを見たことで、想像以上に面白いソリューションなのではと感じるようになり、今回ブログとして整理してみることにしました。
*TechEdの詳細については会社ブログにて共有しています。
全体レポ
セッションレポ
Jouleとは?
Jouleは、2023年10月に発表された SAPの生成AIアシスタントになり、位置づけとしては、AWSのAmazon Q、MicrosoftのCopilotと同じように(?)、クラウドソリューションに対応して動く自社製品に強い専用AIアシスタントとなります。
SAP Jouleの場合は、S/4HANA、SuccessFactors、SAP Analytics Cloud(SAC)など、さまざまなSAP製品を横断して使える点が特徴で、SAPの操作や分析、業務のサポートを一つのアシスタントで完結できるところが強みとされています。
SACの領域にフォーカスすると、Jouleは「Informational」「Navigationa」「Transactional」「Analytical」という4つの観点で利用でき、「計算ディメンションはどう作るの?」「売上のストーリーを開いてほしい」「来年の費用を予測して」「前四半期のトップ商品は?」といった要望も自然言語で処理できます。
さらに、Jouleはソリューション操作を支援するだけでなく、「Joule for Consultant」のようなコンサルタント向けや、「Joule for ABAP Developer」のような開発者向け機能など、役割に応じた Jouleが幅広く提供されています。
SACのJust Askと何が違うのか?
このサブタイトルは、社内でJouleの検証を進めようとしていたときに実際に聞かれた質問でした。最初はどちらも自然言語で使えるという点が共通しているため、似たようなソリューションに見えてしまい、既にJust Askが提供されているSACでJouleを使う価値が分かりづらいと感じていました。
ただ、Jouleの調査を進めていく中で、それぞれの役割や目指している領域は明確に異なることが分かってきました。整理すると、次のような違いがあります。
| Just Ask | Joule | |
|---|---|---|
| 位置づけ | SACの機能 | SAPのAIソリューション |
| 目的 | データ分析の効率化 | 業務横断したサポート |
| 範囲 | SACのみ | SAPクラウド全体 |
| 出力内容 | グラフや数字 | 自然言語による回答 |
| ライセンス | SACに含まれる | Jouleとして別途必要(?) |
Just Askは、SACに蓄積されたデータをすばやく可視化したり、会議前に数字だけ確認したいときに便利なデータを呼び出して数字やチャートで確認する機能です。SACライセンスの中でそのまま利用できます。
一方で Jouleは、購買・人事・財務・在庫といった複数の SAPシステムにまたがる情報をまとめて理解し、業務全体の流れを自然言語でサポートする “AI コパイロット” として設計されています。分析に限定されず、次に取るべきアクションの提案や横断的な質問への回答など、より広い範囲で業務支援を行います。こちらは別途Joule用のライセンスが必要です。
同じ自然言語の機能でも、Just AskはSACの中での分析、JouleはSAP全体の業務支援というように目的がはっきり異なっています。
Jouleのこれから
SACユーザーとしてこのブログを書いていますが、そもそも 2025年3月にSAPはSAP Business Data Cloud(BDC)という新しいデータ基盤ソリューションを発表し、SAP Analytics Cloud(SAC)もその一部として扱われるようになりました。また、BDC自体にも今後AIアシスタント機能が追加される計画があるため、今後はSAC単体ではなく、BDC全体の中でAIやJouleをどう活用していくかがより重要になると感じています。
また、Jouleは単体のソリューションとして使うというより、複数のSAPソリューションを横断してこそ価値が発揮されるアシスタントだと感じています。イメージとしては、S/4HANAや各種LOBソリューションのデータをデータプロダクトとして BDCに集約し、そのデータをBDC上で確認したり、必要なリソースへすぐアクセスできるようになるという流れです。こうした構成が整うことで、複数システムにまたがる質問にも一度で答えられるようになります。結果としてS/4の業務データなどをBDC側で統合すれば、Jouleは“企業のデータ全体を理解したアシスタント”としてより力を発揮しやすくなるのではないかと感じました。(*あくまでイメージ(妄想)です!)
おわりに
Jouleは、全ての機能がまだ揃っているわけではありませんが、SAP業務を幅広く支えてくれる存在になり得るソリューションだということは実感できました。特に製品横断で支援できる姿が少しずつ見えてきていて、今後のアップデートでどれだけ使い勝手が向上するのか楽しみです!