はじめに
Power BIには、棒グラフや折れ線グラフ、マトリクスなど、多くの標準ビジュアルが用意されています。一般的なダッシュボードであれば十分対応できますが、実際の開発では「標準ビジュアルでは表現できないレイアウトにしたい」や「デザインを細かくカスタマイズしたい」、という要望に出会うことが少なくありません。
しかし、Power BIの標準ビジュアルだけでは実現できないケースも多く、仕様上の制約を理由に諦めざるを得ないことがあります。そんなときにおすすめしたいのが Deneb です。
Denebは、Power BIの表現力を大きく広げてくれるカスタムビジュアルで、標準ビジュアルでは難しいグラフや独自の可視化を実現できます。この記事では、Denebとは何か、どのようなことができるのか、どんな場面で活用するのか紹介します。
Denebとは
Denebは、Power BIで利用できるオープンソースのカスタムビジュアルです。Vega-Lite(およびVega)という可視化ライブラリを利用して、JSON形式でビジュアルを定義します。そのため、Power BIの標準ビジュアルでは実現できないグラフやレイアウトも作成できます。
また、Power BIのデータモデルやDAX、スライサー、クロスフィルターなどの機能と連携できるため、既存のレポートに組み込みやすいことも特徴です。
- 公式サイト: https://deneb-viz.github.io/
- Vega-Lite ドキュメント: https://vega.github.io/vega-lite/
※ ライセンスや認定状況などの詳細は変わる可能性があるため、導入時に公式サイトをご確認ください。
Deneb でできること(メリット・デメリット)
Denebの最大の魅力は、Power BI標準ビジュアルの制約を超えた自由な表現ができることです。一方で、JSONベースで開発するため、標準ビジュアルとは異なる難しさもあります。ここでは、実際に使って感じたメリット・デメリットを紹介します。
メリット
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標準ビジュアルにはないグラフを作成できる
ツリー図、ブレットチャート、ヒートマップカレンダー、ダンベルチャートなど、標準では実現できないビジュアルも作成できます。表現の幅は非常に広く、ほぼ自由に可視化できます。 -
Power BI のデータとシームレスに連携できる
フィールド、メジャー、スライサーなどPower BIの機能をそのまま利用できます。 -
JSONベースなので再利用しやすい
作成した仕様はJSONファイルとしてコピーできるため、他のレポートへの展開も簡単です。テンプレート機能も用意されており、チーム内での共有にも向いています。 -
無料で利用できる
DenebはMicrosoft AppSourceから無料で利用できます。
デメリット
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学習コストがある
Vega-Liteの文法(mark、encoding、transformなど)を理解する必要があります。ただし、最近では生成AIを活用しながら開発を進めることもできるため、以前よりハードルは下がっています。 -
GUIでの設定ができない
標準ビジュアルのようにクリック操作だけでデザインを変更することはできません。基本的にJSONを編集して調整していく必要があります。 -
複雑なビジュアルは保守性に注意が必要
表現が高度になるほどJSONも複雑になり、属人化しやすくなります。コメントを残したり、仕様をドキュメント化したりするなど、保守を意識した運用がおすすめです。 -
Vega-Lite特有の仕様がある
例えば、テキストの自動折り返しができないことや、レイヤー間でスケールが共有されることなど、独特の仕様があります。
日常的なレポートをすべてDenebで作る必要はありませんが、標準ビジュアルでは実現できない表現が必要な場面では、有力な選択肢になります。標準ビジュアルと適切に使い分けることで、Power BIの表現力を大きく広げることができます。
実際につくってみた
例えば、Denebを使うことで、Power BIの標準では表現が難しい自由度の高いバリュードライバーツリーを作成できます。
今回は、「売上 = 客数 × 客単価」を起点に、客数を「新規顧客数」「リピート率」、客単価を「購入点数」「平均単価」などへ分解したバリュードライバーツリーを作成しました。
Power BIの標準機能でも、図形や線、カードを組み合わせれば似たような画面を作ることは可能です。しかし、レイアウトは基本的に手作業で作成・調整する必要があり、項目が増えたり構成が変わったりするとメンテナンスの負荷が大きくなります。
一方、Denebではノードや線をデータに基づいて描画できるため、レイアウトやデザインを柔軟に制御できることが大きな強みです。また、色や線、ラベルなども細かくカスタマイズできるため、社内の細かい設定などに沿ったダッシュボードにも適した表現が可能になります。
さらに、今回のバリュードライバーツリーではPower BIのWhat-ifパラメーターと組み合わせることで、シミュレーションにも対応できます。
例えば、「平均単価を1350円にしたら売上はどれくらい増えるか」といったシナリオを、スライダーを操作するだけでリアルタイムに確認できます。また、変化した数値は赤字にさせています。
このように、自由なレイアウト・高いカスタマイズ性・Power BIとの連携・シミュレーション機能を組み合わせられる点は、Denebならではの大きな魅力です。
また、バリュードライバーツリーだけでなく、複数の起点・終点を持つ伝票フローやネットワーク図、業務フロー、組織図など、標準ビジュアルでは表現が難しい可視化にもDenebは活躍します。
まとめ
Denebは、Power BIの表現力を広げてくれる、カスタムビジュアルです。Vega/Vega-LiteというJSONベースの記法を使うことで、標準ビジュアルの枠を超えたオリジナルの可視化を実現できます。
一方で、学習コストや保守性といった現実的な課題もあるため、標準ビジュアルでは届かない表現が必要な場面に活用することをお勧めします。
用途に応じて標準ビジュアルと使い分けながら、Power BIの表現力をさらに広げてみてください。

