はじめに
AWS(Amazon Web Services)は、Webサービスやアプリケーション開発に不可欠なクラウドサービスですが、「従量課金制ってどれくらいお金がかかるの?」「クレジットカード登録が必要で怖い」といった不安から、自己学習するにも一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
私自身も、クレジットカードを持っておらず、プリペイドカードでサービスの利用をしていたため、請求に関する情報は念入りに調べてから学習を行いました。
実は、AWSアカウントを新規作成すると、特定のサービスで使える無料クレジットが付与されることがあります。
このクレジットは、無料利用枠を超えた分の料金に充てることができ、安心してサービスを試すための大きな助けとなります。
この記事では、AWSを始める人が安心して使えるように、 無料利用枠(Free Tier) を最大限に活用し、意図しない高額請求を防ぐためのポイントや注意点を解説します。
※この記事は2025年8月時点の情報に基づいています。最新の料金や無料利用枠の詳細は、必ずAWS公式ドキュメントでご確認ください。
AWSの無料クレジットとは?
AWSアカウントを新規作成すると、特定のサービスで使える無料のクレジットが付与されることがあります。これは、通常の無料利用枠とは別に提供される、いわばAWSからの「お試しボーナス」です。
このクレジットは、主に以下のような場合に役立ちます。
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無料利用枠を超過した料金
EC2インスタンスを長時間稼働させてしまった、S3のストレージ容量が無料枠を超えてしまった、といった場合でも、このクレジットが自動的に適用されます。 -
無料枠の対象外サービス
一部の有料サービスを試す際にも、クレジットを消費して利用できます。
クレジットの金額や利用条件は時期によって変動するため、アカウント作成時にAWSコンソールで確認するようにしましょう。
AWS無料利用枠の3つの種類
AWSの無料利用枠には、大きく分けて3つのタイプがあります。
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期間制限なしの無料枠
アカウント作成からの期間に関わらず、特定のサービスが一定の利用量まで無料で使えます。無料枠を超過した分は課金対象となります。たとえば、Lambda(サーバーレスコンピューティング)
やDynamoDB(データベース)
がこれにあたります。 -
12ヶ月無料
AWSアカウント作成日から12ヶ月間、特定のサービスが無料で使える枠です。無料枠を超過した分は課金対象となります。EC2(仮想サーバ)
やS3(ストレージ)
といった主要サービスが対象です。 -
トライアル
一度だけ、決められた容量や期間まで無料で試せる枠です。無料枠を超過した分は課金対象となります。
AWSを学び始めるなら、まずはこの無料枠を使い倒すことが鉄則です。
主要サービスの無料枠と料金発生の注意点
無料利用枠は非常に便利ですが、使い方を間違えると料金が発生してしまうため、特に注意が必要です。ここでは、よく使う主要サービスの注意点を見ていきましょう。
Amazon EC2 (仮想サーバー)
無料枠: 12ヶ月無料(t2.microまたはt3.microインスタンスの月間750時間)
作成したインスタンス(サーバ)が一つであれば、24時間つけっぱなしにしても、料金は発生しません。
注意点
- インスタンスを停止 (Stop) しただけでは、それに付随する
EBS (Elastic Block Store)
のストレージ容量は課金対象となります。不要になった場合は、インスタンスと同時にEBSボリュームも削除しましょう。 - 無料枠の時間制限は、リージョンごとにカウントされます。複数のリージョンでインスタンスを起動したり、複数のインスタンスを実行しておくと、合計時間が750時間を超えてしまう可能性があります。
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Elastic IP
は、インスタンスに関連付けられていない状態で放置すると、料金が発生します。使用しない場合は必ず解放してください。
Amazon RDS (データベースサービス)
無料枠: 12ヶ月無料(db.t2.microまたはdb.t3.microインスタンスの月間750時間、ストレージ20GB、バックアップストレージ20GB)
作成したRDSインスタンス(DB)が一つであれば、24時間つけっぱなしにしても、料金は発生しません。
注意点
- EC2と同様、インスタンスを停止 (Stop) しても、ストレージ容量(無料枠は20GBまで)は残り続けます。完全に削除するには、インスタンスを削除する必要があります。
- **マルチAZ(Multi-AZ)**構成は無料枠の対象外です。誤って有効にするとすぐに料金が発生するため、設定時には注意してください。
Amazon S3 (オブジェクトストレージ)
無料枠: 期間制限なし(標準ストレージ5GB、PUTリクエスト20,000回、GETリクエスト2,000回)
注意点
- ストレージ容量は無料枠の5GBを超えると課金されます。使わないファイルはこまめに削除しましょう。
- リクエスト数(PUT/GET)も無料枠を超えると課金されます。ウェブサイトのホスティングなどでアクセス数が多い場合は、リクエスト料金が発生する可能性があることを念頭に置いてください。
- 異なるリージョン間のデータ転送(データ転送料金)は課金対象となります。
安心して利用するための料金管理ツール
意図しない高額請求を防ぐために、AWSには料金を管理するための便利な機能が用意されています。
AWS Budgets
予算を設定し、その予算の何パーセントに達したら通知するといった設定ができます。これにより、料金の使いすぎを未然に防げます。
請求アラート(Billing Alarm)
AWS Budgetsと似ていますが、料金が指定した金額を超えた場合にEメールなどで通知を受け取れます。
これらの機能を活用することで、料金の変動をリアルタイムで把握でき、安心してAWSの学習を進められるようになります。
もし、高額請求が来てしまったら
インスタンスを作成したまま放置してしまって、高額請求が来てしまったりしたら、サポートに相談してみましょう。問い合わせ内容によっては、返金対応してもらえる場合もあるようです!
Qiita記事:無料枠で使っていたはずのAWSから$200の請求が届いたお話
まとめ
AWSの無料利用枠は、クラウドを学ぶ上で非常に心強い味方です。しかし、その仕組みを理解せずに使うと、思わぬ課金につながるリスクも潜んでいます。
この記事を参考に、無料利用枠を賢く活用し、AWS Budgetsなどの料金管理ツールを併用することで、安心してAWSの学習を始められます。まずは、無料利用枠でどんなことができるのか、実際に手を動かして試してみましょう。
参考
公式ドキュメント:AWS 無料利用枠を開始しましょう
公式ドキュメント:無料クレジットについて
Qiita記事:無料枠で使っていたはずのAWSから$200の請求が届いたお話