1.はじめに
第3世代波浪推算モデルのWAM、SWAN、WW3では、計算を安定させるためにソース項の急激な変化に制限をかけています。この記事ではWAMおよびSWAN(ソース項にJanssenを使用した場合)で使われている、Hersbach and Janssen (1999) のリミッターについてご紹介します。
2.Hersbach and Janssen のリミッター
Hersbach and Janssen のリミッターでは1ステップの変化量の絶対値が以下の制限値より大きい場合、この制限値に置き換えます。
|\Delta F|_{max} = 3.0 \times 10^{-7} g \tilde{u}_{*} f^{-4} f_{c} \Delta t
WAM Cycle 4.5およびSWANの最新版(2026年3月現在 ver.41.51)でもこの式が使われていますが、WAMの最新版(同 Cycle 7)では
|\Delta F|_{max} = 5.0 \times 10^{-7} g \tilde{u}_{*} f^{-4} f_{c} \Delta t
が使われています。制限が緩くなるため、大きな擾乱のピーク波高は、WAM Cycle 7 の方が頭一つ大きくなります。
3.実装箇所
3.1.WAM Cycle 7
src/mod/wam_source_module.f90 の 663行目
DELFL = 5.0E-07*G/FR**4*DELT
3.2.SWAN ver. 41.51
swancom1.ftn の 8117行目
C_HJ = PI2**2*3.0*1.0E-7*DT*SPCSIG(MSC)
4.計算例
2005年12月22日頃のナウファス新潟沖の低気圧擾乱を、WAM Cycle 7、SWAN ver.4151およびSWAN ver.4151のリミッターを以下に修正したもので計算しました。ソース項はいずれもJanssen(ST3)を使用しました。
C_HJ = PI2**2*5.0*1.0E-7*DT*SPCSIG(MSC)

風速データとしては、ERA5(空間分解能0.25°×0.25°、時間間隔1時間)を使用しました。
空間分解能が粗く風速のピーク値が正しく算入出来ないので、計算波高は小さく出るのが正しいのですが、WAM Cycle 7では上記リミッターが緩いため、観測値に近い値となっています。SWANのリミッターを同様に緩めたものも、大きめに出ています。
5.おわりに
制限を緩めることで大きな擾乱のピーク波高は大きくなりますが、小さい擾乱はそもそも制限がかかっていないので大きくなりません。複数擾乱の再現計算を行い各擾乱の最大波高の観測値と計算値の相関解析を行った場合、制限を緩める前後で、ゼロ切片を通過する1次式の傾きは大きくなりますが相関係数は小さくなります。
6.補足
Hans Hersbach(ヘルスバッハ)さんと、P.A.E.M. Janssen(ヤンセン)さんはどちらもオランダの方で、その後ECMWFに在籍されていたようです(Hersbachさんは今も)