Claude Code Max 20x plan を契約している Web エンジニアが、業務での AI コーディングをやめた理由を整理した記事です。AI を完全に捨てたのではありません。そのあたりは後述します。
なぜ AI を用いてコーディングをしなくなったか
自分の成長速度が鈍化した
主観的な感覚としては、AI でコーディングをしていた時の方が知識を習得できていたと思います。自分でコードを書く機会が激減することにより、副産物的に行われていた成長への投資をある程度手放したのではないかと推測しています。
どういうことかというと、学習において、読む(input)ことよりも書く(output)ことの方が学習効果が高いのは「テスト効果」(学んだ内容を思い出すアウトプットを行うほど長期記憶への定着が高まる、という認知心理学の知見)からも裏付けられており、まさにこの書く機会がなくなったことによって効率的な学習がしづらくなったと考えられます。
素早く成果を出しづらくなった
書く機会が減ることで、実装の詳細に対する脳内キャッシュが少なくなり、素早く質疑応答できないケースが増えました。
簡単にいうと non dev(非エンジニア)からの「これできますか」に対して「ちょっと調べます」という回答が増えたということです。non dev の立場からすると「だったらその待ち時間で AI に聞くわ」となってしまいます。
実装時や dev との議論のタイミングでも同じ話がありそうで、「これ他のところでどういう風に実装していたっけ」のような事柄に対する調査が発生するようになってしまいました。
AI に書かせてレビューする工数より、人が書いた方が早いケースがある
例えば統一感の観点からコピペを起点に実装を進める場合、AI にお願いすると「意図したところだけに変更が適用されているか」を(diff コマンドを用いながら)目視ですべて確認する必要があります。一方、例えば手動コピーした後に置換する、のような進め方をした場合「どこを変えてどこを変えていないのか」をその作業プロセス自体によって担保することができます。
逆に何に AI を用いているのか
専門領域外の作業
その領域の知識がほとんどない場合でも、それほど時間をかけずにそれっぽいアウトプットを叩き出すことができます。
最近だと個人開発で作った Web アプリへの検索流入を増やしたいと考えて SEO 対策を行ったのですが、文字通り前提がほとんどない人間でも「それっぽい」対策を行うことができました。
どれくらい「それっぽい」のかは正直不明ですが、できてしまえば PDCA が機能するのでそのうち適切に軌道修正されるのだろうと考えています。
調査
技術的な一次情報そのものは直接記事を当たった方が早いです。一方で、周辺情報を広く浅く集めて傾向をまとめたり、選択肢を列挙したりするケースでは AI を使った方が圧倒的に早いと感じています。
「AI が取得していないデータ(X 等)の見落とし」や「ハルシネーション」を懸念する声もありますが、ネットの情報を集める作業はそもそも「全件鵜呑みにはしない」が前提のため、AI を経由してもハズレを引く確率は誤差レベルにおさまる、というのが個人的な肌感です。
定型業務
アプリケーションの動作確認をする、Dependabot の PR を捌く、PR を書く、等々はある程度自作 skill に委譲するようになりました。
例えばアプリケーションの動作確認をする際、コンテナ立てて、seed 流して、Postman を叩いて…とやるくらいなら、その辺の作業を全て AI にお願いしつつ localhost:3000 に向けた curl コマンドを書いてもらうようにすれば、人の作業はその curl コマンドをコピペして動作確認するだけ、に帰着しそうです。
PR に記載する動作確認も、上記でやったことを貼り付けるとある程度機能するかと思います。むしろ全ての操作が CLI になるので、よりレビュアーの手元で再現がしやすいものになる、という副次的なメリットもあります。
個人的な感覚は「判断基準が言語化しやすく何度も行われるような業務」は skill 化すると将来の自分が楽できるのでは、と考えています。
自分しか使わないローカルで動くもの
最低限のセキュリティさえ担保できれば雑に実装しても困らないためです。私自身も手元で、ruby-lsp のアドオン gem をいくつか作っており、VS Code 上で Rails の DSL(scope や delegate 等)の定義元ジャンプや、model の関連先の CodeLens 表示などを行えるようにしています。これは「動けば OK」という精神で作っているので、1 行もソースコードを書いておりません。
これらの用途もあるため Claude Code の Max 20x plan は引き続き維持しています。
おわりに
最近は落ち着いてきた感覚がありつつも、日々の技術進歩が激しすぎて明日は違うことを言っているかもしれません。特に筆者はそのうちコーディングそのものが AI によって隠蔽されるようになるのだろうと考えているため、この時代に逆行していそうな本記事は、ある日突然抹消するかもしれません。
そのような激動の時代ではありますが、引き続き日々のエンジニアリングを楽しんでいこうと思います。