はじめに
前回の記事の続きです。前回の記事はこちら↓
https://qiita.com/nefu_chem/items/34941d51bd3438e84975
Taylor展開
本記事ではTaylor展開を使うので軽くまとめておきます。きちんと学びたい方は数学書を参考にしてください。
変域では発散せず,何度も微分できる関数$f(x)$を考えます。このような関数は一般に以下のように表せます。
f(x)=\sum_{m=0}^{\infty } C_m x^m
この式を用いると$f(x+a)$は
f(x+a)=\sum_{m=0}^{\infty } C_m (x+a)^m
となります。皆さん大好き二項定理より
(x+a)^m = \sum_{l=0}^m \frac{m!}{(m-l)!l!}x^{m-l}a^l
だから,先の式は
f(x+a)=\sum_{m=0}^{\infty } \sum_{l=0}^m C_m \frac{m!}{(m-l)!l!}x^{m-l}a^l
となります。
ところで一番最初の式を$l$回微分してみると
f^{(l)}(x) = \sum_{m=0}^{\infty } C_{m+l} (m+l)(m+l-1) \cdots (m+1)x^m = \sum_{m=0}^{\infty } C_{m+l} \frac{(m+l)!}{m!} x^m
となりますよね。この式より
\sum_{l=0}^{\infty }\frac{1}{l!}f^{(l)}(a)x^l = \sum_{l=0}^{\infty } \sum_{m=0}^{\infty } C_{m+l} \frac{(m+l)!}{l! m!} a^m x^m
という式が得られて,ここで $l=n-m$ と置き換えてやれば
\sum_{l=0}^{\infty }\frac{1}{l!}f^{(l)}(a)x^l = \sum_{n=0}^{\infty } \sum_{m=0}^n C_n \frac{(n-m)!m!}{n!} a^m x^{n-m}
となります。これは先の$f(x+a)$の式と一致するので
f(x+a) = \sum_{l=0}^{\infty } \frac{1}{l!}f^{(l)}(a)x^l
と表されます。これがTaylor展開の公式です。
振り子の周期の導出に戻ってみる
さて,前回記事でやったことをもう一度見ていきます。
前回の導出で出てきた式
\frac{d^2(\theta )}{dt^2} + \omega _0 ^2 \sin \theta = 0
がありました。前回はここで$\sin \theta \approx \theta $の近似を用いました。ですが,ここでは厳密解を求めることを試みます。そこで先ほど考えたTaylor展開を$\sin \theta $に対して行ってみましょう。
\sin \theta = \theta - \frac{1}{3!} \theta ^3 + \frac{1}{5!} \theta ^5 - \frac{1}{7!}\theta^7 + \cdots = \sum_{n=0}^{\infty } \frac{(-1)^n}{(2n+1)!} \theta ^{2n+1}
これが先ほどの微分方程式に含まれていることが見えました。つまり,関数$\theta (t)$に対して無限に続く$\theta ^n$の項を含み,これを難しい言葉で非線形微分方程式といいます。ですが,もし$\theta $が小さければこの式からも分かるように$\sin \theta \approx \theta $の近似を用いることができ,前回同様に解けます。
ですが,もし$\theta $が大きければどうしましょう?(記事が重くなってきたので次に続く)